「感性を殺さないためにも、真剣に遊べ」。
前編では、そんなメッセージとともに、遊ぶことで自然体な働き方ができている理由を教えてくれた株式会社アースボート代表の吉原ゴウ氏(以下、ゴウさん)。
後編では、ゴウさんが手がける地球を肌で感じる宿「Earthboat」で、外で遊ぶためのきっかけになる「アウトドアサウナ」について話を聴いた。
「サウナは流行っているけど、カラカラに熱いのは苦手。キンキンの水風呂は無理!」 なんて方もいると思うが、ゴウさん自身も以前はそうだったという。そこから、自分でサウナ事業を起こした理由には、仕事にも人生にも効く「アウトドアサウナ」の魅力があった。

1982年長野県生まれ。2007年-2022年まで株式会社LIGを経営し、Web制作に従事。2022年株式会社アースボートを創業し、代表取締役に就任。アウトドアスクールを経営する家庭で生まれ育ち、子どもの頃よりカヤック、スキー、山採りやキノコ狩りなどをして育つ。田舎の自然の魅力や、アウトドア体験をコアとしたビジネスをするために長野県信濃町にUターン。
目次
本物のサウナを全身で体感
ーー ゴウさんは何がきっかけでサウナに目覚めたんですか?
LIG時代に、部下の野田クラクションベベーが「事業としてサウナをやりたいんで、本場フィンランドに一緒に行きましょう」って誘ってきて。正直、当時は全然サウナに興味がなかったから、自社ブログのネタになるくらいの気持ちで行ってみたんだ。そしたら、圧倒的に良い体験ができて。それからだね。
ーー 何が違ったんですか?
フィンランドに行く前は銭湯にあるサウナぐらいしか体験したことがなかったんだけど、あれってカラカラで熱いし、何が楽しいの ?って思っていて。
ところが本場は違った。自然と調和するログハウスのようなサウナの中に入ると、木やスモークの香りに満たされて、薪がパチパチ燃える音を聴きながら体の芯まで温まって……そこから湖や海といった天然の水風呂に飛び込む。青空の下で外気浴をしながら「これ、めっちゃアウトドアじゃん!」と。今まで俺が知ってるサウナの体験とはまったく別物なんだと全身で体感できた。
ーー その体験が「The Sauna」、そして「Earthboat」にもつながる、と。
そうそう。自分が生まれ育った長野県野尻湖もフィンランドと気候が似ていて、白樺など木々の植生も似ている。それに、泳げる湖もすぐそばにあるし、これはいけるとインスピレーションでつながったんだよね。まさに遊びから着想を得て、仕事が生まれた感じかな。

その後、当時LIGで運営していた宿泊施設「LAMP野尻湖」の横に、手探りでサウナエリアを立ち上げた。1号棟「ユクシ(フィンランド後で1の意味)」から数えて、今では5号棟目になる「ヴィーシ」まで完成し、新たな事業としてサウナ付きタイニーホテル「Earthboat」も新会社としてはじめることになった。というのが、現在までのサウナとの関わりかな。
外に飛び出すきっかけに「アウトドアサウナ」を

ーー 私もサウナが好きで、昨年も野尻湖の「The Sauna」で(インタビュー後は、Earthboatでも)最高にととのいました。
「一度体験するとアウトドアサウナの魅力を全身で体感できるというのは、まさに」だなと思うのですが、これから体験したい方、特に忙しく働いているビジネスパーソンにその良さを伝えるとするとどんなところでしょうか。
アウトドアサウナの楽しみ方はいろいろあるから正解はないけど、自分が感じている魅力をあげると……
■自然を感じながら外で過ごせる
都会のマンションとかオフィスビルだと、空調がしっかりしていて、防音もあったりする。外の天気とか温度とか風の強さとかに意識を向けなくなってしまうので、肌で自然を感じることが難しい。
アウトドアサウナはその名の通り、外。真夏でも水が冷たければ成り立つし、豪雪地帯でもサウナに入れば身体が温まる。全ての季節、全ての天気で遊べるのがいいところかな。
だからEarthboatも、あえて外で長く過ごせるような設計にしている。必要な備品は全て揃っているし、冬も野外で過ごせるように薪ストーブがあったり、時には快適な室内で過ごしたり、身体が冷えたらそのままサウナに入ってもいい。アウトドア初心者がいきなりキャンプはハードルが高いけど、Earthboatなら大丈夫。自分は、多くの人が外に飛び出すきっかけを作りたくて、この事業をやっているところもある。

