国内IT業界の「多重下請け構造」に異を唱え続けてきたシンプレクスグループ。「Simplex Way」を掲げ、上流から下流まですべての工程に責任を持ち、一気通貫でソリューションを提供している。
30代の若さでシンプレクス株式会社(以下、シンプレクス)の執行役員に就任し、活躍を続ける佐藤 祐太さんに開発組織の強みを聞いた。
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佐藤 祐太さん
シンプレクス株式会社 執行役員。ITに強く将来性を感じ、そのなかでも金融業界で求められるテクノロジーレベルの高さにトライしようと、2008年に新卒でシンプレクスに入社。リーマンショック真っ只中のFXシステム運用保守メンバーからキャリアをスタートし、その後、開発リード、運用保守マネージャー、導入プロジェクトマネージャーを歴任。2022年4月、現場叩き上げでFX/暗号資産ビジネスの統括責任者として執行役員就任。2023年4月より範囲を広げ、証券系、Web3領域も含めたリテール金融ビジネス全体を管掌。
目次
「多少はみ出る」ことで、考え続ける意識を生む

連結従業員数が1,550名を超えるシンプレクスグループには、約800名のエンジニアが所属している。しかも、テクノロジーだけでなくビジネスに精通している人材が多い。その理由は「一気通貫モデル」にある。コンサルティングを手がけたプロジェクトチームが、システムを開発し、システム稼働後の運用保守、改善提案までのすべてを担っている。

「当社はインダストリーごとにチームを分けています。エンジニアのほかにマネージメントが得意なメンバーもいれば、コンサルティングが得意なメンバーもいます。ただし、チームでは自分の役割に固執していません。役割を完全に区切るわけではなく、それぞれが得意領域に応じて、濃淡をつけながら仕事をしています。
デザイナーはデザインだけではなくてフロントエンドの開発もしたり、場合によってはマネージャー自身が手を動かして開発したりすることもあります。このように『多少はみ出ていること』が重要です。それぞれが少しずつはみ出ているからこそ、そこをのりしろに、弱くなりがちな継ぎ目の部分を強くキープできますし、より効率的に進めるにはどうしたらいいかをつねに考え続けられます」
メンバーそれぞれができることを考え、多少はみ出る。プロジェクトを自分ごととして捉える姿勢は、顧客のビジネスを成功させるために必要な要素となる。佐藤さんがこれまでの経験のなかで、一気通貫を体現できた印象深いプロジェクトがあるという。自身がPMとして直接携わった最後のプロジェクトだ。
「私が入社10年目くらいのとき、別のプロジェクトでご一緒していた証券会社さまから、『新しいFXサービスを立ち上げたい』とご相談いただきました。システム要件のさらに前段階となるビジネスビジョンを考えるところからご一緒し、実行するかしないかを判断する稟議起案からお手伝いをさせてもらいました。
その後、稟議が承認されてプロジェクトの開始が決まった際には、すぐにお声がけいただき、私がPMとしてサービスローンチまで務めました。それだけでなく、ローンチ後もお客さまと一緒にグロースをしていくお手伝いもさせてもらいました。まさに一気通貫のシンプレクスらしいビジネスのあり方で、とても印象に残っています」
ビジネスコンサルティングからシステム開発、グロース施策までを実施したこのプロジェクトは、以前から付き合いのある顧客から依頼されたものだ。リピートオーダーをいかに獲得するかはビジネスにおいて重要な要素といえる。積み重ねてきた信頼が、次の依頼につながっているのだろう。
世界の金融ITサービス企業のランキングに13年連続でランクイン

佐藤さんは2008年にシンプレクスへ新卒入社した。当時はITの仕事やエンジニアといった職業が人気ではなかった。しかし、将来は主役になる場面が増えると考えたそうだ。IT業界のなかでもシンプレクスを選んだ理由について、佐藤さんは次のように話す。
「シンプレクスを選んだ理由は、金融機関のシステム構築をしていたからです。いまでこそ『FinTech』という言葉があり、少しメジャーなものになってきましたが、当時はそれほどでもありませんでした。
金融業界はITのなかでも非常に難しい領域です。難しいからこそ付加価値が高いと思っていましたし、自分の成長にもつながるし、それは給与にも反映されるだろうと考えて入社しました。金融業界の仕事で学んだ突き詰める力を金融以外の領域で応用していけば、もっと日本をよくできると考え、取り組んでいます。突き詰めることに関しては、油断せずにやり続けていますね」
難しい金融業界のシステム開発を経験できるため、自分自身も価値の高いエンジニアになれると考えた佐藤さん。金融業界の難しさは、非機能要件に求められるレベルの高さにあるという。
「金融システムは、レイテンシーや可用性、セキュリティといった非機能要件に対する意識が非常に高いです。だからこそ、金融以外の領域で仕事をする際にも非機能要件をしっかり考えられるようになります。アーキテクチャとしてどうするかといったところから考えられるのは、当社エンジニアの強みです。
金融システムにはレガシーなイメージが一部では持たれているかもしれません。でも、大事なものについてはしっかりと維持しながら、新しいものをどう取り入れていくかを考え続けているんです。最近ですとクラウドを活用していますし、少しでも付加価値の高い安全なものをお客さまに届けたいと思っています。こうしたことを考え続けられることも、エンジニアとしてはおもしろいと思っています」
毎年、金融サービス企業のIDC Financial Insightsが発表する「IDC FinTech Rankings」という世界の金融ITサービス企業のランキングがある。そのなかでシンプレクスは「IDC FinTech Rankings 2024 Top 100」にランクイン。13年連続でのランクインとなり、金融業界での強さが明らかになっている。
開発組織を支える教育とキャリアパス

