用事がなければ1日24時間、一言も言葉を発しない無口な染谷です。喋るのってエネルギー使いませんか?
さて、前回の記事でセルフマーケティングについて書きましたが、自分のポートフォリオを増やすにあたって、登壇(講演)も重要なパーツになります。
ポートフォリオが増えるのならエネルギーを使わないといけないですよね。というわけで、今回のテーマは登壇です。1つの業界で結果を出していると、さまざまなところから登壇依頼が舞い込みます。
ただ登壇の依頼が来ても、安易にホイホイ受諾しないで、一歩立ち止まって依頼内容を吟味する必要があります。
目次
実績になる登壇
僕が考える自分の実績になる外部登壇とは、「参加者のメリットが最大化する」ことです。
僕の講演を聴くことで、何か一つでも参加者が喜んで貰えれば、会費以上の価値を得ていただければ、「参加してよかった」という感想が信頼として積み上がり、自分の実績(信用残高が増える)となるわけです。
ちょっとぼんやりして分かりづらい説明なので、かなり極端ではありますが、具体的な見分け方をお教えします。
その見分け方とは「集客は主催者がメインでおこない、登壇者はセミナーの質を高めることに注力する」役割分担になっているという点です。もちろん登壇者が告知(集客協力)をするのは主催者も喜ぶと思いますが、あくまでも補助の立ち位置です。
まだ「なに言ってんだこいつ?」と思う人もいると思うので、次項の「信用残高を目減りさせる外部登壇」と比較してもらうと、明確に違いがわかると思います。
信用残高を目減りさせる外部登壇
自分の価値が減少する外部登壇でよくあるパターンが、参加者への営業目的色が強いイベントへの登壇です。
とくに登壇者が必死に集客しなければいけないイベントは要注意です(2013年〜2023年 染谷調べ )。
なぜ要注意か。それは自分の講演を聞きに来た人(=ファン)が、望まない営業を受ける可能性が高いということです。あなた自身も使用していたり、使用はしていなくてもものすごくよい商品、あるいは共感できるサービスであれば構いませんが、損失を被る可能性のある商品を紹介されるのは好ましくありません。
別に主催者が営業すること自体がすべて悪いわけではありません。ここで言いたいことは「主催者側のメリットが最大化し、参加者が損をしていないか」ということです。
企業がコストをかけるのはリターンを求めるためですから、参加者に対して営業活動をおこなうのは当然のことです。でも、その営業方法や商品のクオリティが重要です。
「染谷の話を聞きに来たのに、変な商品を押し付けられた」とか言われるのは辛くないですか?
主催者側のコスト負担意識がない
前項で「コストをかける」という言葉を使いましたが、主催者側がどれだけリスクを取っているかを確認することも大切です。
単純計算なのですが、参加費3000円×45人のイベントであれば、売上は135,000円です。講師への謝礼を5万円、会場費を3万円に抑えれば、イベント自体も黒字で、さらに45人の見込み客リストまで手に入るという、営業側から見れば夢のような仕組みです。
実質、ノーリスク・ノーコストで参加者リストを取得しているわけです。
もっと講師の講演料や、参加者への軽食代とかに予算使おうよ。少なくともリスト集めイベントで儲けようとするのはやめようよ。
逆に面白そう、自分にも参加者にもメリットが大きいと思ったら、登壇料ナシで引き受けたって全然構いません。「自分の中で判断基準を決めておく」ということが重要です。
講演の質を上げよう
参加者のメリットが最大化しそう、その会社(団体)の理念に共感できる、と思い、いざ登壇を引き受けたとしても、講演内容自体が貧相だったり、上手に伝えることができなかったりしたら、結局のところみんな残念な結果になってしまいます。
そうならないように、講演の質を高める努力も大切です。
正直なところ講演の質を高める方法は練習量・経験量に比例するので、いつものように「がんばれ」の4文字で終わってしまうのですが、親切丁寧、文章が長いことを売りにしているので、しっかりコツを説明していきますよ。
そうは言っても練習は大切
改めて僕の経歴を書いておくと、会社員経験12年のうち7年ちょっとの期間で採用担当をやっていました。新卒の学生や、転職を検討している社会人に向けて、毎日のように会社説明会をおこなっていたんですね。
毎日というと盛ってる感がありますが、1日2開催3開催とかよくあったので、少なく見積もっても1年間で200日×2回の400回は人前で喋っていた計算になります。
それが7年です。3,000回近く人前で話す練習をおこなってきたわけです。計算すると我ながらヤバいな。
独立してからも2014年辺りから外部の登壇が増えてきて、2ヶ月に1回ペースで登壇しています。2016年からオンラインサロンを開始して、そのメンバー向けに必ず月1回(多いときは2回)のセミナーを開催しています。
合わせると年6回×9年=54回、年12回×7年=84回。3,000回に足しても回数としては誤差程度ですが、100を超えるテーマでスライド作成し、ブラッシュアップを重ねてお話しています。
さて、何年か前にブロガーズフェスティバルというイベントで、40分間、スライドもマイクも使わずフリートークをおこないました。
https://someyamasatoshi.jp/conference/bloggersafterfestival/
↑書き起こしです。録音せず覚えている内容をそのまま書いています(加筆あり)
