「親の家の固定電話」を確認してほしいワケ

みずほ情報総研の調査によると、40歳から59歳の正社員で介護離職をした3000人のうち、「誰にも相談しなかった」人の割合は47.8%でした。約2人に1人は、自分ひとりで介護と仕事の両立は難しいと判断して、会社を辞めてしまいます。

しかし、今回からご紹介するIoT機器や家電、道具を親の介護や見守りに活用すれば、介護と仕事の両立が可能になるかもしれません。

わたしは2012年から、岩手県でひとり暮らしをしている認知症の母を、東京から通いで在宅介護しています。すぐに駆けつけられる距離ではないため、IoT機器や道具をフルに活用した介護や見守りを行っています。その中でとくに便利だったモノを、何回かに分けてご紹介していきます。

シリーズの第1回は、固定電話です。海外を拠点とした、日本の高齢者を狙った特殊詐欺事件のニュースは記憶に新しいかと思います。岩手の実家にも頻繁に迷惑電話がかかってきますが、皆さんのご両親の家は大丈夫でしょうか?

警察庁が公表した、「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)」を基に、固定電話の特殊詐欺対策についてご紹介します。

65歳以上の高齢者が被害にあう特殊詐欺とは?

警察庁の定義によれば、特殊詐欺とは被害者に電話をかけて対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みなどにより、不特定多数の人から現金等をだまし取る犯罪の総称です。犯罪件数は、2021年から3年連続で増加中です。

65歳以上の高齢者が特殊詐欺の被害にあった中で、最も件数が多かったのがオレオレ詐欺です。オレオレ詐欺の被害にあった全世代の94.5%を65歳以上が占めており、とくに女性が被害にあっています。ついで多いのが還付金詐欺で、同じく65歳以上の割合は77.3%。こちらも、女性が多く被害にあっています。

特殊詐欺の犯行に用いられるツールで最も多いのが電話で77.4%、そのうち90.5%が固定電話への連絡となっています。

このことからも、実家の固定電話の対策をしておけば、特殊詐欺の被害にあう確率は大きく減らせるとわかります。どんな対策ができるのでしょう?

ナンバー・ディスプレイの無償化が始まった

NTT東日本・西日本は、2023年5月から特殊詐欺防止のため、70歳以上の契約者および70歳以上の方と同居する契約者の回線を対象に、ナンバー・ディスプレイとナンバー・リクエストを無償化しました。

ナンバー・ディスプレイは、かけてきた相手の電話番号が電話に出る前に電話機のディスプレイに表示されるサービスで、ナンバー・リクエストは電話番号を通知しないでかけてきた相手に対して、番号を通知するよう音声で応答するサービスです。

ナンバー・ディスプレイ対応の電話機を用意する必要がありますが、契約すれば親が見知らぬ人からの電話に出る回数を減らせるでしょう。また家族、友人、知人の電話番号を電話機に登録しておくと、呼び出し音で名前を読み上げる機能がついた固定電話もあります。

わが家も、ナンバー・ディスプレイ対応の固定電話に買い替えました。電話帳に登録されていない人からの電話に対しては、「この通話を録音します」というメッセージが自動で流れます。かけてきた相手はこのメッセージを聞くと電話を切るので、これまで母はオレオレ詐欺や還付金詐欺の被害にあっていません。

わが家の固定電話は特殊詐欺対策ができる
わが家の固定電話は特殊詐欺対策ができる

また太陽光発電の設置、不用品買取などの電話勧誘も多くかかってきますが、電話帳に登録していない人からの電話は、呼び出し音が鳴らない設定にしてあるので、母が勧誘に引っかかったことは一度もありません。

固定電話自体を止めてしまえばいいのでは? と思われるかもしれませんが、親が認知症になった場合に、スマートフォンなど携帯電話の操作が難しくなる場合があります。また親が携帯電話を携帯せずに外出したり、充電を忘れて連絡がつかなくなったりするなどの可能性も考えると、固定電話は残しておいたほうがいいと思います。

認知症の母は携帯電話の使い方がわからなくなったので解約しましたが、固定電話の受話器を取る操作は今でも覚えているので、なんとか電話のやりとりができています。

2023年7月以降、国際電話を利用した特殊詐欺が急増したため、「国際電話不取扱受付センター」(0120-210-364)に申し込めば、国際電話番号からの発着信を無償で休止できるようになりました。

特殊詐欺を防止する機能のついた固定電話に買い替える場合、自治体によっては補助金が出ます。購入する前に必ず、親の自治体のホームページで確認しましょう。

親の介護も見守りも情報戦

もし親が特殊被害にあってしまったら、仕事を辞めて一緒に暮らしたり、親を呼び寄せたり
しようとするかもしれません。しかし今回のように固定電話を見直すだけで、問題が解決する場合もあります。

親の介護も見守りも情報戦です。いきなり始まる親の介護や見守りで慌てて会社を辞めないためにも、こうした情報を日ごろから集めておきましょう。

【出典】
・みずほ情報総研株式会社「介護と仕事の両立を実現するための効果的な在宅サービスのケアの体制(介護サービスモデル)に関する調査研究」(2017年3月)
・警察庁「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)」

(文:工藤広伸

 presented by paiza

Share

Tech Team Journalをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む