売上3兆7,560億円、連結従業員数12万4,000人。富士通グループは、ITサービスにおいて日本でシェアNo.1、そしてグローバルにもデジタルサービスを提供しているテクノロジーカンパニーだ。

2019年に「DX企業」となることを宣言し、さまざまな取り組みを進めてきた。その中心人物である富士通株式会社(以下、富士通) 執行役員 EVP CDXO、CIO 福田さんに、変革におけるこれまでの取り組みについて話を聞いた。

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富士通 執行役員 福田譲

福田 譲さん
富士通株式会社 執行役員 EVP CDXO、CIO。1997年、SAPジャパンに入社後、ERP導入による業務改革、経営改革、高度情報化の活動に従事。2014年7月、SAPジャパン代表取締役社長に就任。顧客と協働した新たなイノベーション創出に注力し、日本型のデジタル変革に取り組んできた。2020年4月、富士通へ入社、執行役員常務 CIO兼CDXO補佐、2023年4月から現職

富士通の歴史上はじめてパーパスを言語化

2020年、富士通へ入社した福田さん。現在までに、どのような取り組みを進めてきたのだろうか。

富士通 執行役員 福田譲

「私の仕事は、システムが古いから新しくするといったものではありません。いまの時代に会社がどうあるべきかを再定義し、自分たちのありたい姿を決めて、現実とのギャップをテクノロジーの力で埋めていく。そのためのリードをしていく仕事だと思っています。

経営陣が避けがちな『我が社はなにで勝つのか』といった議論を仕掛けたり、経営陣を横断して課題の共通理解をつくったりする。現状の位置を社内に閉じることなく俯瞰し、今後我が社が東西南北のどこに行くのかを皆で決め、そのために必要な変革を特定し、テクノロジーを通じてギャップを埋めていくことが仕事です」

福田さんが富士通に入社すると同時に、DXにまつわるコンサルティング事業を行うグループ会社「Ridgelinez(リッジラインズ)」が設立された。そのRidgelinezが提唱する「4X思考」というフレームワークを富士通は活用している。

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4X思考は、人の体験に着眼する「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」と「EX(エンプロイー・エクスペリエンス)」、ビジネスを高度化させる「MX(マネジメント・エクセレンス)」と「OX(オペレーショナル・エクセレンス)」のXを連携させる。そして、中核に「パーパス」を据えることにより、包括的な変革を実現するフレームワークだ。

パーパスを決めるため、富士通が1935年に通信機器メーカーとしてスタートして以来はじめて、自分たちが何者なのか、何者になりたいのかを言語化していった。

「富士通はパーパスとして『イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと』を掲げました。ただ、このパーパスと現実でわれわれが行っている仕事の間には大きなギャップがあります。4Xを通じて、自分たちがなりたいと決めた姿になることがDXです」

パーパスを踏まえて、世界中の富士通社員がすべての意思決定や行動のよりどころとすべき原理原則「Fujitsu Way」を改定した。現在のFujitsu Wayは、「パーパス」「大切にする価値観」「行動規範」の3つから構成されている。

4X思考とパーパスドリブン経営、デジタルやデータなどのIT改革関連で、合計約150のテーマを洗い出した。それらを3か月ごとに全体把握し、分類と優先順位付けをしていき、変革を進める体制を整えた。

ITやデジタルは、目的ではなく手段

2020年10月より本格始動した全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」。顧客や社会のDXを支える企業となるためには、富士通自身を変革する必要があると考えてはじまったプロジェクトだ。

フジトラには、「経営のリーダーシップ」、「現場が主役・全員参加」、「カルチャー変革」という3つの主軸がある。

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1つ目の主軸である「経営のリーダーシップ」では、富士通の代表取締役CEO 時田隆仁さんが2023年3月までCDXOを兼務していた。それほどまでに、富士通は自分たち自身のDXを重要だと考えている、ということだ。

福田さんはCDXO補佐を務め、方向性が決まった2023年4月からはCDXOの役割を引き継いでいる。現在も時田さんをはじめとした経営メンバーがステアリングコミッティに入り、経営目線で会社のあらゆることを議論している。さらに、CEO室に推進部門を設置し、「DX Designer」という職種をつくって変革の仕組みと仕掛けをデザインしている。

