中小企業ではなかなか導入が進まないといわれているDXを実現するための有力な手段の1つが、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)システムの導入です。企業の経営資源を一元管理できるERPは、業務効率の向上やワークフローの改善に貢献する可能性が高まります。

 

Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operations(以下、サービス名はDynamicsと省略)は、MicrosoftがSaaSで提供しているERPサービス。この導入サポートからユーザートレーニングまで、さまざまな支援を行なうことでDXおよびDXへ向けての人材育成を実現しているのが、株式会社エヌティ・ソリューションズです。執行役員 ERPソリューション事業部 事業部長 南雲 暢之(のぶゆき)さんに、Dynamicsのサポートを通じた同社のDXサポート・リスキリング事業についてお話を伺いました。

SaaS型を中心にERP導入をサポート

ーー事業概要をご説明ください

南雲:

ERPソリューション事業部ではその名の通り、ERP全体を扱っています。エンドユーザーとなる企業がDXを進めたり、ERPを自社で運用できる体制づくりを促進するサポートを行なっています。

 

その中でも、当社ではDynamicsを用いたサポートに力を入れており、

 

– 導入サポート

– 標準機能を利用したシステム構築・運用支援

– 内製化支援

– コンシェルジュ

 

など、さまざまな角度からDynamics利用のご支援をしています。トレーニング事業もおこなっており、2022年度にはMicrosoft Partner of the Year 2022「Learning Award」を受賞したんですよ。

 

ーーDynamicsのニーズは多いのでしょうか

南雲:

多いですね。ERPを導入したい/刷新したい、というお客さまはたくさんいらっしゃいますが、導入する側の手が足りていない、という状況です。

 

Dynamicsは、ERPの中でも移行が進むSaaS型での提供をしています。それに加え、クラウド環境である「Azure」を保つMicrosoftの強みが発揮され、カスタマイズ可能なSaaSとしても利用できます。さらに、OffceやPowerPlatformなど、企業で必要な各種アプリケーションとの連携も取りやすいことから、中堅企業を中心に事例が増えました。今は大企業の利用事例も増え、業務のすべてを一社に任せられるメリットを感じてもらえているようです。

 

ーークラウドERPの利点は

南雲:

システムやデータがクラウドにあることで、サーバが不要になります。DynamicsはSaaSですから、バックアップやディザスタリカバリーの仕組みづくり・構築・テストも必要ありません。月額を払うだけでこうした業務をクリアできるので、本来やるべきことに、より注力できます。

 

また、法制度への対応などで作業が少なくなるのも利点になります。カスタマイズした部分などはどうしても手直しをしなければなりませんが、カスタマイズのない処理については自動的にUpdateが入るので、大掛かりな改修プロジェクトの必要もありません。

 

税制度が変わったり、会計基準の変更対応が入ったりなど、情報システムに大きく影響する法改正は、思ったよりあるものです。こうした対応がUpdateできるのは大きなメリットと言えますね。

Dynamics導入企業に対するサポート

ーーパッケージのようなSaaSのシステムがある中で、御社ではどのようなサポートを行うのでしょうか

南雲:

ERPに関するお客さまの業務全般をサポートできる強みを活かせます。導入の仕方をはじめ、環境構築・ERPを活用した自社システムの開発・保守運用・内製化への伴走などで支援を行います。

 

ERPを使って実現したいことは、お客さまによって異なるものです。その要件を確認し、必要があればカスタマイズやつくり込みを行い、テストや過去システムからのデータ移行、ユーザートレーニングまですることもありますね。

 

大企業がSIerに依頼するものの、SIerの経験が不足している場合もあります。そのようなときに、弊社が技術サポートをするケースもあるんですよ。

 

ーーSaaS型なのにカスタマイズができるというのはどういうことなのでしょうか。

南雲:

ERP導入では、アドオンを極力入れないほうが、導入コスト的にも運用保守的にも楽になることが多いですが、とくに日本では、業務上での効率化や、顧客向け帳票の完成度が必要になるなど、どうしてもカスタマイズが必要になる企業が多いです。

そこで、Dynamicsでは、SaaS型でありながら、カスタマイズできる部分を用意しているんです。それが、ローコード開発が可能な、PowerPlatformを活用したシステム間連携であったり、帳票や画面などをERPに直接アドオン開発するExtension開発のやり方が標準で用意されているんです。われわれはこの技術を得意としていますので、この辺りをコンサルティングさせていただくことも可能です。次世代ERP人財育成コースとして、オンライン教育「DLP Online」でもご説明しています。

リスキリングをしないと繋がらなくなる

ーーDynamicsの利用とDX・リスキリングにはどのような関係がありますか?

