人生において意識している7つのルール。「Professional 7rules」では、さまざまな人にマイルールについて取材し、人生観を浮き彫りにしていく企画である。
今回取材したのは、エグゼクティブサーチ会社ハイドリック・アンド・ストラグルズ パートナー/ジャパンデスク代表・渡辺紀子氏だ。渡辺氏は、ヘッドハンターとして国内の経営陣や幹部といったハイクラス層を中心に、ヘッドハンティング業務を行っている。年間2000人もの人と交流を持ち、1ヶ月で150件近いアポをこなすというから驚きだ。
一般的にはあまり馴染みのない“ヘッドハンター”という仕事を遂行するには、いったいどのような心構えが必要なのだろうか?
渡辺氏が語る7つのルールから紐解いていこう。
同日インタビューの記事:
年間2000人と会うヘッドハンターが語る人を「見極める極意」

渡辺紀子
東京大学中国文学科を卒業後、豊田通商にてキャリアをスタート。女性初の駐在員として中国・北京に5年間派遣され、中国企業との合弁会社2社の立ち上げ、経営に関与。その後縄文アソシエイツ入社。日系企業をクライアントとして、さまざまな業界のヘッドハンティングに従事。現在、エグゼクティブサーチ会社・ハイドリック&ストラグルズの東京オフィスにて、パートナーとして日系企業を担当。大手企業から成長企業、中堅オーナー企業、ベンチャーまでを幅広くカバー。またジャパンデスクとして、あらゆる産業界の案件をこなす。
目次
Rule1.どんなときでもルーティーンを遂行する
私は自分で決めたルーティーンを、10年以上毎日欠かさず行っています。まず朝起きてから人事発令をチェックし、日経新聞の一面から投資情報まで目を通します。ひと通り読み終わったら、中国語の勉強を20分行い、リベラル・アーツの本を読みます。
なぜリベラル・アーツなのかというと、知識を吸収するジャンルを経済やビジネスだけに絞っていると、薄っぺらい人間になってしまうかもしれないという恐怖心があるからなんです(笑)。このルーティーンはどんなときでも必ず行っているのですが、母と姉とサンフランシスコに旅行に行ったときも欠かしませんでした。家族には「さすが徹底してるね」と、驚かれましたね(笑)。
ここまで徹底してるのは、ヘッドハンターが常に新しい情報の吸収や幅広い視野が必要であることに加えて、私の性格も由来しているかもしれません。子どものころからことあるごとに「これはどうしてこうなっているの?」と親に聞いているような、学習欲がかなり強い性格でした。あまりに質問をしすぎて、父からは「しつこい」と言われるほどでしたね。その性質が、いまの仕事に活きているなと感じます。
Rule2.自分の健康状態を常に把握する

私は、自他ともに認める“健康オタク”です。体重はもう30年ほど変わっていないですね。体重計は毎日乗って体脂肪も測っていますし、1日1万歩は必ず歩くようにしています。お酒が好きなので、2ヶ月に1回、採血も行っています。やはり健康でいないと、1日10件以上のアポイントメントはこなせないし、年間2000人以上の方とお話しすることもできません。
ヘッドハンターは、健康な上にしっかりと頭を使える状態でないとできる仕事ではありません。仕事上どうしても会食が続いたり、フライトで機内食を食べたりすることもあるのですが、その際には出張先のジムでトレーニングをしたり、歩いてない日があればオフィスの1階まで往復して歩いたりしていますね。常に自分の健康状態は把握していますし、自分で定めたルーティーンと数値は守るようにしています。
Rule3.日常生活のなかでも観察を絶やさない
いろんな業界の方と話すことが多いので、常にアンテナを立てるようにしています。たとえば電車の広告から需要のトレンドを知ったり、デパートに行ったらどんな客層が来店しているのかを観察したりしています。
常になにかを観察をしていることが多いですね。仕事以外の場面でも、いろんな人から話を聞くようにしています。カメラマンやタクシードライバー、芸術家など、ジャンルは問いません。どんな人との会話も、“学び”と捉えています。
読書から知識を吸収することもあるのですが、直接自分の目で見た情報も大事にしていますね。体全体から栄養を吸収しているような感覚です。
この“常になにかを学んでいたい”という想いは、子どものころから通ずる性格でもあると思います。昔から勉強が大好きでしたが、幼いころは勉強部屋がなく、テレビがあるリビングで勉強していました。そんな環境でも集中できるくらい、学ぶことに対しては貪欲な子どもでしたね。
Rule4.いつどこでもメモをする

