エンジニア初心者におすすめの言語はなんでしょうか。PHPやPythonなどいろいろな説がありますが、わたしはあえて「英語」を推します。
わたしは現在、製造業の社内SEとして社内向けヘルプデスクやセキュリティ関係の業務に携わっています。前職ではC++やPerl、PHPを使ってプログラミングをしていました。
社内SEの今も、プログラマだった昔も、あまり得意ではない英語をガンガン使っています。英語を使う機会としてイメージしやすい場面は、外国人との会議やメールでしょう。ただ、外国人と関わる機会がない方も、エンジニアならば英語を避けては通れません。
IT関係のツールの多くは海外産。ソフトの公式マニュアル、プログラミングで出るエラーなども英語です。外国人と関わる機会がないエンジニアも、英文を読む機会は必ず訪れます。
ただ、英語が苦手な方は安心してください。現代はとても便利な英語ツールがあふれています。
本記事では、わたしが普段から使っている、英語を使うときに便利なツールを3つ紹介します。
有料プランもありますが、無料でも使えるものばかりなので、ぜひ一度試してみてください。
翻訳「DeepL」
DeepLは、メールの読み書きや英語のマニュアルを読むときに使う、翻訳ツールです。英訳も和訳も、非常に高い精度でできる優れモノです。DeepLのサイトを開いて翻訳したいテキストを入力してもよいですし、Chromeの拡張機能をインストールすれば、翻訳したい範囲を選択し、右クリックして即翻訳できます。会員登録が不要なこともうれしいポイントです。
DeepLはとても優秀な翻訳ツールですが、いくつか注意点があります。
- 主語が省略された日本語は正確な英訳ができない
- 細かなニュアンスが無視される
- 無料版は入力した情報がデータ解析のために収集される
第一に、主語が省略された日本語では正確な英訳ができません。
たとえば
「データの登録や編集、削除ができます。」
を英訳すると
「You can register, edit, and delete data.」
となりました。日本語に主語がないため、相手が訳す能力があるのか、システム的に機能があり誰でもできるのか分からないにもかかわらず「You」と英訳しています。
文法的に間違いではありません。しかし、正しく伝わる英語にするには「このシステムはデータの登録や編集、削除ができます。」と、主語を省略せずに日本語を入力したほうがよいでしょう。日本語特有のあいまいな主語が英語と相性が悪いと感じています。
続いて、細かなニュアンスが無視される傾向があります。
「オーストラリアにも行ったことがあります。」
は
「I’ve been to Australia.」
と英訳されますが、「も」が無視されています。正確には「I’ve also been to Australia.」です。致命的なミスではないとはいえ、少し違和感がありますね。
最後に、DeepLの無料版では翻訳したデータが翻訳精度の改善のために一定期間保存されます。個人情報や社外秘の情報は、他の言葉に変えて翻訳しましょう。
※翻訳例は2023年3月時点のものです。
文法チェック「Grammaly」
Grammalyは、英文のスペルミスや文法的なミスをAIが指摘と修正してくれるツールです。GrammalyのWebページでテキストを入力するほか、ブラウザの拡張機能やスマートフォンのキーボードアプリなら、メールやチャットの文章を打ち込んでる最中でチェックしてくれます。
わたしはDeepLで生成した英文に違和感があるときに使います。
たとえば、上に登場した文章
「日本語に主語がないため、相手が訳す能力があるのか、システム的に機能があり誰でもできるのか分からないにもかかわらず「You」と翻訳しています。」
をDeepLで英訳すると
「Since there is no subject in Japanese, it is translated as “You” even though we do not know if the other party has the ability to translate it or if it is a system function and anyone can do it.」
になります。
上記の英文をGrammarlyにかけると「has the ability to」を「can」にできると提案が。確かに、表現が1単語になるので読みやすくなります。
有料プランだと、より添削の精度があがります。しかし、読み手に意味が伝わらなくなるほど重大な間違いは無料プランでも発見できるので、課金する必要はないでしょう。
DeepLやGrammarlyに限らずツール類は、どんなときでも使えるわけではありません。ツール類はじっくり考えてから送信できるメールと相性がいいものの、スピード感を求められるチャットではいまいちです。また、ツール類がインストールされていないPCを使って作業せざるをえないこともあります。
そのため、ツールに頼らず英文を書くスキルを得るために、あえて自分で英作文してGrammarlyで添削することも少なくありません。
発音矯正「ELSA Speak」
ELSA SpeakはAIが発音を評価・矯正指導してくれるスマートフォンのアプリです。自宅で毎日15分程度だけやっています。
単語を音ごとに評価してくれることが特徴で、たとえば「better」だとb・e・t・rそれぞれの発音を評価してくれます。
わたしは、英語だけでなく言語に関して文法を気にする前に、発音を気にしたほうがよいと思っています。
英語の発音は、できているつもりでも意外とできていません。わたしは10年ほど前の大学院生時代、英語でプレゼンテーションする機会がありました。まだELSA Speakがないころです。
自分なりに本や動画で練習してそこそこ話せるようになったと思って、ダメ押しのつもりで英会話を習いました。ところが発音がダメダメだったようで、アメリカの幼児が発音練習する際に使用するフォニックスからのスタートになりました。
たとえば、fの発音は日本語にはありません。huもfuも日本語では「ふ」ですが、英語では専門用語でいうとhは無声摩擦音、fは無声唇歯摩擦音という全く違う音です。日本人がfunと発音すると、外国人はhunと聞こえ、意味が伝わりません。
社会人になり英語で話す機会も増え、フォニックスの練習をしつつELSA Speakで矯正をしていくうちに、発音が原因で聞き直されることは少なくなりました。今ではなんとか英語で電話もできます。
日本語はマイナー言語だと日々感じている
日本語はマイナー言語だと日々感じています。日本語を話す人口は世界の2%程度で、ほとんど日本人しか話しません。外国人が習得するのも難易度が高いと言われています。
IT業界の日本語問題は深刻です。IT関係ツールは海外産が多く、日本語の公式ドキュメントが用意されていても、英語のものを翻訳ツールに入れただけのような分かりにくいものもあります。
ググれば日本語の情報も出てきますが、多くがブログやYouTubeなどで個人が発信している二次情報で、正しいか分かりません。実際、間違っていることも少なくありません。
最も信頼できる情報である一次情報を手に入れるには、公式ドキュメントを読める英語力が必要です。
エンジニアと英語は切っても切れない
エンジニアと英語は切っても切れない関係です。たとえばChatGPTは英語で訓練されています。日本語の質問は内部で日本語→英語→日本語と、英訳と和訳を挟んでいるので、正確さが劣ります。
英語が使えるか使えないかで、AIの性能を最大限に活かせるかも左右されるといえますね。
ただ、ありがたいことに、今の時代は英語をサポートしてくれるツールにあふれています。翻訳、文法、発音などあらゆるケースで技術に頼れます。便利なツールを最大限利用して、覚悟を決めて英語に立ち向かっていきましょう。
(文:藤井宏治)