私はフリーランス20年目に突入した40代のライターです。独立しようと決意してフリーになったわけではありませんが、育児中に始めたサイト運営で収益が出て、流れで個人事業主になったのが2004年のこと。その後、ライターとして活動するようになりました。

曲がりなりにも20年近くフリーランスとして働いているのですが、個人で仕事をし続けるためには、以下の両方が必要だと考えています。

  • 自らつぶれて書けなくなることを避ける(自分の内側の話)
  • 仕事が途絶えないようにする(外との関わりの話)

これを踏まえて、私が仕事をする上で意識している7つのルールを紹介します。

Rule1:成果物と人格を分ける


提出した原稿にびっしりと赤入れをされてショックを受けたといった話はよく聞きますが、成果物へのフィードバックを人格否定と捉えると、メンタルを健やかに保てません。

これはライターに限った話ではなく、どんな仕事であれ、つぶれてしまわないために成果物と人格は分けるべきだと考えます。編集者が私の原稿に大量の赤入れをすることと、その人が私を好きか嫌いかは、まったく関係ないことだからです。

赤入れや上司からのダメ出しは「お前はダメだ、期待外れだ」といった人格否定ではなく、協力してより良いものを作るため。もし「お前は全然使えないな」なんて暴言を吐く人がいたら、それはその人自身に何か問題があると思うので、私なら距離を置きます。

成果物≠自分という考え方は、心を病むことなく仕事をし続けるためにとても大切です

Rule2:タスクを細分化し、To doリストを作る


「どうしよう、あれも、これも、それもやらなくちゃ!」と、頭の中がごちゃごちゃになるのを防ぐために、To doリストを作って「見える化」しています。

タスク群をモヤッとした巨大なカタマリのままにしておくとかなり大変そうに感じますが、実際に書き出してみると、「あ、これだけやればいいのね」と整理しやすいです。

書き出す際は、タスクを細分化して取り掛かる前の気の重さをなくすのもポイント。例えば、ブログ記事を1本作成する場合は「記事作成」と書くのではなく「画像選定と加工」「構成案作成」「執筆」と分けて書き、1つずつ終わらせていきます

書くのは紙でもパソコンやスマホでも構いません。私は紙に書いて、1つ終わるたびに打ち消し線を引いていくことで達成感を味わえるようにしています。細分化することで打ち消し線を引きやすくなり、「ゴールまであと少し!」と思えるのでおすすめです。

なお「1本メールの返信をする」「書類を送る」といった5分以内で済むことはTo doリストに入れていません。さっさと終わらせて、それに脳のリソースを使わない(やらなくちゃの数を増やさない)のがコツです。

Rule3:メモをとってひらめきを繋ぎとめる


パソコンに向かっているとちっとも良いアイデアが生まれないのに、歩いているときやベッドで横になっているときに何かをひらめくことは珍しくないです。そのときは紙でもスマホでもよいのでメモをとり、ひらめきを繋ぎとめるアンカーにしています

この記事も、パソコンに向かって「さぁ、7つ考えるぞ」とやっているわけではなく、ふとした瞬間に浮かんだことを書き留めたメモを元に書いています。メモはたいてい単語だけ、1フレーズだけの短いものですが、それさえあれば思考を手繰り寄せることは可能です。

私は常々メタファーのひきだし(「これって〇〇だな」のストック)を増やしたいと思っているのですが、メタファーのひらめきは人との会話中に降りてくることが多いです。

Rule4:相手の脳の負荷を下げ、手間を減らす


ライターの仕事は一人では成り立ちません。クライアント、編集者、取材であればインタビュイー、場合によっては代理店や先方の広報の方が関係してくることもあります。

私が心掛けているのは、相手の脳の負荷を下げるやりとりをすることと、相手の手間を減らす気づかいをすることです。

脳の負荷を下げるとは、例えば、メールで質問をする際は相手が答えやすい問いかけをする(オープンクエスチョンよりクローズドクエスチョン)、過剰な婉曲表現でスムーズな理解を妨げない、複数の並列した項目は箇条書きにする、など。

前に知らない方からその方の事業に関する長々としたメールをもらって、最後に「どうぞよろしくお願い致します」と書かれていたときは、「一体私は何を求められているんだ?」と困惑しましたが、それを反面教師にしています。

手間を減らす気づかいとは、例えば、何かの催しの案内で、会場へのアクセスとしてURLの記載があるのは普通ですよね。しかし、そこにテキストでも「〇〇駅〇出口から徒歩2分」と書いてあったら、わざわざリンクを開いて確認しなくても済みます。

チャットのラリーで何かを決めた場合も、最後に「では、〇月〇日、〇時に、〇〇駅の〇〇出口でお待ちしていますね」といった内容を送っておくと、相手にやりとりを遡って確認する手間をかけさせずに済み、認識の相違もなくせるので、一石二鳥です。

