築40年の実家をDIYでスマートホーム化した経験をもとに、離れて暮らす高齢親の見守りやサポートに役立つ方法を提案する「見守りテック情報館」を運営する和田亜希子さん。

すでに掲載した「ITを駆使し、離れて暮らす高齢の親を見守る!|「見守りテック情報館」運営者の奮闘」の記事では、和田さんがサイトを立ち上げた経緯や、IT機器を導入して見守りをするようになって生まれたお母さまとご自身の変化について教えてもらいました。

この記事では、具体的にどんなIT機器をどのように使って高齢親の見守りをしているのか、これから導入したいと考えている人に役立つヒントをうかがいます。

人を変えようとするのではなく、問題に対処する


――これからITを活用して高齢親の見守りをしたいと考えている人に、まず伝えたいことは何でしょうか?

和田:親に認知症の症状が現れても、子はなかなかそれを認められません。記憶障害や見当識障害が出てくると、つい「お母さん、そうじゃないよ」「昨日も言ったでしょ」と相手の認識違いを正したくなりますし、理不尽な言動に向き合い続けると精神的に消耗します。

私自身、母を変えようとする気持ちが強かったときは、きつく当たってしまい、言い争いになったり、お互いにつらくなったりして、関係が悪化しかけました。

しかし、ITによる見守りを導入してから、相手(人)の考えや行動を変えようとするのではなく、目の前にある困りごと(問題)にうまく対処できる方法を探そうと発想を切り替えることができました。その転換は、すごく大きかったですね。

インターネット接続が可能な最新のIoT家電に買い替えなくても、IT機器を購入して設定をすれば、離れて暮らす高齢親の見守り&サポートができます。とくに難しいものではなく、スマホアプリが使える人なら誰でも問題なくできるでしょう。

――具体的には、なにから手をつければよいですか?

和田:スマートホーム製品をネット接続させるためにはWi-Fi(無線LAN)環境が必要なので、最初にすべきなのは「インターネット回線」の導入です。光回線を契約しなくても、モバイル型Wi-Fiや格安SIM+Wi-Fiルーターなら、手軽かつリーズナブルに導入できます。

製品は、必要に応じてそろえればよいですが、安否確認のための「ネットワークカメラ」、家電製品をインターネット経由でコントロールする「スマートリモコン」、それらを音声でON/OFF操作したり、通院日程や日課を音声でリマインドしてくれたりする「スマートディスプレイ」の3つがあるとよいでしょう。

見守りの「目」になるネットワークカメラ

――ネットワークカメラについて教えてください。

和田:高齢親の見守りのためにまず最初に導入してほしいのは、ネットワークカメラです。室内に設置した見守りカメラをインターネット接続すれば、スマホで様子を確認できます。

ネットワークカメラにはさまざまな種類がありますが、TP-LinkSwitchBotRing Indoor Camなどが人気です。壁面に固定する必要はないので、棚など好きな場所に置いて使える据え置き型で十分です。また、バッテリー充電式ではなく、常に給電しながら使うタイプのものでよいでしょう。

ほとんどのネットワークカメラは、動体検知すると、その前後数秒を自動録画します。それを見れば、最後に動きがあったときの様子から、外出をしたのか、寝る準備をして寝室に向かおうとしていたのかを推測可能です。「何度電話をしても出てくれない。こんな遅い時間まで外出しているはずがない。何かあったのでは?」と不安にならずに済みます

廊下に360度レンズ部分が回転するカメラを設置しておけば、親が家の中のどこかで倒れていないか探すこともでき安心です。見守りをする側としても、カメラで安全を確認できれば何度も電話をかけて鬱陶しがられることもなくなるので、ストレスが減りますよ。

家電を遠隔・自動操作するスマートリモコン

――スマートリモコンについて教えてください。

和田:スマートリモコンは、家にあるエアコンや照明などのリモコン機能をスマホやAIスピーカーに集約して、インターネット経由で操作できるようにする機器です。これを導入することで、エアコン、テレビ、照明器具、音響器具など、赤外線リモコンで操作できる製品がすべて、離れた場所からでもスマホアプリで操作できるようになります

高齢者の見守り用にイチ押しのスマートリモコンは、Amazon Alexa対応端末の「SwitchBotハブミニ」です。Nature Remoシリーズも人気がありますね。

タイマー設定をすれば、毎日一定時間にON/OFFでき、SwitchBotの温湿度計や人感センサーと連携させ「室温が28度を超えたらエアコン冷房をON」「30分間無人の場合は暖房をOFFかつ通知をする」などの自動化設定も可能になります。

さらに、スマートディスプレイ/スピーカーと連携することで、「OK Google、エアコンを消して」「アレクサ、電気をつけて」など、声だけで家電製品や照明器具を操作できる点も高齢者にうれしいポイントです。

――高齢者が使う場合、ボタンよりも音声操作のほうが向いているのですか?

