※こちらの記事は「paiza開発日誌」に2021月7月16日に掲載した記事を加筆・修正したものです。
わたしはITエンジニアの転職をサポートするpaizaで、長年転職やキャリアに関するお話を聞いてきました。その中で、とくに30代・40代の方からは「今後のキャリアについて悩んでいる」「今までの経験を生かして少し違うキャリアに進みたい」と言われることが多くありました。
エンジニアで30代・40代というと、中堅〜ベテランと言える年次です。20代のときと比べると、組織でのポジションや求められる役割が大きく変わったり、増えたりする場面もあるでしょう。現職での業務内容やキャリアに対し、不満や不安を感じ始める方も多い年代かと思います。
そこで今回は、30代・40代のエンジニアの方に向けて、今後もエンジニアを続ける場合、もしくは周辺領域で仕事をする場合の、キャリアの選択肢について解説します。
目次
エンジニアと周辺領域におけるキャリアの選択肢
エンジニアとして次のキャリアを目指す
エンジニアとして仕事を続ける場合、大きくわけると以下の2つの道があります。
- 専門技術に特化したスペシャリストになる(研究開発・シニアエンジニアなど)
- ビジネスと技術を総合的に見渡して、事業の進め方や組織マネジメントについて考える(CTO・VPoE・PdMなど)
企業によってはこの中でもさらに担当業務や役割がわかれていたり、ひとつのポジションで複数の役割を担ったりするケースもあり、役職名もさまざまです。
そのため、転職活動の際は役職名よりも以下のポイントを重視して、選考中によく確認をしておくとよいでしょう。
- そのポジションではどんな役割や業務が求められるのか
- それは今の自分にとってやりたい仕事なのか
- その仕事を通してどんな成長ができそうか
上流のSIerに転職する
n次請け企業に在籍しているエンジニアの方が、同様のSIerへの転職を目指すケースです。現実的に、数千人規模の大手企業への転職は、かなりの狭き門となるでしょう。
ただ、元請けもやっているような、より上流に近いSIer(数百人~1000人前後ほどの中堅企業)への転職であれば、不可能ではありません。
顧客と要件を詰めて、設計して、実装して、テストして、といった手順自体は得意な人や「仕事内容自体は嫌いではないけど、現職は労働環境があまりよくない」という人は、より上流に近い企業への転職が合っているかもしれません。
もちろん、上流であれば必ず労働環境や給与がよくなるわけではありません。業務内容や条件は、しっかり調べた上で応募をしましょう。
上流企業へ転職した場合、いずれはPMとなってプロジェクト全体をとりまとめることもあるでしょう。実務では、ポジションがPMに近づくにつれて、期日と予算範囲を厳守しながら、システムを納品する管理能力が必要となります。
スタートアップ企業に転職する
最近では、有名企業のエンジニアが、できたばかりのスタートアップ企業へ転職するケースもめずらしくありません。
とくに立ち上げ期、0→1のフェーズにいる企業では、自分たちの手でプロダクトや組織をつくっていくことができます。ものづくりやビジネスが好きなエンジニアにとっては、えも言われぬ楽しさや喜びがあるでしょう。
ただし、これまでになかった新しいサービスを企画・開発・運営し、ビジネスとして軌道に乗せるのは、至難の業です。
たとえば、頑張ってつくったサービスが思いのほかお金にならない。競合に類似サービスをリリースされてしまう。軌道に乗せられなかったサービスが終了になってしまう。スタートアップは、常にこうした問題と隣り合わせです。着実に安定した企業で働きたいと考えている人には、あまり向かないキャリアだと言えるでしょう。
フリーランスになる
最近はリモートで働いている方も多く「自宅で仕事をし続けるなら、いっそ独立しようかな」と考えてフリーランスになる方もいます。
たしかに、今やエンジニアはどこにいても働ける職業のため、より自由度の高いフリーランスになるのもひとつのキャリアです。
エンジニアがフリーランスになると、大きくわけて以下の2つのメリットがあります。
- 契約した金額がすべて自分のものになる(もちろん税金などは除く)
- 納期を守って成果が出せれば、時間や勤務スタイルの自由度が高い
もちろん、メリットばかりではありません。企業に所属した社員ではなくなるのですから、ある企業が何度か仕事をくれたとしても、次月から急に受注がなくなることもあり得ます。
また、事務処理や契約金交渉なども自分でしなければなりません。法律に関する最低限の知識や、交渉できるコミュニケーションスキルも必要となるでしょう。
起業する
フリーランスを経験してから起業を目指す人もいますが、つくりたいサービスや将来のビジョンが明確な人、大規模な事業を自分で手掛けたい人の中には、すぐに起業をする人もいます。
とくにITサービスで起業する場合は「どの業界でビジネスを立ち上げるのか」「どんなビジネスモデルにするのか」が重要です。事前のリサーチや資金調達も必要となるでしょう。
あまり調べもせず「やりたいこと・つくりたいものがある!」というだけでいきなり起業すると、失敗する確率も上がってしまいます。まずはスタートアップで経験を積んだり、副業やフリーランスから始めてみるのがよいでしょう。
人事部のエンジニア採用担当
エンジニア経験と採用経験を活かして、いっそ採用担当にキャリアチェンジする人も出てきています。「人事ニア」という言葉を聞く機会も増えてきました。
元エンジニアのエンジニア採用担当なら、当然ながらエンジニアの気持ちや技術についての知見があります。開発組織を大きくしたいと考えている企業には、重宝されるかもしれません。
また、エンジニアを経験した上で「これからはシステムや情報を扱うよりも人をつなぐ仕事がしたい」と考えている人にとっては、経験が生かせて希望も叶えられる、都合のよいポジションです。
ただし、採用は人が相手なので、こちらがどんなに頑張っても一定の成果が確約されるわけではありません。また、エンジニアリングとはまったく違う業務内容になりますから、人事業務の勉強も必要となります。
情報システム部
企業の情報システム部(情シス)は、社内の基幹システムや社内インフラの構築・導入や、システムの使い方についての社員レクチャー、障害対応などをおこなう部署です。
情シスはトラブル対応などにおけるヘルプデスクのような役割もあるため、業務の幅は非常に広く、「ITやPCに関する問い合わせはとりあえず情シスへ」という企業は少なくありません。
企業によっては、インフラエンジニアやテクニカルサポートエンジニアに近い業務を担うケースもあります。
最近はIT系以外の業界でもDXを進めようとしている企業も多く、需要はあるかと思われます。ただIT業界から一転、今までITに疎かった人たちを相手に仕事をするのは違った大変さがあるでしょう。
また、部署としてはどこの企業も少人数の傾向があり、担当者が自分1人だけという場合もあり得ます。
最後に
最近は、エンジニアのキャリアも多様化しています。また、エンジニア経験を生かして、異なる領域へキャリアを転向させる方も増えているようです。
先の見通しが立たない市場で、未来の選択肢を増やすためには、一度自分の経験やキャリアについて振り返ってみることをオススメします。
(文・谷口智香)