株式会社Another worksでは「複業の社会実装を実現する」をミッションとし、複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を開発・運営しています。複業クラウドには累計で55,000名を超える人材が登録しており、大手企業からスタートアップ、自治体まで幅広く導入しています。
そのAnother worksで取締役 CTOを務めているのが塩原 基弘さんです。塩原さんは新卒2年目の24歳のときに会社を共同創業し、取締役CTOとなりました。若くして起業し、CTOとして活躍する塩原さんに、仕事をするうえで大事にしている7つのルールをうかがいました。
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目次
Rule1:解像度を常に確認する
経営の中で問題を設定し、解決するケースがあります。問題の解像度が低いと不安になってしまい、なんとなくやらなければと考えてしまいがちです。
たとえば、「1つのプロダクトだけではなく、新しいプロダクトをつくらなければ」というフワッとした不安があるとします。この不安は、解像度の低さが原因のことがほとんどだと思います。
「なぜ複数のプロダクトをつくらなければいけないのか?」を考えていくと、戦略自体の解像度が低いから不安になってしまうんです。
サービスの解約を防がなければいけないときにも、ユーザーがなぜ解約するのかがわかっていないと不安になります。ユーザーの声を聞くだけだとあいまいなので、ユーザーの行動やそのユーザーがどういう人なのかを知ることで解像度を高めています。同時に定量データも参考にしていますね。
ありとあらゆる場面で、必ず解像度を確認するようにしています。解像度が高まれば、解決するべき問題が明確になるんです。
Rule2:合理的かどうか立ち返る
常に自分の行動や発言が合理的であるかどうか、意識しています。たとえば、誰かがミスをしたとき、感情的にその人を責めるとします。でも、責める行為によって相手のパフォーマンス低下につながってしまうかもしれません。そうすると結果的にミスが起きやすくなり、対処する時間が増えてしまいます。それって合理的ではないですよね。
合理的かどうか立ち返ることで、意外と人に優しくなれます。
自分に対しては厳しく合理的さを課しますが、部下に合理的な行動を求める際には、伝え方に気をつけますね。「合理的」は言葉として強いので、マイルドに伝えています。「それって本当に正しいんだっけ? どうだったっけ?」という感じで、自分で考えて気づいてもらうようにしています。
Rule3:とにかく書く
ドキュメンテーションを意識しています。
しっかりと整理したドキュメントというよりは、Notionにポイントとなることを雑多に書くようにしていますね。とくにアイデアを書くことが多いです。アイデアだけを書くのではなくて、それに対しての価値やリスクについても書いています。
たとえば、「複業クラウドのタレントは、お金を払ってでも案件を獲得したいと思っているのではないか」というアイデアがあったとします。それを頭の中だけで考えると、わりとポジティブに「いける!」と感じてしまうんです。でも書き起こしてみると、論理的ではない部分が出てくるはずです。このように、書くことで思考が整理されます。
実際に案件に困っている人はいるのか調べてみると、フリーランスのエンジニアだと1週間くらいで案件が決まるとわかりました。結果、あまり案件獲得に困っていなかったわけです。
アイデアなどの考え、データなどの事実、参照した情報など、とにかく書くことを意識しています。僕だけではなく、チームとしても書くことを意識して取り組んでいます。
Rule4:未来を描き、いまに集中する
プロダクト戦略を考える際、1年後・3年後・5年後にどのようなプロダクトを目指すのか。それを実現するために何が必要なのか考えます。
一方で、こうした未来のことは忘れて、いまやるべきことに集中する時間を完全にわけていますね。ひとりでスクラムを組んでタスク分解して、1週間のスケジュールを立てています。
未来を考えながらやると、”いま”のクオリティが落ちてしまうんです。遠くを見ながら歩くと足元がつまずいてしまいますよね。
いまに集中しないといけないときに、やりたいアイデアが浮かんでくることもありますが、それはドキュメントに書いて残しておき、考えるのを止めます。
僕の場合はエンジニアリングとプロダクトマネジメント、採用や経営についてなど、やることが多いので、切り替えが大事です。
Rule5:リズムをゆっくりにする
焦らないようにしています。やることが多いと、バタバタしがちです。でも、急ぐと遅くなると思っているんです。
たとえば、エンジニアが機能開発する際、いきなりコードを書きはじめるとします。簡単なものであればいいかもしれませんが、複雑なものだと結局のところ書き直しの時間が余計にかかってしまうんです。そうならないために、まずは要件を固めて、ドキュメンテーションからはじめます。
なにかトラブルが発生したときも、急いで直すのではなくて、落ち着いてゆっくりやる。そのほうが結果的に早くなります。
もともと僕はディスカッションのスピードが速いタイプなんですけど、意識的に変えました。これは、取締役としてのリスク管理の観点からも意識しているんです。急いで話すと不用意な発言をしてしまうことがあるので、ゆっくり話すように意識しています。
リズムをゆっくりにしたことで、精神が穏やかになりました。
Rule6:仮説を常に立てる
プロジェクトを進める際、仮説を立ててから機能開発を進めます。大事なのは機能を開発することではなく、仮説を検証して成果を出すことだと思うんです。
最近、複業クラウドで、ある仮説を立てました。「求人公開日ではなく、エントリーに反応のあることが重要である」という仮説です。
以前は求人に公開日を載せていたので、タレントさんから「公開日が新しい順に求人を並べたい」という要望がありました。この要望の本質的なポイントは、「公開日が古いとエントリーしても反応がないのでは?」という不安にあると思うんです。
つまり、公開日が新しい順に並んでいることがゴールではなく、エントリーしたときにしっかりと反応のある求人が並んでいることがゴールになります。データを確認すると、公開日が古いと反応がないとは限りません。長い期間ずっと求人募集している企業もあります。
そもそも「求人の公開日」という情報があるからそうした疑いが生まれると考え、消しました。求人の公開日を消すだけではなく、エントリーに反応がない求人は掲載順位がうしろに下がるロジックを設定したんです。結果、タレントからのエントリー数は増え、企業がエントリーに反応する率も上がりました。
タレントからの要望をそのまま受け取っていたら、失敗していたと思います。仮説を立てて、本質的な課題を解決することに注力した結果、うまくいきました。
Rule7:人と比べない
現代では、人を優秀な順に並べていくことは不可能です。つまり、専門領域がそれぞれ違うし、できることも違う。得意・不得意なことも違います。これはエンジニアに限りません。どの職種でもそうです。
とはいえ人間なので、どうしても比べてしまいます。
僕の中で1つの理論があるんです。それは世の中を漫画として考える理論です。そして、一人ひとりが漫画の主人公と考えます。
アクション漫画の主人公と、ギャグ漫画の主人公。どちらが強いかなんて比べようがありません。
僕自身もすごい会社のCTOと自分を比べそうになりますが、「あのCTOは違う漫画の主人公だから。この漫画では僕が主人公だ」と考えるようにしています。
これは複業クラウドの世界観にも反映されています。複業クラウドは、全員が即戦力になれる場を提供できるプロダクトです。大企業では活躍できていないかもしれない人が、スタートアップでは活躍できるかもしれません。場所によって活躍できるかどうかは変わります。
自分が活躍できる漫画の世界に行けばいいわけです。
Another works 取締役 CTO 塩原 基弘さんの【仕事の流儀7選】
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(取材/文:川崎博則)