2つ目の主軸である「現場が主役・全員参加」では、各組織にDXの責任者となる「DX Officer」を設置、約60名のDXOが集まってプロジェクトを推進している。社内SNSに立ち上げたDXコミュニティには、9,000人以上の社員が参加しており、そのうち約650人の有志が「フジトラクルー」として自発的にフジトラに関わっている。

3つ目の主軸である「カルチャー変革」では、全グループ社員の8割にあたる約10万人が社内SNSをアクティブに使い、お互いにつながってコミュニケーションを取っている。変革マインドは着実に広がっている。

フジトラはデジタルの取り組みに限らない。どのようなことでも富士通がよくなることであれば、それはフジトラの取り組み、と定義して進めている。

「1時間のミーティング時間を50分に短縮するのもフジトラですし、テレワークが可能になったこともフジトラです。なにかしらエンゲージメントや生産性が上がり、富士通にとってプラスなものはなんでもいいですし、応援しますという定義で取り組んでいます。ただ、富士通はグローバルで約12万人の従業員がいますから、なにかをトランスフォーメーションしようとしたら、デジタルは欠かせません」

ITやデジタルはあくまで手段であり、目的ではない。時代に合わせた変革のために有効なことを、デジタルを有効に活用しながら皆で取り組むという仕掛け・仕組みがフジトラなのだ。

サステナブルな世界の実現を目指す「Fujitsu Uvance」

開始から約4年が経ったフジトラ。この間に、富士通ではなにが変わったのだろうか。

「まず明確に変わってきたのは、社内のカルチャーです。もう1つ大きいのは、東西南北どこに行くのかという将来に向けた会社の戦略・方向性が決まったことです。パーパスに沿って、やることとやらないことを決めました。その1つとして、富士通だからこそ価値をつくれることに磨きをかけていくために『Fujitsu Uvance』という事業モデルを立ち上げました」

Fujitsu Uvanceは2022年4月に1,000人規模の体制でスタートした。現在は3,000人規模へと拡大し、2025年度に7,000億円の売上を目指している。

Fujitsu Uvanceでは、サステナブルな世界を実現するために7つの重点注力分野を定めている。社会課題を解決するクロスインダストリー(ビジネスにおける異業種連携)の4分野と、それらを支える3つのテクノロジー基盤が注力ポイントだ。

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「クロスインダストリーの4分野では、製造や物流といった伝統的な業種の分け方をしていません。従来の分け方から1段上にポジショニングしていることがポイントです」

クロスインダストリーの実例を紹介する。2024年1月、サステナブルマニュファクチャリングの分野で、東京海上レジリエンス株式会社・東京海上日動火災保険株式会社と協業を発表した。サプライチェーンにおけるリスクを可視化するサービス『Fujitsu Supply Chain Risk Visualization Service(SCRV)』の提供を、3社協業で開始した。従来はIT業界の中でパートナーエコシステムを築いてきたが、Fujitsu Uvanceでは、異業種のプレイヤーと一緒に新たな価値を創出することに挑戦していく。

DX成功のカギとなる3つの取り組み

富士通はDX推進指標を非財務指標の1つに掲げて、全社レベル、およびDXOを配置した部門ごとにDXの成熟度を細かく計測してきた。2020~2022年度の中期経営計画では目標値を達成、DXへの取り組み姿勢のレベルを全社的に上げることについては順調だ。その理由を福田さんに聞くと、3つのポイントを話してくれた。

「1つ目は全社体制で進めてきたことです。富士通グループ・グローバルの役職上位者約1000人の人事評価に、各部門のDX推進を組み込みました。2つ目は経済産業省が発表したDX推進指標を客観的な指標として最大限活用したことです。第三者の立場でRidgelinezに入ってもらい、DX推進指標の9つの視点で通信簿を細かくつけ、改善・改革のサイクルを回しました。

