社会に出る人に、ひとつだけ「これをやっておけ!」と伝えるなら、わたしはこう言います。
「タッチタイピングをマスターしておくんだ!」と。
そう。パソコンのキーボードを意のままに操り、指先ひとつで文章を紡ぐスキルのことです。
わたしが23歳だった1999年の春に、タッチタイピングをマスターしたことが人生の転機となりました。
それからずっとパソコンを使い続けているので、20年以上もの間、毎日使っているスキルですね。
このスキルが土台としてあるからこそ、現在のわたしが本を執筆したり、ブログや当メディアで執筆したりできています。
こんなにコスパのいい初期投資はないのではないでしょうか?
本記事ではパソコン嫌いだったわたしがタッチタイピングをマスターすることで人生を変えたということと、タッチタイピングをマスターする4つのコツを紹介します。
「タイピングできないこと」がパソコン嫌いの原点
今では文章を一日中書いているわたしですが、23歳になるまではまったくパソコンが使えませんでした。
学生時代からパソコンが苦手で、できるかぎり避けていたのです。でも、青臭い時代のわたしですら気づいていました。
これからの時代はパソコンが必須であることに!
とはいえ、頭では理解していてもパソコンを見るだけでめまいがするほど大嫌いだったわたし。
某ネコ型ロボットに対するネズミのような存在が、まさにわたしにとってのパソコンだったのです。
ある日のこと、23歳になったわたしは「なぜパソコンをここまで嫌うのか?」と自問自答し、ひとつの答えにたどりつきました。
それは、単純に「タッチタイピングができないこと」だったのです。
タイピングが苦手だったことから、パソコンに対して苦手意識をもち、パソコンを避けていたことに気づきました。
パソコン嫌いを克服すべくタイピングの学べるアルバイトに
理由がわかれば行動あるのみ。パソコン嫌いを克服するために、タッチタイピングの練習をすればいいだけです。
そこでパソコンを買って練習する人が多いかもしれませんが、わたしの場合はちがいました。
購入したのはパソコンではなく、数百円のアルバイト紹介雑誌です。タイピングをやらせてもらえるアルバイトを、目を皿にして探しました。
もちろん「初心者歓迎」のマークがついている会社を。
お金をもらいながらタイピングも練習できるなんて、そんなうまい話はないだろうと思われそうですが、いくらでもあります。
運のいいことに「一日中ひたすら文字を入力する」というアルバイトにありつけましたが、いきなり文字を入力できるはずがありません。
「初心者歓迎」の職場だったこともあり、業務時間内にタイピングの練習、いわゆる「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」で学ばせてもらいました。
給料や待遇などよりも、わたしがタッチタイピングをマスターすることが目的だったため、アルバイト先ではすぐに戦力になりました。
余談ですが、タイピングを極めたあとは、ほかの方法で効率化を考えるようになり、そのときに考案した「単語登録」のテクニックがのちに出版する引き金となりました。
タッチタイピングをマスターするための4つのコツ
初心者だった当時、わたしがタイピングの練習として使っていたのは「TypeQuick(タイプクイック)」という有名なソフトです。
カマキリの手のような構えでしか文字入力をできなかったわたしでしたが、このソフトを使って毎日1〜2時間の練習を1か月続けたところ、スムーズなタッチタイピングができるように!
正しい学び方で、ある程度の練習量があれば、パソコン嫌いの人でもタッチタイピングはマスターできるのです。
その実体験から、タッチタイピングをマスターするためのコツをお伝えしましょう。次の4点だけです。
- 決められた指を使う
- 視線はパソコンの画面
- 指は常に「ホームポジション」に待機
- 地道に練習をする
それぞれのコツを順番に紹介しましょう。
【1】決められた指を使う
タッチタイピングをマスターする基本中の基本は、決められた指を使うことです。
パソコンのキーボードには「このキーはこの指を使う」という基本ルールがあります。
左のほうにあるキーほど左手の小指を使い、右にあるキーほど右手の小指を使う。このように、キーの位置によって押しやすい指が割り当てられているのです。
押しやすい指でキーを押したほうが、当然ながらスピードは速くなりますよね。
わたしの場合、まちがった指でキーを打ってしまったときは、入力した文字を削除して正しい指で打ち直していました。
「そこまでする必要はないのでは?」と思われそうですが、これには理由があります。
タッチタイピングは「はじめが肝心」だからです。もし、まちがった指でタイピングを覚えてしまうと、のちのち修正するのが大変になります。
ちなみにタイピングのスピードが遅い人は、自己流でキーを押す指がめちゃくちゃである場合が多いです。
【2】視線はパソコンの画面
どの指でどのキーを押せばいいかを学んで練習するときに、気をつけることがあります。
それが2つ目のコツである「視線をパソコンの画面から離さないこと」です。言い換えると「手元を見ずにキーを打つ」という意味ですね。
「でも、手元を見ずにどうやって手を置く場所がわかるの?」と不思議に思うかもしません。
