はじめまして!たけもこと申します。フリーライターです。
まず、わたしのキャリアをざっと紹介させてください。新卒で入社したヤフー株式会社(以下、ヤフー)を退職後、代表とわたしだけが在籍する極小ベンチャー企業に転職。その後、フリーランスとして独立し、今に至ります。会社の規模から働き方まで、環境を大きく変えるキャリアチェンジをしてきました。
働く環境によって、求められる資質は異なるもの。キャリアを築いていくうえで、自分の特性が活かせる環境を知っておくに越したことはありません。そこで今回は、大企業、ベンチャー、フリーランスでのキャリアを経て得た、それぞれの環境で持っておくべきマインドセットについてお話しします。
目次
給料以外の “報酬” を自分で決める 。大企業で試されるのは「楽しむ力」

大企業のように、組織として成熟した企業では、チームやメンバーの役割がハッキリとしています。しっかりと仕組み化され、正常に稼働し続けられる基盤の強さも、大企業たる所以です。
大企業で求められている資質として、目標あるいは目的に対して「いかにオリジナルのスキルを発揮できるか」というよりは「いかに適切なアプローチをして、いかにナレッジシェアできるか」という点があると思います。もちろん、業務の内容によりけりですが。
多くの人が働く仕組みのなかでは、社内で共有しやすい再現性のある方法が重宝されるのは仕方のないことです。しかし、再現性の高い手法から生まれた業務はマニュアル化され、さらにルーティン化しやすい。
たとえば、わたしはヤフーに在籍していたころイベントの運営を担当していましたが、発生する業務はほとんどルーティン化できるものでした。オンラインイベントを実施する際、実際におこなっていた業務の一部を紹介します。
・集客
お取引先に送るご案内メールは、基本的に定型文。日時やタイトルなど、イベントごとに異なる部分のみを変更して作成していました。
・アンケート集計
イベント終了後に送付するアンケートの集計業務です。比較をするため、イベントごとにアンケート内容が大きく変わることはないので、集計の手順も変わりません。
上記のような仕事も、イベント担当になったばかりのころは新鮮で楽しめていました。しかし、回数を重ねるごとに「慣れ」と「飽き」が押し寄せるようになり、モチベーションが低下。ルーティン化された業務には、個性を反映する余白がないので、モチベーションが湧きづらかったのです。間違いなく必要なはずの業務を「自分じゃなくてもできる仕事」のように感じて、成長できていない状況に焦りを感じていました。

このままではいけない!と思い立ち、導入したのが「給料以外の報酬」の設定です。
たとえば、わたしは「アンケート集計」を通して「エクセルスキルの向上」を報酬に設定していました。データへの落とし込みができれば集計方法は自由だったので、毎回いろんな数式を試すことを実践。「一番カンタンに集計できる数式選手権」をひとりで開催していました。
オリジナル報酬を意識してからは「自分じゃなくてもできる仕事」が「スキルがない自分だから楽しめる仕事」に変わりました。個性を反映する余白は、自分で見つけるしかないという学びです。
「型破り」という言葉が意味するように、型があるおかげで生まれる余白もある。ルーティン化された業務を「誰でもできる仕事だ」と嘆くより、どうやって楽しむかを考えたほうがずっと楽しい大企業ライフを送れると思います。実際、社内で活躍している先輩は「型」と「自分のやり方」をうまく使い分けながら、仕事を楽しんでいるように見えました。
「正解」に頼らない。前例を作り出せるのがベンチャーの醍醐味。

ヤフーから転職した会社は、代表と自分ふたりだけの小さなベンチャー企業でした。もはや、ベンチャーという言葉が正しいのかどうかもわかりません。ヤフーにいたころには想像もできなかった経験をたくさんさせてもらいました。
想像できなかったことのひとつは、入社後はじめての仕事が「スカイダイビングをする」だったことです。とある企業のSNSキャンペーンで「当選者の夢を叶える」という企画があり、当選した夢のひとつが「スカイダイビング」でした。夢を叶えているシーンを動画にすることが最終的なアウトプットだったので、飛行機内の撮影ディレクションのためにわたしも同乗する必要があったのです。
他にも、同企画内で「野生のイルカと泳ぐ」という夢がありました。関東で最もイルカの出現率が高く、スケジュールが合って、予算に収まるツアーはどこか。いろいろな条件をクリアしながら選んだスポットも、当日の天候しだいではイルカに会えないかもしれない。そもそも、プロのダイバーでもない自分が、野生のイルカを映像に収めることはできるのだろうか。何が正解なのかわからないまま、ひたすら実行していくということの積み重ねでした。
結果的に、運よくイルカにも遭遇でき、(溺れそうになりながらも)当選者と野生のイルカが一緒に泳ぐ姿を映像に収めることができました。挑戦しない理由に「やったことがないから」を使うのはバカらしいな、とあらためて思った仕事です。