南雲:

今はDXという言葉も当たり前ですよね。企業の対応も活性化してはいますけれど、中小企業については新型コロナのダメージを修復している最中で、なかなか新しいことに着手できていない印象もあります。

 

DXでは、デジタル活用による競争力を身につけることこそ大切ですが、ERPはDXの中心となる基幹システムだと思っています。これがオンプレミスであっては効率化・スピードアップにつながりません。クラウドERPを活用することはDXの着手として適切なのではないでしょうか。

 

必然的に、クラウドERPを活用できる人材が必要となってきます。が、いまはITの人材を確保するのが大変です。ITに強い人材はIT企業が積極的に採用しますから、一般企業のIT部門は競争が激しくなります。ともすれば、その企業にすでにいる非ITの人材にITの力をつけていただくことに着目するのは明らかです。

 

クラウドERPを通してMicrosoftの各種の最先端技術を学ぶことで、スタッフのリスキリングと企業のDXが実現に近づいていくと考えています。

 

ーーエンジニアのリスキリングを意識しないことによる危険性にはどのようなものがありますか

南雲:

周囲との連携がしにくくなることです。システムにたとえるならば、自分のバージョンが安定していたとしても、周囲のシステムがバージョンアップしたときに連携部分にリスクが生まれます。

 

伝統的で大切なもので、残さなければいけないものはもちろんあります。しかし、古いスキルに固執しすぎてしまうと、周りと繋がらなくなってしまうんです。

 

わたしも、最初はERPといえばSAP中心でしたが、Microsoftとの提携が始まるようになってDynamicsに関わるようになり、クラウドERPの業務について自分自身がリスキリングできています。

 

弊社のサービスは、わたしのリスキリングを追体験していただけるようなものかもしれません(笑)。

 

ーートレーニングサービスはどのようなものがありますか

南雲:

オンデマンドの自習型オンラインコンテンツ「DLP Online

講師と受講者が対面・オンラインで会話しながら学習する「クラスルームトレーニング

 

があります。

 

DLP Onlineでは、1人に1台ERP実機環境をお貸出しいたします。動画を見ながら、ERPを直接触って学習することができます。また、わからないところを質問するとわれわれのコンシェルジュやコミュニティから回答を得られるQAコミュニティ、また、習熟度をチェックでき合格すると認定証が発行される各種認定試験も用意しています。

さきほども出てきましたが、クラウドSaaSERPのスキルを身に着ける「次世代ERP人財育成コース」も含まれています。

 

クラスルームトレーニングでは、従来型のトレーニングコースとなっています。業務習得コースや開発者育成コースなどがあり、講師と対話しながら、疑問点をリアルタイムで解決することが可能になっています。講師は、実際の導入プロジェクトを幾つも経験してきた導入コンサルタントやITアーキテクトが担当しますので、ご質問にも柔軟にお答えすることができます。また、日時を決めて実施しますので、その日はスキル習得に集中することができますので、自習が苦手な方はこちらがお勧めです(笑)。

 

また、新しいところでは、PBL(課題解決型学習:Project Based Learning)を用いた新コース[D365FO疑似プロジェクトPBLコース]を開講しています。講師が疑似プロジェクトを運営し、受講生の方は、ERP導入フェーズのエンジニアとして、プロジェクトの課題を解決する教育コースとなっています。実プロジェクトでよくある要件などを課題として、より実戦に近いコースとなっていますので、より即戦力としてのスキルを身に着けていただける教育コースとなっています。

 

他では、ERP未経験の方や、新入社員の方に対して、ERPの開発を学んでいただく、特化型教育コース[新入社員様向け特化コース]もご用意しています。

 

システムが進化するのと同様にエンジニアも進化する必要があると思います。エンジニアとして息の長い技術をつけるためにも、ぜひ多くの方にSaaS型ERPを学んでいただき、新たなキャリアへステップアップしていただきたいと願っております。

(取材/文:奥野 大児)

― presented by paiza

 

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