私は普段、本業を持ちながら5社で仕事をする「パラレルキャリア」を実践しています。パラレルキャリアというのは、経営学者のピーター・ドラッカーが約20年前「明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命」(1999年/ダイヤモンド社)などで提唱した働き方で、「本業と平行して複数の仕事やボランティア活動をすること」を意味します。
トヨタ自動車・豊田章男氏の「終身雇用を守っていくのは難しい」という発言や、サントリー・新浪剛史氏の「45歳定年制」の提言などがあり、将来に不安を抱く会社員の方が多いのではないでしょうか。しかし事実として、時代の変化によって働き方が変わっているのは間違いありません。
将来の見通しが立たないなか、不安を払しょくするためにもパラレルキャリアは1つの選択肢になると思います。
目次
なぜパラレルキャリアをはじめたのか
私は2021年からパラレルキャリアをはじめています。本業で培った経験を他の企業でも試してみたいと思ったことが、はじめたきっかけです。収入を増やしたいという気持ちもありました。
前提として、私が所属する企業ではパラレルキャリアを推奨しており、実践しやすい環境があります。それに加えて、非常に大きかったのが「リモートワークの普及」です。コロナ禍の影響で、多くの企業でリモート化が進みました。ZoomやSlackなどを導入する企業が増えたことで、場所を選ばずに働けるようになりました。
実際に私がパラレルキャリアで働いているのは、すべてリモートワーク可能な企業です。
大事なのはパラレルキャリア先の決め方
パラレルキャリアを実践するうえで大事なのは、「パラレルキャリア先の決め方」です。
私の場合、パラレルキャリアは本業の業務時間外におこなうので、タイムマネジメントが重要となります。対策として、パラレルキャリア先での業務範囲をしっかりと決めて合意しています。業務範囲を決めずに何でも引き受けてしまうと、時間が足りなくなってしまいますから。
また、先ほど書いたように「リモートワーク可能な企業」に絞って探しました。通勤時間がもったいないので。
業務範囲を決める際に参考にしたのが、小島英揮さんの著書『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』(日本実業出版社)に書かれていた内容でした。小島さんはAWS(=Amazon Web Services)のユーザーコミュニティを立ち上げた方です。独立後はパラレルマーケターとして、さまざまな企業のマーケティングに関わっています。
本のなかで、パラレルキャリア先を3つのレイヤーに分けて「自分の時間」がボトルネックになるのを防止すると書かれています。
【小島さんによる3つのレイヤー】
- 代走・・・プラン+実行
- 伴走・・・プラン+実行管理
- コーチ・・・プランと実行へのアドバイス
私はこれを自分の業務に落とし込み、4つのレイヤーに分けました。自分のリソースを考えたうえで、それぞれのレイヤーごとに受ける上限数を決めています。
【自分の業務に落とし込んだ4つのレイヤー(上から順にリソースが必要な仕事)】
- オウンドメディア立ち上げ・運営実行(上限数:1社)
- オウンドメディア運営管理(上限数:1社)
- オウンドメディア運営アドバイス(上限数:2社)
- コンテンツ制作(上限数:3社)
セルフマネジメント法1. 便利ツールを活用する
便利なツールのおかげで生産性が爆上がりです。
これからの時代は、便利ツールをいかに活用できるかによって仕事の幅が決まると思います。最近では『ChatGPT』や『Stable Diffusion』などのAIツールが話題です。こうしたツールが当たり前に活用される時代になってきたので、乗り遅れないようにしていきたいです。

私が活用しているツールと使用用途は次のとおりです。便利なツールばかりですので、使ったことのない方は、ぜひ試してみてください。
使用ツール | 使用用途 |
Slack | テキストでのやり取り |
Zoom | オンライン打ち合わせ |
Notion | タスク管理 |
Misoca | 請求書作成 |
弥生オンライン | 確定申告 |
Googleドキュメント | 文書作成 |
Googleドライブ | データ保存 |
文賢 | 校正・校閲 |
GRC | SEO |
Canva | 画像制作 |
TimeRex | 日程調整 |
セルフマネジメント法2. お金で解決できることはお金で解決する
以前、8社でパラレルキャリアを実践している方にお話をうかがったことがあります。その方にパラレルキャリアを実践するテクニックを聞いたところ、「自分以外でもできることは、お金を払って外注している」と教えてくれました。
「なるほど。たしかにすべてを自分でやる必要はないな」と納得したのを覚えています。その話を聞いてから、自分以外でもできることは積極的に外注するようにしています。
たとえば、取材記事の制作。インタビューや文章を書くのは自分でやるとしても、録音データの文字起こしはお金を払って外注する。私の場合、1時間の録音データを文字起こしするのに3時間はかかるので、その時間と労力をお金で買うわけです。空いた時間に別の仕事をします。
パラレルキャリア先との契約によっては、再委託を禁止されている場合があるので注意が必要ですが、問題ない場合は外注を活用しています。
パラレルキャリアを実践してよかったこと
1社だけで仕事をしているときは、「突然クビにされたらどうしよう」といった不安が漠然とありました。会社員の方は、みんな同じ気持ちを持っているのではないでしょうか?
パラレルキャリアを実践することで、将来の不安がだいぶ減りました。「クビになっても何とか食べていける」という自信につながったのです。心に余裕を持てたことで、本業でも自分の意見をしっかりと言えるようになった気がします。
人間関係も広がり、新しい仕事につながることもあります。以前は仕事を獲得するために営業活動をしていましたが、最近では知り合いからの紹介で仕事が決まることがほとんどです。
あと、収入が増えたのはシンプルにうれしいです。貯金できるお金も増えたので、将来の不安が少し解消されました。
パラレルキャリアを実践してみてデメリットに感じることは、いまのところありません。「休みが減りそう」という声もありそうですが、そこはセルフマネジメントでなんとかなります。というか、なんとかしましょう。
時代は変化しています。昔は終身雇用が当たり前で、パラレルキャリアという考え方も浸透していませんでした。不安定な世の中なので、自分や家族を守るためにもさまざまなことにチャレンジし続ける必要があると思っています。
(文:川崎博則)