人と暮らしと未来を想い、ITの力でイオングループの進化を支えるイオンアイビス株式会社(以下、イオンアイビス)。イオングループで利用されるITインフラ、システム開発、保守・運用、コンサルティングを中心とした業務を通じて、付加価値を創造しています。
イオンアイビスが新たに取り組んでいるプロジェクトが「物流システムの刷新」です。イオングループの中期経営計画にある5つの柱の1つ「サプライチェーン発想での独自価値の創造」。この柱における物流領域での改革を実行に移すため、取り組みを進めています。
物流システムの刷新プロジェクトを担当する小林謙太郎さんに、新たな物流システムのお話をうかがいました。
小林謙太郎氏
イオンアイビス株式会社 ITソリューション営業本部 本部長。2023年の9月まではITソリューション開発本部の本部長として、システム開発の責任者を務める。自身もジャスコ株式会社時代にプログラマとして開発を経験。2023年より着手した、SCM再構築プロジェクトのシステム側の責任者を務める。
目次
ITの力でイオングループを支える専門家集団

――イオンアイビスは、イオングループでどのような役割を担っているのでしょうか。
小林さん(以下、小林):イオンアイビスは、イオングループの量販店・専門店で使われているPOSレジや発注システム、バックオフィスで使用する基幹システムなどの開発・運用を担っています。
POSレジは約50,000台を展開し、発注システムはグループ会社の約20社分を担当しています。最近では、AIによって商品の需要を予測し、発注をおこなう発注システムも開発しました。
近年、成果を挙げたのが、POSレジのシステムを15年ぶりに刷新したプロジェクトです。このプロジェクトにより、iAEONアプリやAEON Payの導入をスムーズにおこなえました。刷新前のシステムでiAEONアプリやAEON Payの活用をしていた場合、多額の費用がかかったと思います。
現在、私はITソリューション営業本部の本部長を務めていますが、2023年の9月まではITソリューション開発本部の本部長を担当していました。ですので、お話ししたシステムに関しては私が責任者として担当しました。
――開発を担当する組織の規模と、どのようなスキルを持っている方が所属しているのか教えてください。
小林:開発組織は、約150名規模です。開発業務は、外部ベンダーとイオングループの事業会社と一緒に進めていきます。イオンアイビスは、プロジェクトマネージャーに加え、SMEと呼ばれる特定分野に特化した人材を育成しています。たとえば、会計システムを開発する際には、会計に特化した人材をアサインするイメージです。
人材育成もしつつ、即戦力となる方にも入社してほしいので、小売業に関するシステム開発経験のある方を求めています。とくにプログラミング経験のあるプロジェクトマネージャーが理想ですね。プログラミング経験があると、ロジカルに考えられるからです。
私自身もイオンの前身であるジャスコに入社して、プログラマとして5年ほど働いていました。そのときのプログラミング経験は、いまの仕事でも非常に活きています。
約20年ぶりに物流システムを刷新するプロジェクトが進行中

――全国50か所以上で稼働している既存の物流システムについて、どのようなシステムなのか概要を教えてください。
小林:物流システムは非常に重要で、なくてはならないシステムです。このシステムがないと店舗に物が入ってきません。
物流システムには、大きく分けて2つのシステムがあります。1つめが物流センター構内で動いている「WMS」という倉庫管理システムです。2つめがWMSを束ねている「PSS」というシステムです。ほかにも小さいシステムはあるのですが、メインはこの2つのシステムで物流を動かしています。私たちイオンアイビスはPSSを担当しており、物流センターの仕組みはグループ会社のイオングローバルSCMが担当しているので、データを連携しながら一緒に取り組んでいます。
この物流システムを約20年ぶりに刷新するプロジェクトが進行中です。さきほどお話ししたPOSレジと同じで、モダナイゼーションしなければ新しいことができなくなり、DXの流れについていけなくなってしまいます。そこで、イオン株式会社、イオングローバルSCM、イオンアイビスが一体となって、物流施設、設備、システムを刷新していきます。
物流で課題になっているのが「2024年問題」です。ドライバー不足や輸送力の低下が懸念されています。いまの物流システムは人が中心の仕組みになっているので、人の力を必要としないロボティクス化が必要です。たとえば、AIを活用すれば過去のデータから物量を予測できて効率化が図れますし、トラックの荷台を満タンにして、最適な配送ルートで運べるようにすることも可能です。
――次世代自動化モデルセンターの構築もはじまりますよね。

