わたしは今では執筆を生業としているため、「文章ばかり書いている人」と思われているかもしれません。

ところが実はデザイン学校を卒業していて、もともとはデザイン系の人なのです。

今ではメインの仕事はデザインではありませんが、「デザインの知識があってよかった!」と思うことはよくあります。

デザインの知識は文章を書くときにも活きますし、生活をするなかでも活用できるのです。

本記事では、そのデザインの知識のなかでも一番役に立つ「メリハリ」という概念について紹介しましょう。

おおげさですがこの知識があれば、非デザイナーの人も、すべての人が幸せになれると思っています。

「メリハリ」とは?

日常生活で「メリハリ」という言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか?

「メリハリのない生活はもうイヤだ!」
「メリハリをつけて勉強しなさい!」

「メリハリのない生活」は、とくに変わったイベントもなく「同じことを繰り返すような生活」を指してつかわれます。

「メリハリをつけて勉強する」とは、勉強する時間をきっちりと決め、その時間は勉強に集中するという意味ですよね。

つまり「メリハリ」とは、ほかのものと区別して際立たせるという意味になります。では、こちらのイラストを見てください。

どこに目が行きましたか?

99.9%の人は「黄色い円」に目が行ったことでしょう。

なぜならこの黄色い円にはメリハリがあり、背景の黒とは区別され、際立って見えるからです。

では今度はこちらを見てください。

これも黄色い3つの円にメリハリがあるので、こちらに目が行くはずです。

では、さらに黄色い円を増やしてみましょう。

どうでしょうか。黄色い円が増えるにつれ、一つひとつの黄色い円が目立たなくなってしまいました。

最初からあった左下の円を見てほしくても、もはやまったく目立ちません。

そして、黄色い円があまりに増えすぎてしまうと次のようになります。

ここまでくると「黄色」が「主」になってしまい、「黒」に目が行きますよね。

なににおいても、こういう「メリハリのない状態」をつくるのは好ましくないのです。

文章における「メリハリ」とは?

今度は「文章におけるメリハリ」を例に見てみましょう。次のメリハリのない文章例を見てください(内容は適当なので読まなくてけっこうです)。

率直にいって、文章だらけで読みたくないですよね?

そこで、次の例では「太字」をつかってメリハリをつけてみました。

目立たせたい部分と目立たなくていい部分が明確に分かれ、さきほどの例よりは「読んでみようかな」という気になると思います。

このように「太字を入れるとメリハリがつく」のは事実ですが、つかいすぎには禁物です。

こちらが太字をつかいすぎてしまった例。

さきほどお見せした「黄色い円」の例と同じで、太字が増えてしまうとメリハリがなくなり、すべてが目立たなくなってしまいます。

そう。すべてを目立たせようとするとすべてが目立たなくなるのです。

これは色をつけるときも同じです。次の「目が痛くなる文章の例」をご覧ください。

この状態をわたしは「色彩の暴力」と呼んでいます(笑)。目立たせたい気持ちが強すぎてすべてが目立たなくなっているという残念な例ですよね。

ここまでひどい色づかいに出合うことはまれですが、近いレベルならネットでもよく見かけます。

「目立たせる箇所」を厳選するからこそ、メリハリが出て目立つのです。

色をつかう場合でも、次の例のようにつかうところを厳選しましょう。

ピンクの服を着ている人が目立つのは、まわりにピンクの服を着ている人がいないからです。

まわりの人全員がピンクの服ならば、自分がピンクを着ていてもまったく目立たないということを覚えておいてください。

メリハリが必要なのはビジュアルだけではない

前項で文章のビジュアルでの例を紹介しましたが、メリハリが必要なのは「太字」や「色」だけではありません。

たとえば、文末が「〜ます」ばかりになってしまうと、メリハリがなくなり、稚拙に見えてしまいます。

次の例では、文末を「〜した」に統一しました。

どうでしょうか。メリハリがないことで単調に見え、さらには稚拙な文のように見えませんか?

メリハリがないと内容がよくても信頼性が低く見えてしまう(この例は駄文ですが)ため、注意が必要です。

ほかにも文章における「メリハリ」の例をすこしだけ紹介します。

例1:「体言止め」のつかいすぎ

「大好物はピザ」のように名詞で終わらせる表現を「体現止め」と呼びます。

たまにあるとスマートに見えますが、つかいすぎると「新鮮味」といった効果がなくなるだけでなく「下手なラップ」のように見え、かっこ悪いです。

例2:「!」のつかいすぎ

文末に「!」をつけることで「勢い」を表現できます。

その反面、つかいすぎると文章が暑苦しく見え、読むのがしんどくなることも。

例3: 短い文章だらけ

文章は短いほうが理解しやすいですが、短い文(しかも、同じぐらいの長さ)ばかりが続くと稚拙な文に見えてしまいます。

これらの例のように「効果的な表現」だとしても、つかいすぎないように気をつけましょう。

「メリハリ」を日常に取り入れよう

この「メリハリ」の概念ですが、ビジュアルや文章といった「表現手段」以外にも取り入れられます。

生活のすべて、極端にいえば「人生」にメリハリを注入してみましょう。

たとえば、毎回同じ人と飲みに行くのではなく、いつもは誘わない人をメンバーに入れてみる。

飲み屋ばかりに行くのではなく、カフェに集まってみる。スマホばかり見ているのではなく、スマホを置いて出かけてみる。

いつもと違ったことを生活に取り入れ、メリハリをつけることで新しいアイデアが浮かぶこともあるはずです。

デザインでも文章でも人生でも、常にメリハリを心がけていきましょう。

(文:ヨス

― presented by paiza


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