130以上の国と地域で製品を販売するJTグループ。たばこ事業に加え、医薬事業と加工食品事業も展開している。そのJTグループ全体のIT部門を統括しているのが、執行役員の下林 央さんだ。以前は大手製薬会社で働いており、2023年にJTへ入社している。

長年にわたりキャリアを積み重ねてきた下林さんに、仕事において意識している7つのルールを聞いた。

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下林 央さん 日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当

下林 央さん プロフィール
日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当。
1995年に山之内製薬株式会社(現アステラス製薬株式会社)に入社し、20年以上にわたり国内外でさまざまなIT業務に従事。2012年、アステラス製薬株式会社 情報システム部 部長 戦略企画グループリーダー。2017年、武田薬品工業株式会社にグローバルIT リージョナルCIOアジア&MSCQHオフィスヘッドとして入社、2019年に同 グローバルIT ストラテジー&オペレーティングモデル グローバルヘッド。そのほか、米国デジタルセキュリティ関連NPO非常勤取締役、グローバルSaaSスタートアップ創業にCFOとして関与。2023年1月、日本たばこ産業株式会社 IT担当執行役員に就任、JTグループ全体のITを管掌、現在に至る。

Rule1.自分を信じてチャレンジする

私は新卒で製薬会社に入社して、前職も別の製薬会社で勤務をしていました。社会人人生の大部分でITに関わり、さまざまな業務を国内外で経験してきています。JTにも医薬事業はありますが、主力はたばこ事業ですので、扱っている製品構成は大きく異なります。このキャリアチェンジを意外に感じる方もいますが、現在の職務もITに関するものなので、私のなかでは転職する際のハードルとはなりませんでした。

職務の内容は大切ですが、それと同様に自分自身のこれまでの知識や経験を生かせ、それが企業の発展に少しでも寄与できるかという点も重要と考えています。その観点では、業種や利益構造、従業員数や工場数、オペレーションしている国の数など、これまで勤務してきた会社とJTは類似していました。これらをITの視点で捉えることで、おおよその技術的な構成を想像できます。それに自分の経歴や展望を掛け合わせ、お互いにメリットが見出せそうかというように考えていますね。

このように、自分が業務をしている姿や活躍できている姿を少しでもイメージできる会社かどうかを、まずは考えるようにしています。そのうえで、最後はこのチャレンジをしなかった場合に後悔するかと思うかどうかで判断してきています。自分を信じてチャレンジしても思ったとおりにいかない可能性は大いにありますが、しない後悔よりは、チャレンジした後悔のほうがいいかなと思います。

Rule2.最新技術は自分で試して検証する

下林 央さん 日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当

JTは、多くのみなさんが抱いている堅い印象とは異なるところが多いと思います。職場としては多様性があり、働き方も柔軟な会社です。服装も割と自由で、Tシャツなどラフな服装で仕事をしている人もいます。コロナ禍をきっかけに、リモートワークが浸透しました。現在も変わらずにリモートワークができますので、働き方は各個人の業務とライフスタイルのバランスに任されています。もちろん、自分の業務上の責任を果たし、目標達成をすることが前提です。

私自身もリモートワーク派です。業務のスケジュール次第ですが、出社しない週もあります。

リモートワーク用に、自宅に「スターリンク」(衛星を使った通信サービス)を設置しました。実務的な技術検証とともに、日本は自然災害が多いので、非常事態時の通信手段としての評価を兼ねて使用しています。いざというときに備えて、今後はBCP上必要な場所にこのような通信サービスを配備することも考えられるかもしれません。

Rule3.「支えるリーダーシップ」を目指す

下林 央さん 日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当

私にはカリスマ的なリーダーシップはほとんどないと思っています。また、各個人にはそれぞれの特徴や強みがあり、自身のケイパビリティには限界もあるのが一般的です。私自身も同様です。従って、自分自身の強みを超えることや、何か大きなことを実行するには必ずチームの力が必要です。

チームに所属する各個人がベストのパフォーマンス、もしくはそれ以上のパフォーマンスを出してくれることが成功につながります。そのために業務しやすい環境をつくることが、マネージャーやリーダーの大きな役割の1つだと思っています。

