2023年6月14日、15日に開催された『Developer eXperience Day 2023』。本記事では、2日目の基調講演「AI・クラウドの発展により、開発者体験はどう変わるか?」のようすをお届けします。

開発者を取り巻く環境の変化について、具体的なAIソリューション事例を交えながら、日本マイクロソフトの岡嵜禎氏に解説いただきました。

【スピーカー】
岡嵜禎氏
日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長大手システムインテグレーター、外資ベンダーのアーキテクト部隊の責任者を経て、2015年よりアマゾンウェブサービスジャパン合同会社の技術統括責任者として、エンタープライズ、インターネットサービス・スタートアップ、パートナーの技術部隊を統括。
2022年8月、日本マイクロソフトに入社し執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長に就任。コンサルタントとしてのバックグランドも活用し、技術だけでなく、経営的な視点で、クラウドやAI、IoT、メタバースといった最新技術をお客様へ啓蒙、浸透させていくための活動も推進している。

まったく新しいAIテクノロジーの台頭

日本マイクロソフトの岡嵜です。わたしからは、AIクラウドの発展によって開発者のまわりの世界がどのように変化するのか、お話をさせていただきます。

昨今「ジェネレーティブAI」というまったく新しいAIテクノロジーが台頭しております。開発者の皆さまもすごく関心を持って、日々こういった情報を拝見されているのではないかと思います。

1956年ごろから「人工知能」というものが言われ始め、1997年に「機械学習(マシンラーニング)」という形で、主にデータをベースにAIが判断をするアルゴリズムを作れるようになりました。2017年には「ディープラーニング」によって、画像認識や音声認識などの技術が発展しました。

そして2021年、人の会話のコンテキストを理解しながら文書や動画、音声コンテンツを生成する「ジェネレーティブAI」が登場。恐ろしくナチュラルな会話が成立するようになったことで、多くの方々に注目される形となりました。

ジェネレーティブAIの台頭は、インターネット、スマートフォン、クラウドといったものに匹敵する大きな変化を世の中にもたらすのではないかとも言われております。

マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは「Windows 95以来の革命になるのではないか」ということも言っていたりします。コマンドラインからGUIベースへの変革と同じように、ユーザー体験の劇的な変化が期待されております。

OpenAIの大規模言語モデル「GPT」においても、そういった進化が見られます。GPT-3の頃から人との対話と遜色ない返答が返ってくるようになり、GPT-4でさらに精度が上がり「これは本当にすごいぞ!」と話題になっているのが現状です。

比喩表現として、GPT-3は小学生高学年、GPT-4だと大学生レベルの知能を持っているとも言われています。

あらゆる分野で“AI”が劇的な変化をもたらす

ジェネレーティブAIの大きな特徴として挙げられるのが「さまざまな用途に使える汎用的なAIである」という点です。

これまでも同じような処理はできたのですが、ある特定領域の問題を解決するために膨大なデータ量や時間、コストが必要でした。ところが大規模言語モデルであれば、ある程度汎用的な処理であればそれほどコストをかけずとも、AIが対応してくれます。

大規模言語モデルは言語系ということで、様々な仕事のインターフェース、作業に適用されるため、ユースケースは無限大。あらゆるビジネス、インダストリ、ソリューションが今後劇的に変化していく。わたしたちはそのように考えております。

AIテクノロジーによって変わる働き方

「働き方」や「開発者の体験」も大きく変わっていきます。自分の仕事を代替えされるリスクを薄々感じている方々が居る一方で、非生産的な単一業務や反復作業をAIに任せて他のことに集中したいと感じている人たちも居ます。

 

情報量が膨大していく社会の中で、人の脳で処理することにだんだん限界を感じている、もしくはなんらかのストレスを感じているところがあるのではないかと思います。

 

マイクロソフトでは「Copilot(コパイロット)=副操縦士」と名付けたAIを搭載したアプリケーションを展開しています。一人ひとりに仕事の副操縦士を付けることで、タスクに集中できるよう適切なサポートを提供できる世界観をつくっていければと考えています。

一番わかりやすい例として「Microsoft 365 Copilot」の話をさせていただきます。たとえばWordやPowerPoint、Outlookであれば、文書の要約やスライドの発表者メモ、メール返信などを、既存の資料や過去のやりとりから自動で生成します。それにより、お客様への対応や社内のコミュニケーションスピードを加速させることができます。

中にあるMicrosoft Graphという仕組みで、過去に作った文書や人の関係などのデータを活用し、本人たちのパーソナライゼーションに合った形のカスタマイズでAIが機能するところが特徴になっています。

開発者を取り巻く環境の変化

開発者の領域でも大きな変化が見られます。生産性やコード品質の向上をしていきたい、ロジックに集中してもっとプロダクティビティを上げたい。開発者が取り組む課題は普遍的なものだと思います。

AIネイティブな開発ソリューションとして「GitHub Copilot」を提供しており、プログラムのコンテキストに応じてコードを自動生成することが可能になりました。統計として「開発スピードが約半分にできる」という結果も出ており、実際にエンジニアの開発生産性を劇的に向上する効果が得られるものになっております。

さらに、GPT-4を搭載した「GitHub Copilot X」では、より高度なことができるようになりました。テストコードの自動生成やチャット機能なども組み込まれており、「こんなプログラムを書きたい」と問いかけると、コードの提案をしてくれます。生産性を上げながら品質を上げられるのは、開発者にとってうれしいポイントですね。

Microsoft Buildにて「Copilot Stack」というフレームワークも発表させていただきました。開発者の方々が独自のCopilotのようなものを自分たちのアプリケーションや業務に組み込むためのもので、大きく3つのやり方があります。

まず、一番上のアプリケーションレイヤではプラグインによる拡張。真ん中のレイヤでは、プロンプトエンジニアリングを組み合わせながら拡張するAI orchestration。一番下のレイヤでは、Hugging Faceなど様々な言語モデルに自分たちのデータを組み合わせ、ファインチューニングするといったやり方があります。

各詳細については、すでに情報が出ておりますので、ぜひご参照ください。

The era of the AI Copilot | KEY02H

AIを安全に利用するために

AIを安全に利用していくためには、いくつか留意すべき点もございます。たとえば、回答として間違っているケースや倫理的な判断ができないケース、国民性による解釈の違いや情報の偏りなど、AIが社会へ与える影響を考慮する必要があります。

そういった影響を考慮した上で「責任あるAIの原則」をしっかり推進していくことが大事です。マイクロソフトでは「Content Safety」という機能も提供していますので、AI活用時の考え方のヒントになればと思っています。

AIの進化とともに変化する開発者の未来

AIの進化とともに、開発者の未来は大きく変化するというお話をさせていただきました。わたしがCTO協会の方々と付き合っていてすごく感銘を受けているのが、「日本のソフトウェアを世界で戦えるようにしたい」というメッセージを真剣に考えて取り組んでおられるところです。

ジェネレーティブAIの進化というのはそれを可能にします。言葉の壁を越えたり、エンジニア不足の壁を解消するような大きなチャンスですので、ぜひ今日ご参加の皆さんと一緒に、新しい世界を作っていければなと思っております。

以上となります。ご清聴ありがとうございました。


AIの発展によって様々なタスクが自動化され、生産性や開発者体験の向上が実現されていくようすがよく理解できました。わたしたちエンジニアも、適材適所で使えるものはうまく開発プロセスに組み込んでいき、より大事な仕事にフォーカスしていくといった変化への適応が求められますね。

これからの開発者体験がどう変わっていくのか、非常に楽しみです。

(文:星影

― presented by paiza

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