IT企業にとって、エンジニアの確保は大きな課題となっている。
とくにスタートアップやベンチャー企業の場合、即戦力となる経験とスキルを持ったエンジニアの採用が事業のグロースの要となるが、そのような人材こそ競争が激しい。
同時に、採用活動はターゲットとなるエンジニアとの接点構築に始まり、転職オファーから面談・面接と数多くのプロセスがある。人事のリソースが限られる中では、採用活動の効率性も求められるのが実状だ。
そのような中で、安定的にハイレイヤー層のエンジニア採用に成功し、事業を成長させている企業がある。株式会社G-gen(以下、G-gen)だ。エンジニアに支持される企業カルチャーやエンジニア採用のあり方について、同社で採用責任者を務める青山幸多氏に聞いた。
青山幸多氏
株式会社G-gen ビジネス推進部 Hiring Manager
2010年慶應義塾大学卒業後、ハウスメーカー勤務後、人材紹介サービス大手に勤務。その後スタートアップでの人材紹介事業部の立ち上げを経て、2021年12月G-genに入社。Hiring Managerとして同社の採用を担う。
目次
学びとアウトプットの好循環を生むカルチャーが採用に寄与
G-genは株式会社サーバーワークスとBespin Global Inc.のジョイントベンチャーとして2021年に設立。Google Cloud のプレミアパートナーとして、企業の Google Cloud や Google Workspace の導入から運用までを一気通貫で支援している。2024年、同じくサーバーワークスの子会社である株式会社トップゲートとの合併を発表。合流後は Google 専業のSIerとしては業界2位に浮上する見込みだ。
「現在、多くの企業でDX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要性が謳われています。当社の業務領域としては Google Cloud の導入をお手伝いするだけではなく、データモデリングやデータパイプラインの設計を行い、BIツールを使い企業内のデータを加工や分析をしやすい環境を構築し、その後の運用まで支援しています。また、トップゲートとの合流により、今後はITコンサルでの支援も可能になります。上流工程からアプリ開発、インフラ構築までが可能になり、幅広い対応領域を持つ Google 専業のSIerであることが当社の強みとなります」

急速に事業を成長させ、グループ企業との合流によりさらに加速度を増していくことが予想される同社だが、気になるのは事業成長に見合うエンジニアの確保だ。とくに Google Cloud を専業とする同社の場合、採用のターゲットとなる人材像は狭まる。
「エンジニアの採用市場をみると、インフラエンジニアの割合は全体の1割ほどです。母数としても少なく、その中でクラウドをやっているエンジニアとなると決して多くはありません。さらに、2023年時点での Google Cloud の世界シェアは10%前後。採用に際しては Google Cloud をやっている人材にアプローチするよりも、自社内でいかに Google Cloud を覚えてもらえる環境を構築していくのかも重要になります。
2023年までに入社したエンジニアは23名いますが、そのうちクラウド経験者は14名、Google Cloud 経験者は5名です。しかし、入社して1年足らずで8名のエンジニアが11ある Google Cloud 認定資格をコンプリートし、9名が Google Cloud Partner Top Engineer に選出されています。主体的に学べる環境があり、それを生かしてよりエンジニアが自ら発信できる文化をつくれているという自信はあります」
G-genが安定的なエンジニア採用を実現できているのは、企業としてエンジニアのブランディングを推奨することが一因にあると青山さんは語る。実際、同社ではテックブログの更新が盛んであり、Wantedlyなどの自社採用メディアでも、エンジニアが自主的に企画したコンテンツが掲載されている。
「企業として育成に注力しつつも、会社自体がエンジニア組織や文化を大切にしているのもあります。 エンジニア自身が貪欲に学びアウトプットして、それをまた他の人が回収し新たな学びへとつなげていく。そうした主体性を軸とした学びとアウトプットの好循環が生まれていることが、エンジニア採用にもつながっていると思います」
成長フェーズのベンチャー企業がエージェントを活用するメリット
G-genのエンジニア組織が醸成するカルチャーそのものが同社で働く魅力となり、エンジニアを惹きつける。青山さんが入社した2021年12月から2023年12月までの2年間で、同社は従業員を約50名採用している(エンジニア21名)。まさに急成長するベンチャー企業に合わせて、順調にエンジニア採用が実現できているかたちだ。では、同社ではどのような採用基準を設けているのだろうか。
「採用責任者としても、エンジニア組織の文化をともにつくっていけるような人材に入社していただきたいと考えています。もちろん当社がベンチャーなこともありますので、自分の仕事だけではなく、自らの考えを発信しながら仕事も取りに行ける人材であるかも採用で意識している点です。明確に優先順位をつけているわけではありませんが、重視している点は『技術力』と『コミュニケーション力』、そして『自己学習能力』。私としては、これらの素養を持つエンジニアは、課題創出能力を持っている方だと考えています」

