映画ソムリエの東紗友美です。試写会などで毎月多くの新作映画を鑑賞させていただいているわたしが、「今観るべき話題作」や「オススメ作品」や「絶対に外せない映画」をご紹介するコラムです。

今月は最後まで予測不能の韓国製サスペンススリラー『告白、あるいは完璧な弁護』、誰もみたことのない圧巻のごみ映画『断捨離パラダイス』、アカデミー主演女優賞にもノミネートされた演技が話題の『To Leslie トゥ・レスリー』をご紹介します。

・告白、あるいは完璧な弁護(6月23日公開

【予告編】

このような人にオススメ!:
何が真実で何が嘘か、最後まで展開の読めないミステリーが観たい

監督、脚本:ユン・ジョンソク
出演:ソ・ジソブ、キム・ユンジンナナ、チェ・グァンイル
⇒上映中、上映館情報へ(2023年7月1日現在)

リアライズピクチャーズ『王になった男』『神と共に 第一章:罪と罰』、『神と共に 第二章:因と縁』などのリアライズピクチャーズ製作。この時点で、骨太な作品なんじゃないかと期待できましたが、本作『告白、あるいは完璧な弁護』は大変に面白かったです。

こちらの原作となったのは、スペインのミステリー映画『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(2016)です。過去にはイタリアやインド(ヒンディー語・テルグ語)でもリメイクされてきた経緯もあって、各国でリメイクされたことが納得の展開の読めないミステリーとなっていました。

舞台は雪の山荘。殺人容疑を受けたIT企業社長のもとに、100%無罪を勝ち取る敏腕弁護士がやってきた。弁護士が事件の真相を探るうち、とある過去に起きた事件と結びつき、真実が少しずつ告白によって明かされていきます……。

(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & REALIES PICTURES All Rights Reserved.

『Be With You いま、会いにゆきます』のソ・ジソブがミンホ役で主演を務め、テレビドラマ「『LOST』シリーズのキム・ユンジンが弁護士シネ、K-POPアイドルグループ「AFTERSCHOOL」のメンバーで俳優としても活躍するナナが被害者セヒを演じています。

とにかくこの映画は何が真実で何が嘘か、全然予測がつきません…。

ある事件について話す語り手が、どちらも信用できない羅生門スタイルで進行するのです。

だからこそ、”真実が何か”の真相を追いかけていくまでの時間は緊張感がまったく途切れません。想像力さえも刺激されて”どっぷりと作品に浸かることができましたし、自分の欺かれやすさの行方を占う試金石にもなりそうです。

閉ざされた雪山、ホテルの密室、車の車内、人通りの少ない山林の道路など閉鎖的な空間のなか、わずかな登場人物だけで進行していくのも面白い。閉鎖的で、だんだん息が詰まっていくような場所ばかり登場するので、いつの間にか自分も映画の内側に入った感覚になります。

謎が解けていくたびに、仮説の検証を終えたような爽快感にも包まれますが、同時に切ない痛みでも胸がいっぱいになります。感情を迷子にさせるほど、私たちも追い詰められているんですよね。さすが韓国映画の演出です。

原題は「Confession」すなわち「告白」ですが、今回の邦題の付け方がより映画を味わい深く、鑑賞後にその意味も考えてみてほしい作品です。

・断捨離パラダイス6月30日公開

【予告編】

このような人にオススメ!:
自分の夢をあきらめた青年が、清掃業者として数々のごみ屋敷に挑んでいく物語が観たい

監督、脚本:萱野孝幸
出演:篠田諒、北山雅康、泉谷しげる、武藤十夢、関岡マーク、中村祐美子
⇒上映中、上映館情報へ(2023年7月1日現在)

変化を求めるときほど新しい衣服を買ってみたり買い物に走ってしまうけれど、実は今あるものを捨てることこそ自分を変える近道なのかもしれません。

孤立、過労、困窮、難病、発達障害など様々な理由で生まれる度にメディアでも取り上げられている「ゴミ屋敷」。そこに暮らす人々を描き、それぞれが抱える「事情」に優しく寄り添い、時にユーモラスに、エモーショナルに紡がれる物語に仕上がっています。