和田:高齢者はリモコンが苦手になることが少なくありません。認知機能が低下すると、リモコンに並ぶたくさんのボタンのうち、どのボタンを押すと何が起きるのかが結びつかなくなるというか……。文字が読めなくなるわけではなく、冷房をつけたいときにどうすればいいのかわからなくなってしまうんです。

わかるときとわからないときの波があるのですが、私がショックだったのは、「お母さん、暑いからちょっとエアコンつけようよ」といったときに電話機の子機を持ってきてボタンを押していたこと。「ちょっと待って、今持ってるのは何?」といったら、「何いってるの、エアコンのリモコンじゃない」と。そのときは「ああ、どうしよう」と思いました。

認知症が進んでも「テレビを観たい」「エアコンをつけたい」としゃべることは問題ない人が多いです。母の場合も、スマートディスプレイにして音声で指示してもらうようにしたら、今までリモコンで操作していたときと変わらず、スムーズに使えるようになりました。高齢者にとって、音声での指示はすごくやりやすいものなんですね。

スマートリモコンは、熱中症、消し忘れリスク、認知機能の低下によってリモコン操作が思うようにできなくなるなど、高齢者のさまざまな課題を解決してくれるので、見守りをする上で非常に頼りになる製品です。

「秘書」としてサポートするスマートディスプレイ

――スマートディスプレイについて教えてください。

和田:スマートディスプレイは、AIアシスタントを搭載したモニター付きの便利なデバイスです。「今日の天気は?」「エアコンをつけて」「1時間後にタイマーをかけて」といった質問や指示をすると、ちゃんと回答・実行してくれます。

高齢者向けには、Amazon Alexa対応の「Echo Show」シリーズがおすすめですね。

音声で操作できるので、パソコンやスマホの操作が難しい高齢者も簡単に使えて、「まもなくデイサービスのお迎えです。外出準備をしましょう」「朝食後のお薬は飲みましたか?」といった声がけもしてくれるので、認知症の方の生活サポートに役立ちます。

Googleカレンダーに、デイケアやリハビリ、介護ヘルパーさん来訪の時間を登録して、直前に読み上げてもらう設定をすれば、離れて暮らしていてもサポートが可能です。

母の場合、デイサービスの予定がない日に「今日はデイサービスの日だ」と思い込んで玄関で迎えを待ち続け、「私はちゃんと予定通り準備をしているのに、なぜ迎えにこないんだ」と怒ってしまうこともあったのですが、スマートディスプレイによる声かけを導入してからはそんなこともなくなりました。本人のストレスも減ったと思います。

――スマートディスプレイはコミュニケーションツールとしても役立ちますか?

和田:スマートディスプレイを導入してから、母と私のコミュニケーション量が増えました。電話をかけるよりも簡単にビデオ通話ができるようになったので、とくに用事がなくても、朝ご飯を食べながら「おはよう。何食べてるの?」と顔を見ながらしゃべっています。

「じゃあ、出かけてくるから。またね」とできるのは、電話とはまた違った体験で、普通にバーチャルに同居しているような感覚でしゃべれるので、面白いですね。高齢の母もすぐに慣れてくれましたし、私の顔を見て話せるのを喜んでくれていると思います。

スムーズなスマートホーム化のためにできること

――はっきりとした認知症の症状が出ていない段階だと、「見守り=年寄り扱い」と思われそうなのですが、なにかよい提案方法はありますか?

和田:昨今は高齢者を狙った押し込み強盗が話題になっているので、「物騒な時代だから、お母さんのことが心配なんだよ」と切り出し、防犯目的でネットワークカメラを入れるのはアリかなと思います。別に嘘をつくのではなく、最初は防犯目的で入れて、おそらくどこかのタイミングから見守り用途になっていくと思うので、そこは自然な流れでいいのかなと。

スマートディスプレイは、安いときなら4,000円程度で買えるので、母の日や誕生日などにプレゼントして、「使わなくてもいいから置いといてよ」といって、最初の設定や接続だけやってあげるといいかなと思います。

自分に子どもがいるなら、孫からビデオ通話をさせたら喜んでくれるでしょうし、そこからハマっていくかもしれません。「必要になるのはまだ先のことでしょ」と思わず、夏休みや年末年始などで帰省することがあるなら、そのタイミングでぜひ導入してみてください。

機器の選び方や、導入・設定の方法は「見守りテック情報館」で解説しています。

――ありがとうございます。最後に、和田さんがこれから取り組みたいと思っていることがあれば教えてください。

和田:私はIT機器を設定するのもアプリをいじるのも好きなのですが、親の介護や見守りが必要になってくる40代後半から50代にかけての世代には、そうしたことに苦手意識を持っている人も多いと思います。実家が遠く設置に行くのが難しい場合もあるかもしれません。なので、そうした人々に向けて、設置代行をやってみたいと考えています。

見守り機器をネットで注文だけしてもらって、私がご実家に行って設定をし、高齢者向けに説明もして簡単な使い方ガイドを置いてくるようなパッケージで提供できたらいいですね。そのためには、セキュリティ面のマニュアルを作ったり、コミュニケーション領域を含めて認知症ケアに役立つ資格を取ったりと、やることはたくさんありそうです。

離れて暮らす高齢親の見守りは、今後ますます社会的に大きな課題となっていくでしょう。テックの力で解決できることは想像以上に多いです。自分の知識や経験を活かして情報やサービスを提供していくことは、私のライフワークになりえると感じています。

見守りテック情報館

(取材・文:ayan / 撮影:つるたま

presented by paiza

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