エンジニアリング組織を作るうえで避けては通れない壁の1つが採用です。

いかに優秀なエンジニアを確保するかはエンジニアリング組織にとって常に課題であると言ってもいいでしょう。応募を増やすのももちろん大切ですが、それとともに、応募者をしっかりと見極め、自社の戦力になるであろう人材を逃さないような選考が求められます。

ネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」などを開発するログリー株式会社では、中途エンジニアの選考の際、応募者に自分の目の前で小規模な開発・実装をしてもらうというユニークな選考方法を採用しています。この記事では同社執行役員CTOの井口毅昭さんに、このような選考方法を取り入れた経緯やそのメリットなどについて伺いました。

書類や面接だけで実力を見抜くのは困難

――はじめに、ログリー株式会社でこのような選考方法を導入することになった経緯を教えてください。

当社の中途エンジニア採用では、1次面接を人事、2次選考を自分が担当し、最終面接を代表がやっています。1次と最終は通常の面接です。

初期のころは2次選考もごく一般的な面接での実施を軸に考えていました。エンジニア向けの想定質問を用意して、応募者を見極めようというものでした。しかし実際にやってみると、面接の中で必要な情報を得るのがなかなか難しかったんです。スキルもそうですが、人物面も含めて、意外と応募者がどういう方なのか見えてこないなという印象でした。

極論を言えば、面接って話を盛ることもできますよね。たとえば、実際にはチームでの実績なのに、面接ではそれを個人の成果だとアピールすることも可能です。話を聞くだけではそのあたりの見極めもどうしても難しく感じていました。当時は自分自身に面接官の経験が乏しく、うまく面接ができていなかったのもあると思います。

当社としてはスキルのあるエンジニアに入社していただきたいとの思いが強くありました。そういう方を確実に採用していくためには、「やはり面接だけでなく、目の前でコーディングをやってもらうしかないよね」ということになり、そこからは早期に現在の形での選考方法へ移行していきました。

試験内容は「コーディング試験とインターンの中間くらい」

――現在の選考方法とは具体的にどんなものでしょうか。コーディング試験とは違うのでしょうか。

一般的に「コーディング試験」というと、アルゴリズムの問題を出して、ホワイトボードなどに書いてもらうといったイメージが強いですが、当社の試験はそういうものではありません。コーディング試験とインターンの中間のようなものをやっているというイメージです。どちらかといえばインターン寄りといってもいいかもしれません。

応募者に「今からこれを作ってください」と課題をお渡しして、実際に私の目の前でその課題を実装してもらうというものです。広告領域に関するアプリケーションを実装していただきます。試験中は応募者の画面をミラーリングして、その方がどういうふうに実装していくかを見せていただきます。現在はコロナ禍のため、リモートで画面を共有してもらってやることが多いですね。

なお、試験中は検索などをしていただいてもかまいません。通常の業務では調べ物をしながら実装することになりますし、実際にどうやって解決方法にたどりつくかも見ています。

さらに、試験中には自分とコミュニケーションをとっていただきながら進めていただくようにしています。見ていて行きづまってしまうようであれば、ある程度こちらからヒントとかを出すといったこともします。ある特定の知識がなかったためにそこではまってしまい、タイムアップしてしまった、みたいな結果になってしまうのは、自分たちとしても本意ではありませんからね。

そうやって応募者自身で調べたり、相談したりしながら、1時間ほどで実装をしていただきます。応募者によっては1時間を超えてもキリがいいところまでやろうかとなる場合もありますし、ご自身が希望されて延長するケースもあります。

横で実装を見守ればスキル面も人物面も見えてくる

――成果物を見るだけでなく、実際に応募者が開発をする動きまで追っているんですね。

一緒に働いたときにどんな感じで動く方なのかというのが一番知りたいところなので、過程はしっかり見ています。面接の質疑だけでは分からないようなスキルや人柄が見えることも多いです。

たとえば検索して調べる行為ひとつをとっても、検索キーワードの選び方、検索結果のどの記事を選ぶかといったところでも違いは出ます。一次情報にあたりたいというタイプの方もいれば、とりあえず「答えにつながりそうな情報は?」みたいな感じで飛んでいってみるみたいな方もいますし、結構いろんなものが見えてきますね。

サンプルコードの扱いでも、とりあえず全部丸ごとコピペしてみようみたいな感じの方もいますし、先にしっかりと吟味して読み解こうとする方もいて、本当にさまざまですよ。

実装していただいたあとには、軽く質疑応答もします。たとえば「これをこのあとテストすることになったら、どういうことをしますか」といった内容ですね。あるいは途中までしか実装できなかった方であれば「あとは何が残っていて何をする想定でしたか」と聞きます。そうやって応募者がどういう考えを持って開発に取り組んでいるかを見ています。

――この選考では応募者のどのようなところを評価しているのですか?

