わたしはQAエンジニアとして3か月前に転職をしました。他のIT系職種と同様にQAエンジニアのニーズも増えているため、転職活動自体は比較的スムーズにできたのではないか、と思っています。そんな転職活動をふりかえってみると、10年前に当時の上司から受けたアドバイスや、その後の自分のエンジニア活動がたまたまうまくハマったなという実感があります。

本記事では、そんな「本当の意味はわかっていなかったけれど、アドバイスを受けて行動した結果うまくいったしその意味も理解できました」という体験談をご紹介。特に若手のエンジニアの方や、若手を指導する立場の方の参考になれば幸いです。

上司からのアドバイス、Twitterで見かけたアドバイス

わたしは社会人1年目からQAエンジニアとして働いています。新人研修が終わって最初に配属されたチームの上司はベテランのエンジニアでした。そんな上司から早々に「伊藤君、転職サイトに登録しておいたほうがいいよ」というアドバイスを受け、とても驚いたのを覚えています。

辞める・辞めないにかかわらず、自分の市場価値を常に測っておくことが大事だよ

また、当時Twitterでフォローした他社のエンジニアも、似たようなアドバイスをつぶやいていました。

転職活動は、転職する気になってからじゃなくて、転職する気がないうちからやっておいたほうがいいよ

新人だった自分はこれらのアドバイスを見聞きして「なるほど、そういうものなのか」と思い、とりあえず目についた2,3サイトに登録をしました。ただ、社会人1年目では特段書けるようなキャリアもなく、ほとんど登録したまま放置の状態になっていました。

市場価値を高めるチャレンジ

ネット上では「なんとなくすごそうなエンジニア」がよく目につく一方、自分は転職サイトに登録しても特に書けることがない。漠然と不安にかられ、そして「市場価値を高めねば!」と考えるようになりました。

しかし、QAエンジニアが市場価値を高めるための方法を、当時は全くわかっていませんでした。たとえばモバイルアプリケーションの開発者であれば、自分が作ったものをストアで販売して実績にできます。他のジャンルの開発者も、GitHubなどで自身の書いたコードを公開しておけば、スキルを判断してもらえますね。

もちろんこれらの活動をQAエンジニアが行ってもよいのですが、開発のプロと比べてしまうと見劣りします。また、QAとしての市場価値を高めることとはズレてしまいます。

そこで思い立ったのが、とにかく社外で認知をされよう、ということ。そのために、ブログを書いたり、Twitterで情報を集めて発信したり、などの活動からスタートしました。思い返せばだいぶ小手先のことしかできていませんでしたが、結果的にこれがコミュニティとのつながりを生むことになりました。

コミュニティ活動への参加

Twitterで情報発信をしているうちに、自分と同じQAエンジニアと知り合い、会話をする機会も増えてきます。その結果、業界の色々な情報が入ってくるようになり、様々なコミュニティとそこで開かれている勉強会などのイベントがあることを知りました。

もともと「すごいエンジニアは勉強会とかで発表しているらしい」という断片的な知識はあったので、自分も少しでも近づきたいと、いくつかの会に参加。こうしたエンジニアの会に参加して感想をつぶやいたりブログに書いたり。そしてそのつながりで知り合いが増えたりと、コミュニティ活動に参加したことで自分のインプットとアウトプットのサイクルが回っていきました。

そこからは仲間と一緒に勉強会を開いてみたり、登壇の機会をいただいたり、知り合いの紹介でカンファレンスの実行委員として運営に関わらせてもらったり。このカンファレンス実行委員の仲間とはソフトウェアテストに関する書籍の出版もするなど、運と縁に恵まれた結果、活動の幅や他のエンジニアとの関係を広げていくことに繋がりました。

転職活動をして気づいた「積み重ねの力」

そんなふうにコミュニティ活動を楽しみながら過ごしてきたなかで、たまたま転職活動をする機会が訪れました。転職活動にあたっては、転職サイトでのスカウトや知り合いからのお声がけをいただいて、そこから興味がある会社さんとカジュアル面談に進みました。

スカウトメッセージやカジュアル面談でのお話でわかったのは、業務経験に加えて過去行ってきたコミュニティ活動についても評価してもらえる、ということです。たしかに「市場価値を高めねば」とは思っていたものの、最終的には「楽しいから」続けていたことが役に立つ、という結果になりました。

わたしは特に自己アピールが得意ではありませんし、面接などの場では緊張してしまってあまり上手には話せないタイプの人間です。そのため、採用面接の場で自分の価値を過不足なく相手に伝えられるかというと、おそらくできません。しかし、採用の担当者は、Googleで名前を検索したり、転職サイトの自己PR欄に記載していたURLを開いたりして、過去のコミュニティ活動の結果やブログなどを事前に見てくださっていたようです。

もしこれまでの積み重ねがほとんどなかったとしたら、わたしは採用面接のわずか1時間で勝負をしなければなりませんでした。しかし実際は、これまで積み重ねてきた10年間で勝負ができた。恥ずかしながらこれは転職活動をやってから気づいたことです。決してしっかりしたキャリアプランを立てて、目標に向かってやってきたわけではありませんでした。

これらの活動で、直接的に市場価値を高めたかはわかりません。優秀な、市場価値が高いであろうエンジニアの中にも、コミュニティ活動やSNSなどをしていない方はたくさんいます。しかし、これらの活動によって、少なくとも採用する側からみてわたしの市場価値を見積もりやすくなったのではないか、と思っています。

「転職活動は転職する気がないうちから」の本当の意味

「市場価値を常に測っておいたほうがいいよ」「転職活動は転職する気がないうちからやっておいたほうがいいよ」というアドバイスのおかげで、少なくとも転職活動時には困らず、よい縁に恵まれたと思っています。(もちろん、これがよい決断だったかどうかは今後の自分にかかっています。)

ただし、最初からその真の意味を理解できていたわけではありませんでした。単に転職サイトに登録するだけでは何も起こりません。よく言われる「スキルの棚卸し」もとても大事だと思いますが、それだけでもきっと足りません。
特にITエンジニアは、自分の持っているスキルを他人の目に触れる形にしやすい職種です。

転職する気がないうちから、ブログでもSNSでも、小さなものからでもよいので自分の知見・経験・やりたいことなどを発信していくこと。そしてそれを継続すること。そうすればいざ転職活動を始めたときに、相手が自分の能力や興味を適切に評価してくれる。
これが、「転職活動は転職する気がないうちからやっておいたほうがいいよ」の本当の意味なのだと考えています。

特に若手のエンジニアのみなさんは、転職活動はぜひ転職する気がないうちからはじめてみてください

(文:伊藤由貴

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