ヤフーにいたころは、上司から「このプロジェクトをやる正当性」や「この結果になった理由」など、とにかくアカウンタビリティを求められる場面が多かったので、ギャップに驚きました。
きっと仕事には「正解」があるものと、ないものがあるのだと思います。成功事例の要因を分析したり、ていねいにシミュレーションしたりと、少しでも成功確率を上げようとする努力はもちろん大切です。
しかし、あるかどうかもわからない「正解」に捉われず、「前例をつくるのは自分だ」という気概を持って突き進むことも、ときには必要です。進んだ先の結果が成功であれ失敗であれ、道中で得た「進み続ける力」は自信に繋がります。
いま、フリーランスとして独立できているのは、ベンチャー時代にこのことを学べたからだと痛感しています。
フリーランスになったら「信頼口座」を開設しよう

今年の春に独立した筆者ですが、新卒のころから副業でライターとして活動していたので、フリーランス歴は今年で5年目に突入します。
フリーランスとして生きていくうえでは、過去にお仕事をしたことがあるクライアントからリピートで依頼してもらうことが重要です。新しい案件をガンガン受注できる方は例外ですが、そういう方は一握りでしょう。
そして、リピートしてもらうためにわたしが大事にしているのが「信頼口座」という考え方。この言葉はスティーブン・R・コヴィー著『七つの習慣』から引用しています。著者による造語で、人と人との関係で生まれる信頼を貯えておくことを、銀行の口座に例えた言葉です。
日頃から誠実に接していれば、多少の失敗をしたとしても信頼口座の残高で補えます。たとえば、普段は即レスの人が1度だけ返事を忘れていたとしても、それだけで契約を切られることはないはずです。
反対に、相手を不安にさせる行動ばかり取っていたら、信頼口座の残高はどんどん不足していきます。小さなことでも対立してしまう可能性がうまれるのです。ミス自体は小さかったとしても、それが引き金となって「もう依頼するのはやめよう」と思われるかもしれません。
信頼が大事なのはわかるけど「口座」である必要はあるのか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。たしかに「信頼関係」と置き換えても言いたいことは変わらないでしょう。しかし、信頼口座のおもしろいポイントは、まるでお金のように「引き出す」という概念が存在することです。

フリーランスになったからには、当たり障りのない仕事ばかりしていては生き残っていけません。自分だからできることや、少し攻めた企画を提案していくことが必要になります。よっぽど提案力が高ければ、もしくは最初からそれが求められていれば、新規のクライアントにそういった提案ができるかもしれません。
しかし、わたしのように営業経験もなく、トークに自信のないフリーランスの方もいらっしゃることでしょう。そういったときに味方になってくれるのが信頼口座です。まずはしっかりと残高を増やして、ここぞというときに引き出す。「うまくいく根拠はないけど提案したいこと」の「根拠」の部分を信頼口座の残高で担保する、というイメージです。
フリーランスになって「できること」と「やりたいこと」を聞かれる機会が増えました。わたしも発注する立場になることがあるので、聞きたくなるクライアントの気持ちがわかります。お互いが気持ちよく仕事するために、案件との相性が合っているかを確認したいのです。
参考までに、わたしの場合は、
「これまでは単発でライティング案件を受けることが多かったが、これからは企画からジョインしてより深くメディアにコミットできるようなライターになりたい」
「地元の熊本をはじめ、日本の地域にはまだ発掘されていない魅力や可能性がたくさんあると思うので、フリーランスになって時間や移動が自由になった今、ローカルに携わるお仕事がやってみたい」
といった内容をお伝えしています。
自分だからできること、熱を入れてやりたいと思えることを明確にすることが、フリーランスとして生き残るカギになります。そしてできること、やりたいことの幅を広げるためにも「信頼口座の残高」は常に意識しておくことをオススメします。
マインドセットを柔軟にアップデートしていく

それぞれの働く環境に対応する形で書きましたが、紹介したマインドセットはどんな環境にいても通用します。
大企業で働いているとしても「信頼口座」の残高は多いほうがいいし、ベンチャーで働いているとしてもルーティン業務を楽しめたほうがお得。仕事に「正解」がないと思えるからフリーランスになる決意ができました。
環境を変える前に抱く不安のひとつに「これまでのやり方が通用するかわからない」というものがあると思います。でも、案外通用するものです。新しい視点が歓迎されることも十分にあり得ます。大事なのはひとつの考え方に固執しすぎないこと。環境に応じてマインドセットをアップデートする意識が、新しい道を拓くことにつながるのだと思います。
(文:たけもこ)
