「あなたの仕事における7つの流儀を教えてください」

今回は、⽇程調整⾃動化ツール「TimeRex」を生み出したミクステンド株式会社CTO・Rajesh Jayan(ラジェッシュ・ジャヤン)さんに仕事の流儀を聞いた。インド生まれ、ドバイ育ち、シンガポールの大学卒業……とさまざまな環境でキャリアを積み、2019年にミクステンドにジョインしたラジさん。

「TimeRex」といえば、徹底したユーザー視点に基づく利便性の高さから今やビジネスにおける日程調整には欠かせないツールである。本稿では「TimeRex」開発の軸とも言える、グローバルなキャリアを積んできたラジさんの7つのルールを紹介する。

ラジさんの7ルール

1.ユーザーを理解する

2.課題を理解する

3.新しい知識へのアンテナを張っておく

4.働きやすい環境をつくる

5.アイデアが出せる環境をつくる

6.長期的に考える

7.失敗からできるだけ学ぶ

TimeRex
GoogleカレンダーやOutlook予定表とリアルタイムに連携し、日程候補のリストアップから予定登録、Web会議準備まで、面倒な日程調整タスクを自動化するサービス

まずは「ユーザーと課題を理解する」ことから

――7つのルールをお伺いしてみて、マネジメントの視点とプレイヤーの視点でそれぞれヒントになるルールがあるように感じました。7ルールの中でラジさんが一番大事にしているルールはどれですか?

ラジ:
絞るのは難しいですね(笑)。一つではなくて申しわけないのですが、①と②の掛け合わせはすごく大切にしています。まず、ユーザーを理解する、というのはユーザーからのフィードバックに耳を傾けることでもあります。そして、ネガティブなフィードバックも踏まえてユーザーの悩みを解決する。それには、課題の理解が必須になりますよね。

さまざまな場所で働く中で気づいたのは、社内の技術力がとても高い場所でもプロジェクトにおける根本的な問題解決がなされていない場合があって。そうすると、せっかく技術があっても、ちょっと勿体ないかなと。

消費者やユーザーがいて、その問題を解決するために技術があるわけですから。技術力が高いエンジニアはたくさんいるのですが、ユーザーからの目線で物事を考えられる人材は実は少ないのではないでしょうか。7つすべて大事ですが、①と②はとくに大切にしているルールです。

――ありがとうございます。“ユーザーからの目線で物事を考えられる人材”になるためには、普段から何を心がければよいと思いますか?

ラジ:
もともと自分も、昔は上司から振ってもらったプロジェクトをこなすだけでしたが、スタートアップで働いてから視点が変わった気がします。そういう意味では、実際に自分で起業してみるとか、わたしのように一度スタートアップで働いてみるなど、積極的に環境を変える姿勢は大切かもしれません。

あと、わたしはApple関連の書籍をよく読みます。スティーブ・ジョブズ氏の言葉に影響されてきた側面もあるのですが、一つの物事に向き合って深く考えていくことの重要さは、あらゆる側面でひしひしと感じますね。

――逆に7つのルールの中で、これからさらに意識していきたいものはありますか。

ラジ:
「長期的に考える」ですかね。(サービスに対して)ユーザーのフィードバックが毎日来る中でも、冷静に目の前の問題を解決していく姿勢に加えて、「2年・3年単位で見るとどうなるんだろう」という視点も持ち続けていたいと思っています。IT業界は新しい知識がどんどん生まれてくる業界でもあるので、情報の流れも早いですし。

異なる環境に“自分から合わせてみる”考え方

――インド、シンガポール、日本とさまざまな場所で経験を積んできたラジさんですが、グローバルに生きるために必要なスキルを教えてください。

ラジ:
まずは、いろんな文化に興味を持ってみる。その上で、その国ならではの文化やルールに合わせるマインドが大切だと思います。国によって言語や考え方も異なるからこそ、現地の人の考え方と文化をよく観察しようとする意識が大切です。

たとえばその国の言語がうまくなりたいなら、現地の店に行って実際に注文してみて、初めてわかることもありますよね。同じように考えると、会社なら会社のルールに自分が合わせてみて、理解できる要素もあるかもしれないと思っています。

――仕事をする中で落ち込んだときや悩んだときはどのように解決していますか?

ラジ:
そもそもそんなに落ち込むケースがまずないので、少し回答に困りますが……(笑)。散歩をしてリフレッシュすると気分が変わって、集中できます。

1on1は相互関係を築ける時間に

――ミクステンドはラジさんにとって日本での2社目の会社ですよね。キャリアの方向転換には理由があったのでしょうか。

ラジ:
最初は日本語が不安だったのもあって、英語を生かした環境で働きたくて。当時は契約社員だったので、契約更新と合わせたタイミングで日系企業に入ってみようと思いました。

日本語も、そのころには少しは上達したかな、と(笑)。業界としてはIT領域で、(1社目と)変わらないのですが、サービスが変わって得るものも変わりました。

――1社目は外資系と拝見したのですが、実際にミクステンドに移ってみて日系企業と外資系企業に感じた違いはありましたか?

ラジ:
自分の場合、日系企業での就業経験がミスクテンドしかないので、必ずしもすべてが参考になるかは分かりませんが……。一般的には、上下関係のフラットさは、やはり外資系ならではの特徴かなと思います。仕方ないとは思いますが、なかなか日系企業では完全にフラットな関係とはいかず(笑)。ミクステンドは日系企業ですがフラットで、どちらかというと外資系企業のような雰囲気だと思いますね。

社長でも関係なく「言うときは言う」みたいな風潮も外資だと珍しくもなくて。日系企業というよりは、アジア系の企業全般で自由度が低い印象はありますね。

――今おっしゃった“上下関係”について、「④働きやすい環境を作る」「⑤アイデアが出せる環境を作る」は組織作りに活きるルールだと感じました。ラジさんご自身がマネジメントのポジションに立つときに気をつけているポイントはありますか?

ラジ:
みんなの前で話す内容と、パーソナルな場で話す内容を分けるようには意識しているかもしれません。「このプロジェクト全体はすごく良かった、でもここだけ改善できない?」みたいな相談は、1on1を活用する場合もあります。

逆に近い距離で話す時間は「こうしたら働きやすい」って言ってもらえるような、相互関係を築ける時間になるようにも心掛けています。こちらから働きかけるだけでなくて、相手にもアイデアを出してほしいし、それができる環境づくりは怠らないようにしたいです。

――さまざまな環境でチャレンジを続けてきたラジさんですが、そんなラジさんが今後挑戦したいことを教えてください。

ラジ:
ありがたいことに「TimeRex」(ミクステンドの日程調整サービス)のユーザーが増えているのですが、現状では日本のユーザーが多いので、海外の同じ問題に向き合えるようなサービスに成長させていきたいと思います。海外でも広く愛されるサービスにしていきたいですね。

Rajesh Jayanさんの7ルール

(取材/文:すなくじら、撮影:渡会春加)

― presented by paiza

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