わたしは15年以上にわたりさまざまなWebサービスを日々試しながら、新しいWeb開発の進め方を研究したりSNSや書籍の刊行などもしてきました。
そのような活動のなかで、ミートアップや勉強会などのイベントを開催したり参加する機会も増えてきたのですが、ユーザーからの問い合わせ対応も増えてきたのです。
こんなときに、
「あぁ、AIが代わりに対応してくれたらいいのになぁ」
と思うことがあります。
そこで、今話題のChatGPTをベースにしながら、AIを活用した問い合わせ対応の自動化を試してみたのでその手法をご紹介します。
本記事では、イベント開催における問い合わせの自動化を解説していますが、もちろん基本をマスターすればどのようなケースにも対応できるようになります。
ノーコードツールの選定
2023年4月時点において、AIに関連したWebサービスやツールはすでに数え切れないほど存在しています。毎日新しいサービスが誕生しており、あらゆる用途において誰でも簡単に活用できるように提供されています。
しかし、種類が多すぎて「どれを使ったらいいのかわからない」という状況にもなりがちです。
そのため、AI系のサービスをカテゴリ別にまとめたWebサイトを利用するのがオススメです。
たとえば「Futurepedia」というサイトを訪れると、さまざまな用途のAI系サービスを簡単に発見できます。
https://www.futurepedia.io/
このサイトにも掲載されていますが、今回は「Pickaxe」というAIサービスに注目してみましょう。
「Pickaxe」はChatGPTをベースにしながら、ユーザーからの質問をAIが自動で回答してくれるWebアプリをノーコードで開発できるサービスです。まさに、問い合わせ対応の自動化に最適なサービスと言えるでしょう。
【Pickaxe】
https://beta.pickaxeproject.com/
「どのような質問にどういう回答をするか?」というロジックを文章で指定するだけで簡単に誰でも利用できるのが特徴です。
本記事ではこの「Pickaxe」を利用して問い合わせ対応を自動化するAIアプリを作ってみましょう。
「Pickaxe」の使い方
「Pickaxe」のサイトにアクセスしたら、画面上部にある「Sign in」をクリックしてください。
ユーザー登録フォームが表示されるので、任意のユーザー名、メールアドレス、パスワードを入力して「Continue」ボタンをクリックします。
(※ログイン用のフォームが表示されている場合は、下部の「Sign up」リンクをクリックして登録を進めてください)
以下のような画面が表示されたあと、登録したメールアドレス宛にログイン用の認証リンクが送付されます。
認証リンクをクリックすると、自分専用のダッシュボード画面が表示されます。
このダッシュボードは管理画面になっており、新規プロジェクトの作成をしたり進捗状況を確認したりできます。
AIによる問い合わせアプリの作り方
それでは「Pickaxe」を利用して、AIに問い合わせ対応をしてもらいましょう。
簡単なサンプルデモとして、架空のミートアップを開催したときの問い合わせ対応を想定してみます。目標としては、開催する内容についてチャットで質問をするとAIが何でも回答してくれるWebアプリを作成します。
以下は、実際のデモ画面です。
まず最初に、ダッシュボードから新規プロジェクトを作成します。画面中央のボタンをクリックしてください。
一番上にあるテキストベースのプロジェクトを選択します。
専用の編集エディタに切り替わります。
このエディタは左側に「プロンプト」の編集画面があり、右側に「フォーム」をカスタマイズできるエディタが配置されています。
「プロンプトエディタ」でAIに学習させたいテキストを入力し、「フォームエディタ」で実際にWebサイトへ表示する要素を作成していきます。
そこで、まずはAIに学習させるテキストの内容を設定しましょう。
これはどんなテキストでも構いませんが、今回の場合だとミートアップの内容がわかるような情報をAIにテキスト(文章)で提供します。たとえば、開催概要、日時、料金、場所などの情報があるといいでしょう。
以下はAIに提供するテキストデータのサンプル例です。
東京都内でWeb開発者のためのミートアップを開催します。
毎回30人ほどが集まり、さまざまなプロジェクトに参加している人たちと触れ合うことができます。このミートアップを通じて有意義なコラボレーションが生まれ、互いのプロジェクトを助け合うことができるようになります。
