1997年に創業されたシンプレクス株式会社(以下、シンプレクス)。創業以来、メガバンクや大手総合証券を筆頭に、日本を代表する金融機関のテクノロジーパートナーとしてビジネスを展開してきた。
現在は金融業界だけではなく、建設業や製造業、行政機関にまで領域を広げている。多くのシステム開発に携わってきたシンプレクスの執行役員 佐藤 祐太さんが考える、テックチームマネージメントの最適解とは?
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佐藤 祐太さん
シンプレクス株式会社 執行役員。ITに強く将来性を感じ、そのなかでも金融業界で求められるテクノロジーレベルの高さにトライしようと、2008年に新卒でシンプレクスに入社。リーマンショック真っ只中のFXシステム運用保守メンバーからキャリアをスタートし、その後、開発リード、運用保守マネージャー、導入プロジェクトマネージャーを歴任。2022年4月、現場叩き上げでFX/暗号資産ビジネスの統括責任者として執行役員就任。2023年4月より範囲を広げ、証券系、Web3領域も含めたリテール金融ビジネス全体を管掌。
目次
任せると決め、やりきってもらう。責任は自分が取る

シンプレクスは多重下請け構造に異を唱え続け、クライアントと直接取引するプライム受注を徹底している。下請け企業への丸投げもしない。だからこそ得られる経験が多いという。
「下請けの会社で働いていると、ユーザー企業と直接話す機会は基本的にありません。当社の場合は、エンジニアであってもお客さまと直接話をします。それはプライム受注だからこそです。
2次請けや3次請けになるにつれて、決まった仕様にもとづき、技術要素もある程度限定されているなかでつくるしかありません。そうすると、”作業”に近いつくり方に限定されてしまうのですが、当社は技術選定から入ります。エンジニアにとっては頭をフル回転させて幅広い知識も求められますが、本当の意味でビジネスに貢献できるエンジニアになっていけます」
大規模プロジェクトになると、100名くらいのメンバーが関わることもある。そうした大人数のチームをマネージメントするうえで意識していることはなんだろうか。
「どこまで任せるのかを意識し、マネージメントしています。大規模なプロジェクトになると、1人ですべては確認しきれません。この部分はあの人に任せると決めたら、こちらの期待値を明確に伝えてやりきってもらいます。そうしないと、任された本人の当事者意識も強まりません。
もちろん、任せてもいいレベルかどうかは慎重に見定めています。任せたとはいえ、しっかりと報告はしてもらい、それに対するフィードバックをします。そしてフィードバックの内容をもとに、自分で考えて実行してもらう。このサイクルを回すことが大事です。仮にうまくいかなかった場合は、任せた私の責任です。それが大前提としてあります」
コミュニケーションを取るために1on1も実施している。はじめは雑談をし、徐々に打ち解けてきた段階で悩みを聞いているそうだ。佐藤さんは、1on1時には素の状態で話しているという。そうすることで、相手も心を開いてくれるのだろう。
規模に関わらず、佐藤さんがマネージメントする際に大事にしていることがある。それがシンプレクスの掲げる「5DNA」という行動規範だ。5DNAには「No.1」「Client first」「Commitment」「Professionalism」「Global」がある。
「マネージメントの際には、5DNAの1つ『Client first』を大事にしています。納期か品質かの選択を迫られることは開発の現場ではよくあると思いますが、もう少し納期を延ばしてでもさらに品質を高めたほうがいいケースもあると思うんです。その場合には、お客さまのためを思って逃げずに話し合います。そのぶん検収が延びてしまうので、こちらとしては大変です。でも、最終的なクオリティを高めるためには、それが一番いいと思っています。当社のことだけを短期的な目線で考えるのではなく、お客さまのことを考える必要があります」
現在は金融業界以外の顧客も増えているが、もともとは金融業界の顧客のみをターゲットにしていたシンプレクス。そのためクライアント数が限られており、リピートオーダーがビジネスを成長させるうえで重要だった。クライアントファーストを徹底し、顧客からの信頼を得ることがリピートオーダーを獲得できた理由なのだろう。
30歳で年俸2,000万円も狙える報酬体系において求められる人材

