「仕事の領域をもっと広げたい」「自分の開発したシステムが生み出す影響を肌で感じたい」そう考えるエンジニアは少なくないだろう。
自社で企画、生産した冷凍食事プレートを、Webサイトやアプリを通じ、DtoCのビジネスモデルで定期配送するサービスを運営するナッシュ株式会社(以下、ナッシュ)。
工場での製造・物流・販売・出荷といった垂直統合型の事業運営をおこない、これらを支えるシステム開発も自社で内製する。CTOの松下潤さんと、システム開発部長の金谷敦志さんに、エンジニアから見たナッシュについて伺った。
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松下潤 氏
2001年東大寺学園高校中退。その後プログラミングを習得。滋賀大学在学中に友人が経営していた受託開発の会社で実務経験を積む。新卒でジャストシステムに就職。
その後葬儀ベンチャーにてWeb開発、マーケティングを主導。タクシードライバー・デイトレイダー経験後、ミライエ株式会社(現ナッシュ)、会計事務所起業・譲渡、会計コンサル会社CTO(上場達成)を経て、2022年7月にナッシュにジョイン。ナッシュでは執行役員としてシステム開発部門を管掌。

金谷敦志 氏
2004年に豊橋技術科学大学 大学院修了。住友電工情報システム、ラクス、MonotaRO、KINTOテクノロジーズでWebサービス開発運用やマネジメントの経験を経て、2023年7月にナッシュにジョイン。ナッシュではエンジニアリングマネージャーとして、組織面や技術面の課題解決やメンバーの成長支援を担当。
目次
ナッシュの事業概要とエンジニア組織
――ナッシュの事業概要とエンジニア組織についてお聞かせください。
松下:ナッシュは、自社で企画開発、製造、パッケージングした冷凍食事プレート(お弁当)を、Webサイトやアプリを通じて直接お客様のところに出荷している会社です。プロダクトアウトではなくマーケットインの考え方で、「顧客ファースト」を徹底しています。顧客を優先した結果でのみ株主や従業員は利益を得られる、という哲学があるからです。
顧客の利益を考えると、中間マージンはできるだけ省けるほうがいい。だから、必要な部分で外部委託はするものの、自分たちでできることは自分たちでやるようにしていますし、できれば原材料の1次加工や、原材料の物流、ユーザーへの宅配も含めて自分たちでやっていきたいと考えています。
それを実現するためには、各工程に根付くシステムも自分たちでコントロールしてつくらなくてはなりません。上流から下流のプロセスを取り込んだ垂直統合の事業を展開していくために、必要なシステムをすべて提供するのが僕たちの一番大きな使命です。
ナッシュのエンジニア組織は「システム開発本部」の中に「システム開発部」があり、僕がシステム開発本部長、金谷さんがシステム開発部長を務めています。

金谷:システム開発部は、以下5つのユニットから構成される組織です。
・企画販売ユニット
・製造物流ユニット
・コーポレートユニット
・技術ユニット
・インフラユニット
各ユニットが、それぞれ管理本部、製造本部、物流本部、販売本部の業務を担当するカウンターパートのような存在になっています。
ビジネス部門と関わりが深いのが、企画販売ユニット、製造物流ユニット、コーポレートユニットの3つです。企画販売ユニットは、企画やマーケティングの機能を持つ開発本部から要求を聞き、Webサイトやアプリの開発をおこなっています。製造物流ユニットは、お弁当を実際につくる製造本部と、そのお弁当を在庫・出荷する物流本部の業務におけるシステムが関係する部分を開発しています。コーポレートユニットは、会計管理や労務管理を始めとした社内業務のDXを担当しています。
技術ユニットとインフラユニットは、システム開発部の中を見ているユニットです。技術ユニットは、各ユニットが開発を進める中で「ナッシュを支えるシステム全体はどうあるべきか」といった横断的な課題を取り扱っています。具体的には、ナッシュの開発生産性の向上を目的とし、CI/CD *、どのようにプロダクトをデプロイしていくかを考える役割です。
* Continuous Integration/Continuous Deliveryの略。
継続的インティグレーション/継続的デリバリー(システムやアプリケーションの変更を常に自動でテスト、自動で本番環境にリリースを行うといったシステム開発の仕組み)
インフラユニットは、他のユニットがつくるアプリケーションを実際に動かす環境で、AWSやGCPなどの管理、社内インフラの選定といった、業務支援の仕組みを作っています。