ピアノの夢をあきらめて清掃業者に転職した青年が、新たな仕事と向き合いながら自分の殻を破っていきます。

主人公を演じるのは、1,500名の中からオーディションで選ばれた、『サマーフィルムにのって』(2021)などに出演する次世代俳優の篠田諒。『男はつらいよ』『岬の兄妹』(2019)などで知られる北山雅康演じる名物社長とともに数々のごみ屋敷に挑んでいきます。 

物語の中に登場するゴミ屋敷の数々は、監督に話を聞いたところ制作チームが約2カ月かけピアノや電子レンジ、冷蔵庫などのごみを集め続け、生まれたそう。

(C)2023「断捨離パラダイス」製作委員会

その中でも特に注目なのは、泉谷しげるの住居となるごみ部屋

10日間かけて準備されたそうで、その圧巻の迫力に注目してほしいです。高く高く積み上げられたゴミは、ゴミなのにアートのようでもあるんです。

またカップラーメンばかり食べて生活をしていそうな人には、インスタント麺のゴミが施されていたり、ゴミのシーンを眺めるだけでも人物像がクロスファイルできるようになっています。その辺りもじっくり観察して、一風変わった”人間観察”にもチャレンジしてみてください。

ごみ屋敷部屋と、実際にきれいになった部屋は同じセットだからこそ、部屋のBefore・Afterの変化を味わう、映像としての面白さもありますよ。また、片付いた部屋を見ていると自分の心のゴミ箱も整理されたような気持ちになりますし、清掃業者の裏側を覗ける発見的なたのしみも。

『To Leslie トゥ・レスリー』6月23日公開

【予告編】

このような人にオススメ!:
アカデミー主演女優賞の名演、絶望を味わった人間が再起を図る姿を観たい

監督:マイケル・モリス
脚本:ライアン・ビナコ
出演:アンドレア・ライズ、ボローマーク・マロン、オーウェン・ティーグ、アリソン・ジャニース、ティーヴン・ルート、アンドレ・ロヨ、マット・ローリア
上映中、上映館情報へ(2023年7月1日現在)

拾い物感あふれる、名作を見つけました。この作品は主演のアンドレア・ライズボローが第95回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされたドラマですが、もともとアメリカ国内では単館での公開でした。

主演アンドレア・ライズボローの圧巻の演技に、グウィネス・パルトロウ、シャーリーズ・セロン、ケイト・ウィンスレット、ケイト・ブランシェットらハリウッド俳優たちが絶賛した作品で最終的には、アカデミー主演女優賞にまでノミネートされました。

宝くじで高額当選するも酒に溺れたことで息子からも見放され、行き場を失ったシングルマザーがなんとか人生を立て直そうとする様を描きます。モーテルでの“出会い”をきっかけに人生の再起を図ろうとします。

さて、この主人公はひたすらアルコール依存症に陥っており、とにかく絶望的に立ち直れません…。

ひたすら自分と戦い続けるのですが、全然回復の兆しが見えないのです。でも、それこそがリアル!いざ変わろうと決めても、実際人はそんなにすぐに変わらないですよね。簡単には立ち上がることができなくて、決めたことに対して決意が揺らいでしまう瞬間は誰にだってあるもの。その繊細な心を、リアルに、それでいてものすごく丁寧に映し出していて、”人間”を真正面から描いた映画だからこそ涙します。

「一度は絶望を味わった人間が再起をかけて一歩立ち上がる姿はどんな宝石よりも美しい。」

まるで標語のようにステレオタイプな表現ですが、改めて人間の真の美しさに触れた…と思わせてくれるような作品なのでグッときますし、勇気をもらえます。

(C)2022 To Leslie Productions, Inc. All rights reserved.

ちなみに今年公開された映画「レッド・ロケット」もテキサス州が舞台で、同様にダメ人間を描いた作品でしたが、この映画もテキサス州南部が舞台。35mmで撮影されたまるでInstagramのフィルターをかけたようなおしゃれな映像。

田舎町の少し寂しげな空気、ふるびた建物がまるでアートのようにに写し出されていて、厳しい現実を少しだけやわらげてくれるようです。

『13の理由』ハウス オブ カード 野望の階段』などのテレビシリーズを手がけてきたマイケル・モリス監督作なので、人物がきちんと描かれているし、ドラマ部分もしっかりしていて心を動かされるはず。

(文:映画ソムリエ 東紗友美

presented by paiza

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