「入社3年以内の退職はヤバい」
おそらく多くの就活生、そして、新卒入社の社員の方が耳にしたことのある言葉だろう。私が過去に新卒をターゲットとした就活メディアの運営に携わっていた中でも、この言葉はさまざまな記事で見かける言葉だった。要は「まずは大体3年くらい同じ場所で頑張ってみないと、スキルが身につかない」ということだ。
ところが当の私はというと、新卒の会社を10ヶ月で辞めている。3年どころか、1年すらも続かなかった。
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転職・複業を経て、携帯販売員からWebライターへ
私は、今でこそフリーランスのライターとして文章を書く仕事に携わっているが、新卒で入社したのは携帯販売の代理店だった。ようやく重い腰を上げ、就活をスタートしたのが大学4年生の6月頃。どう考えても、一般的なスタートよりも遅い。当時の自分はやる気のない就活生の典型でしかなく、9月になって就活エージェントの紹介経由でようやく内定先を決めた。
全ての人に当てはまるわけではないが、学生に関わらず、世の中は“好きなことを仕事にしたい”人たちで溢れている。しかし、好きなことは後から見つかる場合もあるから厄介なのだ。私の場合、文芸学科で4年間文章の勉強をしていたにも関わらず、自分自身が課題以外で筆をとることは一生ないと思い込んでいた。学生時代の自分が今の自分の職業を知ったら、さぞ驚くだろう。
いざ社会に出て、仕事をする中で、自分の興味を見つけていく人もいる。「よーいどん!」で始まる就活のタイミングまでに、本当に好きなことを見つけられた人は素晴らしくラッキーなだけだ。だからこそ、さまざまな理由で入社3年以内の退職を検討している人には、ぜひ一歩を踏み出すことをおすすめしたい。
ただ、この一歩というのは「とりあえず会社をやめた方が良い」と無責任に背中を押すわけではない。ひとまず、どんな道が新卒3年目の若手にあるのかを知るところから始めよう。
早期の転職は「不利にならない」
「入社3年以内の退職はヤバい」という呪いは、無意識に私たちの恐怖心を煽る。
「どこの企業も雇ってくれなかったらどうしよう」
「履歴書に傷がつくんじゃないの?」
さまざまな不安がつきまとうからこそ、“辞めたいけど(漠然とした恐怖で)辞められない”若手の社員も多いのではないかと思う。結論から言うと、早期の転職は会社との相性によっては不利にならない。むしろ第二新卒の場合、ある程度の社会人マナーが身についているので、新卒よりも教育コストがかからないとみなしてくれる会社もある。特に勢いのあるベンチャー企業や、若手の人材が積極的に活躍する風通しの良い企業は、第二新卒採用との相性が良い。
しかし、全ての場合において早期の転職が良いとも限らないのも事実だ。例えば、ネームバリューのある大手企業は、どうしても新卒採用を重んじている傾向がある。十分にキャリアを培った状態ではない第二新卒の場合、通常の転職よりもハードになることが予想できる。
ちなみに私自身は携帯販売の代理店を退職した後、就活領域のWebメディアに強みを持つ事業会社に入社した。第二新卒歓迎の自由な社風だったこともあり、約20名いたグループの平均年齢は26歳。その全員が転職経験者である点からも、入社3年以内に退職をする若手社員が多いこと、そして皆が入社3年以内の転職へ同じような不安を抱えていた事実を知った。
若いうちの転職でよかったと思えたことは、やはり教育の機会を与えてもらったことだ。第二新卒であれば、実際のところポテンシャル採用に近い目線で面倒を見てもらえるのは最大のメリットだろう。運が良ければ、同期や仲間もできる。「3年同じ場所で頑張ってみないと、スキルが身につかない」というのも、もちろん一理ある。しかし、「業種を変えてやり直したいなら、なおさら早めの転職を」というのも忘れないでほしい。
若手こそ独立前の副業はマスト!
