山荷葉(サンカヨウ)という花がある。水分を含むと花びらが透明になり神秘的だが、その仕組みは明確には解明されていないという。
Smart相談室 三浦麻友子氏。
法人向けオンライン相談窓口「Smart相談室」で、Corporate統括責任者として人事や広報、カウンセラー管理を務める彼女の人生には、山も谷もあった。しかしその結果、今は神秘的な輝きを放つ。
自分自身の経験・体験のその先で、Smart相談室を通して心の健全化に務める彼女の思いに迫った。
目次
3つの仕事に当たる
三浦氏はSmart相談室のコーポレート部門でマネジメントをしている。
「大きく3つの業務があって、HRオフィスという人事に当たるもの、そして広報、最後にカウンセラー事務局です。プレイヤー兼マネジメントとして仕事に当たっています」
人事としては、正社員雇用からカウンセラーの採用、制度設計、労務設計などをおこなう。
広報としては、数名のメンバーとともに外部メディアへのアタックから社内メディア(note)の運用まで幅広くおこなう。
カウンセラー事務局としては、180名近いカウンセラーのマネジメントや研修の企画立案、イベント企画などをおこなう。
文章で整理すると幅広い業務内容に驚くが、その笑顔には仕事の充実さが垣間見える。
三浦氏のライフサイクル
いざ仕事にかかると忙しないのは間違いないだろうが、どこか表情と心にゆとりが感じられる。三浦氏の日々のライフスタイルを伺うと、なるほどという答えだった。
「朝結構ゆっくりなんですけど、週に半分ぐらいはヨガに行っています。ヨガの日は7時半からレッスンがあるので、まずそれに行きます。
その後、10時くらいから仕事に入り午前は作業をすることが多いですね。で、お昼から出社して午後は打ち合わせやカウンセラーの面談をすることが多いですね」
なお、三浦氏は現在大学に通われており、21時から2時間ほど授業や勉強があるそうだ。忙しない日々ではあるが、落ち着いてからの時間はNetflixを観ると聞き、緩急バランスの取れた素敵なライフサイクルだなと思った。
ふと疑問が湧いた。忙しない仕事の中では一週間でどのくらいの人とコミュニケーションを取るのだろうか。
「1週間を振り返ると50人以上くらい、100人近くの方とコミュニケーションを取っています。闇雲に話をするのではなく、人数は抑えてしっかりと対話するようにしています」
取材をしながら親しみやすさと裏腹に隙がないとも思ったので、不躾ながら欠点はあるのか伺ってみた。
「直感型なんですよね。中長期的な計画を立てて進めるのがあまり得意ではないです。今どう動いたらよいかなど、感覚に頼っては動けるんですけど、計画性がないなと……」
逆に言うと鈍感過ぎないことと感じたので、直感型なのは三浦氏の短所であり長所なのだろう。
「CEOの藤田にもそこは長所だと言われていますね。思った通りのことをやると、結構成功してくるというか、いい流れになりますね」
親しみ抜群のSmart相談室CEOの藤田康男氏だが、コミュニケーションも密に取っているようだ。
「あえて時間をもらうことが多いです。
社員たちとも、ちょっと話をしようみたいな感じで話させてもらったり、あと誰かいたらお茶行こうみたいな感じで引っ張り出したり。
コミュニケーション施策でお隣さんランチというのがあって、他部署とかリーダークラスの人とメンバークラスの斜めの関係も作っています」
心を病んでしまったフリーランス時代
三浦氏はフリーランスとして働く最中、メンタル不調を起こしてしまった。
仕事の不安定さや、家庭不和などで限界を迎えてしまい、秋田県の実家に一時帰ることとなった。
メンタル不調を経験し、そこから復帰されたからこそ、三浦氏にそのとき感じたシグナルについて伺った。
「朝起きられないことが増えました。月曜日を迎えると苦しいなと思ったり、電車に乗るのがしんどくなったりしてしまったなと。
いつもダルくて切羽詰まっている感じがありました。誰かに責められているわけでもないのに、自分を責めてしまうような思考になっていました。
それがふとした瞬間ではなく、ずっと続くような感覚がありました。何か大きなトリガーがあったわけではなく、小さなマイナス要素が重なって悪循環に陥ってしまう感じでしたね」
三浦氏が限界を迎え秋田に一時帰ったのは12月のこと。そこから再び東京に戻り仕事ができるようになるまで、10か月の月日が必要だった。
心身の回復を少しずつ自覚できるようになった過程で、三浦氏は何度か東京に来るようになっていた。
その後、医師の診断と自身の大丈夫という気持ちから再び東京で暮らし始め、仕事も再開した。ともに歩んでいた家族とは関係を解消し、文字通り1から再び歩み始めた。
では、なぜ三浦氏は再び東京を選んだのだろうか。
「一緒にお仕事をしてくださる方が、東京でオフィスを立ち上げるという話が出て。そこのお仕事が大変魅力的でこれはご縁を大事にしたいなと思いました。また東京の空気感というか、そこで再び仕事をしたいという思いもありました」
