転職活動中は心が揺れますよね。わたしは現在、個人事業主としてライター・フォトグラファー・Web制作などをしていますが、かつて会社退職後に行った転職活動ではゴールが定まらず迷子になっていました。
あのころのわたしに今の知見があれば、もう少し楽しく活動できたかもしれません。というのは、サイエンスライター鈴木祐さんの『科学的な適職』を読み、科学的に仕事が選べるようになったから。この力があれば自分が輝ける職場と出会う確率も高まるでしょう。
目次
仕事選びでやりがちな失敗の例
本書の前半部分にて、多くの人が仕事を選ぶときにハマってしまう失敗例が7種類紹介されています。恐ろしいことに、失敗例はどれも、ぱっと見はすべて良さそうなのです。たとえば「好きを仕事にする」とか。この文言、実際に求人サイトの広告キャッチにもあったような気がします。でも、好きなことを仕事にするのは、適職に就くことが目的であるなら、あまりよい方法ではありません。本書では、好きなことを仕事にした人の末路が紹介されています。
わたし自身も「好きを仕事に」はしたことがあります。しかし、わたしが犯したもっと反省すべき致命的な失敗は、「仕事を楽さで選ぶこと」でした。「仕事以外の時間を充実させたいから、重い負荷がかかりそうな会社は除外。」こんな思考回路で仕事を決めたことがあります。
そうして入社した後、わたしに割り当てられた仕事の難易度は高くなく残業もありませんでした。しかし、自分の狙い通りになったはずなのに、毎日なぜだかモヤモヤするんです。
「はたしてここはわたしの居るべき場所なんだろうか……」自分の存在意義に悩み、つらいことを考えなくていいように享楽的な趣味に走ったりもしました。これは仕事人として健全な状況ではないですね。
仕事で満足感を得るためには「良性のストレス」が不可欠です。良性のストレスとは、短時間で終わるストレスのこと。長く続くストレスは悪性ストレスです。
当時とは対照的に、今のわたしは「楽ではない仕事」を選んでいます。人から見れば「その仕事、働き方、大変なんじゃない?」と思われるかもしれません。安定していないし、チャレンジや度胸や決断も必要です。しかし、楽な仕事をしていたころに比べると、メンタルが安定しています。
わたしにとって「楽さ」で仕事を選ぶというのは、やってはいけないことだったのだな、と今なら理解できます。
満足度が高い仕事にはアレがある

仕事を選ぶ段階でミスをしていたとしても、入社後に充足感を得られる結果オーライな場合もあります。そういう仕事には、以下7つの幸福度を高める要素が含まれています。
- 自由
- 達成
- 焦点
- 明確
- 多様
- 仲間
- 貢献
この7つの要素は、仕事の幸福度を決める「7つの徳目」として本書ステップ2で紹介されています。
7つの要素すべてが揃った仕事に出会えれば言うことなしですが、現実にはなかなか難しいものです。ですので「自分にとって」優先度の高い要素を明らかにしておく必要があります。わたしの場合は、「達成」と「多様」でした。
達成感は仕事のモチベーションを左右します。いつも気分上々でいるには、小さな達成を積み重ねていくといいわけです。あとは作業後早めにフィードバックがもらえたときも達成感が感じられるそうです。
わたしには「多様」も重要でした。「多様」とは、1日の中でどれだけ変化がある時間を過ごせるかということ。
システム全体の一部しか関われなかったり、「この部分だけやってくれればいいから」といった指示には、まったくモチベーションが上がらなかったりしたことを思い出します。
今自分で働き方を選び、さまざまな分野の仕事をしているのも、わたしには「多様」が重要だったからなんだな……と、自分なりに解析しています。
絶対行くな 不幸になる職場はココ