起業家の前田裕二さんが出版されている『メモの魔力』という書籍に私も影響を受けて、日ごろからメモを取るようにしています。
手持ちのメモ帳は3冊目になりますね。いろんな人と話していて、おもしろいと感じたものはなんでも書き留めるようにしています。電車に乗っているときや、本を読んでいるとき、会食の会話で得た知識などを記すようにしています。
Rule5.昨日より今日の自分が進化していると実感する
1日を終えて「昨日の自分より今日の自分の方が進化しているな」と感じないと嫌なんです。ちょっとした強迫観念みたいなものなんですけど(笑)。本当に些細なことでいいんです。会いたい人に会えたとか、初めて理解したことがあったとか、昨日にくらべてプラスになったな、と感じるものがあるようにしています。
もしなにも進歩がなかった日は、少しでいいから寝る前に本を読んだりしています。毎日継続して行うことが重要ですね。
Rule6.いいと思ったものはとにかく試す

“ものは経験”だと思っています。試してみて「たいしたことなかったな」という結果になったとしても、それもひとつの学びだと思うんです。ちなみにいまは『BAKUNE(バクネ)』というパジャマが個人的に気になっています(笑)。
なにを買うか悩んだときに、ランキングや口コミを見て決めることってありますよね。私はそういうとき、“誰が評価したか”を指標にします。普段、お話するハイクラス層の方には、いろんなものを試している人が多い印象があります。そのため、そういった経験を持っている人が言っていることや推しているものにはアンテナを張っています。
Rule7.何事も同時進行を心がける
ものごとを同時並行で取り組むのが好きなんです。毎日たくさんの方と面談をしたりアポを取ったり、情報をインプットしたりしているので、とにかく時間がなくて。
たとえばオフの時間に大好きなバーに行くときには、いつも本を5冊くらい持っていきます。お酒を飲みながら読書をすれば、好きなことが2つ同時にできるじゃないですか。持っていく本も、難度別にピックアップして持っていくんです。
最初は哲学書のような難しめの本を読んで、ビールを2杯くらい飲みますよね。そのあとはビジネス書、そして小説、ファッション雑誌と、お酒が進んでいくのに合わせて読んでいる本の難度も少しずつ下げていくんです。最後の方になると「これまだ読んでなかったな、あれ、やっぱり読んでた」なんてこともあります(笑)。
あとはゴルフも好きでよく行くのですが、ポケットに単行本を忍ばせていきます。そして、グリーンを待っている間に読み進めています。ゴルフ場のいいところは、お酒も飲めるところなんです! 飲みながら読書もできて、ゴルフもできる。一石三鳥ですね。
番外編.アイデアが舞い降りる瞬間は予想もしないタイミング

不思議なことにアイデアが舞い降りてくるときって、なんてことないオフのタイミングだったりするんですよ。本を読んでいたりお酒を飲んだりしているときに、「見つからなくて悩んでいた案件の候補者って、あの人かも!」と急に思いつくんです。あとは朝起きたときにも、同じことが起こったりします。いろんな情報が頭のなかで整理されるのが、そういったタイミングなのかもしれませんね。
おわりに
ヘッドハンターという職業は、世に起きているすべての情報に精通していることが力になるという、不思議な仕事だ。知識があればあるだけ脳内の引き出しが増えていき、人と人を結びつけることができる。
渡辺氏の魅力は、“学ぶこと自体がそもそも好きだ”というところにある。子どものころから強い知識欲を持ち、まさにその性質を活かせる場がヘッドハンターなのだ。交渉の場では候補者やクライアントと直に向き合うため、嘘をつけない。
日ごろからどれだけの情報をキャッチアップできているかがその場で試されるのだ。しかも相手はハイクラス層の名だたる人物ばかり。凡な知識では、相手からの信頼を勝ち取るのも難しいだろう。
ただ、渡辺氏の話を聞いていると、やらなくてはいけないからやっているというよりは、純粋に“新しいことを知るのが楽しい”といった様子だった。ゴルフをしながらお酒を嗜み読書をするというマルチタスクぶりには驚いたが、「好きなことを3つも同時にできるなんて!」といった具合に目を輝かせているのを見ると、好きなことにまっすぐな、幼いころの渡辺氏の面影が浮かび上がるようだった。いかなるときも新しいなにかを吸収するのが、本当に楽しいのだろう。
渡辺氏の人物像が掴めてきたところで、いよいよヘッドハンターの本質についても触れていきたい。別記事ではヘッドハンターの視点から『相手を知る方法』について語ってもらっているので、人材育成や組織管理に携わっている人はぜひ参考にしてみてほしい。