「私は気が利くほうじゃない」と思うなら、メールを書いた後で見返して、受け取った相手の立場でどう感じるだろうかと想像してみると改善点が見つかるかもしれません。

「この人はきかなくても必要な情報を伝えてくれるし、こちらの手間がかからないよう配慮をしてくれているな」と感じる相手との仕事は非常にスムーズで、気持ちが良いです。

Rule5:テキストコミュニケーションで人感を出す


一つ前に気づかいのことを書きましたが、ことテキストコミュニケーションにおいては人感を出すように意識しています。「いいです」という言葉が見放したような印象を与えるときもあれば、満足を伝えられるときもあるように、前提となる感情は大切です。Slackにスタンプを押したり、名前で呼びかけたりするだけでも、伝わるものはあると思っています。

仕事のやりとりでは、必要最低限の情報があれば済むのかもしれません。しかし、「お送りいただいた資料が非常に役立ちました。ありがとうございます」とか、「〇〇さんのおかげでこの部分をブラッシュアップできました」とか言われて、嬉しくない相手はいないのではないでしょうか。

ちょっとした雑談ができる環境(=心理的安全が担保された環境)は、柔軟な発想が生まれやすいです。特にフリーランスにおいては、他愛ないおしゃべりから「そういうものに興味があるなら〇〇の仕事をお願いできない?」といったように、次の仕事に繋がるケースも珍しくありません。

また、テキストコミュニケーションが中心であれば相手を不安にさせないことも大切です。月曜日が締め切りの原稿がある場合、前の週の金曜日に「〇〇の原稿は週明け月曜日の午前中に提出しますね」と自発的リマインドをしておくと、相手も安心するでしょう。

相手との信頼関係が築けたら不要かもしれませんが、初めましての相手との仕事では、先方も「ちゃんと月曜日に出してくれるかな(忘れられていないかな)」と不安だと思うので、先回りして伝えておくと印象が良さそうです。

Rule6:好奇心を仕事のエンジンにする


ライターに限らず、好奇心は仕事のエンジンになると考えています。中高年の人と話すと「若いときに比べていろいろなことに興味が持てなくなった。気力がなくなった」という人もいますが、好奇心をなくしたときに人は容易に老け込むのではないでしょうか。

インタビューライターであれば、取材対象に興味を持つことが大切です。「難しそう」「よくわからない」と心のシャッターを下ろしてしまうのではなく、「何が面白いんだろう」と考えてみます。例えば、盆栽にまったく興味がなくても、盆栽に夢中になっている人に興味を持つことはできますよね。

「何かにハマる」体験は、対象が違えど、エッセンスには共通するものがあります。そうした普遍性を文章で表現できれば、読み手の中にある感情を引っ張り出せると思うのです。

私は今40代後半で、これからも仕事をし続けていきたいので、好奇心を持って何でも体験してみる、世代の違う人と話してみる、普段とは違う行動をしてみることは大切だと考えています。それが仕事の企画出しにも繋がるので、何一つ無駄なことはありません。

ネガティブ思考を軽減する、「認識変換力」の重要性の書評コラムで引用した、「いつでもどこでも、明るく楽しくいること」「起こることを楽しむこと」を心掛けたいです。

Rule7:仕事がある場にいるようにする


フリーランスは何がどう仕事に結びつくかわからないもの。もちろんスキルアップも必要ですが、一定のレベル以上になったら「声がかかる場にいる」ほうが大切だと考えています。

今のライティングスキルが100点中30点なら、まず文章力を伸ばしたり、書く筋力をつけたりすべきでしょう。でも、今85点なら、90点を目指すよりも、仕事がある場にいるようにしたほうが案件を獲得しやすいと思います。

仕事は人づてにやってくることが多いです。私は2009年からTwitterをやっていますが、SNSからの仕事依頼はこれまでに何度もありました。Webで私の記名記事を読んだ人がTwitter検索をしてDMを送ってくれるケースや、私の記事を長年読んでくれていた人が職場でディレクターになり「やっと依頼できます!」とメールをくれるケースなど)

売り込むのではなく、相手にニーズが発生したときに「そういえば、〇〇さんこういうことできるんじゃないかな」「▲▲といえば〇〇さんでしょ」と思い出してもらえる存在でいられれば、仕事が途絶えないのではないかなと思います。

相手のニーズをコントロールすることはできませんが、ゆるいつながりを保ち続けることは(ちょっとした心掛けで)できるのではないでしょうか。

ここまで「仕事をし続けるために、フリーランスが意識している7つのルール」を書いたわけですが、いざ洗いだしてみると、フリーランスに限らず、組織に属して仕事をする人にも共通する内容かもしれない、と感じました。

プラスアルファの意識や相手への気づかい、ゆるい関係性の維持など、一つひとつは些細なことかもしれません。しかし、そうしたものを積み上げていくことで、つぶれず、依頼も途絶えず、仕事をし続けていけるのではないでしょうか。

(文:ayan

presented by paiza

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