わたしはこれまでのエンジニア生活の中で、本業の他にさまざまなコミュニティ活動を行ってきました。前回の記事では、そんなコミュニティ活動の積み重ねが転職活動の際に役に立った話をご紹介しています。今回はコミュニティ活動の内容やメリット・デメリット、そして初心者の方でもできる活動について説明します。ひとりでも多くのエンジニアの方に、コミュニティ活動を楽しんでもらえたらうれしいです。

エンジニアのコミュニティ活動とはどんなものか

エンジニアの中には、同じプログラミング言語・フレームワーク・ツールを使っている人同士、あるいは「フロントエンド」「バックエンド」「QA」など近い職種の人同士が集まって“コミュニティ”をつくり、交流している人たちがいます。SlackやConnpass、Twitterなどさまざまな場が用いられ、情報共有や相談などが行われています。

そうしたコミュニティに参加して、なんらかの活動をおこなうことが「コミュニティ活動」です。

コミュニティ活動にはさまざまなものがありますが、よく挙げられるものとしては以下があるでしょう。

  • カンファレンスやイベントなどでの登壇・講演
  • カンファレンスやイベントなどの運営・実行委員
  • SlackやDiscordなどオンライン上のユーザーコミュニティの管理
  • 書籍の執筆や雑誌への寄稿
  • オープンソースソフトウェア(OSS)の開発やコントリビューション

いずれもそのコミュニティの参加者に共通するもの(プログラミング言語や技術要素、職種など)の発展や盛り上げ、参加者同士のスキルアップなどを狙って行われています。

メリットと注意点

この記事もそうですし、わたしがマネージャをしていた際にはチームメンバーに対しても、「コミュニティ活動はいいぞ」といつも勧めてきました。

それはもちろん、エンジニアにとってたくさんのメリットがあるからです。

代表的なものとして

  • 他のエンジニアとのつながりや、いろいろな情報・機会が得られること
  • スキルアップにつながること

が挙げられます。

メリット1:つながりや機会が得られる

「コミュニティ」というくらいなので、先に述べた様々な活動を通じて、他のエンジニアとコミュニケーションをとることが増えます。結果的に知り合いも増えていきます。うまくいけば、「いつも記事を読んでいるブログのあの人」や「評判の技術書を書いたあの人」とつながりを持てるかもしれません。あこがれのエンジニアの方と知り合えるチャンスがある、というのはワクワクしませんか?

また、有名な人と知り合えるだけではなく、知り合いが増えることでそこから入ってくる情報・機会はどんどん増えていきます。「こんな勉強会をやるから参加してみない?」「一緒にイベントをやらない?」と声をかけてもらうなど、知り合いの関係が広がるとともに、そこで得られる機会もまた増えていきます。

メリット2:スキルアップができる

コミュニティ活動によって、エンジニアとしてのスキルアップも期待できます。勉強会に参加すればそこでの学びも得られますし、運営を行えば自分が知りたいトピックについての第一人者をゲストとして呼ぶ、なんてことも。人前で自分の知見を発表すれば感想やフィードバックをもらえ、さらに自分のアイデアを深めることにもつながります。

これらのメリットにより、

コミュニティ活動を通じて人間関係が広がる

インプット・アウトプットの機会が増える

スキルアップする

コミュニティ活動の幅が広がる

人間関係が広がる

・・・・・・(先頭へ戻る)

というサイクルを回せます。エンジニアとして活躍していきたい、という方にとってはいいことづくめですね。

そんなメリットがある一方で、コミュニティ活動において気をつけなければならない点もあります。

気をつける点1:信頼をなくすこと

一つは信頼をなくすことです。

コミュニティ活動において、とくにイベントやカンファレンスの運営などにおいては、複数人が役割分担をして進めることも多くあります。分担したタスクには期限とゴールがあり、一人がそれを守らないと全体の進行に支障が出ることも。

コミュニティ活動に参加することはよいことです。しかし、参加するだけして約束を破ることを繰り返していると・・・・・・そう、信頼を失ってしまいます。

信頼を失うとどうなるか。コミュニティの中で「あの人は信頼できない」という噂が広がりかねません。すると、人間関係は広がらず、まじめに取り組んでいれば得られた機会が得られなくなります。

