「これから、何を学べばよいのだろうか? 」

AIやIoTといったテクノロジーの急速な進化により、ビジネスのあり方や求められるスキルが次々と変わる時代。第一線で働き続けるためには、必要に応じてスキルを身につけていかねばならない。

それはわかる。肌で感じる。

では、具体的に何を学べばよいのか? 

たとえば、仕事で必要なツールが変われば、使い方を学ぶ。ビジネスパーソンとして当たり前のことだ。そういうことではなく、すこし先を見据えて、自分がどんなスキルを今身につければキャリアに生かせるのか? そこが決められない。興味のあることを学びたい。収入を増やしたい。こんな思いが頭のなかをグルグル回っている。

学びにおいて重要なのは、興味だと思う。興味がなければ「学びたい」という意欲がわいてこないし、続けるのもしんどくなってくる。やっかいなのは興味があることを学べば、キャリアアップできたり、収入が増えたりするわけではないということだ。市場で求められているスキルを身につけなければ、リターンは望めない。わたしは、興味と市場の折り合いをつけられないでいる。

「何を学べばよいのかわからない」という問いに対して、「AI時代を生き抜くということ 〜ChatGPTとリスキリング〜(著・石角友愛)」には、次のように書かれている。

“「学びの迷子」になってしまう理由は、自分がもともと持っているスキルを評価できていないことも一因です(P77)”

リスキリングは、足し算ではなく、掛け算で考えるべき。今持っているスキル(ドメインスキル)に掛け合わせることで相乗効果を生むスキル(スパイクスキル)を選べば、リスキリング後の効果が2倍、3倍になります」と、著者は言う。

つまり、「何を学べばよいか」のヒントは、今の自分のスキルに隠されているということだ。「自分の強みを生かす」という方針があれば、的を絞りやすくなる。

“「今いる自分の場所から未来を見たときに、最大限のリターンが得られるような選択肢は何だろうか」と、客観的に考えるのが大事です。(P64)“

“自分の強みと、今後市場で必要とされそうなスキルを把握して、いろいろな掛け算を考えるのも楽しさのひとつではないかと思います。(P131)”

わたしの場合は、編集の仕事を16年やってきたので「編集・ライティング」がドメインスキルになる。これに何を掛け合わせれば、相乗効果が生まれるか? まず、IT・テクノロジーの分野は外せないだろう。そのほか、健康・ウェルネス、キャリア、マネーといった普遍的なテーマも押さえておきたい。また、プロジェクトマネジメントやマーケティングなどのスキルも相性がよいのではないかと思う。このように、市場を意識しながらいろいろな掛け算を楽しむなかで、興味のあるものを掘り下げていけばよいのだ。

これから求められるのは「π型人材」と言われている。これは、2つ以上の専門分野を持ち、それをつないで相乗効果を発揮できる幅広い知見を持っている人材のことだ。本書では、学びの継続によって成長していくπ型人材を「π型人材2.0」と定義。そうした人材になるためのリスキリング方法を詳しく解説している。

また、本書のユニークなところは、ドメインスキルの棚卸しやスパイクスキルの提案にChatGPTを利用しているところだ。そのためのプロンプトも紹介されているので、ChatGPTと壁打ちしながら、これから学ぶべきことを適宜検討できる。おもしろいから、やってみてほしい。

学びの選択に慎重になる理由は、ほかにもある。それは「時間を無駄にしたくない」ということ。けれども、無駄なことをしなければ、わからないこともある。元プロ野球選手のイチロー氏も「遠回りすることが、一番の近道」と言っている。だから、あまり慎重になりすぎるのもよくない。考えた結果、確信が持てるまで動かないよりは、見切り発車でもいいのでやってみたほうが、時間の使い方としては有効ではないだろうか。大切なのは、思考と行動をやめないことだ。続けていれば必ずどこかのタイミングで道は開ける。

夕方、散歩に出かけると、橙から藍へとゆるやかなグラデーションが空を染めていた。

そこに、明確な境界線はない。

(文:コクブサトシ

presented by paiza

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