世界中に数多いる料理研究家の中で、唯一無二の名古屋めし料理家・Swindさん。料理家以外に、小説家・YouTuber、ライターなど、多彩な顔を持ちます。

Swindさんは、小説のネタや料理のレシピ、バズる動画などを、どのように生み出しているのでしょうか。

SE経験もあるSwindさんの、やはりどこか「SE的な発想」も見え隠れする7つのルールです。

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Swind(神凪唐州)さんプロフィール

名古屋めし料理家・小説家・ライター・YouTuber。名古屋生まれ名古屋育ち名古屋在住。「異世界駅舎の喫茶店」が第4回ネット小説大賞受賞作に選出され、2016年小説家としてデビュー。
小説、漫画原作、レシピ本、コラム、エッセイなどの執筆を中心にマルチに活動。これまでに開発した名古屋めしのレシピは300以上。
NHK「あさイチ」、フジテレビ「99人の壁」、日テレ「スッキリ」をはじめ、TV・ラジオ・その他メディア出演多数。

※文芸作品は「神凪唐州(かんなぎからす)」名義。このインタビューではSwindで統一。

Rule1:まずは、おもしろがってみる

まずは「おもしろがる」というのが、大前提です。自分が「おもしろがれない」ところで、いいアイデアは生まれません。

アイデアのタネはどこにでも転がっています。散歩する、スーパーに行く、食べ歩きをする、本を読む、テレビやネットを見る・・・あらゆるところに「おもしろい」のタネは落ちています。

それを「集める」というよりは「とりあえず、浴びる」ようにしています。その場ではサラッと見ていたことが、何かの折に「そういえば」と無意識の中から顔を出すと、おもしろいアイデアにつながることが多いのです。

Rule2:基本は「足し算」で考える

アイデアを生み出すときは、既存のモノの「足し算」、つまり「組み合わせ・付けくわえ・置きかえ」で考えます。

基本は、A + B、もしくはA + B + C。後者の場合、AとBは「既存の要素」で、Cに「A・Bとは異質の要素」を入れると、おもしろいアイデアになることが多いです。

(既存の要素  +  既存の要素 + 異質の要素)
「異世界 + グルメ(喫茶)」 + 「駅舎」
「レンジ料理 + カルボナーラ」 + 「きしめん」

全部「よくある要素」では面白さが足りないですが、全部「異質なもの」ばかりでも理解してもらうのは難しいです。この2+1がきれいにハマると、より多くの人に受け入れてもらえるのかなと思います。

Rule3:「因数分解」して考える

名古屋めしのそれぞれのレシピは、何をもって「名古屋めし」といえるのか?この根本的な部分を因数分解することで、「再現レシピ」を簡単に作れるようになります。

たとえば、「ある店の味を再現」する場合、お店の方にレシピを直接お伺いすることはそもそも難しいですし、お店のレシピそのままでは、材料や技術などの点で家庭で再現するのは困難です。そこで、自分でにおいをかぎ、味わってみて、「何が使われているだろう?」と推測して、自宅にある調味料の何と何を組み合わせれば代用できるかを考えています。

名古屋めしの定番「台湾ラーメン」の場合、「台湾ミンチ」と呼ばれる「ピリ辛のそぼろ」が味のポイントです。この台湾ミンチは、しょうゆなど、6種類の調味料が味のベースとなっています。

その6種類の調味料が入ったものを探して、「焼肉のタレ」と「食べるラー油」を組み合わせると、全部そろうことがわかりました。試しにこの二つを合わせてみると、かなり「本物の台湾ラーメン」に近い味が再現できます。

Rule4:本物を追求しすぎない

「再現レシピ」といっても、「本物のお店と同じ味」は目指しません。本物を食べたければ、お店に行けばいいと考えています。

お店の味を完全再現することよりも、自宅で手軽にできることを優先します。レシピ考案者としては、一人でも多くの人が「これなら自分でもできるかも」「やってみたい」と試してくれることの方が重要です。

