※本記事はTech Team Journalにライターから寄せられた記事を匿名で掲載しております。内容には創作を含まないため、匿名となる旨のご理解をお願い申し上げます。
「入社したら、3年は妊娠しないでね」
「時短勤務っていうのは、その時間に帰宅していいってだけだから」
これは結婚・妊娠・出産とライフステージが変わるたびに働き方を模索した、友人女性に浴びせられた言葉たちだ。
最近では、どんなライフステージであっても働きやすい企業が増えてきている。しかし、そんな世の中の流れとは逆行するような会社や経営者も存在していることに、今回は目を向けていきたい。
いろいろな話を筆者に聞かせてくれた友人女性を、ここではA子と呼ぶことにしよう。A子の話から飛び出した「女性にとってはなんとも怖い、経営者の言葉」を紹介していく。
目次
耳を疑う、妊娠禁止発言

当時、結婚したばかりのA子から聞いた転職活動の話が忘れられない。
某・編集プロダクションで契約社員として勤務していたA子は、キャリアを活かしつつも正社員として長く働ける会社を探していた。忙しい仕事の合間を縫うように転職活動を始め、志望した会社の選考が進んでいるとキラキラした目で話していたA子。
しかし、次の瞬間「でもね、ある会社の社長面接でさ……」と話し始めた彼女の目が曇りだす。
A子から聞いた、社長面接での一幕を記載したい。
社長「A子さん、最近ご結婚されたみたいですけど、お子さんは考えていますか?」
A子「いや、今は考えていないですね」
社長「そうですか。弊社に入社となったら、仕事を覚えるためにも3年は妊娠しないで働いてほしいんです。その点、大丈夫ですか?」
A子「へ……???」
A子は怖々と「この発言って、アウトだよね?」と、つぶやく。
男女雇用機会均等法(第5条)で「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定められている。また「女性にだけ子供が生まれた場合の就業継続意思を質問する」のも違法事例のひとつだ。
参照:https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/rule.pdf
A子に対する社長の質問・発言は、もちろんアウトとなる。このような発言をする社長がいることに、わたしは驚き「アウトというか……ちょ、ちょっと……」と言い淀んでいると、彼女の口からさらにとんでもない話が飛び出す。
A子「この社長って女性で、しかも小さい子どももいる人なんだよね。それを踏まえると余計に怖くない?」
えぇええええーーーーー?!?!?!
恐怖を感じた段階で、この会社と見切りをつければよいものの「志望度が高い会社だったから。業務内容が魅力的だったから」という理由で、なんとA子はこの会社に入社。
しかし、人数の少ない会社の中では女性社長とも距離が近く、面接の発言以上のハラスメントを日常的に受け続けたそうだ。メンタルを崩しかけた彼女は「やっぱり、ダメだった……」と、勤務年数1年も満たずに退社を選択。
友人としてはA子の健康が心配だったので、退職後の彼女に笑顔が戻っていたときは少し安心した。
この彼女の体験を聞いてから「相手の発言や価値観に違和感を覚えたら、どんなに魅力的な側面を持っていても追いかけてはいけない」と強く心に刻んだ。
面談・面接に限らず、相手の発言や考えに「ん?」と感じた際は、まずは距離を置いて冷静な判断を下したいものだ。
「時短勤務」の認識のズレ

友人A子の受難は、残念ながらこれだけでは終わらない。
A子は「妊娠禁止発言」を受けた会社を退職後、ホワイト企業に入社。そこで子どもを授かり産休・育児休暇を取得した。ただ育児休暇後に職場復帰するも、会社の体制変更があり、出産前の仕事とはまったく異なる業務に就くことになった。
職場復帰できたことはうれしいが、自分がこれまでやってきた仕事と異なる業務にモヤモヤする日々。
「これもマミートラック(※)の一種なのかな……」
※産休、育休後に職場復帰した女性が、本人の意思とは関係なく休暇前とは違う業務内容または勤務時間をあてられる現象を指した言葉。その結果、社内の出世コースから外れる場合もある。
久々に会ったA子は、またしてもキャリアに悩んでいた。
そんなときにA子が出会ったのは、社員10人にも満たないスタートアップの求人。
ここならこれまでの経験を活かせるし、事業の将来性も感じる。ただ小さい子どもがいる状態で、スタートアップへ転職してやっていけるのだろうか……。
不安な気持ちとともに、面談を重ねる。
男性の社長に、思い切って「子どもが小さく、育児との両立が不安。時短勤務は可能でしょうか?」と聞くと「可能」との返事をもらい、転職を決意したそうだ。
時短勤務といっても9:00-17:00の7時間勤務。A子は、この会社で初めての時短勤務者となった。
「これだから時短勤務は……。子持ちは……。」と、まわりに思われないよう、A子は帰宅後も必死に仕事をこなしたそう。ただ、22:00以降も取引先とのやり取りが頻発。育児に支障が出ることも多くなり、再び働き方で思い悩む。
「帰宅後の深夜におよぶ業務対応をどうにかできないか……」
この悩みを思い切って、社長に相談したA子。
すると「時短勤務は17:00で帰っていい、というだけの意味だから。終わらない業務は自宅で対応、即レスが当たり前だから」とサラッと言われたそうだ。
「言われたときは呆気に取られて、何も言い返せなかったよ」とA子は話す。
「今回は、これまでの経験を踏まえてお互いの条件や要望を擦り合わせたつもりだったんだけどな……」と遠くを見ながら話すA子の切なそうな表情が印象的だった。その後、間もなくA子はスタートアップを退職することを決めたようだ。
あまり表に話が出てきていないだけで、A子のように「経営者の言葉」に振り回され、働き方に悩んでいる人はいるのではないだろうか。
A子を近くで見ていて感じたのは「働きづらいと感じた職場に、早めに見切りをつけるのは悪いことではない」ということ。むしろ「我慢をして耐えて働き続けていたら、今ごろA子だけでなく、A子のお子さんやご家族はどうなってしまっていたんだろう……」と怖くもなる。
実際に働いてみないと、わからない部分もあるだろう。それでも入社前に、希望する働き方に対して歩み寄るスタンスはあるのか、他に小さい子どもを抱えて働いている人はいるのか、いるとしたら、どのような働き方をしているのかなど、企業側への細かいヒアリングは必須と感じた。
A子の体験談を踏まえ、女性に限らず「自分・家族・仕事」の3つのバランスに思い悩む人が、少しでも減ること、少しでも働きやすい職場が増えることを願ってやまない。
