※こちらの記事は「paiza開発日誌」に2021月9月3日に掲載した記事を加筆・修正したものです。

わたしはITエンジニアの転職をサポートするpaizaで、長年転職やキャリアに関するお話を聞いてきました。その中で、「マネジメント業務をしたくないから転職したい」というお話は非常によく耳にしました。

エンジニアの方が一度はぶつかるのが、この「このまま開発を続けるか、マネジャーになるか」という悩みです。開発が好きでエンジニアをしている方が、「今後もエンジニアを続けたい」と考えるのは自然なことだと言えるでしょう。

ただし、決して「今の会社を離れればマネジメントをしなくて済む」「自社開発をしている企業に入ればプログラミングだけをしていられる」というわけではありません。

今回は、エンジニアに求められるマネジメント業務と、「転職すればエンジニアはマネジメントから逃れられるのか問題」について解説します。

エンジニア的マネジメントの種類

まず、エンジニアに求められがちなマネジメント業務をざっくり分解してみます。

プロジェクトマネジメント


【主な業務】

  • 要件定義
  • 体制構築
  • 進行管理
  • 要件調整 など

マネジメントと言われると、まずはプロジェクトマネジメントを思い浮かべる人が多いかと思います。

プロジェクトマネジメントでは、期限までに納品物をつくり上げるためにスケジュールを立てたり、メンバーのタスクと進捗の管理、プロジェクトをコントロールしたりします

場合によっては、要件定義や契約時の予算管理、プロジェクトに必要な人材の確保から入ることもあるでしょう。

プロジェクトが開始してからは、顧客との要件のすりあわせやWBS(Work Breakdown Structure=プロジェクトの各工程についてまとめたもの)の作成、メンバー個々のタスク管理や進捗確認などが主な業務となります。

チームマネジメント


【主な業務】

  • 進行管理
  • 対外折衝(要件定義、すり合わせ)
  • 会議・打ち合わせ
  • チームの運営・仕組み作り
  • 採用
  • メンバーの評価・評価指標の検討 など

どんな企業でも、開発業務はエンジニア一人ではなく、複数人でチームを組んでおこないます。

チームマネジメントは、そのチームに所属するメンバー個々の働きやチーム全体の生産性を高めるためのマネジメントです。

エンジニアの仕事を何年も続けていれば、当然ながら後輩や部下も増えていきます。いずれは、チームリーダーとして彼らをまとめあげ、一緒に成果を上げることが求められるでしょう。このときにチームマネジメントが必要となるのです。

チームマネジメントでは、メンバーとの情報共有やコミュニケーションを欠かさず、適切な目標や期限を設定し、目標達成や効率化を目指して成果をあげることなどが重要となります。

プロダクトマネジメント


ここ数年、とくにプロダクトの重要性が高いIT系スタートアップ企業を中心に、プロダクトマネジャーのポジションを設ける企業が増えています。

プロダクトマネジメントで必要なのは、文字通りの「製品の管理」だけではありません。プロダクトマネジャーは、ビジネス的な戦略を立てて意思決定をしたり、ユーザーのニーズを調査して満足度を向上させるための方法を考えたりする立場となります。

もちろん、プロダクトの開発を実現するための技術にまつわる知識も必要です。

プロダクトマネジャーは、PM(プロジェクトマネジャー)と区別するために、PDM(PdM)と呼ばれることもあります。また、顧客とプロダクトに関わるすべての責任を持つため、「ミニCEO」と呼ばれたりもします。

プレイングマネジャーとマネジメント専任者


これらのマネジメント業務を担うポジションは、大きくわけてプレイングマネジャーマネジメント専任者があります。

プレイングマネジャーとはその名の通り、「実務(エンジニアの場合は開発)もできるしマネジメントもする」ポジションです。チームリーダーから大きな組織をまとめる管理職まで、「マネジメントを担ってくれる人材」を募集している企業は多いですが、近年ではほとんどの募集企業がこうしたプレイングマネジャーを求めています。

逆にマネジメント専任の人、つまり技術はほとんどわからないけど、プロジェクトマネジメントをするだけの人を「積極的に採用したい」と考える企業は、それほど多くはありません。

マネジメントをしたくないから転職する?


前述の通り、エンジニアになって数年たった方からよく挙がるのが「このまま開発を続けるか、マネジャーになるか」というお悩みです。とくに開発が好きなエンジニアの方は、「マネジメントしたくない」「できればエンジニアのままがよい」と言われます。

ただ、年次を重ねても「マネジメントをする」「CTOなどになる」といった方向に進まず、あくまでエンジニアリングだけを続けていくのは、それはそれで大変なキャリアです。

というのも、エンジニア求人を募集している企業は、年次を重ねてきたエンジニアに対しては、「マネジメントをまったくせずに開発だけがしたいのであれば、技術でそれ相応の価値を発揮してほしい」と考えています。

年次を重ねてくるとそのぶん「自分の強みが何で、自分の価値を発揮できるのはどこか」が重要になってくるのです。

マネジメント経験は付加価値になる


「マネジメントをするのはとにかく嫌だ」と言っている人の中には、食わず嫌いでマネジメント業務を避けている人もいるかと思います。

もし「これから自分に付加価値をつけたり市場価値を上げたりしたいな」「エンジニアリングだけでやっていくには限界があるのかも……」と思うのであれば、マネジメント業務に挑戦してみるのもよいでしょう。

実際、開発経験のあるマネジャーはどこの企業でも重宝されますし、何より経験が増えればそのぶん発揮できる価値も増えます

逆に「PMの経験なんて転職先では役に立たないだろうな」と考えている人もいますが、そんなことはありません。たとえば、SIer(システムインテグレーター)でPMをしていた経験が、自社開発企業に転職しても役立っているというケースは非常に多くあります。

そのため選考においても、マネジメント経験を高く評価してくれる企業はめずらしくありません。

まとめ


年次を重ねると、いずれは前述のようなプレイングマネジャー的なポジションにつくか、それともスペシャリストとして技術を極めるか、選択を迫られることもあるでしょう。

それに加えて、最近はCTOなどになって経営にも携わる人や、人事ニアとしてエンジニア採用担当になる人などもいますし、そこからまた「やはりエンジニアがいい」とエンジニアに戻る方もいます。

どれも簡単な道ではありませんが、キャリアアップに必要なのは「自分の強みを把握して、それを価値として発揮する」ことです。

この機会に、ぜひ自分の経歴や得意なことを振り返り、「自分の価値が最大限に発揮できる仕事はどこにあるのだろうか?」という観点で、これからのキャリアを考えてみてください。

presented by paiza

(文:谷口智香

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