絶対的な正解があるとは考えていません。選考では応募者のいろんな側面が見えますから、技術的な面にひかれることもあれば、コミュニケーションの取り方に良さを感じる場合もあります。何か「一緒に仕事したいな」と思える点を見いだせればよいと考えています。スキルにしろコミュニケーションにしろ、求める一定の水準はあるものの、結局は総合的な判断になりますね。

過去には、あまり開発の知識が豊富というわけではないけれど、コミュニケーションが非常にうまくて、私に上手に質問してヒントを引き出して作っちゃった、という方もいました。それではダメなのかといえば、必ずしもダメではないと考えています。結果的にアウトプットがしっかり出せるのであれば、それはそれで一つの道ですから。

逆にほぼ質問はしなかったけれど、自分で詰まることなく作れちゃうという方もいます。
その方も「あまりしゃべらないから減点です」ってことはなくて、「1人で迷わず作れるくらい技術力が高い方なんだな」という評価になります。

ただ、コミュニケーションが少ないまま、何かちょっと違うことをしてしまうとか、事実と意見の区別ができないとか、そういったところがある方は減点になるケースがあります。たとえば指示されてないことなのに、何かの思い込みで突っ走ってしまうような方ですね。

あとはやはり試験とはいえ一緒に何かを作るわけなので、それを楽しいなと思ってもらえる方だといいなと考えています。たとえどう作るかのすべてが分からなかったとしても、「こんな機会だし、がんばってやってみよう」と面白がってやってくれる方がいいですね。そういう方は自分で勉強して自分で伸びていける方だと思います。そういったポテンシャルが見えれば採用することはあります。

メリットは大きい一方、準備が大変なのが課題

――実際に現在の方法で選考するようになって、採用の課題は解決できていますか?

そうですね。この方法によるメリットは非常にあると感じています。エンジニアのスキル面も人物面も見えるようになりました。

あとは、応募者側からも「当社に応募してよかった」と言ってもらえることがありますね。この選考をやったことで「この会社でどう働くかが想像できてよかった」と言ってもらえたときはうれしかったですね。結局エンジニアはとりあいなので、この選考を通じて当社に対しての思いが強まるのであれば、それも1つのメリットだと思います。

――今後に向けてこの選考での課題などはありますか?

2つあって、1つは実施に時間が必要なのにもかかわらず自分がメインで担当しているため、どうしても拘束時間が長くなる点です。

現在はこのフローはCTOである自分が必ず担当しています。このコーディング面接だけではなく一般的な面接も別途実施しており、トータルで1人あたり2時間くらいはかかるので、時間的な負担がかなり大きいです。応募者が多いときは、ほぼ面接みたいな感じになる日もあります。現在当社のエンジニアチームは20名ほどで、まだなんとかなっていますが、今後ももっと増えていくことになりますから、長期的にはどうにかしないといけないなと考えています。

もう1つは、いいバランスの課題を作るのが難しい点です。難易度や実装する規模、さらに当社のプロダクトとの親和性、しかも一定程度面白さも求められます。かなり制約が大きい中で課題を作っていかなければならないので大変です。

現在、この試験でエンジニアに取り組んでもらう課題は、試行錯誤した結果1パターンのみとなっています。本当はエンジニアの担当領域に応じてカスタマイズをしなければいけないんですけど、今は原則的に1つです。過去には、担当領域に合わせていくつかのパターンの出題したこともあったのですが、なかなかいいバランスの問題はできていないのが現状です。

今の課題は、アプリに関するエンジニアであれば課題としてピタッとはまっているなと感じる一方で、インフラエンジニアなど他のポジションでは少し効果が薄いかもしれないと思うこともあります。

――最後に、ログリーへの応募を検討されている方にメッセージをお願いします。

さきほども少しお話ししましたが、楽しんでエンジニアの仕事をできる方、自分で勉強して伸びていきたいという方と一緒に働きたいですね。今回お話しした実装の試験も、楽しみながらやってくれるような方に応募していただけるとうれしいです。


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