加えて、ソフトウェアの業界は広いようで狭く、とくに同じコミュニティに属するようなエンジニア同士は仕事の上でも関わることがあります。コミュニティ活動でよくない行いをすると、場合によっては「**さんとは仕事ができません」と言われるなど、本業にも影響してしまう危険があるのです。

このような、コミュニティにおいて信頼をなくすことを防ぐにはどうするか。わたしは「仕事と同様に振る舞う」ことだと考えています。約束は守る。もし守れない可能性が出てきた場合はすぐに連絡し、相談する。逆に、困っている人がいたら積極的に助ける。家庭の事情などで活動できない場合はきちんと申し出る。

当たり前のことを当たり前にやっていれば、信頼をなくすことはありません。

気をつける点2:炎上

もう一つ注意が必要な点は、炎上です。これは皆さんどんなものかご存じかと思います。

とくに技術的な内容をブログに公開する際など、炎上が心配でなかなか踏み出せない・・・・・・と耳にすることもあります。ネットニュースや動画投稿サイトなどと異なり、エンジニアが書くような技術ブログなどで炎上をすることはまれなので、過度に心配する必要はないでしょう。

エンジニアのコミュニティ活動でありがちな炎上原因は「ツールや技術、業態などを無根拠に悪く言った」「初級者をバカにした」などです。

こうした炎上を回避する意味も込めて、わたしが誰かにコミュニティ活動を勧める際によく言っていることがあります。

それは「技術に対して誠意を持つこと」です。

技術について自分の好き嫌いや要不要があるのは当然ですが、それをもって誰かを攻撃するのは違います。発言したり文章を書いたりする際には、自分の都合や好みなどは一端置いておいて、ひとつの技術として捉える。もしどうしても批判をする必要があるならば、きちんとした根拠に基づいておこなう。これが大切な心がけです。誠意を持っていれば、炎上のリスクはグッと減るでしょう。

初心者にもオススメな活動内容

ここからは、コミュニティ活動をはじめるにあたって初心者にオススメなものをご紹介します。

この記事の冒頭で挙げたコミュニティ活動の例は、どれもハードルが高く感じられますよね。その要因は、いずれの活動も一定のスキルや活動期間が求められる点だとわたしは考えています。

初心者の方はその逆、特別なスキルが不要で、一回あたりの所要時間が短いものから始めるとよいでしょう。もっとも簡単なのは、「誰かの活動に対するポジティブな感想を言うこと」です。

たとえば、イベントや勉強会に参加したとき。そこでは、講師や登壇者がなんらかの講義や発表をしています。その講師や登壇者に対して質問をしたり、感想を伝えたりする。もし会場に居れば直接話しかけて伝えてもいいですし、あとでSNSで感想を送ったり、自分のブログなどに書いたりしてもいいでしょう。

講師や登壇をする人は、プライベートな時間を削って準備をし、自分の知見や経験を他人に共有してくれています。そうした方々がもらってうれしいのが、反応です。

これはイベントで発表した人に限りません。イベントを運営している人、技術書を出版している人、OSSを公開している人、などすべてに共通します。ためになった、見て・聞いて・読んで・使ってよかった、などの反応があれば「次もがんばろう」と思える、これは誰しもそうですよね?

ポジティブな感想を伝えることで、その活動が続いていく。結果として、コミュニティが盛り上がっていく。これも立派な貢献、コミュニティ活動です。

小さな一歩からはじめよう

今回はエンジニアのコミュニティ活動の概要と、初心者の方にオススメの第一歩として「ポジティブな感想を伝えること」を紹介しました。

コミュニティに参加しても、最初のうちは情報や知識などを受け取ることがほとんどになるでしょう。しかし少しずつでもいいので、コミュニティへの貢献にトライしてみてください。

小さな一歩が、3年後5年後の飛躍につながることを願っています。

(文:伊藤 由貴

presented by paiza

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