――システム開発部がその5つのユニットで構成されるようになったのは、2023年8月からと伺いました。どのような課題があって、現在の形に変えたのでしょうか。
松下:2023年7月までは、Aチーム(企画販売を担当)・Bチーム(製造物流を担当)・Cチーム(その他全般を担当)からなる3チーム体制でした。このCチームを3つに細分化し、それぞれにわかりやすい名前を付けたのが、今回の変革の内容です。
その変革をした理由は、まず、総務的な仕事を担当するところがなかったから。来客対応や冷蔵庫のメンテナンスといった「共通してやらなくてはならないちょっとした仕事」については、現在インフラユニットの主任をしている方が引き受けてくれていて、みんなが甘えている形だったのですが、その方の下で働く人を配置するべきだと考えました。
さらに、アプリケーション開発について絶対的な技術リーダーやアーキテクトのような存在も必要でした。しかし、3階層の組織構造にすることは避けたいと考えて、技術ユニットとインフラユニットを分けることにしました。
また、それまではお客様の新規獲得や直接的な生産活動のIT化を優先して、バックオフィスのデジタル化支援に手が回っていませんでした。しかし会社が大きくなり、従業員の数も増えてきて、しっかりDXに取り組まなくてはならないと考え、コーポレートユニットを組成しました。
体制変更をしてから数か月経過して、インフラユニットの方のところに集中していた業務が適切に分散され、本来の業務に集中できるようになり、インフラエンジニアとしての組織もつくれたので、体制変更をしてよかったと思っています。
エンジニアとして実業に関わることの醍醐味

――おふたりがナッシュにジョインした時期と、入社した理由を教えていただけますか。
松下:僕がナッシュにジョインしたのは2022年の7月です。直接的なきっかけは代表と旧知の仲だったことですが、「実業の面白さに惹かれた」のが最大の理由です。前職はコンサルだったのですが、ものを作って、動かして、売るという商売の基本に忠実な実業に、CTOとして携わってみたいと考えてナッシュに入社しました。
金谷:私は2023年7月にナッシュにジョインしました。入社の理由は2つあり、1つはエンジニアリングマネージャーをやりたかったこと、もう1つはナッシュのビジネスモデルが前々職の小売業と親和性が高く、システム構成の要素も似ていたので、これまでの経験と知見を活かせそうだと感じたことです。
――現在のおふたりの仕事内容、ミッションについてお聞かせください。
金谷:私は開発部長として、エンジニア組織全体の生産性をいかにあげていくか、そのために必要なアーキテクチャはどんなものかを考えて、ECサイトの開発をはじめとするさまざまな業務に携わっています。
自らコードを書くこともありますが、そのときに意識しているのは、メンバーの生産性を高められる、レバレッジの効く仕事をすることです。プロダクトそのものを開発することより、CI/CDのようなプロダクトの生産性をあげるための仕組みづくりに時間を使うように心がけています。
現在システム開発部で働くエンジニアは20人。5ユニットの主任と密なコミュニケーションを取りながら、それ以外のメンバーとも月に1回、1on1の機会を設けています。全員にやりがいや成長できている実感をもって仕事に向き合ってもらえるように、さまざまな取り組みをしている最中です。

