企業の広報活動に伴走する「ふたり広報」と、ライターキャリアの可能性を広げるスクール「Marble」の2事業を展開する「株式会社FLOW」のCEO、多葉田愛(たばた あい)さん。

正社員と複業フリーランスを経験後、20代最後の年に起業した彼女は、「今までも仕事は好きでしたが、起業してできることの幅が広がり、さらに愛着をもって取り組めるようになりました。今は仕事をしているのが一番楽しいですね」と語ります。

目の前の波にうまく乗って、どんどん新しい景色を見ていきたいと目を輝かせる多葉田さんに、仕事をする上で大切にしている7つのルールをうかがいました。

Rule1. 小さく始めて、長く育てる

私には過去にWebマガジンやブログで編集チームを作ろうとしてうまくいかなかった経験があり、チーム化に対する障壁を感じていました。そのため、2022年に「ふたり広報」を立ち上げるとき、とにかく続けることを大切にしようと思ったんです。

本当に信頼できる数人に声をかけ、「まだ具体的な形はないけれど、こんなことがしたい」と説明し、急いで大きくするつもりはないことも伝えた上でチームを結成しました。最初から体制が整っていたわけではありませんが、ミニマムな状態からのスタートでも中長期的に育っていけたらいいと考えたのです。

成長のためにいきなり大きなチャレンジを用意する必要はなく、たとえば、Slackを整理してみる、Notionを更新してみる、自社noteで連載を始めてみる……。そんな小さなことであっても、継続的にアップデートがある状態を目指しました。

まずは1年と思って始めてみて、1年続けられたので法人化し、少しずつチームメンバーを増やして、新しい事業の芽を育てているところです。これからも「小さく始めて、長く育てる」ことを大切にしていきたいと思っています

Rule2. チームでスタートを切る


何かを始めるとき、自分ひとりだと簡単に諦めてしまったり、途中で投げ出したくなったりしますが、チームを巻き込むと「ゴールを目指して頑張らなくちゃ」と責任感を持てます。同じ目標に向かって一緒に歩いてくれる人の存在は心強いですし、話し合うことで自分にはないアイデアが生まれることもあります。

プロジェクトの規模にかかわらず、最低でも自分以外のもうひとりに声をかけてスタートを切ると、お互いの存在が支えとなってプロジェクトが途中で倒れません。何かやりたいと思ったときにはまわりに声をかけ、チームでスタートを切ることを意識しています。

Rule3. 伝える努力の前に、好きになる努力

これは広報の仕事でとくに意識していることなのですが、まずその会社や商品・サービスを好きになる、自分の親友や家族に伝えたくなるくらい夢中になることが大事だと思います。なんとなく理解して、いい感じに伝えようとすることは、本質的ではありません。

好きになるために、徹底的にヒアリングをしたり、実際に商品やサービスを使ってみたり、現地に足を運んでみたりして、自分が心から「めちゃくちゃいいな!」と思えるポイントを探します。自分の言葉で魅力を表現できるようになるまでとことん向き合ってから、必要とする人にどうやって情報を届けるかを一生懸命考える。その順番が大切です。

掘り下げが浅いと、好きの熱量が高まらず、口から出る言葉も薄くなってしまいます。情報があふれている世の中で、薄っぺらい言葉は誰にも響きません。なので、伝える努力の前に、自分自身が好きになる努力を惜しまないよう心がけています。

Rule4. 掛け合わせのキャリアでオンリー1を目指す


広報の可能性を広げる「ふたり広報」という選択肢」の記事にも書いたように、私は新卒でまちづくりの会社に就職しました。メンバーは建築学科の卒業生やホスピタリティを学んだ人が多かったのですが、私のように異文化コミュニケーションを専攻していたり、ブログで情報発信をしていたりする人はいませんでした。だからこそ、未経験でも広報になれたし、新規事業の立ち上げも任せてもらえたと思っています。

スキルがまだ育っていなくても強みを活かせる場所はあるし、その強みも少しずつ増やしていけると思うんです。私は今は広報の仕事がメインですが、企画やセールスの経験もあり、フェーズに応じて柔軟に役割を変えられることがクライアントさんにとっての価値(=私に頼む理由)になっているのかなと。なので、日ごろから積極的にバックグラウンドを話して、キャラ立てすることを意識しています

広報スキルだけでナンバー1になることは難しくても、自分の中に小さな強みをいくつも持っていると、掛け合わせることで一部の相手にとってのオンリー1を目指せます。

Rule5. 一石三鳥の仕事を考える

セールスやマーケティングとは違って、広報は施策を打ってもパッと効果があらわれるわけではありません。「1やったら3返ってくる」「これをすればこれだけの効果がある」とは言えないのです。noteを1本書いて何が得られたかは計りにくく、PV数だけを指標にすると「そんなに伸びないなら、もうやらなくてもいいのかも」と苦しくなってしまいます。

しかし、たとえば、そのnoteが採用向けの社員インタビューであれば、採用候補者にとって有益な情報になるだけでなく、インタビューを受けた人のモチベーションにつながったり、社内浸透の意味で他の事業部の人の仕事を知るきっかけになったりするかもしれません。

ひとつのアクションに複数のポジティブなインパクトがあると実感できれば、前を向いて進んでいけるはずです。広報に限らず、ひとつの仕事でも一石三鳥になるように見方を変えることをいつも意識しています。

Rule6. いい営業はプレゼント

いらないものを押し付ける営業は嫌がられますが、プレゼントとして受け取ってもらえるような情報やアイデアであれば、お客さんにもきっと喜んでもらえると信じています。

営業をするときは、クライアントさんの課題に対する別の角度からのソリューションだったり、「こういった施策をやるとこんななインパクトが生まれます」と新しいアイデアの提案だったり、自分たちがリサーチしたことだったり、何か持ち帰ってもらえるように意識しています。内容だけでなく、相手が受け取りやすいかたちで手渡すことも大切ですね。

情報を抱え込むよりも、シェアしたらもっとハッピーになる人がいるのではないかと考えることが私の行動原則になっている気がします。「あの人/会社はこういうことに興味がありそうだから、この情報をプレゼントしよう」そんなスタンスでいると、私自身もほしい情報を教えてもらえるんです。

Rule7. 旅で思考のストレッチをする


高校2年生のときにドイツでホームステイを体験し、知らない世界を見て新しい文化に触れたことが、私の人生の大きなターニングポイントになりました。外からの情報が刺激となって自分の心が揺さぶられるのを感じ、「こんなふうに誰かの心に届く情報を発信・提供したい」と思ったことが、今の仕事のモチベーションにつながっています。

いろいろな場所に行くことによって、いつのまにかできていた自分の思考の枠に気づけて、「客観的にみたら私って伸びしろがこんなにあったんだ」と思えるのが旅のよいところです。旅先で出会う人との対話を通して、思考のストレッチができる気がします。

旅をしないでいるとインスピレーションを受ける機会も減ってしまうので、なんだか元気がなくなってしまうんです。いろいろなところに行って、一次情報に触れて、体験して……。そうすることで元気になれるので、仕事にもいい影響があるかなと思っています。

視点をずらすことで課題解決の糸口が見つかることもあるので、旅で思考が凝り固まらないようにストレッチをすることをすごく大切にしています。それは生きるための指針といってもよいかもしれません。

(取材/文:ayan、写真:インタビュイー提供)

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