私はホラー映画が好きで節操なく観るのだが、当然ながら毎回激しく人が死ぬ。すんごい死ぬ。その死に様は多様なものの、何千人もの死亡シーンを目撃していると死ぬ人間の特徴というか、傾向が見えてくる。
要は「あ、こいつ死ぬな」と感じたら案の定逝去される、いわゆる「ホラー映画あるある」のようなものなのだが、これは社会人も同じだ。それなりに長く社会でサヴァイブしていると、「あ、こいつ生き残れないな」と感じる人は気づけばいなくなっていることが多い。
スクリーン上の死と社会的な死の違いはあれど、社会人として生き残れなかった彼・彼女らは、ホラー映画に登場しては華々しく散っていく人々と意外と共通する特徴がある。その共通項を書き出してみて、「現実世界ってホラー映画より辛いですよね」としみじみ感じてみようというのが、本コラムの趣旨である。
目次
ホラー映画も世の中も「よせばいいのに」と「やりゃあいいのに」でできている

ホラー映画で死ぬ人と社会的に死ぬ人の共通点とは「よせばいいのに」と「やりゃあいいのに」だと考える。ホラー映画も社会人も余計なことをやる奴はいろんな意味で死ぬし、仕事に対して少しの手間すらかけられない人は生き残れない。
稀に、余計なことをやり続けて必要な行動は何一つ起こさずとも生き残るファイナルガール(あるいはボーイ)も居るが、彼・彼女らの多くは主人公なので何の参考にもならない。凡人つうかモブの私たちは、生き残れなかった人の特徴を把握して我が振り直すのがよいだろう。以下、特徴を記していく。
動画を撮るな

最近のホラー映画のトレンドとして、YouTuberなどの動画配信者は真っ先に死ぬ。あるいは動画を撮影した者は死ぬ。被写体だろうが撮影者だろうが関係ない。
時代によって「真っ先に死ぬやつ」の素性も変わる。YouTuberの少し前は『Mr.タスク』などでポットキャスターが激しく死んだと勢いで書いたが、『Mr.タスク』は人間がセイウチに改造される話なので死んではないことに気付いてしまった。だがセイウチ化した主人公は社会的に死んでいるので問題ないだろう。
この頃は現実社会でも飲食チェーン店でのエクストリーム迷惑行為が度々炎上しており、某寿司チェーンの件では6,000万円超えの損害賠償が請求された。ホラー映画よりも現ナマを請求されるほうが遥かに怖い。
賢明な社会人の人は「そんなアホなことするかいな」と思うかもしれないが、デジタルタトゥー全盛の世界である。冗談半分でインスタのストーリーに投稿した勤め先ディスりのイキりポエトリーリーディングがスクショされて気づかぬうちに拡散され、バズり、同僚の目にとまり、会社で噂になり、人事に呼び出され、謝罪し、ボーナスの査定に響き、賞与の金額が少ないものだから行きつけのキャバクラに通えず、金を落とせないのでお気に入りのシオリちゃんからのLINE頻度が少なくなり、何とかしようとアルマンドを入れ、ゴールドよりもシルバーがいいと言われたので男を見せようとシルバーを3本ほど入れたような気がするが覚えていないものの、次月のクレジットカードの膨大な請求金額に心当たりがありすぎて死にたくなる、なんてことも十分に考えられる。
上記は預金残高が減るくらいだが、何気ない動画が原因で社会的な死を迎える可能性もなくはない。ちなみに『Mr.タスク』は素晴らしいホラー映画なのでぜひ観てほしい。また動画を撮ってひどい目に遭う作品は数あれど、近年の最高峰は『呪詛』だろう。こちらは本コラムを読んだなら必ず鑑賞してほしい。してくれないと私が困るので、今すぐNetflixで検索しよう。
電話にはすぐ出ろ
ホラー映画では、かかって来た電話に出ないことで状況が悪化するケースが多い。ホラーではないが『24 -TWENTY FOUR-』なんて1話目の電話に出ていたら全てが解決、1話完結していたのではないだろうか。
