人に自慢できるようなキャリアがなくても大丈夫な理由」の記事で、なぜキャリアの棚卸しが必要なのかを解説しましたが、ようやく本題である「具体的な棚卸し方法」について紹介していこうと思います。

キャリア論については語る内容が多いので、おそらくこの記事も長くなると思います。でも、棚卸し方法を知っておくことで、今後の人生において数十分、数時間、数日の効率化が図れると思ったら、ここで数分立ち止まってみても悪くないんじゃないかと思いますよ。

そんな甘い囁きが得意な染谷です。

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3つの手順で進めるキャリアの棚卸し

今回は「キャリアの棚卸し」という軸で記事を書いていますが、この手順は企画を考えるときなどにも使えるので、自分の状況に応じて上手に転用してもらうとよいかと思います。

棚卸しのコツは、いきなり完成形を求めないという点です。同時並行でいくつもの作業をおこなうと、結局うまくいかないことが多いです。順を追って、ていねいに進めていくことで、結果としてよい成果物に繋がっていきます。

一発で完成形を求めるのではなく、以下の3つのステップに分けて取り組んでみましょう。

  1. アウトプット
  2. 整理・選別
  3. 組み合わせる

1.アウトプット

頭の中にある情報を全部外に出す段階です。「こんなこと誰でもできるよな」「人に自慢できるようなスキルじゃないよな」といった否定的な考えは禁物です。

アウトプットにおける重要なポイントはたった1つだけ。「なんでもよいので、とにかく書き出す」ことです。この段階で誰かに見せるわけではないので、好きに、わがままに、思いの丈を書き殴りましょう。

手書きが好きな人はノートに、キーボード入力が好きな人はWordやGoogleドキュメントに、喋ることが好きな人はボイスレコーダーに、人それぞれやりやすい方法でアウトプットしましょう。

自分の常識は他人の非常識

世の中には自分では当たり前と思っていても、他人からすると初めて知る情報だということは良くあります。 

キャリアでも同じで「こんなこと誰でもできるはず」と思ってアピールをためらっているのであれば、その考えは捨てましょう。スキルや経験の価値を決めるのは、あなたではなく、採用担当者やクライアントです。自分自身で枠を狭めることは単なる機会損失です。

世の中すべての人がエクセルの関数が得意なわけじゃありません。

世の中すべての人がキャンプ場で火を上手に起こせるわけではありません。

わかりますか?

エクセルが不得意な人からしてみたら、計算式によって業務の効率化を図っている人を見たら、まるで魔法を使っているように感じることでしょう。自分の業務のサポートをしてもらいたいと思うに違いありません。

複数人でキャンプに行ったとき、買い出し担当・テント張り担当・火起こし担当・料理担当・残った食材を全部食べる担当・会計担当と、得意なことを積極的に選んだりしませんか?一緒に活動してみて「そんなことできるの?」ってびっくりされたことはありませんか?それは間違いなくあなたの強みです。

価値の基準は人それぞれ違うということを頭の中に入れておきましょう。

棚卸しのための手法

「さぁ、キャリアの棚卸ししようぜ!」って言って、いきなり自分の得意分野や経験、スキルをアウトプットできる人は多くありません。

というわけで、ここから本題である棚卸しに使えるツールを紹介していきます。

・書き出す(脳内の可視化)

もはや手法でもなんでもありませんが、一番シンプルで原始的なアウトプット方法です。Word・PowerPoint・手書きのメモ・付箋など、思いついた内容を文章でもイラストでも、とにかく書きましょう。

ちなみに僕の場合、思いついたことはすぐにGmailにメモして自分宛てにメールします。思いつきレベルなので、突拍子もなく内容も薄いのですが、この小さな情報を積み重ねていくことで、自分の思考や得意分野を再確認できます。