最近では、副業OKの会社が増えてきた。さらに、クラウドソーシングが注目を集めたことで、フリーランスという言葉を以前よりも耳にする機会が増えたと感じる。将来的にフリーランスを目指す若手こそ、独立前の副業はマストだ。
私自身、前職での副業を経てフリーランスとして働いているが、会社員時代から繋がりのあるクライアントさんに現在もお世話になっている。さらにいうならば、前の会社からも仕事を貰っているので、当時の本業・副業の二つの軸で知り合った方々と今でもお付き合いが続いていることになる。「フリーランスは人脈!」という言葉があるが(私はこの言葉があまり好きではない)、スキルが浅い若手のフリーランスにとって自分と働きたいと言ってくれる存在は宝でしかない。安定した収入を得ながら、やってみたい仕事に手を出せる「副業」という選択肢は一度試してみて損はないはずだ。
ではなぜ、副業のまま働く選択肢を捨てて、フリーランスとして独立したのか。
私の場合、主に「プレイヤーとして仕事ができなくなってしまった」ことが1番の理由だ。徐々に大きな仕事を任せてもらえるようになるにつれて、現場のコンテンツ制作ではなくマネジメントの業務が増えるようになった。企業で働くことの良さであり弊害でもあるのだが、組織に属するとは、あくまで組織としての成長が優先される。
もちろん個人の意思を尊重してくれる会社も数多く存在する。しかし私の場合、会社に求められる役割と自分の求めるキャリアにミスマッチが起こってしまった。転職という選択肢も考えなかったわけではないが、副業をしていたからこそ、この機会をチャンスにしてフリーランスへと踏み出す選択肢を持つことができた。
「組織で働く」と「自分のやりたいことを追い求める」は、必ずしも両立できるわけではない。だからこそ、まずはその両方を兼ね備えた副業をやってみて、自分が何を感じるのかを試してみると良いだろう。
Webライターは稼げないって本当?
「フリーランスのライターになった」というと、よく聞かれる質問がある。
それは「ライターって稼げないんでしょ?」という質問だ。特に若手の実績のないフリーランスにとって、収入ゼロは現実味のない話ではない。
ただ、この質問においても「入社3年以内の退職はヤバい」説と同様で全ての人に当てはまるわけではない。実際に、私が編集者だった時代にフリーランスで契約していたライターの半数以上が、正社員で働いていた私の2倍の額を貰っていた。毎月の請求書を作成しながら、「フリーライターってこんなに貰えるの?!」と目を丸くしたことを覚えている。身も蓋もない話だが、現に私も会社員の時より収入はアップした。
「Webライターは稼げない」と言われる理由は、クラウドソーシングを中心に極端な低単価の案件が溢れかえっているからだろう。ライターという職種について、報酬面においてあまり良いイメージのない方もいるかもしれない。しかし“きちんとした会社”も存在していることは、声を大にして伝えたいところだ。
SNS世代だからこそ『キラキラフリーランス』に騙されないで!
場所や時間に縛られずに、好きな場所で好きに働くことができるのはフリーランスの最大の魅力だろう。最近では、フリーランスの生活を発信するSNSアカウントも増えた。InstagramやYouTubeでは、「好きなことを仕事に!」を売り文句にフリーランスになることを後押しするようなスクールの広告を見かける機会が増えたように思える。
しかし、前提として業務委託で働くフリーランスは数多くのリスクを抱えた働き方であることは覚えておきたい。景気の悪化によって、収入に陰りがみえてくることも。また、1つの会社に依存して仕事を任されていた場合、その会社の業績が悪化して契約を打ち切られると、途端に収入はゼロへと転落する。
インターネットでは、フリーランスの魅力だけをあえて切り取った宣伝や広告、個人のブログも多い。もちろん本当の部分が含まれているケースもあるが、実際に自分の収入がゼロになる可能性もリスクとして理解しておくべきだろう。
「再起する体力」が若手の最大の強み
「新卒入社から3年は仕事を続けるべき」の鉄則を破ってしまっても、どこにも再就職できないことはまずない。しかし環境によっては後戻りできない場合もあるため、自分が納得した形でキャリアを築いていくことが何よりも大切である。転職やフリーランスという選択肢の狭間で悩んでいる方は、まずは「副業」という形で新しい仕事に挑戦してみるのも良いだろう。
最後に、若手の最大の強みは「再起する体力」にあると思っている。もちろん下準備は必要だが、時には失敗も経験だ。一度きりの人生だからこそ、やってみたいことをやってみるのも良いのではないだろうか。
(文:すなくじら)