さまざまなプラス要素が備わった理想的な職場も、1つ強力な負の要素があるだけで、せっかくのよい特徴が帳消しになってしまいます。
というのは、人間の脳はネガティブな経験を、ポジティブなものより6倍強く感じるようにできているから。ネガティブのパワーはポジティブ体験を駆逐してしまうのです。
だからこそ、ネガティブな要素を持つ職場には近づいてはいけません。『科学的な適職』で紹介された、わたしたち職業人のメンタルを蝕む悪の要素は8つあります。
- ワークライフバランスの崩壊
- 雇用が不安定
- 長時間労働
- シフトワーク
- 仕事のコントロール権がない
- ソーシャルサポートがない
- 組織内に不公平が多い
- 長時間通勤
確かに、わたし自身の離職経験を振り返ると「あの職場、悪の要素あったわ、あのとき」と思えます。その悪の要素は以下の2つ。
1つは「ソーシャル・サポートがない」で、もう1つは「長時間通勤」。
「ソーシャル・サポートがない」というのは、要は「心理的安全性」がないことです。何をやっても大丈夫と思えるのが心理的安全性ですが、当時の職場の空気は真逆。ミスは決して許されませんでした。
誰かの目標が未達成に終わると、フロア中に響き渡る大声で個人攻撃を始める役員がいました。その人の負の存在感が本当に大きく、いったん叱責タイムが始まると、他の社員の会話は止まり、空間全体が緊張感で満たされました。
直接自分に向けられていなくても、誰かが誰かを一方的に罵倒している声は、まるで自分が責められているように感じられ、あの時間は嫌でたまらなかったです。
その後読んだ脳科学の本によると、脳は悪口を言われているのが自分か他人か区別できないので、あのころのわたしは自分もガミガミ怒られている……と日々感じながら過ごしていたのでしょう。
「長時間通勤」も、わたしには大きな負担でした。会社までマイカー通勤だったのですが、規定が変更され、自動車通勤不可になりました。しかし自宅から会社まで電車だと乗り換えや待ち時間の無駄が多く、倍の時間がかかります。ドアツードアでおよそ1時間55分。これを長いとみるか、たいしたことないとみるか……。わたしにとっては「毎日会社に行くだけで体力精神力のリソースを使い果たす……」と絶望しかなく、少し悩んでその会社を辞めました。
車で通えなくなったくらいで、試しもせずに辞めるなんてわたしって軟弱かも……と、自省することもありました。しかし「長時間通勤は職場の8大悪の1つ」と科学的に言い切る書籍に出会え、「あ、わたしは間違っていなかったんだ。メンタル病む前に判断できてグッジョブだった」と、勇気づけられました。
いざ、科学的に仕事を選ぶワークに挑戦

『科学的な適職』を読むと、自分が幸せになる適職に就くための基礎知識が得られます。しかし、読んだだけの知識は身に付きにくい。自分のものにするためには、実際に活用したりアウトプットしたりが重要です。
ということで、本書で紹介された「意思決定ツール」を使い、今のわたしに適した仕事を選ぶワークをやってみました。トライしたのは「プロコン分析」(プロコン:ラテン語の「pros(賛成の)」「cons(反対の)」が由来。特定のテーマのメリット・デメリットを並べて比較する)なるワークです。
「フリーランスをやめて就職する」というテーマでやってみたところ、29対34で、フリーランスでいるメリットが上回る結果となりました。
実際にワークを実行して感じたのは、思考や感情を書き出し、自分なりに重要度を評価して数字に置き換えると、状況が整理できて冷静になれることです。そのタイミングでの自分が優先したいこと、価値を感じていないことが可視化できます。
かつてのわたしはこうしたツールを使わず、行きあたりばったりに転職活動をしていました。戦術も解析もなくマーケティング運用していたようなもので、どう考えても成功率は低いでしょう。
自分の感情が一番わかるのは自分。書籍『科学的な適職』を仕事選びのガイドブックにして認知のゆがみを排除すれば、主観と科学のいいとこどりができ、自分自身のキャリアコンサルタントになれます。自分にとって、よりよい仕事に出会う可能性は高まるはずです。
(文:ちゃんまり)