私自身が普段志向しているのは、「サーバントリーダーシップ」が一番近いのかもしれません。引っ張るというよりは、支えるリーダーシップです。具体的には、どちらのほうに行くのかといった方向性を決めますが、それぞれが自ら考えオーナーシップを持って進めてもらうために、余白をつくり、ピンポイントでは示しません。

実現するためのリソースを獲得することもリーダーの役割と考えています。実行にあたってはチームメンバー中心におこないますが、何かあれば最終的な責任は自分が取ると決めています。

Rule4.メンバーに考えてもらうよう行動する

下林 央さん 日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当

執行役員のような経営層は会議が多いと思われるかもしれませんが、JTでは権限委譲が進んでいますので、経営陣が出席する会議はあまり多くありません。意見を求められた場合には考えを述べますが、場合によっては明確には答えず、自身で考えてもらうよう促すこともあります。それにより各個人の成長につなげてほしいからです。

全体的な戦略を策定していますので、それをメンバーが各々担当している領域で意味することに翻訳して自律的に企画し、実行してもらえればよいと考えています。戦略に整合していてロジカルに考えられているか、ケイパビリティは十分か、代替策を含めて幅広く捉えられているか、チャレンジはあるかといった点を見て判断するようにしています。

Rule5.一次情報をもとに自分の解釈をする

下林 央さん 日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当

情報収集する際は、一次情報を取りに行くようにしています。誰かが解釈したものではなく、できる限りソースに近いところに自分で行き、情報を受け取ることを心がけていますね。そうした一次情報をもとに、付随する周辺の情報を含めて自分の解釈をするようにしています。

また、視察する機会があれば積極的に参加するようにしていますし、チームメンバーが集まる会にはなるべく参加するようにしています。リモートワークで業務をしているメンバーが多いですし、出社する際には業務上必要な面会や会議をする場合が多いので、機会を捉えて出向くようにしています。

Rule6.オフになる1人の時間を大事にする

下林 央さん 日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当

私のなかでは、仕事とプライベートの境界線は薄くなってきている気がします。明確な切り替えが必要なときや職種はあると思いますが。テクノロジーの進化によって、望まずとも仕事とプライベートが同時に存在するという場合も多いのが現実ではないでしょうか。

そのため意識的に、完全にオフになる時間をつくっています。また、健康を維持するために運動と睡眠には気を付けています。10年ほど前からランニングに挑戦しており、これまでに世界6大マラソン大会のうち5つを完走しました。トレーニングを含め走っているときは、1人になれる時間をまとめて取ることができます。戦略的なことや将来のことに思いを巡らし、さまざまな考えや情報を再構築する時間としては最適です。

睡眠についても同様に1人の時間だと思います。睡眠中は頭のなかで無駄な情報が取り除かれて意外と考えが整理されたり、いいアイデアを思いついたりすることがありますね。

Rule7.オンリーワンとセラヴィ(C’est la vie)

下林 央さん 日本たばこ産業株式会社 執行役員 IT担当

私は昔から心がけていることの1つに、ナンバーワンではなくオンリーワンを目指すということがあります。個人的なブルーオーシャン戦略とでもいうのでしょうか。ナンバーワンはいつしか変わるものではありますが、オンリーワンはそもそも1人なわけですから競争はありません。

現実にはなかなか難しいことも多いのですが、このオンリーワンをどのように形づくっていくか、理解してもらうかというところに工夫の余地があります。

また、どのような業務にも必ず楽しさが隠れていると思います。小さくてもいいので何かしらの楽しさを見つけたり、つくったりして、モチベーションにつなげて業務に取り組むようにしていますね。

業務でもプライベートでも楽しいことも大変なこともあるのが普通です。そんなときは、フランス語の慣用句である“セラヴィ(C’est la vie)” 「それが人生だ」という心持ちで、

良くも悪くも1つのことにとらわれすぎることなく、常に前向きにポジティブでいるようにしています。

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(取材/文:川崎博則撮影:野田涼

― presented by paiza

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