・マインドマップ

マインドマップ

メイントピックを決め、そのメイントピックから思いついたことや分解した内容などを放射状に書き込む手法です。

脳内のイメージをそのまま図として表すことが特徴で、思考の整理や解決法の発見などに繋げられます。無料で利用できるWebサービスもあるので、試しに使ってみてもよいかと思います。

・マンダラート

マンダラート

エクセルテンプレートのダウンロードはこちら(筆者自作です。コピーしてご自由にお使いください)

マンダラートとは目標達成のためのアイデアを9×9のマス目に書き込むことで、思考を整理したり広げたりする手法です。メジャーリーガーの大谷翔平選手も使っており、思考を整理する技法です。

発想の広げ方の手順は以下の通りです。

  1. 縦3マス×横3マス、合計9マスのマス目をつくる
  2. 中心のマス目に、思考や発想を深めたい課題を書く
  3. 課題を書いたマス目の周りのマスに、課題に関連した語句を思いつくままに記入
  4. 同様の9マスを周辺8エリアに配置
  5. 中央の1マス以外の8マスに記入した語句を、あたらしく作成した8エリアの中央に記載
  6. 「3」の手順に戻り、繰り返す

自分の頭の中で眠っていた情報は取り出せましたか?アウトプットは1日で終わるものではないので、定期的に追記していくことをお勧めします。

2.整理・選別のフェーズ

続いてアウトプットした内容を選別するステップに入ります。

選別にも様々な方法がある中で、一番簡単な方法は前回の記事でも紹介した「好き嫌い」「得意苦手」で分類する方法です。

アウトプットした内容を4つの象限に分けて分類することで、自分の特性を可視化できます。

他にも過去現在未来といった時系列で並べてみたり、ビジネス・プライベートで分けてみたり、業界で分けてみたり、アプリケーションで分けてみたり、エピソードをピックアップしてみたりと、複数のパターンで整理してみることをお勧めします。新しい発見があるかもしれませんよ。

内容を整理し、使うかどうかを選別したら、人に伝えるための体裁を整えておくと後々便利です。

特に意識しておきたいのは「5W3H1R」と「Why-How-What」です。

5W3Hとは中学生の英語で聞いたことのあるフレーズだと思いますが、意識して書くことで、非常にていねいな文章に仕上がります。

  • When いつ、いつまでに(期限・期間・時期・日程・時間)
  • Where どこで、どこへ、どこから(場所・アクセス方法・地図)
  • Who 誰が、誰向けに(主体者・対象者・担当・役割)
  • What 何が、何を(目的・目標・要件)
  • Why なぜ、どうして(理由・根拠・原因)
  • How どのように(方法・手段・手順)
  • How many どのくらい(数量・サイズ・容量)
  • How much いくら(金額・費用・価格)

上記の情報をすべて含むことで、あなたの良さをより具体的に相手に伝えられるようになります。

そして締めの言葉として、1R(Result=結果)が大切です。経験した結果、あなたは何を得たのか、学んだのかを結びに入れることでキャリアに深みを増すことができます。

もう一つの「Why-How-What」については、特に「Why」を重要視してください。「なぜそれをやったのか」「なぜその選択をしたのか」「逆になぜ選ばなかったのか」といった“なぜ”は、あなたの動機づけの傾向を把握できます。

動機があって、手段があって、そして何をやるのか(何をやったのか)、このストーリーをしっかり構築することで、あなたというキャラクターを強く印象付けることができます。

いきなり全部の要素を含んで完成させることはできませんが、意識しながら少しずつブラッシュアップすることで、今まで表現できていなかったあなたの良さをアピールできるようになります。

3.組み合わせるフェーズ

最後に組み合わせてオリジナリティを際立たせるステップです。ただ案の定、今回の記事も恐ろしく長くなってしまったので次回に続きたいと思います。

ちなみに僕はメイン1つと周囲に8つの得意分野を持っていて、仕事の依頼に応じて組み合わせを変えています。そのあたりの話をより具体的に書いていくので楽しみにしていてくださいね。

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(文・染谷 昌利

presented by paiza

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