シンプレクスが創業当時から重視しているポリシーが、「最高のプレイヤーに最高の報酬を、そして次なる最大のチャンスを」だ。完全実力主義であり、自己成長を希望する人間にとっては魅力的な環境が用意されている。入社時に22歳の新卒社員が8年目となる30歳時点の年俸は、標準成長で1,000万円、トップスピード成長では2,000万円にもおよぶ。若手にもチャンスがあり、佐藤さんも30代の若さで執行役員に就任している。どのような人材が「最高のプレイヤー」にあたるのだろうか。
「共通しているのは、さきほどもお話しした『5DNA』をなんらかの形で体現していることです。そのなかには、エンジニアもいるしマネージャーもいます。シンプレクスとしてお客さまのためになにかをおこない、シンプレクスにとっても利益になることを実現しようとしている人たちです。周りからみても、たしかにこの人はシンプレクスに欠かせないと認められる人たちが最高のプレイヤーではないでしょうか。さらにお客さまに対して、場合によっては社会に対してインパクトを与えうる人たちだと思っています」
優秀なプレイヤーが多いと殺伐とした雰囲気になり、マネージメントも難しいと想像していたのだが、そうではないという。どのようにマネージメントしているのだろうか。
「マネージメント自体を1つのプレイと捉えている気がします。マネージャーは、あくまで得意としている領域にマネージメントがあるだけで、プレイヤーの1人です。プロジェクトをみていても、みんな対等です。あくまで1つの役割なので、マネージャーだから偉いわけではありません」
社員1人ひとりがプロフェッショナルであり、チームプレイなしに成果を残すことは不可能なため、競争と協調の共存が強く求められるという意識が社員に浸透しているのだろう。
シンプレクスには、珍しい評価制度がある。年に1回おこなわれる「札入れ」制度だ。年次を問わずに、仕事の成果や質で評価が決まる。当該年度の仕事で関わった上位者全員から評価を受けるため、特定の上司による主観に偏ることなくフェアに評価されるスタイルだ。
「半期に1回、自己評価シートを提出してもらいます。それをもとに、上期は下期に向けた軌道修正をして、下期に翌年度の理論年俸を決定していく流れです。札入れの際には、1人に対して2~3人の評価者がつき、評価をしていきます。フェアであり、私自身もとても好きな制度です」
札入れの際には、「再現性」が評価軸の1つとして存在する。プロジェクトの難易度や過去の経験値を含め、再現性ある実力を評価して理論年俸を決定する。そのため、翌年の評価で理論年俸が急激に下がることは想定していない。
クラウドによって変化した世界でのテックチームの在り方

システム開発をし、事業をドライブするうえでテックチームの存在は欠かせない。シンプレクスのテックチームとしてさらに伸ばしていきたい点を聞いたところ、アンチテーゼ的な答えが返ってきた。
「当社はロールを明確には区切っていません。その境目が、さらになくなっていけばいいと思っています。それを実現するうえで、クラウド技術が出てきたことはものすごく大きいです。オンプレミスの時代は、インフラはインフラエンジニアに任せる印象が強くありました。データセンターでサーバーを直接触る人はこの人だけ、と当社でもはっきりとロールが決まっていました。
そうしたロールが1つでもあると、ほかにも波及していきます。ただ、クラウドによってエンジニアがロールとは関係なく、インフラを直接触る世界になりました。それを上流工程に対しても、さらに広げていきたいです。エンジニアがお客さんとビジネスの話をする機会が増えてもいいですし、ビジネス側の担当がエンジニアリングを担うようになってもいいと思います」
テクノロジーだけを追い求めるテックチームは、これから少しずつ減少していくかもしれないという。
「アンチテーゼ的になりますが、テックチームと呼ばれる色味はもう少し薄まっていったほうがいいという気がします。当社に限らず、その流れは強くなっていくと思います。『BizDev』がバズワードになりかけていますけど、なにかを成し遂げていこうと考えたときに、軸足がビジネスで成果を出してこそという方向に寄っていくのではないでしょうか。一方でビジネス側もエンジニアリングを理解する必要があります。エンジニアリングとビジネスの垣根をなくしていきたいです」
テクノロジーとビジネスの両方に精通することで、付加価値の高いソリューションを提供できる。エンジニアはビジネスを、ビジネス側はエンジニアリングを学ぶことがこれまで以上に大事になってくるのかもしれない。
ふんぞり返るマネージャーはうまくいかない

最後にテックチームのマネージメントをするうえで大事なことを尋ねると、「対等」という答えが返ってきた。
「どの役職や役割の人間も、目線や偉さ、利害が同じだと理解してもらうことが一番大事だと思っています。ふんぞり返るようなマネージャーは、当社ではうまくいきません。対等であることが重要なので、そのためにマネージャーは最低限の技術についてわかっている必要があります。
当社では4つのフィロソフィを掲げていて、その1つに『Mutual Respect(ミューチュアル リスペクト)』があります。立場や得意なことは違うけれど、お互いに尊敬し合いましょうというカルチャーです。これは、しっかりと自助努力している人間に向けられるものなので、まずは自力をつけることが欠かせません。そのうえで、対等な立場からプロジェクトのためにこうしたほうがいいと意見して理解してもらうこと。それが当社のテックチームマネージメントには向いていると思います」
シンプレクスの経営理念「日本発のイノベーションを世界へ向けて発信する」。これを実現するために、「5DNA」と「Simplex Philosophy」を共有しながらワンチームとなりイノベーションを追求している。
シンプレクスが実行している、フェアな評価制度と対等なコミュニケーションこそが、テックチームに関わらず組織をマネージメントするうえで重要な要素なのかもしれない。