■コミュニケーションが生まれる
アウトドアサウナは、コミュニケーションがすごく取りやすいツールだなと思っていている。公共の温浴施設は黙浴が基本で、なかなか会話ができないけど、アウトドアなら問題ない。水着を着れば男女一緒にも入れるし、友人や家族と一緒だと自然とまったり会話がはじまるんだよね。
本場フィンランドでは知らない人同士でも社交の場としてサウナの中や外で対話していたりするし、人と人が仲良くなるきっかけとしてもいいよね。

■リラックスできて気持ちいい
その日の体調によって、ゆるく入りたいことも、がっつり入りたいこともある。そんな気分に合わせて温度を調節できるのは、薪のサウナの良さかな。たっぷり汗をかいて、キンキンの水風呂に入って、バキバキにきまるみたいな入り方も好きなんだけど、毎日がそうじゃないからね。
自宅にある薪サウナでは、室内を40度50度ぐらいの温度に調節して、漫画を持ち込んで、ゆっくり入ると、最高にリラックスできて気持ちいい。これは一棟貸し切り型のEarthboatでもできる楽しみ方。自分たちで薪に火をつけて暖められるので、自分好みの温度を楽しめる。
ーー 自分で火を起こすんですね!
めんどうだと思う人もいるかもしれないけど、アウトドアならそれくらいできるようになってほしいという想いが強くて。ちょっと大袈裟に言うと、動物と違って人類は唯一火を起こせる生き物だからね。やっぱり自分で火付けをして暖を取る体験って、都会で暮らしていると経験しにくいし。
これはEarthboatのビジネスモデルにも関係しているんだけど、無人化に近い形で宿が成り立つように箱を用意する、ツールも用意する。それを自分で扱ってセルフで楽しんでくださいねっていう考え方をベースにしている。1年以上そのスタイルを実験してみたんだけど、火付けなんかはみんなすぐにできるようになる。着火剤や、細い薪なども置いてあるので。

日本全国に遊びの間口を広げる
ーー 今後は「Earthboat」をどのように展開していくのでしょうか。
サウナを作るたびに改善を繰り返してきた中で、ビジネスモデルそのものも変えたのが「Earthboat」。2024年からは長野県信濃町黒姫エリアの湖畔を囲む広大な土地に、計10台のEarthboatを設置して「Earthboat Village」もオープンする。

ーー 村!?
多くの人がアウトドアで遊ぶ間口を広げるために、Earthboatを全国に作りたい。だから、長野県の野尻湖や黒姫エリアを皮切りに、北軽井沢や白馬、群馬県水上、神奈川県山北町など各地でプロジェクトが進行中なんだ。絶景、水辺、隔離されている場所、この3つの条件のうち1つ以上あれば大丈夫。無人化して人件費不要で広がるビジネスモデルなので、こういったことができる。
ーー 前編の記事で、遊び方について紹介しましたが、「でも、実際にどうやってアウトドアで遊ぶの」となったときの受け皿も作っている。これからの展開がますます楽しみです!
ありがとう。歳を取るごとにできることや選択肢が減る生き方より、どんどん増えるほうが、やっぱり面白いよね。そのきっかけとして「遊び」は1つの手段。別に遊びじゃなくてもいいんだけど、やっぱりなんでも興味を持って体験してみること、チャレンジしてみることで、歳をとっても人生のアップデートができるんじゃないかな。
編集後記:実際に「Earthboat」を体験してみた
……ということで、筆者もEarthboatを体験してみました。

写真では寒そうだけど、とろけるほどに気持ち良かったです(真冬は外気がマイナスなので、水風呂のほうが温度は高い)。
執筆業をしていると、1日中パソコンを前に座りっぱなしなんて日もあり、夜は気分転換にサウナに行くのが日課。週5日以上入っているヘビーサウナーですが、やっぱりアウトドアサウナは別物、別格です。
Earthboatは自分で薪をくべてサウナ室を暖められるので、ちょっとぬるいくらいで入るとジワジワと身体に効いてきます。ベッドルームとサウナ室が隣接しているので、気が向いたときに入れるのも最高の体験でした。自分の中で自然が足りなくなったら、また”地球を肌で感じる宿”を活用したいです。
(取材/文/撮影:松田 然)