じつは「Fキー」と「Jキー」には「小さな出っ張り」があり、キーボードを見なくても「人差し指を置くべきキー」がわかります。
手元を見ずにパソコンの画面だけを見てタイピングするのと、画面と手元の間で視線を何度も往復させながらタイピングをするのとではスピードがまったく違います。
タイピングが速い人は、パソコンの画面から目をそらさずに入力できるから速いのです。
ということで、タッチタイピングの練習をするときは、手元を絶対に見ないようにしましょう。
【参考】以前は、手元を見ないことから「ブラインドタッチ(blind=盲目)」とも呼ばれていましたが、差別的な響きもあることから今では「タッチタイピング」と呼ばれるようになりました。
【3】指は常に「ホームポジション」に待機
タッチタイピングを極めるための3つ目のコツが「ホームポジション(常に指を置いておくキー)」に指を待機させることです。
前項で紹介したように、出っ張りのあるキーに左右の人差し指を置くと、次の画像のようになります。
それぞれの指を置くべきキーが自然に決まるのです。
左の人差し指から順に「F」「D」「S」「A」、右の人差し指から順に「J」「K」「L」「;(セミコロン)」。
これらのキーに指を待機させた状態を「ホームポジション」と呼びます。
離れた位置にあるキーを押しても、すぐにホームポジションに指を戻すようにしましょう。
ボクサーがパンチを繰り出して、すかさず手を引っ込めて「構え」に戻るイメージです。
【4】地道に練習をする
最後に紹介するコツは、地道に練習をすることです。
わたしの場合はアルバイトでひたすら練習しましたが、SNSやブログを使って発信することも練習の一部ですね。
「いいね」がもらえるように試行錯誤しながら文章を書けば「伝える力」もアップするのでおすすめです。
また「クラウドソーシング(仕事を依頼したい企業と仕事を受けたい個人をオンライン上でマッチングするサービス)」なら、お金をもらいながらタッチタイピングの経験を積めるのでモチベーションも高まります。
無料の「TypingClub」でタイピングをマスター
前項では「タッチタイピングをマスターするためのコツ」を紹介しましたが、パソコン教室などに通って習うのでしょうか?
今は無料で使える「TypingClub(タイピング・クラブ)」というWebサービスがあるので、パソコンがインターネットに接続できれば今すぐ練習できます。
どの指でどのキーを押すかを、理想的なスケジュールですこしずつ学べるため、TypingClubを毎日使うだけでマスターできるのです。
たとえば、次の画像は「Q」と「Y」の練習画面です。
(TypingClub 練習画面より)
このようにタイピングだけに集中できるシンプルな画面ですが、デザイン的にやぼったくはありません。
わたしはあらゆる「有料」のタイピング練習ソフトを試しましたが「無料」のTypingClubにかなうものはないと思うほど。
ほとんどのタイピングソフトは、どの指でどのキーを押せばいいかを学べなかったり、練習スケジュールがハードすぎたりして初心者には向いていないのです。
TypingClubの唯一の弱点は、日本語入力を練習できないことです。
アメリカ企業が運営するサービスなので仕方ありませんが、すべて英単語での入力となっています。
そのため、TypingClubで「どの指でどのキーを押すか」をひととおり学んだあとは、継続して使う必要はありません。
あとはSNSやブログで発信することで実践していけば、あっという間にタッチタイピングを極められます。
ちなみにうちの子は、小学校時代にTypingClubを使ってタッチタイピングをマスターしました(1か月ほどで)。
タッチタイピングを身につけるメリット
最後に、タッチタイピングを身につけることで得られるメリットを紹介します。
「『T』はどこだっけ……」とキーを探さなくてもよくなるので、仕事のスピードが向上します。さらにミスも少なくなり、ストレスも減るというわけです。
そして冒頭で述べたように、わたしはタッチタイピングをマスターしたことによってパソコンへの苦手意識がなくなりました。
その結果「パソコンを使う仕事」を選ぶハードルも下がり、次のステップであるネットショップの運営やWebサイト制作もこなせるようになりました。
つまり、タッチタイピングを身につけることで間接的に仕事の選択肢が増え、次のステップに進みやすくなるというメリットもあるのです。
いろいろとメリットをあげてきましたが、最大のメリットは「脳のリソースを生産的な活動にまわせること」だと断言します。
タイピングに使う労力がゼロに近づくほど、企画を考えたり、作業効率を高めるアイデアを出したりといった業務に注力できますよね。
文字を打つことごときに脳を使っていては、質の高い業務はできないのです(……実際には脳を使ってタイピングしていますが)。
タッチタイピングを使ってなにを達成しますか?
わたしが、パソコン嫌いからパソコンが得意な人間に変貌したことを紹介しましたが、あのときの自分はまちがっていなかったと、心から思っています。
よくやったぞ、23歳のときの自分!
ただし、タイピングそのものは「単なる作業」です。けっきょくのところ、その武器を使ってなにを生み出すか。
タイピングという「手段」によって、目的を達成することがビジネスパーソンには求められています。
そのためにもタッチタイピングをマスターしましょう。
(文:ヨス)