洋食の定番「デミグラスソース」は、キチンと作ろうとすると、とても大変です。でも実は「ケチャップ」と「豆味噌(東海地方で作られている赤みそ)」を混ぜれば、「トマト」 + 「コク」が再現できます。

同じレシピでも調味料が違えば「違う味」になります。愛知県で主流のカゴメソースとコーミソースでそれぞれ同じレシピで焼きそばを作ってみると、味がまったく違って驚きます。カゴメはトマト感のある洋食風、コーミは丸みがあり和を感じさせる味わいです。

「おいしい」とは抽象的なモノです。わたしのレシピは、わたしにとっては100点の味ですが、他の人も100点だと感じるとは限りません。しかし、「誰が作っても80点」の味を目指しています。

Rule5:トレンドには「意匠」をつけて乗っかる

SNSでバズを起こすためには、トレンドは無視できません。しかし、ただ乗っかるのではなく、Swindならではの「意匠」をプラスして乗っかることを心がけています。

地元・愛知県瀬戸市の生んだスター・藤井聡太竜王。彼が対局時に食べる食事やおやつは毎回話題になります。

ひよこ形名古屋コーチンのプリン・ぴよりんのアイスを竜王が食べて話題になったときには、以前にぴよりんの店舗で期間限定で販売された「おうちぴよりんカレー」を再現しました。店舗では、黄色いライスはおそらくサフランかターメリックあたりで色付けされていると推察しましたが、わたしのレシピではどこの家庭にもある卵を使いました。

本場イタリア発、SNSで大流行した「暗殺者のパスタ」も、「暗殺者の鉄板イタリアン」にアレンジして「名古屋めし化」しました。

こうしたレシピの再現やアレンジは、イラストなどの「二次創作」に近い部分があるかもしれません。「創作」する中で、元のレシピやアイデアは尊重しつつ「名古屋めし化」していくことが、名古屋めし料理家としてオリジナリティを盛り込んでいくことであると考えています。

Rule6:アイデアは「とりあえず」アウトプットしておく

アイデアはそのままにしておくと、大抵忘れてしまいます。簡単でいいので、SNSに投稿したり、とりあえずお昼ごはんに一度作ってみたりすれば、絶対に忘れません。上記が面倒なときは、「メモを取る」「誰かにしゃべる」だけでも、記憶の中にとどまってくれます。

「口にしてみた」「作ってみた」記憶は、引き出しの中にしまわれて、もっとよいアイデアに昇華するときのために、奥の方でスタンバってくれています。記憶の「引き出しに入れる」ために、一度「外に出してみる」ことが重要なのです。

Rule7:トコトンおもしろがる

ルール1で、「おもしろがってみた」ネタの中で、「コレ!」というものを見つけたら、トコトンおもしろがって、のめり込みます。結局のところ「おもしろがらないところには何も生まれない」が実感です。

ただ「おもしろがる」のと「おもしろがってのめりこむ」には違いがあります。おもしろがってのめりこんでいると、そんな自分を「おもしろがる」人が現れるんです。

わたしは名古屋めしに関する、ヘンな投稿もしますが、それをおもしろがって突っ込んでくれる人とは、ベクトルが近いんです。ご縁あって一緒に仕事をさせていただいたことも何度もあります。感覚の近い方との仕事は楽しめるので、「おもしろがる」がますます加速します。

文芸のペンネーム「神凪唐州」の元になった名古屋市中区の老舗喫茶店「珈琲処カラス」さんでお話を伺った

 

「意識・無意識」両方でおもしろがること

Swindさんのアイデア創出のルール、ビジネスパーソンが企画を考える際にも、役立つヒントがいっぱいです。

今後、企画を考えるときには、筆者自身も試してみたいと思います。

(取材/文:陽菜ひよ子、撮影:宮田雄平)

― presented by paiza

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