3つ目は社内SNSが変革を拡大・加速するプラットフォームとして機能したことです。2020年の開始当初は低い使用率でしたが、現在では社員の8割以上がアクティブユーザーで、以前とは比較にならないほど、部門や役職を超えた議論や情報共有、意見交換が行われるようになりました」

社内SNSには社長の時田さんも定期的に投稿している。社長のコメントにほかの役員や一般社員がコメントをしており、皆が積極的に交流しているようすがうかがえた。

真面目な印象のある富士通だが、少しずつ変化している。全員がスーツで仕事をしていると思っていたのだが、富士通社内を歩いているとラフな服装の社員が多い。

富士通 執行役員 福田譲

「時田自身がドレスコードフリーを提唱し、自ら率先して服装を変えたことで、一気に広まりました。会社の中の雰囲気やコミュニケーション、人間関係もDXの大切な要素の1つと考えており、フジトラでは社内のクラブ活動を応援したりしているんです。

たとえば、社内に『FujiTube』という動画サイトがありまして、自由にたくさんの動画が投稿されています。いまの時代に合ったカルチャーへの変革につながっていると思いますね。中期経営計画に社員がなかなか興味を持ってくれないので、時田とCFOの磯辺のアバターが漫才形式で中期経営計画を紹介するという動画もつくられました。もちろん、本人たち同意のもとですよ」

FujiTubeを見せてもらうと、数多くの動画が投稿されていた。若い世代の社員も多い富士通。このように社内SNSやおもしろい動画を使って興味を持ってもらう取り組みは、カルチャー変革にもつながっているのだろう。

富士通が求めるのは多様なバックグラウンドを持った人材

富士通 執行役員 福田譲

富士通の採用計画では、2024年度のキャリア採用は計画数を定めずに2,000名以上、2025年度の新卒採用は計画数を800名程度としている。キャリア採用に関しては昨年度の2倍以上の数となる。どのような狙いがあるのだろうか。

「より多様で多彩で、さまざまなバックグラウンドを持ったタレントに入社してもらいたいからです。さきほどお話ししたFujitsu Uvanceのクロスインダストリーでは、いろいろな業種の掛け算をしながら、いままでにないものをつくりたいと考えています。たとえば、富士通で20年間保険業界を担当している人より、保険業界で5年間仕事をしている人のほうが保険のことをわかっているわけです。さまざまな業種でそれぞれに異なった経験を積んできた人たちが掛け合わさることでイノベーションを誘発したいのです」

富士通ではパーパスに共感し、自らのパーパスと重ね合わせて未来を描き「挑戦」をし、 周囲と「信頼」を構築し「共感」を引き出し合いながら進められる人材を求めている。大切にする価値観、行動規範についてはFujitsu Wayを確認してほしい。

富士通はいわば、「日本株式会社のDX本部」のような存在

今後、福田さんが富士通で実現したいと考えていることについて聞くと、「圧倒的な生産性」という回答が返ってきた。

「たとえば広報であれば、社内の調整や事務作業ではなく広報の業務をしたいですよね。マーケティングや営業の仕事も同じです。いまは、そうではない仕事が多い。とくに、日本は富士通も含めて全体的にその傾向が強いと思っています。生産性の悪いところは徹底的になくしたり自動化したりしていきたい。

富士通は日本全体でみると、日本株式会社のDX本部のようなもの。まずは自分たちが先陣を切って、なにをどこまでやれるのか経験して、それをもとにお客さまの真のDXを実現するお手伝いをしていきたい。そのためにも、テクノロジーやデータ、AIなどを使って圧倒的に生産性を上げていくことにこだわっていきたい」

2024年6月、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が『DX動向2024 DXの取組状況(経年変化および米国との比較)』を発表した。これによると、日本企業全体としてはDXの取り組みは年々増加しているが、DXの成果に関してはアメリカ企業との差がいまだにある状態だ。

富士通のように経営がリーダーシップを発揮し、社内全員で取り組み、カルチャー変革を進めていくことが、DXを成功させるための重要なポイントになりそうだ。

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(取材/文川崎博則撮影:野田涼

― presented by paiza

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