藤谷 哲至氏 J-STAR 株式会社 マネジャー

プログラミングは、もはやエンジニアだけでなくビジネスパーソンに求められる素養となりつつある。いかに生産性を高め、自身のパフォーマンスを向上させていくかが、現代のビジネスパーソンのキャリア形成のポイントとなるためだ。そのため、現在では社会人になってからプログラミングを学ぶビジネスパーソンも増えている。課題となるのは「学び方」だ。仕事の合間を縫ってプログラミングを習得し、実務に活かすためには、より効率的な学びが求められるだろう。

では、実際に社会人になってから自身の差別化戦略のためにプログラミングを習得し、圧倒的な生産性向上を実現させたビジネスパーソンは、どのような方法をとったのか。今回は、PEファンドであるJ-STAR 株式会社(以下、J-STAR)の藤谷哲至氏を取材。戦略コンサルタントを経て、現在はファンドマネジャーを務める藤谷氏のキャリアとプログラミング、現在コンサルティング業界や金融業界で求められる人材像などについて話を聞いた。

藤谷 哲至氏 J-STAR 株式会社 マネジャー

藤谷 哲至氏 J-STAR 株式会社 マネジャー

慶応義塾大学経済学部卒業。2017年、株式会社経営共創基盤(IGPI)に入社。同社にて戦略コンサルティングおよびバイアウト投資に従事。主に、広告・情報サービス・製造業の領域において、経営戦略の立案と実行支援に携わるほか、中堅企業に対するバイアウト投資の検討および実行ならびに、投資実行後のハンズオンでの経営支援を推進。2023年1月J-STAR 株式会社に入社。

研究者の道も考えた学生時代 コンサル業界を選んだ背景

キャリアの出発点は、アカデミアと就職の別れ道から始まっていた。藤谷さんは慶應義塾大学の経済学部に進んだものの、専攻していたのは『哲学』だったという。

「大学は経済学部に進学しましたが、経済学の中でもとりわけ社会思想史に関心があり、一時はそのまま大学院に進み、研究者になる道も考えていました。ただ、大学3年になって自分のキャリアを考え始めたとき、アカデミアで職を得て行くことの難度の高さを認識し、民間企業の就職先を探すことにしたんです」

藤谷さんの最初のキャリアは、戦略コンサルティングファームの経営共創基盤(IGPI)から始まる。同社創業者は、産業再生機構の設立に参画し、「JAL再生タスクフォース」のサブリーダーとしてJALの経営再建の立役者となった冨山和彦氏だ。藤谷さんはなぜ同社に入ることを決めたのか。

「実家が自営業を営んでおり、幼い頃から経営のリアルな現場のダイナミズムに対して関心があり、漠然と経営コンサルティング会社への関心を持ちました。その中でも実家が中小企業だったことから、大企業よりも中小・中堅企業向けのコンサルティングに強みがある会社を志向しました」

自身の原体験ともいえる出来事から、藤谷さんはコンサルティング業界に進むことを選んだ。企業の危機に、さらには成長のフェーズに貢献できる人材になりたいと考えたためだ。いくつかのコンサルティングファームの選考に進む中で、藤谷さんは「自分には現場感があるタイプのコンサルティングファームの方がフィットする」と考えていた。

藤谷 哲至氏 J-STAR 株式会社 マネジャー

「パワーポイントできれいな資料をつくったからといって、実現できなければ絵にかいた餅にすぎません。大切なのは売上拡大・コスト削減いずれにしても、リアリティのある戦略を立案し、それをやり切ることだと考えていました。IGPIはそういったリアリティに対する拘りが強く、IGPIで働くことにしました」

プログラミング学習にpaizaを選択、実務に即生かせる学びを志向

藤谷さんは当初、自身の体験などから企業再生に興味をもってIGPIに入社した。しかし、藤谷さんが入社後にアサインされたのは広告や情報サービス業といった、いわば成長産業の担当だった。日々の業務で顧客が持つプラットフォーム上のデータベースを活用した新規事業開拓や、既存顧客への営業の磨き込みといった事業戦略を支援していく中、藤谷さんは今現在伸びていく企業のダイナミズムにも魅力を感じていた。同時に、日々膨大なデータを扱ううちに、自身でもプログラミングを学ぶ必要性を感じたという。

「当時のクライアントは、自社に様々なデータ自体は持っているものの、それをうまく活用できていない状態でした。私たちはクライアントが持っているデータを加工・分析して戦略策定・事業開発を支援していました。

当時組んでいたプロジェクトメンバーにはこういったデータの取り扱いに長けたメンバーがいたので、データの抽出・加工などの前工程はそのメンバーに担当してもらい、抽出・加工されたものをベースに私が分析するという分担をとっていました。しかし、実際に分析を進めていくと、データの抽出・加工方法を見直して別の角度から分析を進めたいというケースは多く発生します。当時はデータの抽出・加工方法を見直したい都度、そのメンバーにお願いしていたのですが、都度お願いしているとリードタイム・手待ちが発生してしまいます。生産性を上げていくためには、自分ができた方が絶対にいいと思ったんです」