松下:金谷さんにしてもらうことが「生産性(エンジニア1人あたりの出来高)」を高めてもらうことなら、僕がやるべきことは「生産量」を増やすことだと思っています。
ミッションは、システム開発本部全体の出来高を最大化すること。「X(1人当たりの出来高)×Y(人数)」の式におけるYを増やし、組織をスケールさせるのが大きな役割です。
会社がシステム開発本部に期待するものは大小さまざまで、中にはエキゾチックなものもあります。それは競馬場でいう「大外」で、システム開発部のメンバーは誰もそこを走りたがりません。「会社がシステム開発本部に期待すること」と「エンジニア組織ができること・やりたいこと」の差分があるとき、僕が1人でできることであればどんどんやるようにしています。あまり目立ちませんが、これも僕の役割ですね。
――そういった仕事を通して感じる嬉しさややりがい、苦労はどんなものですか。
金谷:私は、エンジニアとして「自分がすごい成果を出せた」という経験はもうかなりしてきているので、今となっては、メンバーのみなさんにもそんな成功体験をしてもらって、「成果を出せました!」という報告を聞けることに嬉しさを感じます。
苦労していることを挙げるなら、体制変更によって横のつながりや責任範囲があいまいになってきたので、それを整理することでしょうか。技術面というより、人に関係することなので、多方面に配慮しながら整理を進めています。
松下:目の前で誰かが困っていて、誰も対処できない状況で自分だけが対処できる。そして、自分がその困りごとを解決すると全員が喜ぶ。そんなサイクルが非常に早く、わかりやすいので、うれしいですね。チーム編成がうまくいき、組織をスケールさせられていると実感できたときにも、非常にやりがいを感じます。
苦労していることは、さきほどの「差分」の話で、自分1人でできることならやってしまうけれど、僕でもできないことはやはりあって……。そういうときは「申し訳ありません、できないです」と伝えますが、期待に応えられないもどかしさを感じますね。
自分の仕事の価値をダイレクトに感じられる環境

――自社にシステム開発部があることの大きなメリットは、他の本部からの要求にスピード感をもって対応できることかと思います。「システム開発も自社で内製しているからこそ、これができた!」という印象的なエピソードがあれば教えてください。
松下:僕たちはDtoCのビジネスモデルで、ネットでものを売っているので、アフィリエイト(成果報酬型広告)は非常に重要な販売チャネルの1つです。ECサイトがアフィリエイトを導入するときは、仲介としてASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)を利用することが多いですが、この形だと少なくない手数料をASPに支払うことになります。
ナッシュもASPを利用していましたが、この先ずっと多大な報酬をASPに割り振るよりも、自分たちでアフィリエイトの仕組みをつくってしまうほうがいいと考えて、成果計測の仕組みを作ることにしました。内製しようと考えてからローンチまでにかかった期間はわずか2週間。
この仕組みをつくったことで、ナッシュのお弁当を紹介して売上を立ててくれるメディアさんに支払う報酬額を、高く設定できるようになりました。結果、従来に比べると非常に積極的に紹介してもらえるようになり、大きくバズったことが印象に残っています。
――マーケティングとシステム開発がタッグを組めたからこその成功エピソードですね。
松下:その通りです。ありがたいことに、この出来事と、それによりもたらされた価値は社内の全員が理解してくれていて、エンジニアへの敬意につながっていると感じています。
これは受託の会社で働くエンジニアにありがちなのですが、自分のやっている仕事の意味や影響をまったく感じられず、やりがいをなくして辞めてしまうケースは少なくありません。このことは、社会構造上の大きな問題と言われていますね。
そう考えると、ナッシュのエンジニアは、自分のやった仕事に対する反応がダイレクトかつスピーディーに返ってくるので、やりがいや喜びも大きいと思います。

