「良い景気を作ろう。」をミッションに掲げ、経営管理クラウド「Loglass」を提供する株式会社ログラス(以下、ログラス)。2019年の創業ながら東証プライム上場企業を中心に導入が進み、プロダクト・企業ともに急成長を遂げている。経営のコアともいえる経営管理に切り込むスタートアップである同社は、なぜ大企業から支持されるのか。プロダクト開発の裏側、クライアントのニーズに応え急速な機能開発を実現する開発組織の組成について、同社開発本部長 / 事業執行役員 VPoEの伊藤博志氏に聞いた。

伊藤 博志氏
株式会社ログラス 開発本部長 / 事業執行役員 VPoE
ゴールドマン・サックスのテクノロジー部に新卒入社後、同社の基幹システムの開発に従事。その後、VP/Senior Engineerとしてプラットフォーム開発に携わり、同社発のJavaのOSSであるEclipse Collectionsのコミッター兼プロジェクトリードやOpenJDKへのコントリビュートを行うなど、OSS戦略を牽引。スタートアップ2社を経て、READYFORに入社し執行役員VPoEに就任。同社のエンジニア組織の10名から30名規模への成長、決済基盤の刷新や、技術的負債の返済、新規プロダクト開発を牽引。2022年10月に株式会社ログラスの開発部へエンジニアとして入社。エンジニアリングマネージャー、VPoEを経て、2024年6月より開発本部長/事業執行役員VPoEに就任。
目次
「経営課題の本質的解決」を目指し開発されたプロダクト

社会情勢や経済の変化が著しい現在。経営の舵取りは難易度が増し、より迅速な意思決定や多様な変化を予測し、先手を打つ意思決定が不可欠となっている。日本企業で課題となっているのは意思決定に不可欠なデータの収集・分析を担う経営管理のスピードだ。
企業規模が大きくなるほど事業部や関係部署の数は増え、集計するデータは膨大だ。一方で部署によりフォーマットが異なることもあれば、表計算ソフトによる手作業の集計になればデータの破損や入力ミスなどにより手間が増える場合もある。データの集計作業に多大な時間を取られ、経営の意思決定に資する分析を十分に行えず、結果として意思決定が後手に回ってしまうことも多い。

ログラスがプロダクトを通して提供するソリューションは、まさに経営管理におけるデータの収集・分析を迅速にし、未来を見据えた価値創造に取り組む「攻めの経営管理」を実現するものだ。
「経営管理は、経営に機動力を与える非常に重要な領域です。しかし、多くの企業ではその手前であると考えています。つまり、必要なデータを集めるのに手いっぱいになってしまい、分析以前をどうするかに論点が集中している状態です。
私たちが提供する経営管理クラウド『Loglass』は、このような経営管理におけるデータの管理・分析の課題を解決することで経営に機動力を与え、企業が成長に向けた歩みを進めるための新しい意思決定を創出します。さまざまな業種の企業が『Loglass』を導入することで、よりプラスを生み出していくような経営の意思決定に強い企業を増やし、私たちが掲げるミッション『良い景気を作ろう。』を実現したいと考えています」

