運とは、なにか?

これまで、そんな疑問を持ったことはありませんでした。というのも、運は人の力ではどうにもできない「偶然の出来事」だと思っていたからです。ところが、最近になって運に興味が湧いてきました。

わたしは、40代のライターです。16年勤めた会社を2022年に退職し、現在はフリーランスで活動しています。

退職を決めて動き出した途端、自分の行動が幸運につながったと思えるようなことがあったのです。「運も実力のうち」という言葉があるように、運には偶然だけではないなにかがあるように感じます。

そんなとき、手に取ったのが『運の方程式(著・鈴木 祐)』です。著者は「近年では、運を科学の視点から見た研究が進み、よい偶然を引き寄せる方法がわかってきた」と言います。もし、そんな方法があるのならば、その知見を使わない手はありません。

本書では、運をつかむための方程式を「幸運=(行動×多様+察知)×回復」と定義。人生を“運ゲー”にたとえて、攻略に必要なスキル(行動力、察知力、継続力、回復力)を鍛える方法を紹介しています。

ここでは、幸運を呼び込むための基礎体力とも言える「行動力」に着目してみたいと思います。

動いた人ほど、成功に近づく

これまでに、何度か挑戦をすることで成功した経験はないでしょうか? 

わたしが“パッ”と思いついたのは、小学生のころの話。はじめて一輪車にまたがったときは、「こんな不安定なものに、乗れるはずがない」と思いました。でも、何度も練習をくり返すうちに、いつの間にか校庭を一周できるようになったのです。

著者は「人生の幸運は試行回数で決まる」というフレーズの正しさを、簡単な計算で裏付けています。

“あなたが、成功率が1%しかない難しい仕事に挑んだとしましょう。1回のチャレンジではまず成功など見込めない数字ですが、もし失敗したとしても、試行回数を増やすごとに確率が少しずつ変わります。具体的には、2回めの試行で成功率は約2%に増加(99%×99%=98.01%)。(中略)459回めで99%にまで達します。(P30)”

仕事、スポーツ、趣味などの場面で、みなさんも思い当たることがあるのではないでしょうか。

チャレンジのバリエーションを増やす

いくら試行回数が大事だといっても、シンプルな試行回数だけでは「人生の成功には結びつきにくい」と著者は言います。

“昨日は通じたスキルや知識が明日には陳腐化する現代において、多彩な体験が役に立つのは当然の話。私たちは、ともすればひとつのことに打ち込む人を持ち上げがちですが、試行回数の作用を十分に活かすには、同じことをくり返すのではなく、チャレンジのバリエーションも増やさねばならないのです。(P34)”

ここで思い出したのは、就職活動中のこと。わたしは広告業界への就職を希望していたのですが、当時は就職氷河期で、クリエイティブ職の新卒採用はほとんどありませんでした。求人誌を見て「実務経験3年以上」という採用条件を見るたびに、気持ちが落ち込む日々。とりあえず片っ端から履歴書を送り、運よく面接にこぎ着けても、即戦力にならないため採用には至りませんでした。

「このままではダメだ」と思い、作戦を変えることに。社員採用を諦めて、アルバイト採用を探しはじめました。なんとか業界に入り込んで、実務経験を積もうと考えたのです。すると、幸運にもMacオペレーターのアルバイトを発見。そこで1年間働いたことがきっかけとなり、その後広告制作会社、編集プロダクションでキャリアを積むことができました。行き先は変えずに、進む道を変えたら、遠回りにはなりましたが、道が開けたのです。

行動のバリエーションを増やす手かがりとして、本書は「好奇心」を挙げています。ある研究の結果から天才たちはみな、好奇心にあふれていたということがわかっています。

“好奇心と天才が結びつく点には、なんら不思議はありません。なんにでも興味を持って取り組めば、それだけ幅広い経験を得ることができ、難しい問題への応用力も高まります。ジャンルを超えた知識が身につくおかげで思いもよらない情報が結びつき、斬新な思考や表現が生まれる確率も上がるでしょう。(P50)”

わたしたちが幸運を得るためには、はじめに試行回数を上げてチャレンジの総量を増やしつつ、複数のものごとに手を広げて多様性を広げていく必要があるのです。

「新しい人」に好奇心を向ける

好奇心の対象は、仕事、趣味、アイデアなど、いくつもあります。なかでも重要なのは「新しい人」です。

“運をつかむために人間関係が欠かせないのは、深く考えずともおわかりいただけるでしょう。旧友から思わぬ情報が手に入ったり、飲み会の出会いが新たな仕事に結びついたりと、予期せぬ幸運の大半は他者からもたらされるからです。(P75)”

これには、大きくうなずきました。わたしは友人に、退職前から今後のキャリアについて考えていることを話していました。すると、その友人が「いい講座があるから参加してみては?」と提案してくれたのです。その講座は1年に1回しか開かれておらず、タイミングよくこれから募集するところだったので、これもなにかの縁と思って受講しました。

この講座では、ライターとしてのノウハウを学んだのはもちろんなのですが、なんといっても大きな収穫だったのは「人とのつながり」です。全国各地で活躍されている方々と知り合うことができ、その後も交流が続いています。フリーライターは、普段ひとりで作業をしていますので、思いのほか孤独な職業なのです。そんなとき、同じように頑張っている仲間とSNSなどでつながっているのは心強いものです。そこから仕事につながったケースもあります。

また、本書にはこうもあります。

“同じ趣味、似た思考、近い知識の者ばかりが寄り合っていたら、あなたの世界はそれ以上広がりません。重要なのは、あくまでも深さよりも広さのあるネットワークです。(P80)”

成功者は、特定の人とのつながりは薄く、多様な社会的ネットワークを持っているようです。

好奇心やコミュニケーション力は養える

好奇心にしたがって行動し、多様な人とつながることは、簡単ではないように思います。わたしは好奇心旺盛ではありませんし、初対面の人と話すのも得意ではありません。こういった性格は、簡単には変えられないのではないでしょうか。

しかし、著者は「気落ちする必要はない」と言います。好奇心やコミュ力を養う最大のポイントは、次の言葉に集約されるとのこと。

「うまくいくまで、うまくいっているふりをせよ(Fake it till you make it.)」
もし何者かに生まれ変わりたいと思うなら、その人物の思考と行動をまねすることで、やがて思い描いたとおりの人間になれる(P57)”

昔からよく言われている「仕事は見て学べ」に通じるものがあります。これは、最近の研究で仕事やスポーツだけでなく、人の性格にも影響することがわかってきました。つまり、好奇心を備えた人やコミュ力の高い人のまねを続ければOKということです。

“この作業を何度もくり返すことで、少しずつ脳に新たな神経パターンが刷り込まれ、やがてあなたの内側に異なるパーソナリティが根づきます。(P59)”

友人や知人のなかで、ロールモデルになりそうな人の思考や行動を挙げてみます。

  • 自分が興味のあることを、人に伝えている
  • 言葉にしたことは、実現すると信じている
  • ネガティブな発言をしない
  • 自分のことを運がいいと思っている
  • 気づきをメモしている

こんなふうに考えると、やろうと思えばできそうなことばかり。難しく考える必要はなさそうです。

多様な行動を増やして、幸運を呼び込もう

これからのキャリアを考えるにあたっては、「いまのままでよいのだろうか?」「大事にしたいことってなんだろう?」「どんな方向に進みたいんだろう?」といった悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。そんなときこそ、行動量を上げていきましょう。動くことで気づくこともあります。

まずは、好奇心にしたがって多様な行動をしていくことで、よい偶然が舞い込む確率を上げていきたいものですね。

(文=コクブサトシ

presented by paiza

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