一般社団法人 日本CTO協会は、Webフロントエンド版DX Criteria(プロダクトのユーザー体験と変化に適応するチームの ためのガイドライン)を2024年4月24日に公開しました。

Webフロントエンド版DX Criteria
(プロダクトのユーザー体験と変化に適応するチームのための ガイドライン)

Webフロントエンドの技術環境は日々変化しており、プロダクトを構成する技術要素だけではなく、ユーザーの利用端末や通信環境、要求も変化し続けています。その変化の速さに企業や団体の組織変革やWebフロントエンドエンジニアのインプットが追いつかないという現状があります。

Webフロントエンドはビジネス、デザイン、システム等の意思を総合する架け橋としてビジネスを 加速させている領域であることから、上記のような問題から本来行うべきことが後回しになっていたり、価値提供に対しての説明責任がしづらい部分があるという課題もあります。

こうした課題に対してWebフロントエンド版DX Criteriaは、変化の早いWebフロントエンドエンジニア組織が、自分たちの現在地を把握し、高速な仮説検証能力を維持しながら、堅牢なシステムや サービス作っていくことを実現するためにWebフロントエンドの専門家を交えながら開発されたアセスメントツールです。

Webフロントエンド開発における変化への迅速な適応と、持続可能な成長を遂げるために必要な組織、チームのケイパビリティを示しており、これらは環境の変化に適応しながらDXとUXが両立される優れたプロダクトを創出し続ける競争力を企業にもたらします。

変わりゆくWebフロントエンドの環境において、Webフロントエンド版DX Criteriaを通じてWebフロントエンド領域において超高速な仮説検証能力を実現する開発者体験「Developer eXperience」 と、それによってもたらされるプロダクトのユーザー体験「User eXperience」の両立を目指していきます。

多くの組織・Webフロントエンジニアの方々に利用されることで、Webフロントエンドに関わる開発 組織が自身のケイパビリティを革新し、Webを介したユーザー体験の向上ひいてはプロダクトや 事業の価値の最大化に寄与できることを期待しています。

想定する適用範囲

Webフロントエンド版DX CriteriaはオリジナルのDX Criteriaが掲げる「2つのDXによって高速な 仮説検証能力を得る」というビジョンをWebフロントエンド技術領域の観点から実現するためのサブセットに相当します。

Webフロントエンド版DX Criteriaでは2つのDX(デジタル変革を意味する「Digital Transformation 」と開発者体験「Developer eXperience」)を念頭に広範な企業活動を対象としているオリジナルDX Criteriaとは異なり、開発チーム具体の目線から目的を再定義しています。

Webフロントエンド版DX Criteriaは一定以上の複雑性を有するWebアプリケーションを開発・運用し、組織内にWebフロントエンドエンジニアの職能に類する定義がある企業を主に想定しています。

一方でCMSを利用した企業WebサイトやLPなどの静的なメディア制作、ノーコード開発といった環境においてはすべての項目を適用するというよりも、自社の状況に応じた取捨選択を推奨します。

エンタープライズ SaaS、インタラクティブなメディア、ECサイトなど、多様な機能とユーザーインタラクションを必要とするプロダクト環境では特に多くの項目を参考にできます。

Webフロントエンド版DX Criteriaの特徴

Webフロントエンド版DX Criteriaは5つの大テーマごとに5つの小テーマが設けられ、小テーマごとに4つの観点からクライテリアが定義されており、5 × 5 × 4 の計100項目から成り立っています。

高速な仮説検証と開発者体験を実現するためには、具体的なWebフロントエンド技術はもちろん、アプリケーションを取り巻くシステムやデリバリーの体制の観点を欠かすことができません。

またサービスとしての提供価値、ユーザー体験を最大化するためには品質やチームの教育・連携も非常に重要です。これらの観点を総合して個人ではなく、開発者側とビジネス側が一体になるための組織・企業全体に焦点を当て、「技術選定」「デリバリー」「システム」「品質」「チーム」の5つの大テーマを設定しています。

1. 持続可能な技術スタック

開発チームが適切なツールと技術を選択し、保守しやすく、進化し続けるコードベースを維持し、促進することが求められます。コードベースの継続的な改善に取り組むためには、コード品質の 確保やライブラリの慎重な選定が重要です。このプロセスを通じてチームは技術的負債を最小限に抑え、長期的なプロジェクトの持続可能性を高めます。