伊藤氏が説明するように、「Loglass」は経営管理に関わるデータの収集から管理・分析、アウトプットまでをワンストップかつ迅速に提供する。煩雑なデータ統合・管理業務を最大85%削減し、最も重要なデータの分析と示唆のアウトプットにリソースを集中できるため、よりスピーディかつ精度の高い意思決定を可能とする。
着目すべきは成長スピードだ。同社のARR(年次経常収益)は前年比3.2倍、従業員数は約130名※、東証プライム上場企業をはじめ、各業界業種のリーディングカンパニーの導入事例が増えているという。取材時点で創業4年目と、まさに急成長を遂げている同社だが、なぜ大手企業から信頼されるプロダクトを開発できているのだろうか。
「当社の創業者である代表取締役CEOの布川友也は、まさに経営企画出身です。創業者自身の原体験もあり、『Loglass』は経営管理に携わる方々が抱えている課題の本質的な解決を突き詰めて開発しているからこそ、多くの企業から信頼いただけるプロダクトになっていると考えています。
たとえば管理会計アプリケーションを思い浮かべたとき、一般論的として『どういうふうに会計として正しいシステムを作るるか』に目が行きがちです。『Loglass』はいかに簡単に『散らばっているデータを集められるか』、『マスタ情報の管理やデータ変換をできるか』、『経営の意思決定に繋げるアウトプットができるか』の3点に集中して機能開発を始めました」
本質的な課題解決に注力することで、「Loglass」はユーザーにとってまさに痒いところに手が届くサービスとなった。リリース当初は機能として不足する部分もあったものの、プロダクトのコアの部分が支持されているからこそ、ユーザーの信頼感を獲得し、機能拡張の期待は増していく。
「サービスリリース後は、足りないものをいかに迅速にデリバーするかに注力していきました。最初できなかったものもできるようになり、より経営管理やその後の意思決定に有益なプロダクトへと成長したことが、ユーザーの方々に信頼感を持っていただけた要因です。もちろんそれ以外にも、私たちのセールスやCSがていねいにお客様と向き合っているので、ビジネスサイドの貢献も大きいです。当社の特徴として、ビジネスサイドや開発組織を問わず、非常に優秀な人材が集まっている点があります。これもまた私たちが信頼を集めている要因であると考えています」
※ARRは2023年7月時点、従業員数は2023年末時点
テックバリュー『Update Normal』に込めた想い

ログラスは現在、基幹プロダクトである「Loglass 経営管理」のほか、「Loglass IT投資管理」や「Loglass 販売計画」とプロダクトの拡充を進めている。このように、経営管理が取り扱うデータ領域は多岐に渡り、エンジニアにとってはユーザーのニーズが把握しにくいものにも思える。
「たしかに、経営管理というドメイン自体がエンジニアにとって普段身近にない領域なので、顧客理解は難しいものだと思います。しかし、そんな中でエンジニアはよりそのお客様が困っていることや届けるべき価値を理解するために努力しています。たとえば、セールスやCSの方々が行う商談、ミーティングは必ず録画してもらい、それを毎週開発組織全体でみるようにしています。ユーザーが本当に困っていることやほしいと思っている機能を、一次情報で拾うプロセスを踏むことで、顧客理解を深めています。ログラスのエンジニアは、このように顧客を理解し、より良いプロダクトを開発していくことにとてもポジティブなマインドで取り組んでいます。VPoEとして非常にありがたく、すばらしいメンバーが揃っていると思っています」
開発組織のカルチャーの醸成もまた、ログラスの特筆すべき点だ。同社は日本CTO協会の「Developer eXperience AWARD 2022」にノミネートされるなど、開発者体験の高い環境整備やカルチャー醸成でも対外的な評価を集めている。そのような開発組織に伊藤氏がVPoEに就任したのは2023年5月。プロダクトとしても開発組織としても規模が拡大し、急成長を遂げる中、伊藤氏の就任にはどのような背景があったのだろうか。
「ログラスの開発組織は、生じた課題を自律分散で解決していく性質を強く持っているので、基本的にチームレベルで存在する課題は現場のエンジニア一人ひとりが主体的に動き、解決していく流れができています。一方で、私たちの開発組織が解決しようとしている経営管理は非常に複雑な領域なので、今目の前で取り組んでいることがすべてではないんです。今後数年単位でみたときに、プロダクトで解決すべき課題を逆算志向で考えるのは、現場ドリブンではできないことです。そのような開発のビジョンは当社取締役CTOの坂本龍太やVPoEの私がしっかり見据えて作っていく必要があります。そのために現状足りていない領域のケイパビリティを策定しつつ、そこに向けた採用も進めていくことが、私たちにとってのより大きなチャレンジであり課題でもあると考えています」
これまでに醸成された開発組織のカルチャーを、より未来を見据えたあり方にしていく。その意志も込めて、伊藤氏は2023年から2024年にかけてテックバリュー策定を牽引した。
「Update Normal」。そこにはどのような想いがあるのだろうか。
「私としては、ログラスの開発組織が培ってきたカルチャーの延長線上を行けば、理想的な組織が出来上がっていきそうだという感覚を持っています。さきほどお話しした自律分散でいろんなものを解決していく組織のあり方は、現在の30名から60名、120名と倍々になっても引き継がれるべきDNAとして存在するべきものです。テックバリューは、そこに存在しているエッセンスを『蒸留』し、自分の認知を深めつつ目指すべき姿を言語化したものです。『Update Normal』はまさに、今後の組織が成長してもしっかりと存続させるべきコアを明確にしたもので、私としてはここさえしっかりしていれば、今後私たちの組織は有機的により良い組織になっていく確信のあるものです」
優秀なエンジニアを惹きつける「活動3原則」

