1899年に創業され、売上収益は約3.5兆円にもおよぶ日本電気株式会社(以下、NEC)。社内のDXを「コーポレート・トランスフォーメーション(以下、CX)」と位置づけ、全社的なデータドリブン経営の実現や変革の企業文化の醸成を目指している。
NECで基幹DX開発センター統括部長を務める早坂 佳已さんに、CXやデータドリブン経営に向けた取り組みについて話を聞いた。
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早坂 佳已さん プロフィール
日本電気株式会社 基幹DX開発センター統括部長。1987年に日本電気経営情報システム開発へ入社し、相模原事業場でレーザ装置の生産管理システムを担当。NECエレクトロニクスやNECライティング出向を経てNECへ転籍し、2022年より現職。
目次
データドリブン経営を実現するため、データの取れる環境を構築

NECは2012年ごろから構造改革を進めてきた。2018年から経営がコミットしてDXに着手し、変革プロジェクト“Project RISE”を開始した。2021年からは新たなフェーズに移行し、本格的なCXを加速させている。
早坂さんが統括する基幹DX開発センターは、社内でどのような役割を担っているのだろうか。
「NECではデータドリブン経営の実現に向け、社内のあらゆるデータの一元化や、社内業務そのもののプロセスを標準化する取り組みを進めています。そのなかで基幹DX開発センターは、販売、調達、経理などの基幹システムの開発・保守などを担っています。
高品質なシステムをスピーディーに提供し、業務改革の実現支援やSGA(販売費および一般管理費)の削減などに貢献することがミッションです」
日々のビジネスで蓄積される膨大なデータをスピーディーな経営判断に生かすためには、信頼できるITシステムが不可欠だ。そこでNECでは、2010年に「SAP ERP」をグローバルに導入した。会計領域を中心とした基幹システムを統合したことで一定の成果を得られたが、課題もあるという。
「これまで、営業や商談といった受注前のプロセスが未整備で統制できていませんでした。データも取れていなかったので、それを解決するために経営ファイナンス刷新(KFP)プロジェクトを約3年前に立ち上げました。しっかりとデータの取れる環境を実現するために、取り組みを進めています」
経営ファイナンス刷新プロジェクトは、社長のイニシアチブのもと、CIOがオーナーとしてプロジェクトを推進している。それだけ力を入れているプロジェクトだ。
「このプロジェクトで目指すのは、制度会計要請への対応と効率化、そして事業成長です。まず、制度会計は絶対に達成する必要があります。そのうえで、デジタルによる効率化を図ります。経理の集計作業など人手を要する業務があり、効率化しなければなりません。
また、事業成長のため、戦略立案に寄与する情報が出た際に、データドリブン経営として活用していく必要があります。事業や商品に関して、データをもとに話をしていけるように進めています」

NECでは事業体ごとに仕組みがあり、商談データの持ち方がそれぞれ異なっていた。それではデータを活用できないため、ひとつのデータプラットフォームに集約した。これによって、一貫性があり最新の高品質なデータに、必要なタイミングと形でアクセスできるようになっている。
重要なデータが一覧できる「経営コックピット」
データが取得できるようになったことで、経営層から社員までが同じデータでファクトに向き合えるようになった。NECでは、会社として重要なデータを一覧できるようにしたものを「経営コックピット」と呼び、いつでも確認できるようにしている。
ほかにも、サイバーセキュリティーや生成AIの活用状況などのダッシュボードも用意し、報告を待たずとも状況が一目でわかるようになっている。