現代において、仕事のやり取りはSlackやChatWorkなどテキストベースで行われることが多い。その結果、電話は多くの場合「何かあった」ときに着信音が鳴るようになった。このご時世で電話で連絡してくるケースは、往々にしてヤバい内容なのだが「ヤバそうだから出るのは辞めておこう」と無視するとどうなるか。どえらいことになるのである。
ただ、電話に出てとんでもない目に遭う作品もあるのもまた事実だ。社会でも同じく「株式会社◯◯の猿渡龍彦ですが田村さんいらっしゃいますか」の名前が聞き取れず「田村さんさxすxぅわはxりさんから電話です」とイチかバチかで曖昧に伝えたり、もう面倒臭いので「田村さん中臣鎌足みたいな名前の人から電話です」と適当に申し送りしたりすると叱責される可能性が高い。だとしても、鳴り続ける電話を鋼鉄の意思で無視し続けるよりはよいだろう。着信音が鳴ったりブルブルとスマホが震えたりしたら、なるべく早く出ると本来は死ぬところを致命傷くらいまで抑えられる可能性がある。
ちなみに、電話に出ても出なくても酷い目に遭う作品に『ザ・コール』がある。映画史歴代殺し屋ランキングで上位に食い込むアントン・シガーの如き得物の選択を観れるだろう。Netflixで観られるのでお暇ならぜひどうぞ。その次に観るなら『呪詛』がオススメだ。
英雄になるな
ホラー映画でも会社でも、英雄になってはいけない。自己を犠牲にして他人を助けるのは大いに結構だし感心できるし尊い行動だと思うが、ホラー映画なら死ぬし、会社なら仕事が増える。既にクラシックと言ってもいい『トレインスポッティング』でも、「働きすぎは、就職しちまう」とレントンとスパッドが名言を残している。
ホラー映画を例に出すならば『ニンジャリアン』という、もうとんでもないB級映画がある。忍者とエイリアンを混ぜたような異星人が手裏剣の形をしたタコのようなものを投げて来て、それが当たった人間はタコ手裏剣に吸血されて絶命してしまう。多分ネタバレしても誰にも怒られないと思うので一刀両断でバラすが、映画の最後、ニンジャリアンを倒すべく一人のオッサンが英雄的行動を起こす。「ニンジャリアーーーーーーーン」と咆哮しながらニンジャリアンに単身突撃し爆散する。
かくしてニンジャリアンも粉微塵になり、オッサンの俠気にその他の登場人物は救われるのだが、おそらく全員が「別にカミカゼしなくても倒せたような気がする。爆薬あるんだし」と、口には出さずとも思っていたことだろう。
英雄ではない一般人が英雄的行動をとるとき、多くは自己陶酔の罠に陥っている。落ち着いて手を胸に当ててよく揉んでみればわかると思うが、自ら率先して面倒くさいことに首を突っ込んでいるケースがほとんどであると理解できるはずだ。
ちなみに『ニンジャリアン』はかなり人を選ぶので、観なくてもいいと思う。『ニンジャリアン』を観るなら『呪詛』を観たほうが1億倍いい。さあ、今すぐに呪詛を観てください。
静かに行動しろ
口は災いのもととはよく言ったもので、ホラー映画でうるさい奴は大体死ぬ。陽気な奴が生き残る場合もあるが、必ずといっていいほど危険な目には遭うし、寡黙な奴よりは生き残る可能性が低い。
静かに行動することの重要性がよく解る映画としては『クワイエット・プレイス』が挙げられるだろう。ちなみに愛知県豊田市にはクワイエットプレイスという賃貸物件があるが、本作とは何の関係もない。
愛知県豊田市の賃貸物件ではないほうの『クワイエット・プレイス』では、やけに耳がいいクリーチャーが登場する。少しの物音でも反応し、物凄い速度で人に襲いかかる。その怪物から隠れて生きる家族が主人公なのだが、この家族はかなりヤバい。とくに長女のリーガンは他人の死亡フラグを立てまくる死神のような女児で、「よせばいいのに」が服を着て歩いていると錯覚してしまうほどヤバい。
ときに本作は続編があり、タイトルは『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』である。もう完全にクワイエット置いてけぼりなのだが、1作目に増して怒涛の「よせばいいのに」と「やりゃあいいのに」の二本柱でラストまで駆け抜ける。