テックバリューの策定は、まさに未来に向けあらためてログラスが創業期から育んできた価値観を表現したものとなっている。その副文には同社開発組織の活動原則も記載されている。そして、これらは優秀なエンジニアを惹きつける要因ともなっているという。
「『顧客への本質的な価値提供』『学びと適応』『技術的卓越性の追究と還元』。ログラスは創業期からこの3つの原則を芯とし、常に当たり前の水準を高く保ち続けることによって、さまざまなことを成し遂げてきました。世の中にいるエンジニアで、このどれかしらが今いる環境だとできておらず、かつその中でこれをちゃんとやっていきたいと思っている人は少なくないと思います。なので、私たちが定めたテックバリューに共感してくださる方は、そもそもカルチャーとしてもマッチします。それを発揮する対象である経営管理にワクワクするかどうかは、やはりその人しだいになりますが、面談などで少しずつ理解していくと、それがエンジニアとしても難しい課題が多いことに気づくと思います。『とても難しい課題を技術で解決していく』という意味では、私たちが開発するプロダクトは非常にやりがいがあるものです」
創業期から培われた価値観、カルチャーは「蒸留」し、より純度の高いものにしていく。一方で、伊藤氏は「組織設計はプロダクトの成長を見越したアップデートをしているところ」だと語る。
「私たちの持つ3つの活動原則をバランス良く発揮していくためには、 組織のあり方は変えていく必要があると思っています。具体的には、顧客の価値に本気で向き合うところに軸足をおく開発組織と、『イネーブリング&プラットフォーム』と呼ばれる技術的卓越性を追究しつつ複雑性を解消していく組織の両方を強めていく方針です。現在はイネーブリング&プラットフォームの方がまだ発展途上の状態ですが、この両方がしっかりと同じぐらいの規模感になるぐらい育っていくような開発組織に成長していきたいと考えています」

目まぐるしく成長するスタートアップの中で、開発組織の成長戦略を描くCTOとともに、その姿を実現させるべくマネジメントを担うVPoEの存在は非常に重要になる。最後に、現在ログラスの開発組織の成長に向けて今後求められる役割やVPoEの楽しみについて、伊藤氏に聞いた。
「ログラスの場合、エンジニアリングや課題解決を現場に任せられる、非常に強い開発組織であると思っています。一方で、数年後の成長を見据えて逆算して経営と現場を繋ぎ込み、現在不足しているものを補強していくのはまさにVPoEが執行すべき領域です。
企業の中でVPoEが担う役割は、一般論では語れないところも多いと思います。VPoEは組織運営をやっている人だと思われがちですが、私としては必ずしもそうではないと思っています。私はあくまで組織のエンジニアリング力を最大化させるために求められるものを考え、実行していくための存在として、そのシステムと組織の両方を深く理解してやっていくものと考えています。そういった側面では、急成長の中にいるログラスはまだエンジニアリングシステム自体もまだまだ発展途上であり、組織も発展途上な状態です。その両方にテコ入れができるという意味では、非常におもしろいポジションで働かせてもらっています」
(取材/文/撮影:川島大雅)
