「ゴール」という言葉が、取材のなかで何度も出てきた。話をしてくれたのは、NECで基幹DX開発センター統括部長を務める早坂 佳已さん。社会人生活は40年近く、技術者としてもマネージャーとしても多くの経験を積んできた。そんな経験豊富な早坂さんに、テックチームマネージメントの最適解について話を聞いた。
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早坂 佳已さん プロフィール
日本電気株式会社 基幹DX開発センター統括部長。1987年に日本電気経営情報システム開発へ入社し、相模原事業場でレーザ装置の生産管理システムを担当。NECエレクトロニクスやNECライティングへの出向を経てNECへ転籍し、2022年より現職。
目次
時代に合ったコミュニケーションでゴールを共有する

早坂さんが統括する基幹DX開発センターには約170名のメンバーが所属しており、その全員が技術者だ。テックチームをマネージメントするうえで、意識していることはどのようなことなのだろうか。
「チームメンバー一人ひとりが個別に設定したゴールだけを見てしまうと、チームとして集まったときにうまくいきません。なので、広い意味でのゴールを共有することが重要です。
それに加えて、隣のチームや横の人たちとのコミュニケーションがしっかり取れる形をつくりながら、プロジェクトを進めています」
このように、ゴールの共有とコミュニケーションを取ることが重要だと早坂さんは話す。NECでは、リアルとリモートを最適に組み合わせるハイブリッドワークを定着させている。この働き方を「Smart Work 2.0」と呼び、働きがいの実感を高めていきながら、チーム力の最大化を目指している。
全社員を対象にサーベイを実施した結果、生産性向上やイノベーション創出のために「もっとリアルなコミュニケーションを増やしたい」という声もあったという。
そこで2024年3月から「働き方アップデート」を実施し、新しい働き方の指針を示した。それが「社員の健康をベースとし、戦略実行力を最大化するため40%(週2日)以上のFace to Faceの活用を前提にチームで働き方を定める」というものだ。
基幹DX開発センターでもFace to Faceの活用をしながら、オンラインも組み合わせたハイブリッドなコミュニケーションの方法を取っているという。
「オンライン会議ツールを活用したコミュニケーションもしていますが、それだけでは機微が伝わりません。ですので、出社して対面で会話する機会を設けています。テレワークのほうが向いている業務と、対面のほうが向いている業務がありますよね。
たとえば、個人でプログラミングするときはテレワークでいいのですが、課題について議論するときは対面のほうが向いていると思います。その使い分けをしていますね」
チームが集まることで、コミュニケーションの質や量、スピードが高まる。さらに深いコミュニケーションのために、定期的な1on1ミーティング(以下、1on1)もおこなっている。
NEC全体で1on1に力を入れており、従業員の約半数が月に1回以上実施しているそうだ。そのときに、事業戦略と1人ひとりの役割に応じた目標をすり合わせている。
早坂さんも直属のメンバー約10名と月に1回の1on1を実施し、ゴールの認識合わせをしている。そうすることで、お互いの認識のズレを防いでいるという。
俯瞰してゴールの方向をチームに伝える

働きがいを高めるカギはチームのなかにある。チームの一体感や連携を高めるうえで早坂さんが大事にしていることは、俯瞰したゴール設定だ。
「『個人ではできないことも、チームでなら実現できる』と感じてもらうことが重要です。すべての作業を1人で進めることはできません。分担をしながらつながりを意識し、少しくらい失敗したとしても、最終的にはゴールにたどり着けるようにすることが大事です」
別々のゴールへ向かってしまうと、チームはまとまらない。俯瞰してゴールの方向を伝えるのは、マネージャーの重要な役割だ。
基幹システムは多くの関係者が利用するため、さまざまな意見が寄せられる。なかにはネガティブな意見が届くこともあるというが、どのようにメンバーのモチベーションを維持しているのだろうか。
「改善できた数字や結果が見えるようになると、それまでネガティブな意見だったものがポジティブな意見に変わります。それこそがメンバーのモチベーションにつながります。ネガティブな意見だとしても使うユーザーの声が直接聞けることは、やりがいになると思うんです。自分たちの取り組みが結果として見えることは、モチベーションにつながるのではないでしょうか」
基幹システムについても、NEC自身をゼロ番目のクライアントとして最先端のテクノロジーを実践する「クライアントゼロ」の考え方のもと、改善が進められてきた。社内からの率直な意見を受けながら、活きた経験やノウハウを顧客へ提供できる仕組みになっている。
フィードバックが顧客への価値に変わることも、メンバーのモチベーションを支える1つの要因かもしれない。

任せるだけではなく、一緒にゴールを目指す
多様な人材が活躍するNECには、さまざまなタイプのマネージャーがいる。早坂さんはどのようなタイプなのだろうか。
「マネージャーには引っ張っていくタイプの方もいれば、寄り添う形のタイプの方もいます。私は部下たちと一緒にゴールを目指すタイプです。なので、みんなの考えていることを理解したうえで、動かないといけないと思っています。任せるだけでは、部下はついてきてくれません」
早坂さん自身がもともと技術者であったからこそ、技術者であるメンバーの考えを理解して動けるのだろう。これまで培ってきた経験が、マネージメントにも活きているのだろう。技術者だからこそ、技術者の特性も理解している。
「1人ひとりが自律したうえで、みんなでゴールを目指すことが大事です。それをマネージメントする人間がまとめていきます。これを意識しないと、バラバラになってしまいます。とくに技術者はバラバラになりやすい感覚を持っているので、リーダーは意識してまとめる必要があると思います」
技術者それぞれにこだわりがあるため、すべてを自由に任せるとバラバラになってしまう。そこでマネージメントをするには、技術者の考えを理解したうえで、うまくまとめていく知識や経験が欠かせない。
苦手なことにもチャレンジさせ、成長をうながす

どのプロジェクトに誰をアサインするかを考えることも、マネージャーの大事な仕事だ。早坂さんには、アサインを決める際に大事にしている考えがある。
「個人の特性を活かせるプロジェクトにアサインするのもいいとは思いますが、その先のことも考えます。必ずしも得意なことだけではなく、苦手なことも克服したほうが成長につながります。チャレンジして成長すれば1つ上のレベルの仕事ができるようになるので、そこは意識しています」
得意なことだけではなく、苦手なことにも挑戦することで、新しい気づきを得られることがある。いまだけではなく未来を意識し、1人ひとりに合ったアサインメントが必要となる。
NECでは人事制度の改革も進めている。最大の経営資源を「人」と位置づけ、組織と人材の力を最大限に活かすための制度改革や環境整備を進めてきた。多様な挑戦や成長機会の提供、フェアな評価など、挑戦する従業員がベストを尽くせる環境や風土の変革を進めている。
早坂さんのチームでも、HR方針に沿った目標設定と人事評価を実施している。
「全員のベクトルを合わせながら、少し上の目標を設定していますね。年初の段階で取り決めをします。もともと立てた目標に対して、実際の数値はどうなのかを確認し、事実に沿って評価をしています」
定量的な評価をおこなうことで、フェアな評価が可能になる。
NECグループには「NEC Way」という、全社共通で持つ価値観であり、行動の原点となる考え方がある。このNEC Wayがあるからこそ、多くの社員が在籍する巨大組織でも同じゴールに向かって進んでいけるのだろう。適切なゴール設定とそれをチームに共有することは、テックチームをマネージメントするうえで重要な要素の1つといえそうだ。