シンプレクスでは、エンジニア以外にもPMやデザイナー、コンサルタントなどがプロジェクトチームとしてコミットする。そのなかでもPMは、クライアントにイノベーションを提供する最終責任者と位置づけられている。開発組織の要ともいえるPMには、どのような能力が求められ、その能力をどのように育てているのだろうか。
「PMにはビジネスの現場で必要なものを必要に応じて、自ら学んでもらいます。研修制度も整ってきてはいますが、あくまで補強材という考えになります。お客さまから求められている能力を嗅ぎ分けて勉強したり、業務のなかでキャッチアップしたりすることが大事です。『PMBOK』に沿ってもいいし、自分のやり方でも構いません。とにかくPMはプロジェクトを成功させることが求められます」
PMをどのプロジェクトにアサインするかは現場判断のみではなく、リソースマネジメントディビジョンと経営層、そして各種キーテクノロジーごとに選抜されたコンピテンシーリーダーによって協議のうえ決められる。
シンプレクスにはPM以外にも、ビジネスとテクノロジーに精通したハイブリッド人材が多く在籍している。しかし、最初から双方に精通している人材はほとんどいない。ハイブリッド人材を育てるためには、育成が必要になる。
「メンバーをアサインする際に、このプロジェクトではビジネスとテクノロジーのどちらを伸ばそうか意識しています。ビジネス側に偏っている場合には開発側を経験してもらうなど、先のキャリアビジョンを意識しながらプロジェクトへアサインしていますね。ただし、ハイブリッド人材だけではなく、特定の分野に特化した人材も受容しています。場合によっては、執行役員よりも給料の高いスーパーアーキテクトもいるくらいです」
保有する強みをもとに、既成概念にとらわれない、多彩なキャリアも用意されている。それが開発組織の強さにもつながっているのだろう。
キャリア採用でカルチャーがマッチすることを重視する理由

組織を成長させるうえで、採用活動も重要だ。シンプレクスでは、毎年多くのキャリア採用と新卒採用をおこなっている。キャリア採用は年間150人、新卒採用は年間300人を目標としている。採用活動の際、どのようなポイントを確認しているのだろうか。
「キャリア採用に関しては、カルチャーがマッチしそうかどうかを意識しています。たとえば、分業制で開発部分だけを仕様書にもとづいて担当していた場合、そのマインドのままだと本人もしんどいはずです。キャリアとしてはまだこれからだけれど、開発だけではなくビジネスを考えながら仕事をしていきたいという方はマッチすると思います。カルチャーさえマッチすれば、入社してからキャッチアップ可能です。まだやったことのないなにかを求めている方のほうがマッチすると思います。
新卒採用に関しても、キャリア採用と基本的な方向性は変わりません。あまり学部や研究内容は気にしていないです。システムを使ってなにをやりたいのかを見通せている方は、モチベーションが維持されて、成長し続けられる期待が持てます」
明確な時期は定めていないが、2030年代初頭に売上1,000億円を目指しているシンプレクス。取り組むプロジェクト数が増えるなかで開発組織を発展させていくために、人材育成はどのように進めていこうと考えているのか聞いた。
「同じような案件をずっと担当しているエンジニアも多いと思いますが、それではなかなか成長しません。やること自体を少し変えたり、担当する領域を少し広げたりするなど、なにか変化がないと伸びないと思います。とはいえ、エンジニアをコンサルタントとしていきなりアサインするのは難しいですよね。当社では濃淡をつけたアサインができます。少しずつはみ出して、自分のキャリアを少しずつ変えていったり広げていったりしやすい環境です」
シンプレクスでは、新しくサービスを立ち上げる開発プロジェクトの場合には、専属としてそのプロジェクトにアサインされることが多いという。集中して1つのプロジェクトに取り組める環境がある。
「いまやっていることが繰り返しになってしまっていて、この先どうしたらいいのかわからない。なにかチャレンジしたいけれど、その土壌がない。そういった方に当社への興味を持ってほしいです。当社では、定められたキャリアロードマップはありません。もともとエンジニアでもマネージャーやコンサルタントになることもあります。一方で、エンジニアとして深みまで到達するキャリアもあります。私自身もこれからのキャリアが決まってしまっているとは、まったく思っていません。機会があれば、もう一度エンジニアに戻って開発してみたいとも思っています。それだけチャレンジ機会がある環境です」
多重下請け構造を採用していない、数少ない企業の1つであるシンプレクス。ビジネスとテクノロジーに精通した開発組織が、日本発のイノベーションを世界へ向けて発信してくれるだろう。
