わたしは2013年にフリーランスになり、2018年から会社を経営しています。独立するまではいろいろな仕事を経験してきて、そのときの「仕事の探しかた」が人とは違うとよく言われてきました。

なぜなら、ほとんどの友人は給料、保険の完備、残業やボーナスの有無などを気にしていましたが、わたしの場合は正社員でもアルバイトでもよかったし、給料もそこまで重視していなかったからです。

ただひとつこだわっていたのは、その仕事で「ほしいスキル」が得られるかどうか。

とはいえ「将来はこういうふうになりたい」という目標に向かってスキルを得ていたのではなく、得てきた「スキル」がつながって、現在のWeb関係のお仕事になっています。

その仕事で「ほしいスキル」が得られるかどうか

「ほしいスキルが得られるか?」とはどういう意味かというと、そのままです。

求人雑誌をみるときも、ハローワークで調べるときもその会社の業務内容を重視。その仕事をすることで「わたしのほしいスキル」が得られるかどうかをチェックするだけです。

厳密には完全禁煙の職場かどうかも重要でしたが、それはさておき、その一点を重視していました。

ここでポイントなのは「数年後には辞める」という前提です。スキルが高いレベルで得られれば、それ以上は会社にいる必要がなくなります。RPGにある「職業システム」でも、それ以上経験を積んでもあまり意味がないレベルに到達すれば転職しますよね?

ちなみに「ほしいスキルを得られるか?」を目的にしていたので、正社員かアルバイトかどうかも重要ではありませんでした。カッコよく書きましたが「就職氷河期」で正社員になるのがむずかしかったことも理由ではあります(笑)。

PCがつかえるようになりたくて文字入力の仕事を

22歳のとき「タッチタイピング」のスキルが得られる仕事を探していました。その理由は、PCがつかえなかったことです。

当時の「若造」だったわたしでも、PCがつかえないと社会人としては話にならないことに気づいていました。ところが、タイピングすらできなかったため「PCへの苦手意識」が相当なものでして……。そこで「まずはタイピングのスキルを得たい!」という思考になりました。

「タイピングすらできない人間がタイピングの仕事はできないだろ?」と思われそうですが、アルバイトなら「初心者歓迎」の仕事もあります。わたしが入った印刷会社では、手書きで書かれた文字、文章をひたすらPCに入力するという業務を募集していました。

ところが、雇ってもらえたのはよかったものの、わたしは同時期に入社したほかの3名と比べて、一番タイピングができませんでした。そのため、タイピングスキルの不要な業務に回されることに。

もちろん「そうじゃなくて、タイピングをしたいんだよ!」と思い、1週間後に「タイピングを極めたいんです!」という熱意を上司に最大限にアピールして、タイピング業務に変えてもらいました。

上司は「やる気がある人のほうが伸びる」という考え方だったので、わたしのやる気にすぐにこたえてくれ、勤務時間内に1〜2時間程度、「タイピングソフト」をつかった練習もさせてくれました。

そうです。お金をもらいながらタイピングの練習をしていたというわけです。

「タッチタイピングを極める」という明確な目標がわたしにはあったので、1か月後にはマスターしました。あとはスピードをもっと速くしていき、1年ほどで辞めるつもりでした……が、学べることがまだまだあったので、気がつけば5年間もはたらくことに。

その「学べること」というのはPCの知識です。

もともと、PCへの苦手意識を払拭しようとタッチタイピングのアルバイトを選んだので、
タッチタイピングをマスターしてからは、積極的にPCのことを勉強していました。

勉強とはいっても、当時はネット上に情報もなかったので、PCに詳しい同僚や上司に能動的に教えてもらっていただけですが。

今思うと、このときのわたしの行動は「勉強」なのですが、わたしにとっては「好きなことをやっていただけ」なんですよね。興味があったことだったので、どんどん吸収し、自分でも試行錯誤し、スキルも向上しました。

ちなみに、この時期にあみだした「単語登録の活用法」などのスキルをブログで発信したことがもとで、20年後にPCの効率化に関する書籍を出版することに。人生はわからないものですね……。

Web制作のスキルがほしくてWebショップ運営の仕事に

PCに詳しくなるにつれ、興味は「自分のWebサイトをつくること」に移っていきます。そこで今度は、初心者でも雇ってもらえるWeb制作の仕事を探すことにしました。

RPG的にいうと「タイピング」+「PC」という2つのスキルを得たおかげで、上位職「Web制作者」をめざせるようになったイメージでしょうか。PCに苦手意識のあったころには想像もできなかった道です。