しかし、そこでネックとなったのはどのように学習するか。戦略コンサルティングとしてタイトなスケジュールの中でプロジェクトを回していく必要があり、当時は完全出社での業務だった。

「当時はかなり仕事が忙しく、時間的な余裕がない中でキャッチアップして学習を進める必要がありました。空いた時間に効率よく、パソコン1台あればできることを探さなければいけません。当初はプログラミングの書籍をスキャンしPDF化したものをベースで学んだりと試行錯誤してみましたが、それでは効率が悪いと途中で思いました。環境が完結しつつ、自分のペースで学べるプラットフォームがないかと思っていました」

そのような中で、藤谷さんがプログラミング学習に選んだのがpaizaだったという。藤谷さんはpaizaにどのようなメリットを感じたのだろうか。

「日々業務にあたっているビジネスパーソンの場合は、既にプログラミングを使ってやりたいこと、すなわち解決したい課題・生産性を上げたい業務が明確なのではと思います。そのやりたいことを実現するために必要になるパーツを逆算して、必要なスキルを取得していくのが効率のよい活用方法なのではないでしょうか。私の場合はデータ分析を効率よく行い、生産性を上げていきたいという目的が明確だったので、業務の上ですぐに活用できる具体性があります。タイトなスケジュールの合間を縫って習得でき、すぐに業務に活用できるのは、paizaラーニングのようなオンラインプラットフォームのメリットだと感じました」

重視したのは、実務に即役立つプログラミング学習のあり方。藤谷さんは「週明けまでには仕事に使えるPythonを学びたい」とpiazaでのオンライン学習を進めたという。

藤谷 哲至氏 J-STAR 株式会社 マネジャー

「たとえば別のプロジェクトでは、クライアントの営業候補先のアタックリストを作成する局面もありました。勿論手作業で作成することも可能なのですが、より効率的にプロジェクトを進めるに、Pythonによってスクレイピング(※)できるようにしたいと思うようになりました。実際にそれを週末に勉強して、週明けの仕事から活用したいと思って学習を進めていきました。すると習得するべきことが明確になるので、アウトプットもすぐに出せるようになります。、実務的に役立つものがすぐにつくれるようになるので、ものづくりの楽しさが学習初期の段階から実感できました」

※スクレイピング:Webサイトにアクセスし、必要なデータをHTMLやCSSを解析することで自動で抽出する手法(Webスクレイピングとも)。サイト利用規約やプライバシー等の配慮が必要であるものの、市場や競合の調査、データ分析などに役立つ。

Pythonによる業務プロセス自動化で劇的に生産性向上

このように、藤谷さんはpaizaでPythonを学び実務へと活用し始めた。その効果はすぐに現れたという。

「実際にプロジェクトでデータ分析をすることは、前職でも現職でもよくあります。分析の目的・手法に合わせて使用するツールは異なりますが、工数のかかる分析の際などにはPythonを活用することもあります。

たとえば、売上・原価データの分析を行う場合、単純にデータを書き出すと、行数が数十万単位になり分析に工数がかかることは頻繁にあります。そのような場合はデータの抽出・加工等の工程をPythonで処理することで、分析にかかる工数を削減しています。これは一例ですが、このように手間がかかる業務を効率化することで、そのぶん分析の質を上げることができます。単に生産性が向上したのみならず、アウトプットの質も圧倒的に向上しました」

一度身につけたスキルは、その後に活きる。実際、藤谷さんが身につけたプログラミングスキルは「むしろIGPIを離れた後に役立つ機会が増えた」と語る。

「IGPIを退職した後、短い期間ですが、フリーランスとして業務を請け負っていた時期がありました。そのときは知り合い伝手に、予算策定等の経営企画業務を受託していたのですが、フリーランスの場合は、レバレッジを効かすための手段がそう多くありません。どこまで行っても1日は24時間しかなくそこがキャップになるので、自分が手作業でやる仕事を可能な限り減らしていく必要があります。そんなときにプログラミングの知識は生産性向上の観点で大いに役立ちました。

また、とくに固定のお客様に向けて同じような業務をしている場合は、最初に生産性を向上する仕組みをつくる部分で負荷はかかってしまいますが、一度仕組化してしまえば後の作業が格段に楽になり、一人で複数人分のパフォーマンスを発揮できるようになります」

そして2023年1月、藤谷さんはJ-STARに入社した。戦略コンサルタントとPEファンドのマネジャー。業界が変わったことで、業務的に異なる点もある中で、プログラミングスキルはどのように役立ったのだろうか。