同社は創業から一貫してフルリモートを採用し、勤務地は限定していない。現在では北海道から沖縄で働くエンジニアが在籍しているという。一方で、フルリモートでの働き方の場合、業務がブラックボックス化するリスクもある。
「そのようなリスクをクリアにするためにも、課題創出能力は非常に重要です。自身の業務だけでなく、自己発信や空いた時間に自分から情報を取りに行き学んでいくことで、どのような点に課題があるのかを発見できる素養があるからこそ、当社のエンジニア組織は主体性を持った文化を醸成できていると考えています」
しかし、G-genのように着実なエンジニア採用を実現できているベンチャーやスタートアップは決して多くない。多くの企業でエンジニア組織のブランディングが行われているものの、リソースには限りがあるため採用につなげきれていない場合も多い。実際、これまでのキャリアで人材紹介領域を歩んだ採用のプロである青山さんが同社に入社したのも、エンジニア採用に課題があったためだ。
「私が入社するまでは、エンジニア採用は現在の当社CTOが担当していましたが、やはり通常業務のかたわらで採用活動を行うのではうまくいきません。スカウトメールを送っても、ほとんど返信がもらえていない状況でした。まさに事業の成長に人材採用が追いついていない状態になっていたんです」

青山さんの入社時期は会社設立から約4か月、従業員はまだ6名だった(エンジニア3名)。そこから1年で、G-genは27名のエンジニアを採用する。青山さんはどのような動きをしたのだろうか。
「私が入社した時は、まだ外部サービスをほどんども契約していない段階でした。なので、まずは12月の時点で人材紹介サービスや転職エージェントとの契約を済ませ、1月から本格始動させました。その後は4月入社が3名、5月入社は5名、6月入社は6名と急激に採用人数を増やしていきました。採用のプロとしては、必要なときに必要な人材を採用することが重要です。そのために私が割けるリソースや採用媒体の選定、転職エージェントをどれだけ使うのかを考えながら、採用チャネルを組成していきました」
入社から現在まで、同社の採用担当者は青山さんが一人で担っている。限られたリソースで最大限の成果を出すために、青山さんが最初に取り組んだのは多様な採用チャネルの構築だった。着目すべきは転職エージェントの活用だ。現在の採用プロセスでは、採用媒体に求人を掲載しつつ、企業が直接人材にスカウトメールを送る「ダイレクトリクルーティング」を行う企業が多い。転職エージェントの活用にはどのような意図があるのだろうか。
「ベンチャー企業の成長は急激に加速していくものです。そのような成長の加速度に合わせて、人材も採用していく必要があります。事業の成長に人材採用のスピードを合わせるためには、転職エージェントを活用する方が効率がいいです。
たとえば、ダイレクトリクルーティングを行う場合、スカウトメールの返信率は一般的に5〜10%といわれています。ベンチャー企業の場合は採用人事単体で業務を行うことは少なく、多くの企業は労務などのバックオフィスと兼務していると思います。そのような中で週に100件スカウトメールを送るのは難しく、実態として送れて週に20件、月に80件程度だと思います。80件で返信率を5%と仮定すれば4件で、そこから一人採用につながればよい方でしょう。
もちろん、ダイレクトリクルーティングは比較的コストが低く、しっかりと効果があるものです。しかし、スピードが求められるフェーズでは、効率性や安定した採用の面から転職エージェントを活用することのメリットは大きいです」
G-genが意識する「エージェントが動きやすい環境づくり」とは
一方で、採用活動で転職エージェントを活用する際には、求めている人材像とのズレが生まれる場合など、企業と転職エージェント側での齟齬が生じることがリスクとなる。G-genではどのように転職エージェントとの関係性を高め、紹介される人材のミスマッチをなくすために、どのような施策を講じているのだろうか。
「私としても、エージェントの方々が日々候補者と向き合い、さまざまな思いを持って仕事をされていることはよくわかります。そのため、エージェントが当社をより紹介しやすい関係性の構築に意識的に取り組んでいます。たとえば、候補者の方に当社を伝えやすい資料を作成したり、エージェントが心理的安全性を持ちながらコミュニケーションを取ることで、まずはエージェントの方々からの信頼を得るようにしているのが当社の特徴だと思います」