限界まで追い込まれてしまうと非常につらい思いをしてしまう。そういう人を一人でも減らすために、早め早めにカウンセリングを受けられるのがSmart相談室なわけだ。
Smart相談室で働くまで
Smart相談室との出会いは、キャリアSNS「YOUTRUST」を通して、CEOの藤田氏から連絡があった。
「コンセプトを聞いたとき、すごいビビビっときました。そうそう、これ私がやるべきことと心から思ったんですね。
その後にカウンセラーの選考を受けて合格をいただきました。そのときは別のお仕事をしながら、副業としてカウンセリングで携わらせていただいたという形です」
カウンセラーのキャリアを歩み始めた三浦氏は、その立場の経験を重ね、やり甲斐を感じていく。
「普通ならば相談をしないようなこと、お金を払って相談をしたことないような人が、私のところに来てくださって、初めて人に話をしますってことを打ち明けてくださいました。
カウセリングの最初は、抱える苦しみをボソボソと話してくださることが多いです。そこから徐々に心のうちを開いてくださることが多く、最終的にすっきりした顔で感謝の気持ちを伝えてくださる」
自ら経験した負の連鎖を、今度は自分たちのカウンセリングで断ち切り、心を救う。それをダイレクトにできる仕事のやりがいは格別だ。そしてキャリアSNS「YOUTRUST」の転職意向項目を一段引き上げた。すると、再び藤田氏から声掛けがあった。
「ポジションはまだないんだけど、とりあえず何か話したいから話しましょう!みたいな感じで」
藤田氏は、行動の裏に潜む気持ちを汲み取る天才なのかもしれない。藤田氏のそういった長所と三浦氏のさらにSmart相談室へコミットしたいと思う気持ちは、偶然ではなく出会うべく必然だったのかもしれない。
Smart相談室をどう広げていくか
Smart相談室の仕事を通して充実の日々を送る三浦氏に、このサービスをどう広げていくのかを伺った。
「まず一回相談してみてって、そう思っています」
その言葉と瞳に迷いは感じなかった。
「多くの方が、自分の中で気持ちをなんとか処理しようとしがちです。我慢すればそのうち良くなったり、過ぎ去ると思ったり。
私自身も、自分の気持ちをぎゅーっとお腹の下に押し込めていたんですね。それで我慢が限界に達してバーンって爆発してメンタル不調になってしまったんです。
そういう思いの人を本当に減らしたいんです」
人間は誰しもが悩む。
キャリアに悩む人には棚卸しして心を軽くしてから自分の人生を再び歩んでほしい。
また、女性のキャリアで悩む方や介護、育児との両立に悩む方も多いそうで、そういった方の心も救っていきたいと三浦氏は思いを語ってくれた。
「自分自身と向き合う時間をつくって、納得をして再び歩み始める。そういう世界観が広がっていってほしいなって思っています」
嬉しかったこと
最後に、ある相談のエピソードを打ち明けてくれた。そこまで辛そうではない雰囲気で始まったカウンセリングだったが、繰り返される中であることが明かされた。
「1回目のカウンセリングの際、かなりメンタルがきつかったと打ち明けてくださいました。誰にも言えなかったけれど、最初は間接的、慣れてくると直接的に悩みを打ち明けられて救われたと。その言葉にグッときましたね。
誰にも見せなかった、誰にも言えなかったことを言っていただけた。私はあのときに本当にカウンセラーになって良かったと思いました」
Smart相談室は、心がつらい方のためだけのサービスではなく、そうなるのを防ぐためのカウンセリングサービスでもある。小さな悩みの種に芽が出る前に積極的に利用をしてほしいというのが三浦氏、そしてSmart相談室に携わるメンバーの総意だ。
「本当に小さなことからでも、雑談からでも話して、吐き出してほしいです。仕事のパフォーマンスも、プライベートも明るくなってくれる人が増えたらなって」
取材後記
つらい体験からSmart相談室への思い、利用者への思いまで包み隠さず心の言葉で語ってくれた三浦氏。
偶然か必然か、曇天の六本木一丁目で始まった取材は、辛かった話を伺ったのを境に陽の光を覗かせ、夕日がオフィスへと差し込んだ。
Smart相談室が目指すのは、人の心のこれなのだろう。
曇天や雨模様の心が、カウンセリングをきっかけに一筋の光が差し込む。やがて青天へと移り変わる。
私自身も心に何かしらの雲がかかっているかもしれない。自認していない部分もあるが、そうだからこそ、カウンセリングを受けてみたいなと取材を終えた今思っている。
三浦氏のこれからのSmart相談室での挑戦が楽しみで仕方ない。
なお、冒頭で紹介した山荷葉(サンカヨウ)の花言葉を紹介して取材を閉じるとする。
「親愛」「親愛の情」「清楚な人」
(取材/文:柳下修平、撮影:渡会春加)