映画の話はこれくらいにして、現実世界でも沈黙は金とはよく言ったもので、お喋りな人間はリスクが高い。自らの口から出た言葉の到達点は相手であり、放たれた言葉は相手の受け取り方で意味が変わる。「課長の吉本さん、変態だよね」といい意味で言ったのに「課長の吉本は倒錯した異常な性的嗜好の持ち主である」と取られたらトラブルになりかねない。そんなことよりジャストナウ即刻『呪詛』を観てください。
小さいことを楽しめ
たとえ立て籠もっていたショッピングモールが数千のゾンビに囲まれていたとしても、ユーモアを忘れてはいけない。例えば『ドーン・オブ・ザ・デッド』では、メインの舞台であるモールの屋上で、ハリウッドスターに似たゾンビをライフルで撃つ遊びに興じている。
仕事でも同じで、毎日つまらないと不貞腐れ、やる気もなく仕事をしていたら社会的にではなく心が死んでいく。1日8時間仕事をすると仮定してみると、10日で80時間、100日で800時間もの間死んでいるようなものだ。これは非常にもったいない。筆者が以前働いていた職場の上司がミーティング中に熱心にメモをとっていたので、何を書いているのかと覗き見ると職場の人間を三国志の登場人物に置き換えて相関図をつくっていた。これが楽しみかと言われると判断に困るが、たとえサボりだとしても仕事のなかに楽しみを見つけられる人は生き残る可能性が高い。ちなみに、上司の行方は誰も知らない。
仕事でも同じで、毎日つまらないと不貞腐れ、やる気もなく仕事をしていたら社会的にではなく心が死んでいく。1日8時間仕事をすると仮定してみると、10日で80時間、100日で800時間もの間死んでいるようなものだ。これは非常にもったいない。筆者が以前働いていた職場の上司がミーティング中に熱心にメモをとっていたので、何を書いているのかと覗き見ると職場の人間を三国志の登場人物に置き換えて相関図をつくっていた。これが楽しみかと言われると判断に困るが、たとえサボりだとしても仕事のなかに楽しみを見つけられる人は生き残る可能性が高い。ちなみに、上司の行方は誰も知らない。
ちなみに本項目と先程登場した「英雄になるな」は、『ゾンビランド』に登場する「ゾンビの世界で生き残るための32のルール」から採用している。そのなかのルールから、社会人の生活にも通用しそうなものをいくつかピックアップしてみよう。
- 有酸素運動(ルール1)
運動不足の社会人には必須のルール。ホラー映画では体力のある奴は死にやすいが、現実世界では体力があるほうがいいに決まっている。 - トイレに用心(ルール3)
仕事においてトイレは唯一プライベートを確保できる場所だが、スマホをいじるなどして長時間占領してはいけない。もし限界ギリギリの上司があなたのスマホいじりのせいで決壊してしまったら、一生根に持たれるだろう。 - ゾンビを発見したらまず逃げろ(ルール5)
ヤバい奴には近づかない。近づかなければならないときでも距離をとるのはゾンビでも仕事でも重要。 - 異性の誘惑には注意(ルール13)
言わずもがな - 逃げ道を確保しろ(ルール22)
言わずもがな - 予備の武器を持て(ルール30)
他所でも生きていけるスキルや稼げる能力を身につけておくと、生き延びられる可能性が高まる。
というわけで、と書かれた後の文章にわけがあった試しはないのだが、すでに4,500文字近く書いていてネットの文章としてはやや長文になってしまったため、このあたりで終わりたい。
ホラー映画でも人生でも、生き残ることは何より重要だ。最後に、小さいことを楽しみつつ、死なない程度にお互い頑張りましょう。そして! 『呪詛』を!! 絶対に!!! 観てください!!!!! ホーホッシオンイーシーセンウーマ!!!!!!!!
(文:加藤広大)
