「あなたの仕事における7つの流儀を教えてください」

今回は株式会社GENDA VPoE兼プロダクト開発部部長・荒井勇輔(あらい・ゆうすけ)さんに仕事の流儀を聞いた。大企業からスタートアップで働くというキャリアチェンジを経て、さまざまな環境でチャレンジングな経験を積んできた荒井さん。そんな荒井さんが立ち上げた開発部では、エンジニアにとって最重要項目である“効率化”に重点に置いたバーチャル組織体制を構築している。本稿では、あらゆるビジネスにおいて欠かせない、コミュニケーション能力を軸とした7つのルールを紹介する。

プロフィール
株式会社GENDA VPoE兼プロダクト開発部部長
荒井勇輔(あらい・ゆうすけ)

2006年ヤフー株式会社入社。Yahoo!コミック、Yahoo!ブックスの開発に従事。 2011年株式会社VASILY入社。iOSアプリの開発を担当し、フロントエンド開発事業部長としてフロントエンド開発を統括。 2018年グループ会社統合により、株式会社ZOZOテクノロジーズに所属し、テックリード、ZOZOTOWN iOSリーダーとして、同社のiOS組織開発を主導する。 2021年10月株式会社GENDA入社。VPoE兼プロダクト開発部部長に就任。

 すべてのルールに通じるのは“謙虚さ”

 ──荒井さんの7rulesの基にある背景やご経験を教えてください。

荒井:
実は1つ目から3つ目は、「Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか」という本から影響を受けて生まれたルールなんです。その中で紹介されている「HRTの原則」に心を掴まれました。

HRTの原則とは、簡単にいえば「謙虚(Humility)、尊敬(Respect)、信頼(Trust)」のソーシャルスキルが非常に重要、というものです。自分が今まで一緒に働いてきて優秀だなと感じた人たちも、この3つを必ず持ってると感じたところがありまして。自分自身も、この原則を大切にしています。

──7rules全体を見ると、荒井さんにとって周囲の人との関係性は大きな軸になっている部分なのでしょうか?

荒井:
確かに、そうですね。今まで私が身を置いてたところが、自分より優秀な人が非常に多い環境だったのも関係しているかもしれません。4つ目の「周りからのアドバイスを受け入れる」というルールは、ここに直結しているようにも思います。

ただ、これは優秀な人が言った話をそのまま受け入れる、という意味ではなくて。同僚とかが雑談の中で何気なく話していた内容も、「とりあえず試す」マインドを指しています。業務の固い話だけではなく、それこそオススメの漫画や映画も含めて、とにかく試してみる。

そしてやってみた結果が5つ目の「他責にしない」に繋がります。謙虚さは一歩間違うと自信がないと思われがちですが、そんなことはなくて。結果を出される方は、謙虚で傾聴力がある人が多いイメージです。人の話を聞かないとか、我の強いタイプの方はきっと伸びづらいんじゃないかな。そういう意味では、他責にしてしまうメンバーに対してはどうするべきだったのかを一緒に分析してあげる姿勢もマネジメント側にとっては重要なんです。どんなにリーダーシップを持ってる人でも、謙虚さは欠かせない要素だと思っています。

 相手を動かすコミュニケーションとは?

 ──5つ目までが見事に繋がっている気がします。6つ目と7つ目のルールは少し今までと系統が異なりますが、それぞれの意味を教えてください。

荒井:
まずは6つ目の「ポジティブの比率を上げる」ですね。個人的に、雰囲気というのは周りに伝播すると思ってまして。いい雰囲気の人って周りにいい影響を与えますし。反対に、なんとなく不機嫌な人の周りにいる自分も嫌な気分になるときってあるじゃないですか。ネガティブなものは、周りの生産性を下げてしまうリスクがあるんです。

とある研究では、ポジティブに対してネガティブが3対1になるぐらいの割合が黄金比と言われていて。割合に関しては数字的根拠がなく誤りとも言われてますが、自分はそういうポジティブさが引き寄せてくれる効果は結構あるんじゃないかと考えているんです。機嫌がよい人の方が相談しやすかったりもすると思うので、なるべく、ポジティブな発言をするようにしてます。

7つ目の「コミュニケーションを成立させる」 僕は、コミュニケーションを発した側に責任がある、という考えが背景にあります。

たとえば会社で、誰かに「これをやってください」とお願いしたときに、忘れられてしまうシチュエーションって結構ありますよね。でもそのときの責任って、お願いした側にあるのか、もしくは、お願いされた側にあるのか……少し悩みませんか?

僕は、この場合(頼み事を)お願いした側に責任があると思っています。やってくれなかった=お願いした人を動かせなかった側の責任なので。「なんで言ったのにやってくれなかったんですか」とか「なんで聞いてないんですか」ではなくて、「何をしたら動いてもらえたんだろう」「動いてもらうような仕組み作りがなぜできなかったか」に気が付く方が大事だと思うんです。“言ったらおしまい”ではなく、“言ったことをやってもらう”までがゴールで、そこで初めてコミュニケーションが成立したといえると考えています。

──ありがとうございます。特に7つ目の「コミュニケーションを成立させる」で正しく相手に指示を伝えるには、働きかける側には具体的に何が必要だと思いますか?

荒井:
そうですね。いわゆるアカウンタビリティと呼ばれる部分で、まずは背景をちゃんと説明するべきかなと。何かを人にお願いするときに、なぜお願いしてるのかをきちんと明確にする。背景だったり、目的だったり、ゴールだったり……。特にマネージャーだとそういう説明責任が重要で、それを怠ると人は動かないし、しっかり説明ができれば動いてもらえると思ってます。

 ──一般的に組織づくりの上で重視されるコミュニケーションの場としては1on1が挙げられますが、荒井さんが1on1で意識している点を教えてください。

荒井:
私が1on1で必ず聞くのは、コンディション面ですね。主に、体調とかメンタル状態についてです。

意識していることは、沈黙を恐れないということです。30秒くらいは待って、助け舟をあえて出さないことも大事です。私自身、元々は対話のスキルがそんなにあるわけではないので、本や他人からのアドバイスを実践しながら試行錯誤しています。

 「他人と協力するためのコミュニケーションスキル」

──デジタル化という面で、GENDAのエンジニアのみなさんは現状リモートで業務を進めているのでしょうか。

荒井:
基本的にはリモートで仕事を行なっているメンバーが多いです。ただ、対面で話した方が効率が良い場合もあるので、意識的に出社をしてるメンバーもいます。東北や関西など遠方からフルリモートで働いているメンバーもいるため週1回実施しているコミュニケーションミーティングは大事にしていますね。

 ──AIが市場に参入し、デジタル化が進むこの先の時代に活躍できるのは、どのようなスキルを持った人材だと思いますか?

荒井:
AIは、たとえ隣の人が悩んでいたとしても顔色を伺って相談に乗ってはくれないですよね(笑)。AIの利用を前提として、さらにプラスアルファのコミュニケーションが求められる時代になっていくと思います。前に出ていくことだけが、コミュニケーションではないですから。他人と協力するためのコミュニケーションスキルを、いかに普段から意識していけるかという点が鍵になるのではないでしょうか。

AIの参入に関しては、活用するスキルそのものも大切ですが、情報のキャッチアップをする姿勢はさらに重要だと思っています。AIによって業務が効率的になる前提があった上で、掛け合わせる形でコミュニケーション能力や協調性を発揮できる人は、より活躍できると思います。

(撮影:新井達也/取材・文:すなくじら

― presented by paiza

 

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