みなさんは、他人と話すのは得意ですか?もしかしたら胸を張って「得意です!」と言える方は少ないかもしれません。何をもって得意と言えるのかに明確な定義はありませんが、たとえば知らない人がほとんどの立食パーティや、ITエンジニアに身近な例でいえば勉強会後の懇親会などの場面を想像していただけるとよいでしょう。

そのような場面において、知らない方と交流したり、そこでの話をきっかけに何か新しい機会につなげたりが得意な方というのはいるものです。

懇親会などはあくまでも1つの例ですが、ITエンジニアにとってこうした場面での自己アピールを含め、なんらかの方法でコネクションを増やしていくこと、より砕けた言い方をするならば「社外のコミュニティでの友人を増やすこと」は大切です。

転職などの機会につながることもありますし、情報交換などを行うことでスキルアップにつながることもあります。

しかし冒頭で質問したように、必ずしも自己アピールが得意な人ばかりではありません。私自身もそうです。懇親会などでは知り合いの隣にずっといるか、壁際のいすのところでずっと座っていたいタイプの人間です。

しかし、そのような「内にこもっていたい」タイプのエンジニアである私が、なるべくつらくない形を模索した結果たどり着いた結論は、「自己アピールが苦手なエンジニアは積極的に登壇するとよい」ということです。

登壇によるメリット

登壇、つまり人前でしゃべるということは、なんとなく自己アピールであったり人と話すことが得意な人のやること、というイメージがあるかもしれません。

私が「自己アピールが苦手なエンジニアにこそ」登壇をしてほしい理由、すなわち登壇による主なメリットは「自分にとって楽な状態で会話をスタートできること」です。

■自分に関して説明しなくてもいい状態を作れる

これが最も大きく、そして意外と注目されていないポイントです。私自身このために登壇をしているともいえます。

自己アピールなどに苦手意識がある方は、会話の中や、採用面接などで「自己紹介してください」という場面が苦手だったりしませんか?

ある程度準備はできるにせよ、自分はこんな経験があってこんなことができて、という話を過不足なくしつつ相手に好印象を持ってもらうのはけっこう難しいことだと思います。

そこで、登壇が効いてきます。

LTなど短い発表であっても、発表を通じて

・どのようなスキルや経験がある人なのか
・どのような技術に興味があるのか
・どのような考え方をする人なのか
・どのようなキャラクターの人なのか

などを大まかに感じ取ってもらえます。

すると、たとえばその勉強会やイベント後に開かれる懇親会などでは「発表聞きました、**さんですよね」などと話しかけてもらえたりします。
この時点で、相手は登壇したあなたのことを少し知った状態で会話がスタートしています。つまり、ゼロから自己紹介する必要がないのです。

会話はよくキャッチボールに例えられます。お互いに相手のことをよく知らない状態でのキャッチボールは、ボール=会話を投げる方向や強さなど双方さぐりさぐりで行うので、これが苦手な人にとっては大変です。

しかし、相手が自分のことを知っている状態で始まるキャッチボールは違います。
こちらにとって比較的受けやすいボールが飛んでくるところからスタートし、相手に合わせて投げ返せばよい。

これは、ゼロから自分のことを話しつつやりとりを進めるよりも、圧倒的に楽だと考えています。

ここまでは登壇をして、その後の場におけるメリットの話でした。このメリットは、登壇を続けることでより効果を発揮します。

1回の登壇では、話す相手が「発表聞きました!」となるのはその場限りです。しかし、登壇を複数回重ねることで、「自分が話しているのを聞いたことがある人」が増えてきます。また、類似のトピックで発表すると「**のジャンルに強い人」といった形での認知もされます。

ここまで来ると、イベント後の懇親会で話がスムーズ、という枠をこえ、たとえば

・中途採用の面接や、スカウト受信時に「見ました」と言ってもらえる
・勤務している会社で、これまで関わりのなかった方から「見ました」と言ってもらえる

などの広がりが生まれてきます。

■登壇以外ではダメ?

ここまでご紹介したメリットは、登壇でなければ得られないのでしょうか?
ITエンジニアのアウトプットは登壇以外にも、技術ブログを書くなどさまざまなアウトプット方法があります。

もちろんこれらも効果的ですが、今回の目的である「自己アピール」や「周囲からの認知」という点では登壇が最も効果的だと考えています。

それは

・登壇は「すごい」というイメージ、錯覚資産が大きい
・顔や声などによって伝わる情報が付加される

ことが理由です。

個人でブログをたくさん書くこともすごいことですが、一般には「登壇」のほうがすごそうなイメージを持ってもらえます。メリット・デメリットの両面があるものの、誠実に行うぶんにはメリットが大きいと考えています。

また、ブログ等のテキストだけでは、「どのようなキャラクターか」が伝わりにくい部分もあります。情報は文章でも伝えられますが、今回の目的でもある「自分がどのような人かを相手に知ってもらった状態で会話がスタートできるとよい」という点では、発表時の声や話し方や表情などで伝わる割合も大きく、その点で登壇が優れていると思います。

登壇のハードルは思ったより低い

このようにオススメしている登壇ですが、どうしてもハードルが高く感じられることも多いようです。しかしこの点についても、ハードルを下げるための考え方について共有しておきたいです。

■みんな黙って聞いてくれ、途中でツッコミは飛んでこない

誰かが登壇して話す際は、懇親会での雑談や会社でのディスカッションと違い、聴衆は「黙って聞く」のが普通です。

ということは、事前に決められた時間枠である5分なり15分なりの間は、参加者は黙ってあなたの話を聞いてくれることになります。これは日常生活ではあまりない状況です。

普段の会議や会話、面接などは相互に会話をつなげる、それこそキャッチボールのように進むことが通常です。そうなると、相手の話を理解して適切に返す必要があります。これは皆当たり前のように行っていますが、意外と大変なことです。

これが登壇となれば、相手は一定時間黙って話を聞いてくれるわけなので、登壇する側からすると「自分のペースで話ができる」ともいえます。つまり、ある意味日常会話より楽といっていいのではないでしょうか。

あなたがものすごく英語に堪能、というわけではないと仮定して話をしますが、たとえば英語でしゃべらなければならない状況になったとします。

・英語で知らない人と15分間会話をする
・英語で15分間発表をする

の2択であれば、どちらがマシでしょうか?後者ではないですか?

ということは、言語が異なっていたとしても、事前に準備ができる登壇のほうが楽と考えることもできそうです。どうでしょう。ハードルが下がってきましたか?

勇気を出して登壇すると、後がラクに

今回はエンジニア、とくに他人と話すのがあまり得意でない方向けに、登壇するメリットと、登壇のハードルを下げるための考え方についてご紹介しました。

最近ではITエンジニアのアウトプットもさかんに行われるようになり、「初心者歓迎」や「初めての発表ならここで」といった、初心者を応援するタイプのイベントも増えています。第一歩としてそうしたイベントでの発表を行い、そこで経験を積んで規模の大きなイベントでの発表を目指すこともできます。もちろん規模がすべてではないので、自分にとって居心地のいいコミュニティに貢献する意味もこめて特定のイベントでの登壇を続けるのもよいでしょう。

確実なのは、登壇を重ねることで個人としての認知度が高まり、その後のエンジニア活動においてさまざまな点で有利になります。

とくに自己アピールをしたり、知らない人とグイグイ話しかけて関係性を構築したりするのが苦手な方にとって、認知度を高めるとその後が楽になっていきます。

まだ経験がない方は、ぜひ登壇にチャレンジしてみてください。

(文:伊藤由貴

presented by paiza

Share

Tech Team Journalをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む