年間売上5兆円を超えるセブン-イレブン。全国に21,000以上の店舗を展開し、日々約2,000万人が来店する、誰もが知るコンビニエンスストアだ。そのセブン-イレブンを直営およびフランチャイズ方式で運営している会社である株式会社セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)で、企業の発展を支える立役者に話を聞いた。
SEJのみならず、セブン&アイ・ホールディングスグループ全体のDXを進める西村さんのCareer Decisionとは――。
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西村 出 さん プロフィール
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 執行役員 システム本部長 兼 株式会社セブン&アイ・ホールディングス グループDX副本部長。大手企業グループにおいて20年以上にわたり金融、不動産等業務パッケージ企画、エネルギー分野の新規クラウド事業立上げ、大規模合併会社システム統合コーディネート等幅広いIT分野での実績を経て14年よりセブン&アイ・ホールディングスのシステム企画部(当時)出向。
19年4月に転職、20年9月システム本部長、21年3月執行役員就任、現在に至る。セブン‐イレブンでは、業界先駆けとなるインバウンドシステム企画、SFDC上での本部業務のシステム化推進、さらにはクラウドを活用した災害時の状況把握システム『セブンVIEW』構築、次世代デジタル基盤『セブンセントラル』構築などをリード。その取り組みは民間企業のDXの先進的事例として多くのメディアで取り上げられている。 2021年にDXの取り組みが評価され、全世界企業から選ばれる第1回GoogleCustomerAwardを受賞。
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キャリア最初の決断でSIerへ

前職では、商社系のSIerに新卒入社した西村さん。当時、複雑で手続きの多かったウラン輸出入業務のシステム化やグローバル決済のパッケージ企画、大規模合併会社のシステム統合など、さまざまな仕事をしてきた。2011年ごろには、クラウドを活用したSaaSに関する企画や営業統括も担っていた。学生時代は法学部に所属していた西村さんは、なぜSIerを就職先に選んだのだろうか。
「前職に新卒入社した当時は、まだパソコンがそれほど世の中に普及していない時代でした。ただ、将来は間違いなく普及する時代になるだろうという感覚があり、システム開発への興味と可能性を感じていました。システムは理系の人がつくるという印象を持つかもしれませんが、ロジカルに物事を整理していく点では法律と考え方の似ている部分があります」
西村さんの感覚は正しかった。世の中にはパソコンが急速に普及し、あらゆる業界でIT化が進んだ。前職でシステム開発の仕事をしていた西村さんは、取引先であるセブン&アイ・ホールディングス システム企画部(当時)へ出向することになった。
出向当時、社内はベンダーロックインの状態になってしまっていたという。西村さんが出向した2014年には、すでに大企業でもクラウド活用が進んでいた。しかし、パートナーであるベンダーからは「クラウドはあまりお勧めしません」と言われ、最新技術への挑戦が難しい状況になっていた。
「ベンダーさまの提案に頼らず、自分たちで考えてリスクを取っていく方向へ徐々に変えていきました。ただ、いままで一緒に仕事をしてきたベンダーさまのノウハウにも価値はあります。上層部の方に考えを伝えて理解を得たことで、いまではクラウドを活用した提案もしてくれています」
自分たちで考えられるよう専門知識のある人材を社内に集めると同時に、パートナーであるベンダーと話し合うことで、よりよい関係を構築した。SIerで培ってきた技術や知識、経験をもとに、ベンダーロックインの状態を改善していった。
SIerからSEJへ、転職を決断した理由