実は40分程度だったら何も準備しなくても喋れるんです。なぜならずっと頭の中で考えていることですし、どこかで喋ったことのある内容を組み合わせているだけなので。
僕が発表用のスライドをつくるのはセミナー参加者が目で追えるように作っているのであって、僕自体はスライドが無くても問題なく話すことができます。フリートークだと手抜きだと思われるのが嫌なので、前日に泣きながら作りますけど。
というわけで、何度も言うようですが人前で上手に喋るには練習あるのみなのですが、そうは言っても気をつけるポイントが基礎編として3つあるのでそれを紹介します。
なお、いくら練習しても、参加者たちとはその場が初対面なので今でも緊張はします。場馴れしてくると、緊張している自分を認識することもできるようになるんですけど。
Point 1. 声は大きめに
一つ目は声の大きさです。
人はどうしても慣れない環境だと声が小さく、くぐもった声になりがちです。第一声を大きめに発声することで、場の雰囲気に飲まれなくなりますので、意識的に大きめな声で話してください。
「おはようございます!」「こんにちは!」のあいさつでも「心臓を捧げよ!」でも何でも構いません。こちらがでかい声を出すことで、場の空気を支配できるんですよ。
声を大きくするためには、マイクを使わないでセミナー練習するのがお薦めです。地元の公共施設の会議室であれば、そこそこ大きめな部屋でも1時間数百円で借りられるので利用してみてもよいでしょう。
Point 2. 話すスピードに気をつける
二つ目は話すスピードです。
人前で話すことに慣れていないと、緊張で早口になりがちです。自分でゆっくりと思うぐらいでも、聞き手からすると早かったりしますので、2テンポぐらい遅いイメージで話してください。
僕の場合、スライド一枚ごとに「どうですか?わからないことありますか?」と参加者に確認を取りますが、ここで早くなりがちな説明スピードを落とすルーチンを入れています。
Point 3. 言葉を選ぶ
三つ目ですが、これは僕がよく言う「翻訳」です。
基本的に参加者は何も知らないという前提でスライドを作り、普段使うような用語を選んでいます。
ちょっとでも専門用語だと感じたら、国語辞典や類語辞典で他の言葉に言い換えられないか調べてみてください。具体的な事例を入れるのもオススメです。この一手間が参加者の理解度や満足度に直結します。
Point 4.好きなセミナーを復唱する
四つ目は変化球なのですが、もし好きな登壇者が居るのであれば、その人の講演を復唱してみましょう。
誰かの話し方を真似し続けることで、自分の話し方も似てきます。別に物真似をする必要はありませんが、上手な登壇者はPoint1~3をしっかり押さえていますので、真似して学ぶことは非常に有効です。
一つ目、二つ目に関しては練習量ですぐに改善します。10回もセミナーをやれば、自分のペースが掴めるようになるので、経験を積んでください。
なお、参加者の反応が悪いと、気持ち的に慌てて小声になったり早口になったりしますが、これは慣れによるメンタル強化で乗り越えてください。
僕の場合、反応が鈍い会場だった場合、一人でも二人でも頷いてくれたり、笑顔で聞いてくれたりしている参加者を見つけて、その人に向けて話すようにしています。そうするとメンタルの消耗を最小限に抑えることができます。
三つ目に関しては、本番前に友人にでも見てもらってください。知識がなければないほどいいです。わからなかった点をフィードバックしてもらって、スライドの内容を修正しましょう。
登壇後の振り返り
登壇後に必ずやっていることがあります。それは自分自身での振り返りです。
毎回、必ず音声は収録しているのですが(後日、参加者にスライドと一緒にシェアするため)、音声チェックも兼ねて、どんな話をしたのか、どんな話し方をしたのかをチェックしています。説明不足だと感じたら、フォローアップの文章を作って補足説明もしています。
確かにアンケートなどで、参加者のフィードバックは得られます。第三者の感想はとても大切です。大切なんですが、それよりも自分で振り返る時間が重要だと思っています。
- 声量はどうか
- 話すスピードはどうか
- 間の取り方はどうか
- 掴み(導入)はどうか
- 盛り上がりはどうか
- 事例がわかりやすいか
- 質問に的確に答えているか
- 姿勢はどうか(動画の場合)
- 身振り手振り、ジェスチャーなどの動きはどうか(動画の場合)
だいたい、これらのポイントを意識して自分で音声を聞いたり、動画を見たりしています。恥ずかしいんですけど、思春期のように頬を赤らめながら見ています。
自分の声ってなんかイメージと違ったりしませんか?もうちょっと渋み走ったクリス・ペプラーみたいな声だと思っていたら、意外と甲高くて何だこれって思うことって多いですよね。
最初から人前で上手に話せる人なんて居ません。僕も人事担当時代にセミナーデビューしていますが、先輩に「早口!」って温かいアドバイスを貰っていました。
誰かがアドバイスしてくれるのであれば、ありがたく聞きましょう。耳の痛い言葉こそ大切だったりします。自分では薄々感づいていることをズバッと言われるとムカつくんです。でも落ち着いて考えると確かにその通りなんですよね。
ただ、そんな優しさを見せてくれる参加者ばかりではありません。役に立たなければ、面白くなければ、聞きづらければ、もう聞きに来てくれないんです。そんなもんです。
だからこそ一つ一つ、自分でチェックポイントを設けて、改善し、クオリティを上げていくしかないと思っています。
さ、お喋りしようぜ。
(文・染谷 昌利)