とはいえ、Web制作はかなりの専門職。タイピングが速くて、基本的なPC操作ができるだけの人間が就けるほど甘くはありません。

それが運のいいことに「Webショップ運営」という仕事で雇ってもらえました。冷静に考えると、こんなド素人をよく雇ってくれたなと自分でも思います。面接では「Webの知識を得て自分のサイトをつくりたい!」という熱意を思いっきりアピールしただけなんですが。

余談になりますが、世の中にはスキルよりも人柄や熱意を重視する会社もあるので、技術がないからと最初から応募をあきらめるのはもったいないですよ。

入社後、まったくWeb制作スキルのなかったわたしに上司はなにも教えてくれませんでした。なんと、雑務の依頼をされる以外は基本的に放置。あとから聞くと、わたしが入ったタイミングがすごく忙しい時期だったので、わたしを育てる時間なんてなかったそうです。

そんな環境で、わたしは業務中にひとりでHTMLやCSSを勉強できるサイトを見まくり、学んだことを会社のネットショップ上でためすことを繰り返していました。つまり、お金をもらいながらWebの勉強をさせてもらっていたのです。

「お金をもらいながら勉強できてラッキー♪」のような文脈ですが、そんなに浮かれるような話ばかりではありません。過去を想起すると顔がこわばるほど、Webショップ運営という仕事は大変だったな……と思います。でも、がんばった甲斐もあり、7年間で次のようなスキルを得られました。

  • HTML/CSS
  • 写真撮影
  • 文章術
  • SEO
  • 分析
  • マーケティング

上記以外にも、管理職として会社全体がうまくまわるように効率化を考える経験ができたのは、予想外の収穫です。Web制作に関するスキルだけでなく、業務効率化のノウハウも得られたので。

「なりゆき」で現在の姿に

さて、ネットショップの運営をしてきてスキルが身についたので、苦手だった「誰かに雇われる」という人生に終止符を打ちます。そう、独立です。

前々からやりたかった「自分のWebサイト(=ブログ)」をつくり、得てきた技術について発信しはじめ、2年ほどで「1か月に100万回以上読まれるブログ」に成長し、ブログだけで生活できるようにまでなりました。

現在は、ブログをとおして得たスキルや人脈を活かして、こうやって本メディアで執筆したり、オンラインサロンを運営したり、企業のコンサルをしたりと幅広く活動しています。

……と、ここまで書くと、まるでわたしが将来の目標に向かってスキルを得ていき、計算どおりの人生を歩んできたかのようにみえるかもしれません。

でも現実は、まったくそんなことはありません。わたしはそのときどきで、ただ単純に「自分がほしいスキル」を得ていっただけで無計画です。

びっくりするほどの「なりゆき」でここまできましたし、現在もなりゆき人生の進行形です。ただし、得たスキルが次の道をひらき、さらに上位のスキルを得られ、その結果として現在につながっています。

そんなわたしが、スティーブ・ジョブズ氏の有名なスピーチにある「点と点をつなげる」という話をはじめて聞いたときはふるえました。おこがましいかもしれませんが、わたしの人生がまさにそうだったから。

若い当時は、なにも考えずに好き勝手に「点」を描いていき、後から振り返ると複数の点がつながって現在の「輪郭」になっているというイメージだからです。

そんな実体験から、わたしは仕事を選ぶときは「自分の得たいスキルがその仕事で得られるか?」を指標にすることをオススメします。

「いや、君は運がよかっただけじゃないの?」と思われるかもしれませんね。もちろん運がいいという自覚はありますが、運任せでやってきたわけではありません。「そのスキルがほしい!」という明確な意志をもって仕事を選んできたのがポイントでしょう。

なぜなら、自分が「ほしい」と思うスキルは、確実に興味があることだから。めざすべき「輪郭」がおぼろげだとしても、現在の興味の延長線上にあると確信しています。

ただし、1つ1つのスキルが適当だったなら「輪郭」は描けないので、そのときそのときに全力で挑み、レベル99まではいかなくとも、レベル70ぐらいにしましょうね!

(文:ヨス

― presented by paiza

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