2. ユーザー体験を支える品質

アプリケーションのパフォーマンス、セキュリティ、アクセシビリティといった、ユーザーに直接見えにくいが、重要な品質基準を定めます。それらを保証するための具体的な基準とプロセスを確立し、ユーザーが安全で快適にアプリケーションを利用できるようにします。

3. 安定的なデリバリー

ビルド、テスト、デプロイの継続性を自動化することで、開発サイクルを迅速化し、品質の維持向上を図ります。CI/CDの実践によって効率的なビルドプロセスと迅速かつ安全なデプロイ戦略を実行します。これにより開発チームはリリースプロセスをスムーズに進め、顧客に価値を迅速に届けることができます。

4. 効果的なシステム設計

ユーザーの要求とビジネスのニーズに合わせたアーキテクチャ選定と、最適なユーザーエクスペ リエンスとパフォーマンスを実現するための戦略立案が求められます。これにはモジュール性、 拡張性、および保守性を考慮した設計が含まれます。適切な設計を通じてシステムは将来の変 化にも柔軟に対応できるようになります。

5. 成長できるチーム

技術力の向上、効果的なコミュニケーション、およびチーム間の協力を促進するために、教育プログラムやワークショップを定期的に開催し、適切な職務分担を確立します。チーム文化の育成とメンバーひとりひとりの専門性の獲得が変化への迅速な適応につながり、持続的なチーム成果の鍵となります。

日本CTO協会 ワーキンググループ・Webフロントエンド版DX Criteria作成者メンバー

※以下全て社名あいうえお順に掲載

佐藤歩氏
株式会社overflow / VPoE

古川陽介氏
株式会社ニジボックス / デベロップメント室室長

監修者・専門家(レビュワー)

桝田草一氏
株式会社SmartHR / プロダクトデザイン統括本部 アクセシビリティ本部 ディレクター/アクセシビ リティスペシャリスト

原一成氏
株式会社サイバーエージェント / CTO統括室 クライアントテスティング室 室長 / AmebaLIFE事 業本部 開発局 局長

齊藤祐也氏
日本経済新聞社 / 情報サービスユニット 部長

小林徹氏
株式会社メルカリ / ソフトウェアエンジニア

泉水翔吾氏
(@1000ch)

谷拓樹氏
(@hiloki)

吉田真麻氏
株式会社ナレッジワーク

小西一平氏
合同会社DMM.com

津野祐介氏
合同会社DMM.com

西野修史氏
合同会社DMM.com

小谷野 諭氏
合同会社DMM.com

中瀬古渉氏
合同会社DMM.com

田中克典氏
合同会社DMM.com (フロントエンドエンジニア)

DX Criteriaとは

DX Criteria(DX基準)は、日本CTO協会が監修・編纂している企業のデジタル化とソフトウェア活用のためのガイドラインです。本基準は、デジタル技術を企業が活用するために必要な要素を多角的かつ具体的に体系化したものです。ソフトウェアエンジニアリング組織の健全な成長・経営目標の可視化・パートナーとのコミュニケーションなどに使っていただくことを目的に作成されています。極めて実践的で具体的な項目で構成されているため、定期的に最新動向に併せて日本CTO協会のWG内で議論をおこないながら、適宜アップデートをしているものです。

DX Criteria

一般社団法人日本CTO協会について

日本CTO協会は、日本を世界最高水準の技術力国家にすることを目標として、2019年9月に設立されました。主な活動は「DX企業の基準作成」「コミュニティ運営」「調査・レポート」です。絶えず変化する時代に、自己変革を成し遂げ、継続的な進化を体現し続けるCTO達と、その先へと共に向かう人々の知見や経験を社会に還元し、日本の変革を大きく前進させます。そして、デジタルを核としたテクノロジーを活かし、自己変革による価値創造とその継続的な提供を、日本社会のあたりまえにしていきます。

団体名:一般社団法人日本CTO協会

代表理事:松岡剛志
設立:2019年9月2日
本社:東京都渋谷区渋谷2-19-15 宮益坂ビルディング609

(リリース編集:Tech Team Journal編集部)

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