「生のデータをリアルタイムに表示することで、ファクトがそのまま見える状況をつくり上げられるようになりました。データを起点にアクションを起こせるようになったことは、大きな変化です」
データを見える化することで、未来志向のアクションが起こせるようになった。基幹DX開発センター統括部長として業務を進めるうえで、早坂さんが必要だと感じていることがある。
「基幹業務を支えるシステムは間違えないことが重要とされてきました。たとえば、税務計算は間違えたら大変ですよね。ただ、ダッシュボードのような見せて活用するものであれば、スピード感が求められます。そこの違いを把握し、領域を明確に切り分けて、進めていくことが必要だと感じています」
NECでは、ビジネス環境の変化にも柔軟かつタイムリーに適応するアジリティを持つ組織への変革を推進している。早坂さんが統括する基幹DX開発センターは、その変革を体現している。
基幹業務のDXでNEC自身の変革を進める

NECでは、自身をゼロ番目のクライアントとして最先端のテクノロジーを実践する「クライアントゼロ」の考え方のもと、まずは自社の課題に取り組んでいる。基幹業務のDXについても同様だ。
基幹システムに関するさまざまなプロジェクトを進めるなかでは大きな苦労もあったと早坂さんは話す。
「新しいテクノロジーを導入することは、一筋縄ではいきません。NECにはさまざまな事業があり商形態も多様なので、導入にむけ業務プロセスの標準化を進めることが大変でした。いまでもやりきれていない部分があります。業務をシステムに合わせることは必要ですが、無理に合わせると業務そのものをできなくなってしまう可能性もあります。
ただ、そのままにしてしまうと社内変革が進まないので、全体のバランスをとりながらうまく取りまとめるのが大変でした」
その課題に対し、早坂さんは現場の意見を聞きながら俯瞰して判断することでプロジェクトを進めているという。
基幹DX開発センターには約170名のメンバーが所属しており、その全員が技術者だ。だからこそ、スピーディーに取り組みを進められる。現在、チームにどのような人材を求めているのかを早坂さんに聞くと、「マネージメントをできる人」という答えが返ってきた。
「われわれは大規模システムの開発・保守を担当しているので、マネージメントできる人材は大事です。いまは新卒で入社してくる方の割合が多い状況ですが、経験を積んでキャリア入社してくれる方との割合を1対1にしたいと思っています」
基幹DX開発センターには新卒入社の割合が多く、育成には時間がかかる。しかし、プロジェクトは進んでいくため、多くの技術者をまとめるマネージメント人材が欠かせない。
生成AIを活用しさらなるデータドリブンへ

「基幹システムでSAPを使用している日本の企業は結構多いですが、カスタマイズをたくさんしてしまっていることが一般的です。そうすると、バージョンアップや環境を変える際にカスタマイズした分の修正とテストが必要になります。そこで、私たちは生成AIを活用した『クリーンコアアプローチ』を推進しています」
クリーンコアアプローチとは、ERPシステムの標準機能を最大限に活用し、カスタマイズを最小限に抑えることだ。NECでは、SAPをオンプレミスからクラウドに移行し、将来のシステム更新と運用コストの削減を目指している。クラウドへの移行とともに、生成AIを活用してクリーンコア化を促進し、運用効率を向上させていく取り組みに着手している。
このように、時代が変化していくにつれて、システム開発の方法も変化してきている。いまのNECでは、アジャイルに進めるケースが増えているという。
「昔はシステム開発する際には、上流で設計する人がいて、それをもとに開発をしていくという分業制でした。しかし、いまはスピードを求められるので、アジャイルに進めるケースが増えています。
プロジェクトはチームで取り組むので、垣根をつくらずに自分で考えてもらいたいです。それができていると、非常にうまくチーミングできていると感じます」
早坂さんが今後目指すのは、さらなるデータドリブン化だ。
「データドリブンをさらに進め、即座にデータを確認して判断できる環境をつくっていきたいです。すべてのデータをいつでも見られるようにしていきたいですね」
「データの民主化」により、経営層と従業員が同じデータを共有し、データを起点に迅速な意思決定とプロアクティブな対応をできるようにする。そうすることで、ビジネススピードが最大化される。その取り組みをNEC自身がゼロ番目のクライアントとして実践し、社内のDXを推進している。