プログラマー、デザイナー、経営者、投資家など、次のプロジェクトに必要な人材をお探しの方は、ぜひこの機会にご参加ください。
日時: 2023年4月8日(水)19時。正式な終了時刻はありません。好きなだけ遊んでください。
参加費: 無料
場所: 東京都渋谷区にあるカフェバー。カフェバーには食べ物も飲み物も販売しています。
内容: 東京都内のWeb開発者同士が出会い、ネットワークを構築し、プロジェクトについて語り合い、有意義なコラボレーションを実現するための機会です。
駐車場: カフェバー周辺には無料の駐車場があります。
質問:
回答:
「Pickaxe」のAIは、上記のようなテキストデータをベースにしながら回答するので、必要事項はすべて記載しておくといいでしょう。とくに、質問が予想されそうな内容は詳細に記載しておくとAIも回答しやすくなります。
テキストデータがだいたい決まったら、プロンプトエディタへ入力しましょう。
次に、テキストの末尾に記載しておいた「質問:」の箇所にカーソルを合わせてから、「Add User Input」と書かれたボタンをクリックしてください。
すると青色で「User Input」というタグが挿入されます。
これは、ユーザーからの質問内容がここに入力されるという意味になります。
画面右側のフォームエディタをみると、「User Input」の入力フォームが自動的に配置されているのがわかります。
さらにタイトルなどのテキストも入力しておきましょう。
このフォームの内容がそのままWebサイトに反映される仕組みです。
つまり、ユーザーが入力した質問内容がテキストデータと一緒にAIへ提供されて、その質問に最適な回答が返ってくるわけです。
たったこれだけの作業ですが、すでにAIによる問い合わせ対応のロジックは完成しています。ただし、このままだとAIが機械的な回答になりがちです。
そこで、AIをより人間らしくするために「役職(Role)」をテキストで設定できる機能もあります。
AIが問い合わせ対応の仕事をするにあたり、どのように働いてもらうかをテキストで自由に指示を出すことができるわけです。書き方次第でさまざまなアシスタントになってくれるのですが、今回は次のようなテキストにしてみました。
指示内容が決まったら、エディタの「Role」と書かれた部分をクリックしてテキストを入力してください。
これでAIの設定は完了です。
エディタ下部の「Continue」ボタンをクリックしてください。
(※テストする際も「Test Prompt」ボタンはクリックせずに、公開してから試すとクレジットの消費を抑えられるのでオススメです)
AIアプリを公開する前の設定画面が表示されるので、カテゴリの選択や公開・非公開などを設定しましょう。問題なければ「Publish Pickaxe」ボタンをクリックします。
これでAIによる問い合わせ対応ができるWebアプリが公開されました。
手順自体はとてもシンプルなので、慣れてしまえば誰でも簡単に扱えるようになります。
AIの実力を試してみよう
それでは作成したAIアプリを実際に利用してみましょう。
さきほどの最終画面には、固有に生成されたURLが表示されているのでコピーしてください。
URLにアクセスするとAIアプリが表示されるので、何か質問を入力してボタンをクリックしてみましょう。
すると、提供されたテキストデータをもとにしてAIが人間のように回答してくれます。
以下は実際のデモ画面です。
さまざまな人に試してもらって想定内の回答がされているかを確認することが重要です。AIは意図しない回答をすることもあるので、その場合はテキストへさらに詳細な情報を追記するようにしてください。
もし修正点が見つかっても、テキストデータを随時変更するだけなので簡単です。どんどん質問して納得できる回答になるまで最適化しておきましょう。
ちなみに、固有のURLからアクセスする以外の方法も提供されています。「Embed」ボタンをクリックしてください。
iframeを利用した埋め込みコードが右側に表示されます。
このコードをWebサイトやブログなどのHTMLに挿入すれば、AIアプリを好きな場所に表示させることができます。
今回の例だと、たとえばミートアップのホームページにAIアプリを表示させれば、そのままユーザーからの質問に自動回答してくれる仕組みを構築できるわけです。
ちなみに、今回のサンプル例はテキストの中身を変えればどんな問い合わせにも対応できるようになります。会社案内やWebサービスのFAQなど、AIに提供するテキストデータを変えるだけなのでとてもシンプルです。
ChatGPTでも同じことはできるのか?
