近年、エンジニアのキャリアパスは多様化しています。もともとエンジニアは転職の多い職種ですが、キャリアの選択肢が増えたことでさらに自分に合ったポジションを求めて転職する方が増えています。

そのなかで、今も有力なエンジニアのキャリアパスとして考えられるのがCTO(最高技術責任者)です。エンジニアリング組織の責任者として、技術戦略の策定などを担います。とはいえ、一口にCTOと言っても、参画する企業のステージによって役割は大きく変わってきます。

この記事では、特に創業期のCTO(以降、「創業CTO」)に焦点を当てて、業務内容や求められる要素、そしてその醍醐味などについて考えてみたいと思います。

今回は数多くのスタートアップの企業を支援してきたBeyond Next Ventures株式会社で投資マネージャーを務める金丸将宏さんと、HRサポートマネージャーの三國弘樹さんにお話を聞きました。同社が主催する創業経営人材育成・輩出プログラム「Innovation Leaders Program」では、起業家を目指す方とともに、創業CTO候補も募集しています。起業のプロから見た創業CTOに求められる条件とは?

Beyond Next Ventures株式会社の三國弘樹さん(左)と金丸将宏さん

創業CTOに求められる2つの役割

――これまでに数多くの起業に携わってきた金丸さんから見て、創業CTOとはどういう人物が求められていると感じますか。

金丸さん(以下、「金丸」):創業CTOには、創業メンバーとしての役割と技術者としての役割の2つが求められます。

創業メンバーとして必要なのが、当事者意識です。起業するためには、自分たちで解決する課題を見つけ、ソリューションを作り、そのビジネスモデルを作りあげ、さらにそれを事業として実現していく必要があります。特に技術系のスタートアップであれば、起業後は技術戦略を考え、ビジネスを実現するためのエンジニア組織を作っていかなければいけません。そのため、創業CTOには技術の言葉で会社を語り、他のエンジニアを呼び込めるような、魅力ある方が求められます。

一方、もちろん技術者としての能力も重要です。創業前や設立当初は自分でどんどん手を動かして製品を開発していく必要があります。

――創業CTOとして求められることは多そうですね。

金丸:スタートアップは意思決定のスピードが速く、どんどん事業戦略、事業計画が変わっていくことも少なくありません。そうなると当然必要な技術も変わってくるわけです。それに対応できる方かどうかは大事ですね。

――御社のプログラムをきっかけにして起業する会社はメディカル関係の事業が多いですが、そういった場合、医療に関する知識は求められますか?

金丸:意外とそうでもなくて、異業種のエンジニアをやっていた方がメディカル系スタートアップの創業CTOになることも多いです。たとえば、AIを専門としていたエンジニアが、AIを使った医療機器を開発する企業に参画する、といったこともありました。ジョインした時点でのメディカル等の専門知識はあまり気にしなくても大丈夫だと思います。メディカル系は社会貢献性が高い事業領域なので、そのあたりに興味を持って参加される方も多いです。

ちなみに、現在のメディカル系のスタートアップの創業時のエンジニアって、ほとんどが研究者の方が多い印象です。近年注目されている、デジタルヘルスの領域で考えると、ソフトウェアに詳しくてサービスを作れるようなエンジニアリング経験のある方も重要なのですが、メディカル系のスタートアップの世界ではなかなかいません。ですから、そういった方が強く求められています。この記事の読者のエンジニアの方も、ぜひ異業種だからといって躊躇せずに飛び込んでみてほしいですね。

技術幹部として起業に挑戦したい人材を募集中

――次に、御社で実施している「Innovation Leaders Program」についても聞かせてください。具体的にどういったことをするのでしょうか。

三國さん(以下、「三國」):技術系スタートアップの起業を応援するための取り組みで、当社が審査・選抜した事業化が有望視される研究チームと、起業家を目指す経営メンバー候補の参加者でチームを作ります。各業界の専門家のメンタリングを受けながら、資金獲得を目指して事業プラン作りやブラッシュアップ活動をしていただきます。最後にはコンテストを実施し、優秀なプランを作り上げたチームに事業化支援金が提供されます。

今回募集するのは、医療機関と組んで実施する特別プログラムへの参加者です。選抜された5つほどのチームのいずれかにご参加いただき、2日間でメディカル系のスタートアップを考えていただきます。

――技術幹部候補の方の参加枠もあるそうですね。

三國:今回から新たに設けました。

金丸:今回はデジタルヘルスの領域に特化したプログラムであり、サービスを作ることができるITエンジニアの方を積極的に募集しています。

今回のプログラムでは、医療現場に詳しい医師の方が考えた、強いニーズ、事業可能性の高い事業案について一緒に事業プランを考えていただきます。それぞれ有望な事業案を持っている方々ですが、彼らだけではサービスやアプリを作れるわけではありません。ITエンジニアの方に、そこの部分を担っていただければと考えています。

一方で、ITエンジニアの方にとっても、今回の取り組みは非常に大きなチャンスといえます。医療の世界は重篤な疾患を抱えられた患者さんのケアを第一に考えなければいけないですし、高いエビデンス性が求められます。薬機法などもあり、事業を始めようとしてもいろいろな制限があります。そのため、ITエンジニアに限らず、業界外の方からみると参入していくのは難しい業界です。そんななか、今回は医療機関の後押しがあり、医師や経営者候補とエンジニアがチームを作る機会をご提供することができます。なかなかない機会だと思いますのでぜひ前向きにチャレンジしていただければと思います。

医療は前述した要素のため、イノベーションがその他の業種に比べて遅れているところがあるかもしれません。ITエンジニアの方から見れば「あんなことやこんなことができるのに」と思うことがいっぱいあるはずです。今はやりの言葉で言えば、DXを推進できる部分が非常に多い。そのような魅力的な事業機会のなかで、技術の観点からチームに貢献していただきたいです。

――最終的に参加チームが事業化、起業となった場合、エンジニアはどういった形でジョインしていくことになるのでしょうか。

金丸:創業の際は、ぜひ創業CTOとして参画していただきたいと考えています。そういう気持ちのある方にご参加いただきたいです。

三國:もちろん、すぐに今お勤めの会社を辞めなければいけないわけではありません。副業としてスタートし、その後タイミングを見てジョインする方も多いです。

――最後に、この記事を読んでいるエンジニアの方へお二人からメッセージをお願いします。

金丸:医療業界へ飛び込むのは、非常にハードルが高く見えるかもしれません。しかし、社会貢献性が高くやりがいがあり、活躍のチャンスも多い業界です。今回は医療機関の応援もあり、挑戦するにはとてもいい機会だと思います。自分が新しいプロダクト、事業を作るんだという気概を持った方の参加をお待ちしています。

三國:事業の立ち上げやCTOの経験がない方でもご応募いただけますので、ぜひチャレンジしていただければと思います。

なお、参加を希望される方向けに、事前に説明会を実施しています。プログラムについての詳しいお話をさせていただきますので、ご興味がある方はぜひご参加いただければと思います。

――ありがとうございました。

参加ご希望者はこちらから

創業CTOは一から組織づくり・企業づくりに携わります。技術者としてでなく、創業メンバー・経営メンバーとして求められることも多く、その責任は重大です。一方で、自分の力でサービスを作り、事業を成功させていく経験は、他の何物にも替えられない醍醐味があるといえるでしょう。

Beyond Next Ventures株式会社では、未来の起業家と、それを支える創業CTO候補を募集しています。創業CTOに少しでも興味がある方は説明会で詳しいお話を聞いてみてはいかがでしょうか。


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