2016年設立のIT企業、株式会社スタメン。エンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」によって順調に業績を伸ばし、2023年1月には東京・神田エリアに拠点を開設。

プログラミング未経験でスタメンに入社し、4年後には26歳で最年少・執行役員CTOに就任した松谷CTO自身のキャリアチェンジについて詳しく伺います。

松谷 勇史朗CTOのプロフィール

松谷 勇史朗(まつたに ゆうしろう)。株式会社スタメンの取締役執行役員CTO
1994年生まれ、愛知県出身
名古屋工業大学大学院で研究職に没頭中、創業間もないスタメンに出会い、人生が変わる
2016年夏にプログラミング未経験で同社でインターンを経験
2017年1月、大学院を中退し、スタメンの正社員となる
TUNAGの立ち上げにゼロから関わり、システム開発における技術リードを務める。
2020年3月、執行役員CTOに就任し、2022年3月より現職。

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大学院で学んだ研究職を捨ててスタメンへ

――インターンシップに参加した経緯、きっかけは何ですか?

もともと私は大学の研究室で半導体について学んでいました。2016年の夏、大学院を卒業するまであと1年半という時期でした。その頃知り合いから、大学のOBが起業したという話を聞きました。その会社が主催した創業パーティーに出席した際に、インターン募集をしていることを知り、応募しました。面白そうだと感じたからです。

――最初から就職も視野に入れておられたんですか?それとも、社会経験の一つぐらいという軽い感じで?

最初はまさに「社会経験のひとつ」くらいの軽い気持ちでした。応募してみたら採用してもらえたので、まずはインターンとして働くことになりました。

――それが就職することになったのは、どういった経緯で?

インターンとはいえ、すぐに重要な業務を任せてもらえました。創業メンバーを中心に、真剣勝負の雰囲気が社内に漂っており、それが心地よかったです。自分自身も創業メンバーと同じように「本気で取り組みたい」という気持ちが芽生えました。

スタートアップ特有のすごく濃密な時間を共有して、ガラッと価値観が変わったんです。

当時の僕は、あと1年半通学すれば、大学院を卒業できましたが、退学して入社を決めました。今もまったく後悔していません。あのときは、1年半の時間が、果てしなく長く感じられたんです。

それほどスタートアップのスピード感には価値がありました。1年半なんて待っていられなかったです。

――松谷さんにとって、そこまでして「入社を決めた理由」はどこにありますか?

単純にプログラミングが楽しかったんです。僕は決して器用な方ではありません。一度に一つのことしか集中できないんです。

未経験からのプログラミング勉強法

――プログラミングはどのように学ばれましたか?

勉強というよりは実際の仕事で覚えて学んでいきました。前CTOである小林から直接学びながら業務をこなしていきました。

ペアプログラミング(2人のプログラマが1台のマシンを操作してプログラミングを行う手法)で、同じ画面を見ながら一緒にコーディングを行うこともしばしばありました。

――プログラミングの勉強というと、先輩の書いたプログラムを読み込んで、構造から理解するというイメージが強いですが、ペアプログラミングという方法もあるのですね。ペアプログラミングが効率的なのは、どのような点でしょうか?

ペアプログラミングのいい点は、コーディングをする人の思考のプロセスがわかるので理解しやすいところです。あらゆる選択肢の中で、なぜこのコードがベストなのかという結果に至るまでの過程が理解できます。

エンジニアとして急スピードで成長できた理由

――ご自身がエンジニアとして急スピードで成長できた秘けつはどこにあると考えておられますか?

やはり入社して間もない頃に、前CTOの小林と近い距離で一緒に開発を行ったことが、エンジニアとして良いスタートを切ることに繋がったと思います。特に小林は前職からエンジニアスタートアップのマネジメント経験が豊富で、エンジニアの育成に関する広い知見と熱意がありました。そういった人物のそばに身を置けたことも技術面以外の成長につながったと感じています。

――会社側としては、異分野から未経験での入社でも問題ない、という状況だったのでしょうか?

必ずしもそういうわけではなく、中途エンジニア採用へも力を入れていました。スタートアップとしては即戦力の中途エンジニアの価値が高いことは当然ですが、未経験であったとしても数年後に活躍するであろう若手へ投資する価値も信じていました。私を含めた若手の成長を信じて挑戦の機会をたくさん提供してくれました。

――そのように成長できたのは、スタートアップだからだと感じますか?

どのスタートアップでも成長できるというわけではないと思います。重要なことは「変化の幅の大きい環境に身を おくこと」です。環境が変われば、価値観が変わります。

スタートアップのよい点は、個人の成長と事業の成長が連鎖して上がって行く状況を体感できるところです。自分に足りないものは、自分が追いついていくしかありません。厳しい世界でもあると感じます。

AIとの共存と積極的な活用

――AIは導入されていますか?

弊社では、ChatGPTをはじめとする⽣成AIなどの最新技術を⽤いた業務改善推進プロジェクト「スタラボ」を発足しました。現在、社内でGenerative AIを活⽤した業務改善アイデアコンテストを開催中しました。

――おもしろい取り組みですね。どういったきっかけで決まったのですか?

やはり、Generative AIという新たな技術⾰新によって、これまでのルールが大きく改変しうる、その影響を目の当たりにしたことがきっかけですね。

全社を上げて、時間とコストを投じてでも、全社員がGenerative AIのテクノロジーに触れる必要があると、経営チームで判断しました。

――コンテストはどのような形式でおこなわれますか?

各自プレゼンの持ち時間は10分、提案方法は自由です。

会社からのサポートもあります。営業日のうち1日は「ハックデイ」として、AI活用の調査に利用でき、また、AIツールの利用料金が補助されます。

4月に部門内の予選と各部門代表者による本選をおこないました。優秀なアイデアは、実用化も視野に入れています。

――AIはエンジニアにとって、味方か脅威か、いずれだと考えてらっしゃいますか?

味方だと考えています。いずれすべてのアウトプット開発がAIに置き換わる未来が来るかも?と予想はしていますが、まだ先のことだとも考えています。

一方で、目の前の業務の生産性が大きく向上している状況を踏まえると、CTOとしては、マネジメントのあり方をアップデートしていく必要があると考えています。AIの活用によって生産性が大きく向上し、エンジニアひとりでできる業務の範囲が増えると、これまでの分業のあり方が変わるため、適切な仕事の領域と扱う情報量を改めて見直す必要が出てきます。

例えば、今まで4人でおこなっていたことが、2人+AIでできるようになるなら、新たなチームデザインが必要となるでしょう。

 

(取材・文:陽菜ひよ子 / 撮影:宮田雄平)

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