――金谷さんは入社されてから半年ほどかと思うのですが、この半年間でとくに印象に残っているエピソードはありますか。
金谷:日々ダイナミックでドラスティックな判断と実行の連続ではありますが、自分の意思決定によって生じる余波の大きさに面白さを感じています。直近では、生産性を高めるための組織的な取り組みとして、AIによるコーディング支援ツール「GitHub Copilot」をトライアルを経て正式導入しました。
私は直接「これをして」と指示をすることはあまりなくて、自然とそうなるようにお膳立てをするほうが多いんです。なので、GitHub Copilotに関しても、「1か月トライアルをすることにしました。みなさん使えるので自由に試して、あとでアンケートにも協力してください」と伝え、触れる機会を与える感じでしたね。
実際にメンバーがGitHub Copilotを使ってコーディングをしたところ、「AIが補完してくれるおかげで書きたいコードを思うように書けて、かなり助かっている」という感想が多く、生産性向上に直結することがわかったので、正式導入をしました。
そのほか、AWSの方との合同勉強会を開催したこともあり、参加したメンバーが勉強会の直後に「学んだ内容を活かして、これをつくってみました!」と成果物を見せてくれたこともありました。このように、エンジニアにとって、新しい技術に触れる機会やスキルアップにつながる学習環境があるのもナッシュの魅力だと思っています。
ビジネスの多様なシーンに対峙し、経験を積める

――未来・将来へのビジョンについてお聞かせいただけますか。
松下:ナッシュの事業のコアは食品を製造して販売することであり、ソフトウェアやネットワークそのものを売ることが仕事ではありません。しかしながら、僕たちの会社は「世の中のありとあらゆる仕事をシステマチックにすること」を誰よりもやりきります。
ですから、中長期的なビジョンとしては、お弁当の製造販売に限らないかもしれませんが、ソフトウェア、ネットワーク、コンピュータの力を使い、合理的かつ生産性の高い事業を実現させることを目指しています。
少ない数のホワイトカラーで大きな売上をつくれる会社、すなわち、1デスクワーカーあたりの付加価値が非常に高く、その高さをシステム開発が担保している状態が理想ですね。
金谷:ナッシュの事業は急速に拡大しているフェーズで、松下さんの言う「ホワイトカラーの生産性を高める」状態に近づけるには、システム開発に携わるエンジニアのメンバーがもっと必要です。ですので、私はこれからジョインしてくださるエンジニアが活躍でき、前からいてくれる方々がより高度な領域で活躍できる場をつくっていきたいと思っています。
――どんな人であれば、ナッシュのシステム開発部で活躍できると思いますか。
金谷:一言でいえば「境界線をひょいっと超えられる人」でしょうか。システム開発だけしていればいいと考えるのでなく、カウンターパートである本部で実際の業務をおこなっている方の課題も一緒に考え、解決できる人はすごく活躍できると思います。
松下:多少内向的でも「ソフトウェアとネットワークが好き!」という人なら活躍できる環境です。結局、エンジニアは職人なので、職人の矜持があれば、必然的に自分の成果物には責任を持ちたくなるし、現在のスキルセットが十分でなかったとしても、自発的に能力の向上を図っていけるはずだと思っています。
――最後に、採用候補者の方へのメッセージがあればぜひお聞かせください。
金谷:「今の会社にいても技術力を伸ばすことができない」と悩んでいる人に、ナッシュにはどんどんチャレンジしていける環境があると伝えたいです。
技術そのものでお金を稼いでいくビジネスモデルではなく、あくまでお弁当を販売して売上をつくっていく会社ですが、業務領域が広くさまざまな開発に携わっていけるので、どんどんスキルアップできると思います。ナッシュがどんなことをやっていて、それが自分のやりたいことと重なるか確かめたい人は、ぜひ気軽に門をたたいてみてください。
松下:金谷さんの言うように、ナッシュは垂直統合型の事業運営をしていて、いろいろなシーンを抱えています。たとえば、お客様の管理するCRMツールをつくること、生産管理のシステムを設計すること、トラフィック・トランザクションをどう扱うかを考えること、バックオフィスの DXやデータ分析をすること。
一社にいながらビジネスにおける多様なシーンと対峙でき、それぞれの問題を解決していけるので、非常に多くの経験を積むことが可能です。エンジニアとして幅広いことを経験していきたいと考えている人には、非常に魅力的な環境だと言えるでしょう。
(取材/文/撮影:ayan)