これまで見てきた「Pickaxe」は、ChatGPTをベースにしたWebサービスです。
そのため、OpenAIが提供する公式のChatGPTからでも同じことができるはずなので実験的に試してみましょう。
ChatGPTの公式サイトにアクセスしたら、サンプルデモで利用したテキストを次のように貼り付けてチャットを開始してみましょう。
以下のような内容のミートアップを開催する予定です。
東京都内でWeb開発者のためのミートアップを開催します。
毎回30人ほどが集まり、さまざまなプロジェクトに参加している人たちと触れ合うことができます。このミートアップを通じて有意義なコラボレーションが生まれ、互いのプロジェクトを助け合うことができるようになります。
プログラマー、デザイナー、経営者、投資家など、次のプロジェクトに必要な人材をお探しの方は、ぜひこの機会にご参加ください。
日時: 2023年4月8日(水)19時。正式な終了時刻はありません。好きなだけ遊んでください。
参加費: 無料
場所: 東京都渋谷区にあるカフェバー。カフェバーには食べ物も飲み物も販売しています。
内容: 東京都内のWeb開発者同士が出会い、ネットワークを構築し、プロジェクトについて語り合い、有意義なコラボレーションを実現するための機会です。
駐車場: カフェバー周辺には無料の駐車場があります。
上記の内容をベースにして、ユーザーからの問い合わせを徹底的に理解しながら、その期待に効果的に応えられるようにしてください。また、充実したソリューションを提供することに専念する適応力のある熟練したアシスタントになってください。
少しだけ文章を追記・編集していますが、基本的にはサンプル例で利用したテキストと同じものです。
次に、何か質問をしてみましょう。おそらく、サンプルデモと同じような回答をしてくれるはずです。
このまま問い合わせ対応もしてくれそうですが、このチャットは自分のアカウントだけでしか利用できません。
つまり、「Pickaxe」のように誰でも利用できるWebサイトやフォームがないので、ユーザーからの質問を得られないわけです。同じようなWebアプリを開発しようと思ったら、公式で提供されているAPIを利用して自分でプログラムを作っていく必要があります。
そのため「Pickaxe」のようなノーコードサービスがあると、誰でも扱えるようになって便利なわけです。
ちなみに、テキストデータを「Pickaxe」へ入力する前に、ChatGPTでさまざまな質問を試して最適化するのはアリです。「Pickaxe」だとテキストデータを更新するのが手間なので、ある程度ちゃんとしたデータになってからAIアプリを公開すると効率的でしょう。
AIによる問い合わせ対応の注意点
ノーコードサービスをうまく利用すれば、誰でも簡単にAIを搭載したWebアプリを開発できるようになります。ただし、AIの特性を考えると、最終的な成果物はこれまで以上に検証が必要になるはずです。
<検証例>
さまざまな視点からの質問を繰り返す
満足できる回答がされるかを確認
足りていない部分はテキストデータを随時更新する
必要な情報をAIが得られているかを確認するだけでなく、おかしな返答をしないように内容の詳細を細かく追記しておくのがコツです。
例えば、日時を以下のように記述したとします。
これだと終了時刻がわからないので、AIはあいまいな表現で答えてしまう可能性があります。
そこで、終了時刻を記載するか、決まっていない場合はその旨を記述したほうが結果がよくなります。
このように記述すると、ユーザーの問い合わせに対して終了時間が決まっていないことをしっかり伝えてくれるようになります。
細かい部分ですが、AIがどのように返答するかを決定づける重要な要素になります。
AIアプリをたくさん作っていくと、テキストデータの作成ポイントも自然と理解できるようになります。ぜひみなさんもAIを活用して問い合わせの自動化に挑戦してみてください!
(文:まさとらん)