エージェントの存在はいわば、IT企業とエンジニアの架け橋となる存在であり、両者の今後を左右するものでもある。では、青山さんは具体的にどのようなコミュニケーションを取っているのだろうか。
「当社の場合、定期的にエージェント説明会を開いていますね。会社としての採用方針だったり、どのような人員を求めているのかといった情報を明確に伝えることによって、エージェントの方々に動きやすい環境をつくっています。
企業の説明もさることながら、そういった点があいまいではエージェントも候補者に当社を紹介しにくく、上司や社内にも採用が成功する見込みなどを共有しづらくなってしまいます。そうなると、よい人材を紹介していただける優先順位が下がってしまう。そうならないために、採用の枠数やどれほど当社が予算取りをしているかなどの情報はしっかりとお伝えするようにしていますね」
paizaのエンジニア専門の転職エージェント「paiza agent」もG-genが活用するエージェントサービスの一つだ。すでにpaiza agent経由で採用したエンジニアも入社しているほか、現在3名の入社が決定している。実際にサービスを活用し、エンジニア採用に成功した今、paiza agentにどのようなメリットを感じているのか。青山さんに聞いた。
「安定的にいいエンジニアをご紹介いただいているというのがまず第一の感想です。また、paizaのエンジニアスキルチェックでSランクになっている人材は、やはり採用目線から見ても評価が高いと感じています。
paizaはITエンジニアを専門としてることもあり、エージェント部門の方々が技術をよく学んでいらっしゃる印象です。そのため現場サイドからヒアリングすることもできたり、実際に『こういう人がほしいんです』と言ったときの技術理解度が高いので、当社が求める人材像とズレがない候補者を提示していただけるのは非常に助かっています。
また、paizaは当社の情報を細かく把握して候補者の方にご紹介していただき、候補者のモチベーションが高い状態で採用面談に臨めるので、採用意向度をスムーズに高めることができるのも非常にメリットに感じました」

設立から3年で大きな成長を果たした同社だが、2024年の合併によりその加速度はより増していくだろう。最後に、青山さんに今後のエンジニア採用の展望を聞いた。
「ベンチャー企業にとって一番重要なことは、自社の成長性や働くことの楽しさを伝えていくことだと思っています。これまでの従業員6名に始まり、現在は50名以上の採用に成功してきましたが、今年の合併でエンジニアの人数は100名を超える予定です。
人数的にも急成長していますが、現在持っているエンジニアのカルチャーは維持していきたいと考えています。つまり、企業の中で学びがあり成長できる環境があり、エンジニア自身が『仲間がほしい、一緒に盛り上げていこう』と発信してくれる。働く人からも熱量を感じられるのは、ベンチャー企業ならではの魅力であるとも考えています。当社もまだまだベンチャー企業であり、今後はより強い魅力を出せるポテンシャルがあります。採用責任者としても、『企業の成長の中で自分自身も成長できそうだ』とエンジニアの方々に思っていただけるような伝え方を、しっかりとしていきたいですね」