「前職のようなコンサルティングファームの場合はプロジェクトメンバー複数人で分業し、それぞれがモジュールをもって仕事を進めていく所謂分業制での進め方が一般的でしたが、現職の投資ファンドの場合は、必要に応じて外部のコンサルティング会社等の専門家を起用するものの、局所的にはほぼ1人で業務を回さなければならないシーンもあり、そうなると簡単な業務をいかに早く回すかが重要になってきます。分析速度などを上げるためにも、プログラミングを使って自動化できるスキルは非常に助かっていますね」

コンサル・金融業界で高まるプログラミング人材のニーズ

このように、paizaを活用してプログラミングを学習し、実務の生産性向上を実現している藤谷さん。「現在ではpaizaのようなオンライン学習プラットフォームも発達し、ChatGPTなどの生成AIも活用できるようになったので、プログラミング活用のハードルは下がっている」と語る。コンサルティング業界、金融業界では、今後どのような人材が求められ、ビジネスパーソンとしてどのようにバリューを出していくべきなのだろうか。

「人材の流動化が進むとともに、専門的な情報へのアクセスも容易になっているほか、現在ではChatGPTのように聞けばなんでも答えてくれるAIが今後も発達していくことを考えると、今後は専門的な知見・スキルもコモディティ化していくことが予想され、すでに起き始めている部分もあります。そうなると単に一定領域で専門知見・スキルを有しているだけではなく、複数の専門知見・スキルをかけ合わせて『この数百人というプレーヤーの中で、あなたはなにができますか』という問いにシャープに答えていく必要があります。

そう考えると、プログラミングは分析やエッジを立てるのに役立つ局面が多いと考えていますなにより、今では小学校から高校までプログラミングは必修化され、2025年には大学入学共通テストでも情報1が科目に加わるような時代です。今後はよりプログラミングの素養のある人材が数多く社会に出てくることを考慮すれば、今後はむしろプログラミングができないことが自身のディスアドバンテージになる場面もくるのではないでしょうか」

コンサルタントや投資ファンドのマネジャーにとって、ファイナンスの知識はあって当たり前であるように、プログラミングのスキルが業界における必須条件となる可能性は十分にある。

「専門知見・スキルのコモディティ化が進めば進むほど、お客様の会社固有のユニークな問題に対応していく必要があります。ユニークな問題はどこから出てくるかといえば、その会社の状況をしっかりと分析し、深いインサイトを得た上で私たちから提案するからこそ見出されるもので、それができている人はあまり多くないと感じています」

データを分析していくことは、つまり事業の解像度を上げていくことだ。そして、それを誰よりも知りたがっているのは、顧客企業の経営層に他ならない。一方で、現在では企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進む中で、企業内でデータを処理する動きもある。そのような中で、コンサルティングやファンドマネジャーとして、いかにデータを分析し適切な提案をしていくのかが、今後の鍵となっている。

「実際にBIツールの導入を支援したところ、経営陣はすぐに細かいデータを、様々な確度からアドホックに分析可能になりました。やはり今後重要になるのは、データの分析により事業に対する解像度を高め、より有用なアイデアを生み出し提案できる人材となるでしょう」

このように、プログラミングのスキルはもはやエンジニアを目指す人だけが身につけるものではなく、ビジネスパーソン全体として求められるスキルになりつつある。とくに新卒採用でコンサルティングや金融業界を目指す学生にとっては、入社後にバリューを発揮するためには学んでおくべきことだろう。最後に、新卒でIGPIに入社し、現在はJ-STARで活躍する藤谷さんの目線から見た、現在新卒採用で求められている人材像について聞いた。

「どちらの業界でも、情報系の学部で学んだ学生は高く評価される傾向にあると思います。理由は2つあり、1つはプログラミングを学んだ学生は論理的思考能力が高く、自身のスキルを実務に活かして自律的に仕事を回していけるポテンシャルがあると評価されます。2つめとしては、プログラミングを学んだ学生の持つケーパビリティにフィットする業務が増えていくことが予想されるためです。今後ノーコードが進んでいくとなっても、プログラミングのスキルが不必要になるとは誰も思っていません。そういった点からも選ばれやすくなっていると思います。加えて両業界ともに自分のアウトプットに対する拘りが強い人が多く、そういった方はフィットしやすいと思います」

取材後記:弊社代表取締役社長/CEO 片山良平より

社会人になってからプログラミングを覚え、エンジニアとして開発を経験していないにも関わらず、業務でプログラミングを活用し、自身の生産性を劇的に上げている藤谷さん。

なかなかこういう方には出会ったことはないのですが、藤谷さんのような方が増えると日本の生産性が劇的に上がる未来が見えました。

自分の仕事をプログラミングを使い自分で自動化する。これこそ究極の効率化の道だと感じました。

取材/文川島大雅、撮影:野田涼

― presented by paiza

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