2019年4月、西村さんはSEJへの転職を決意する。自然災害時に感じたチームの仕事が、キャリアの決断に影響を与えた。
「これまでに何度か大きな自然災害が起きています。その際に、メンバーが一致団結して仕事をやり遂げていく姿を見てきました。自分もそういう仕事をしていきたいと思ったのです。ちょうどこれからDXを積極的に進めていくという時期でしたので、自分のITやDXに関する強みをSEJの発展に寄与できればと思い、転職を決めました」
もともとの出向期間は2年の予定だったが、期間延長により5年に伸びていた。それだけSEJに欠かせない存在になっていたのだろう。転職後、2020年9月にシステム本部長、2021年3月に執行役員へ就任した西村さんは、どのような取り組みを進めてきたのだろうか。
「ビジネスが急拡大するなか、マンパワーでなんとか乗り越えてきたところがありました。大企業ならではのアナログな業務もあったのですが、SalesforceのようなSaaSやGoogle Cloudのようなクラウドを活用するなど、デジタル化は進んだと思います。
大きなところでは、Google Cloud上に構築したリアルタイムのデータ基盤『セブンセントラル』により、データの民主化が進み、効果がありました。構築の際には、短期間かつリーズナブルなコストでデータ基盤をつくることができました。われわれもアーキテクチャから一緒に入り、パートナーのベンダーさまと一緒に構築を進めたプロジェクトです」
2020年9月から稼働を開始したセブンセントラルは、セブン-イレブン全店の在庫データをクラウドに連携・集約し、全社の各部署がリアルタイムに活用できるデータ基盤だ。セブンセントラルと連携することで、一部の商品を除き、各種データから販売数を予測して発注提案数をAIが算出する「AI発注」を展開している。
AI発注により在庫がより適正化され、消費者がほしいと思った商品をほしいときに買えるようになった。機会ロスを防ぐことが満足度や信頼度の向上、そして店舗の収益構造に寄与している。さらに、在庫の適正化により、廃棄ロス削減にもつながっている。
DXの加速に寄与したセブンセントラルが評価されたことで、SEJは第1回Google Customer Award 2020のリテール部門を受賞している。
「『セブンセントラル』を使ってくれる人から、『本当にこれがあってよかった』という声をいただき、達成感を得られました。これから新しくビジネスを進めるときに、セブンセントラルがあることで、セブン-イレブンが優位性を発揮できます。Google Customer Award 2020を受賞でき、客観的な評価をいただけたこともありがたいと思っています」
Google Customer Awardは、日本だけでなく全世界の企業から選ばれる。グローバルに比べてDXが遅れているとされる日本企業が受賞したことは、日本全体にとっても大きな意味があるだろう。
キャリアを決断する際に大切にしている基準

これまで30年以上にわたり、ITの分野で活躍してきた西村さん。新卒入社や出向、転職など、さまざまな場面でキャリアの決断をしてきた。決断する際に重要視している基準はどこにあるのだろうか。
「自己実現に加え、社会的な貢献をできるかが私にとっては重要です。そこにやりがいを感じていますね。システムをつくるといっても、世の中にはいろいろなシステムがある中、当社は社会的に貢献できるシステムをつくりたいと思っています」
西村さんはこれまでに、SEJで多くのシステム開発をおこなってきた。そのなかには、社会貢献に大きく寄与しているシステムが数多くある。
たとえば、Googleマップを活用した災害時の状況把握システム『セブンVIEW』は、ITを活用して店舗・物流の状況をリアルタイムにモニタリングできるものだ。実際、災害時に活用されており、産官学連携により社会の防災インフラへ発展を遂げている。
積極的にAIを活用していくことはIT・DXのリーダーとしての責務

今後、キャリアを通して達成したいと考えていることを西村さんに聞いたところ、グローバル展開と生成AIの活用という答えが返ってきた。
「日本のセブン-イレブンは、世界中の人々にとってもコンビニエンスだと思っています。そうした日本のセブン-イレブンのよさを、もっと世界に展開していきたい。ITがあるからこそ、実現できる可能性も高まっていると思います。そうしたところに貢献していきたいです」
さらに、生成AIの活用もITやDXを進める部署のリーダーである自分の責務だと西村さんは話す。
「おそらくこれから2〜3年の間で、生成AIによって仕事のあり方や生活が変わると思っています。もしかしたら人間の生き方にまでパラダイムシフトが起こるかもしれません。われわれの業務としても、恐れずに積極的に生成AIを活用していきたいと思っています。個人的には『バーチャル西村』をつくってほしいですね。それで、いくつかの会議にはバーチャルな自分に出席してもらいたいです」
西村さんは従来のSEJの執行役員 システム本部長に加え、2024年9月1日からはセブン&アイ・ホールディングスのグループDX本部 副本部長にも就任した。これまで以上に忙しくなるなか、物理的な身体は1つしかないため、バーチャルな自分に仕事をしてほしいというわけだ。
すでに、世の中にこうした技術は生まれているため、近いうちにビジネスで活用できるようになるかもしれない。
縁を大切にして自分にできることを頑張る
これまで30年以上にわたって社会人生活を続けてきた西村さんに、これからキャリアを決断する若い世代へのアドバイスをお願いした。
「目標を持って会社に入ることも大事ですけど、会社に入ってからのほうが重要だと思います。もし仮に第一志望ではない会社に入ったとしても、縁を大切にして自分にできることを頑張っていると、絶対になにかいいものが見えてきます。いまは昔と違って転職することが普通になっているので、自分の手に職をつけておけば選択肢も広がりますし、ステージは日本だけではありません。外国で働くという選択肢もありますよね。さまざまなチャンスがあります」
西村さんが話してくれたように、転職することが当たり前になっているいまの時代。手に職をつけるように、自分の強みを磨くことで選択肢が広がっていく。キャリアに迷っている方は、ぜひ参考にしてもらいたい。