小林:イオンと株式会社MUJINがパートナーシップを締結し、中期的視点でグループ全体の物流ネットワーク次世代化に着手します。データ連携をする必要があるので、密にコミュニケーションを取りながら進めていきます。
テストとして小規模ではじめていくのが、2025年の下期くらいです。その後に在庫機能からクロスドック機能までを含めた大規模センターを作っていきます。
2024年度中に物流システムの開発に着手予定
――新たな物流システムの開発は、どのように進めていくのでしょうか。
小林:社内に確立された開発手法があるので、それに則って進めていきます。社内に「QMO」という品質をマネージメントするセクションや、「CTD」という技術にくわしい方がいるんです。そうした方々にインフラやシステム設計、デザインについての意見をもらいながら進めていきます。
開発については「V字モデル」+「アジャイル」でおこないます。まずは要件定義をしっかりと固めて、事業側と確認しながら進めていくことが大事です。イオンアイビスとイオングローバルSCMの社長も参加するステコミを月に1回実施して、そこで承認を得て開発していきます。さらに、四半期ごとに、イオン株式会社社長へも報告しながら進めている、イオングループとしても非常に重要なプロジェクトです。
現在はRFIを10社ほどのベンダーに送った段階で、次にRFPを送ります。最終的には、イオン株式会社、イオングローバルSCM、イオンアイビスの物流に関わるメンバーでベンダーを決定します。2024年の前半くらいにベンダーを決めて、開発に着手できればいいと考えているところです。
使用する技術に関しては、最新技術を活用して進めていきます。インフラに関してはMicorosoft Azureをベースに、ほかの技術スタックについては、QMOやCTDにチェックしてもらいながら決めていきます。
――物流システムの運用・保守についてはどのように進めていくのでしょうか。
小林:基本的にはアウトソーシングで進めています。運用・保守については、開発ベンダーとは別のベンダーが担当する可能性もありますね。大きな改修が必要になった場合は、開発ベンダーと運用・保守ベンダーと私たちで連携して進めていきます。
若手を育てつつ、プロジェクトを成功に導く

――小林さんは最近まで、ITソリューション開発本部の本部長を務めていました。システム開発を進めていくうえで、どのようにチームをまとめてきたのでしょうか。
小林:2016年にPOSレジのシステムを刷新したときは、役割分担を明確にしました。開発を担当するチームと運用・保守を考えるチームに分けたんです。
これから進めていく物流システムの開発も、チームを分けて開発していくと思います。WMSを担当するチーム、コントロールタワーを担当するチームなど、役割を明確にします。ただ、役割を明確にしながらも、あまり線を引かないようにしたいです。こうしたプロジェクトは縦割りになりがちですが、それぞれが担当する領域に踏み込んで、意見を言い合ってもらえればと思います。私としてはそういう組織が理想ですね。
今回の物流システムのプロジェクトには、若い人たちにも入ってもらいたいと考えています。物流というのは、シンプルなんですよね。物が入ってきて、在庫となって出荷されていく流れです。プロセスに沿ってシステムを作れるので、若い人たちにも理解しやすいのではないでしょうか。
重要なプロジェクトなので、しっかりと進めつつ、若い人たちを育てる場にもしたいです。もちろん、経験のある人たちも必要なのですが、物流に興味のある若い人にもチャレンジしてほしいですね。
――そうした若い人たちが会社になじめるような取り組みはありますか。
小林:それぞれの部署で週に1回30分など、上司との1on1をおこなっている部署が多いです。あと、社長とキャリア入社した方だけの座談会を実施していますね。交流会や社内サークルもあります。趣味の合う人たちが集まっていて、キャリア入社の人たちも積極的に参加してくれています。
こうした横のつながりがあるので、自分が所属している部署以外の人たちともコミュニケーションしやすい環境です。自分が所属している部署では朝会と夕会があるので、そこでコミュニケーションできます。かしこまった会ではなくて、雑談をするようなフランクな会です。
リモートワークしている人も多いので、Teamsでテキストコミュニケーションやオンライン会議をしつつ、週に1回は対面で集まって打ち合わせする機会を作っています。オンラインとリアルのハイブリッドな働き方です。
最先端技術を活用し、新しいことを生み出す役割を担っていく

――現在進めている物流システムで、どのような未来を目指しているのでしょうか。
小林:最新技術を使いながらモジュール化されたパッケージを選び、いつでも組み合わせたり切り離したりして、ニーズに応えられるスケーラブルな仕組みを目指しています。データ連携も1対1のファイル連携ではなく、API連携を活用するなど柔軟に対応していきたいです。
あとはAIをいかに取り込んで活用するかでしょうか。すでに発注システムではAIを活用していますが、物流システムで活用できるかは調査中です。
スマートフォンが普及してから10年以上が経ちます。今後、世の中に新たなデバイスが誕生してくると思うんです。デバイス以外にも新しい技術が誕生すると思いますが、そこに追従するだけではなく、私たちが先を行きたいですね。
まさにイオンの前身であるジャスコのシステムは、最先端なことに取り組んでいました。イオンアイビスも世のなかに向けて「こういうこともできるんだぜ!」と、新しいことを生み出していく役割を担いたいですね。

